通所リハ(デイケア)を利用するメリットとデメリットとは?サービス内容や費用についても紹介
「通所リハはどのようなサービスがあるの?」「デイサービスと何が違うの?」このような疑問はありませんか?
通所リハは、日帰りで事業所に通いリハビリが受けられるサービスです。通所介護(デイサービス)と同じように考えられることもありますが、サービス内容や費用などが異なります。
今回は通所リハのサービス内容や通所介護との違いについて解説しています。通所リハの利用を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
とぐち まさき
渡口 将生
通所リハ(デイケア)とは
正式名称は通所リハビリテーション
通所リハとは、介護老人保健施設や病院・診療所などの福祉・医療施設に併設され、自宅から事業所に日帰りで通い、集団・個別のリハビリを受けられるサービスです。通所リハには、介護保険を利用したサービスと医療保険を利用するサービスがあります。
介護保険を利用した場合には、介護老人保健施設や介護医療院などに併設されている事業所を利用します。デイケアは介護保険の中でもリハビリに特化したサービスで、心身機能の維持・回復を図り、日常生活の自立が目的です。
デイケアを利用する目的として以下の点があります。
・入院中に受けていたリハビリを退院後も継続したい
・リハビリの専門職の指導のもとリハビリがしたい
・医師・看護師など医療職がいる環境で安心してリハビリがしたい
・家族の介護負担軽減
これらの理由で利用する人が多い傾向です。
注:同一疾患に対して医療保険と介護保険の併用はできません。病状や疾患によって両方の保険が利用できる場合には介護保険が優先されます。
通所リハ(デイケア)で提供されるサービス
利用時間やサービス内容に違いがある
通所リハでは、利用する事業所によって提供されるサービスに違いがあります。
例えば以下の通りです。
・利用時間の長さ(短い所は1時間だけの所もある)
・リハビリ環境(リハビリ器具の種類や個別リハビリ・集団リハビリなど)
・入浴設備の有無
・食事の有無
上記のように、事業所ごとに対応しているサービスに違いがあるため、事前に確認が必要です。基本的にはどのようなサービスを提供しているか見ていきましょう。
【送迎】
行き帰りを職員が送迎車を使用して送迎します。そのため、移動に介助が必要な方も安心して通うことが可能です。複数人の乗合になるため、自宅の場所に合わせて順次送迎することになります。
【体調確認】
バイタル測定(血圧・脈拍・体温など)を行い、体調の変化がないかリハビリを提供しても問題ないかを確認します。
【入浴】
入浴サービスを提供している事業所では、体調の確認後、入浴サービスを提供します。身体に不自由があっても機械の実施や職員が対応するため安心して入浴することができます。事業所によっては機械浴などの入浴設備を設けていない場合や人数制限を設けている事業所があるため、入浴を希望する場合は利用する事業所に確認すると良いでしょう。
【リハビリ】
個別リハビリでは、専門職が対象者に必要なリハビリを個別メニューを作成して行います。また、集団リハビリでは、リハビリ職や看護師、介護職員などが複数人の利用者を対象にリハビリを行います。また、事業所によってはリハビリ器具を導入している場合もあるため、環境を確かめておくと良いでしょう。
【食事】
基本的にサービス提供時間が長い事業所では、昼食を提供します。咀嚼・嚥下に問題がある人にはペースト食や刻み食・とろみ(あんかけ)食の提供や、糖尿病や腎臓疾患・心疾患などにより、食事管理が必要な人には、その疾患に対応した食事を提供します。また、事業所によっては言語聴覚士が配置されており、食事の摂取状況を確認しリハビリを行うこともできるため、食事に関する不安がある場合は、リハビリ職の配置を確認しておくと良いでしょう。
【レクリエーション】
体操や作業、脳トレなどさまざまなレクリエーションを提供します。ただし、通所介護(デイサービス)のような「楽しみ」を目的としたものではなく、あくまでもリハビリの一環として実施する事業所も多いため注意が必要です。要支援の人は、介護予防を目的としているため、要介護の人と同じサービスに加え利用者の状態に応じて運動機能向上・栄養改善・口腔機能向上などのサービスを組み合わせている事業所もあります。
【福祉用具や住宅改修についてのアドバイスや相談】
杖や車椅子などの福祉用具が必要となった際に、身体状況や生活環境から適切な福祉用具のアドバイスを行います。また、日常生活を安全に過ごすために必要な自宅内の環境を相談することも可能です。必要に応じて、リハビリ職などが自宅の家屋調査を行う場合もあります。
通所リハ(デイケア)の対象者
要支援1から要介護5の方を対象としてサービス
通所リハの対象者は以下の通りです。
65歳以上の要介護認定を受けている人(要支援1・2、要介護1~5)
40歳~64歳の特定疾病が原因で要介護認定を受けている人
特定疾病とは以下の16種類の疾患を指します。
がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症
後縦靱帯骨化症
骨折を伴う骨粗鬆症
初老期における認知症
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症
多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
脳血管疾患
閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患
両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
また、上記以外にも医師からリハビリが必要と判断された人が利用対象となります。
通所リハ(デイケア)の費用
事業所の体制や利用する時間によって異なる
基本サービス費は要介護度・利用時間・事業所の規模(利用人数)によって費用は異なります。要支援の場合は月額制、要介護の場合は利用する回数によって算定されるため注意しましょう。
事業所の規模に関しては以下のように分けられます。
規模 | ひと月の延べ利用者数 |
通常規模 | ~750人 |
大規模(1) | 751~900人 |
大規模(2) | 901人以上 |
※前年度の実績に応じて計算されます。
【通常規模】
利用時間 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
1~2時間未満 | 366円 | 395円 | 426円 | 455円 | 487円 |
2~3時間未満 | 380円 | 436円 | 494円 | 551円 | 608円 |
3~4時間未満 | 483円 | 561円 | 638円 | 738円 | 836円 |
4~5時間未満 | 549円 | 637円 | 725円 | 838円 | 950円 |
5~6時間未満 | 618円 | 733円 | 846円 | 980円 | 1,112円 |
6~7時間未満 | 710円 | 844円 | 974円 | 1,129円 | 1,281円 |
7~8時間未満 | 757円 | 897円 | 1,039円 | 1,206円 | 1,369円 |
※介護保険負担割合1割の場合 1単位=10円
【大規模(1)】
利用時間 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
1~2時間未満 | 361円 | 392円 | 421円 | 450円 | 481円 |
2~3時間未満 | 375円 | 431円 | 488円 | 544円 | 601円 |
3~4時間未満 | 477円 | 554円 | 630円 | 727円 | 824円 |
4~5時間未満 | 540円 | 626円 | 711円 | 821円 | 932円 |
5~6時間未満 | 599円 | 709円 | 819円 | 950円 | 1,077円 |
6~7時間未満 | 694円 | 824円 | 953円 | 1,102円 | 1,252円 |
7~8時間未満 | 734円 | 868円 | 1,006円 | 1,166円 | 1,325円 |
※介護保険負担割合1割の場合 1単位=10円
要支援1 | 要支援2 | |
基本費用(月定額) | 2,053円 | 3,999円 |
利用回数 | 週1回程度 | 週2回程度 |
※介護保険負担割合1割の場合 1単位=10円
要支援の場合、費用は月定額となり、利用回数は事業所ごとに定められた回数(主に週1回や週2回)のみ利用できます。たとえ、月1回しか利用していない場合でも全額費用が必要となるため、注意が必要です。
上記の基本費用のほかにも、事業所ごとに算定している加算が必要となる場合があります。主な加算は以下の通りです。
加算名 | 費用 |
サービス提供体制強化加算Ⅰ | 22円/回 |
通所リハ提供体制加算 | 12~28円/回 |
入浴介助加算Ⅰ | 40円/回 |
リハビリテーションマネジメント加算 | 863円/月 |
短期集中個別リハビリテーション実施加算 | 200円/日 |
通所リハ認知症短期集中リハ加算Ⅰ | 240円/回 |
※介護保険負担割合1割の場合 1単位=10円
送迎の費用は基本サービス費に含まれており、事業所の送迎対応が必要なかった場合には片道47円利用料から減算されます。
また、介護保険の他にも以下の費用が必要になる場合があります。
介護保険以外で必要なもの | 費用 |
食事代 | 500円前後 |
オヤツ代 | 100円前後 |
紙パンツ・尿取りパット・オムツ | 50~200円程度 |
通所リハ(デイケア)の一日の過ごし方
リハビリを中心にプログラムが組まれている
通所リハでは、時間ごとにさまざまなプログラムが準備されています。1日のスケジュール例は以下の通りです。
時間 | 1日型のプログラム | 半日型のプログラム |
8:30 | 送迎 バイタルチェック(血圧・体温測定) | 送迎(迎え) バイタルチェック(血圧・体温測定) |
9:30 | 個別リハビリ | 個別リハビリ 集団リハビリ 自主トレ |
10:00 | 集団リハビリ 体操 | |
12:00 | 口腔体操 昼食 服薬介助 口腔ケア | 送迎(送り) 送迎(迎え) |
13:00 | 休憩 | バイタルチェック(血圧・体温測定) |
14:00 | レクリエーション 体操 | 個別リハビリ 集団リハビリ 自主トレ |
15:00 | おやつ | |
16:30 | 送迎 | 送迎(迎え) |
通所リハ(デイケア)を利用することのメリットとデメリット
定期的に利用して運動する習慣がつけられる
ここでは、通所リハビリを利用するメリットとデメリットを見ていきましょう。
【メリット】
通所リハビリを利用すると、定期的にリハビリを行うことできます。体力・心身機能の向上・維持が期待できるでしょう。事業所によっては、摂食に関するリハビリの専門家が配置されており、食事に対してのリハビリも可能です。また医師が常駐しているため、万が一体調の変化や怪我をしても安心できます。
閉じこもりになりやすい高齢者でも、定期的に外出する機会が増え、生活リズムの改善も期待できます。通所リハ利用中は家族の介護負担軽減にもなります。リハビリに意欲的な方にはピッタリの介護サービスと言えるでしょう。
【デメリット】
通所リハビリでは、利用までに費用がかかる場合があります。リハビリは医療サービスで、医師からの指示のもと行われます。また、身体状況などの把握は欠かせません。そのため、かかりつけ医からの診療情報や健康診断書の提示を求める事業所もあります。医師が作成する書類作成には費用がかかる場合があるため注意しましょう。
通所リハビリの事業所によって、職員の人数や事業所の方針によりリハビリの実施方法は様々です。個別リハビリ(マンツーマンでの指導)を行っていなかったり、リハビリ器機の導入状況も違います。利用する施設のリハビリの実施方法は必ず確認しておきしょう。
また、集団活動(リハビリや入浴・食事など)があるため人と関わることが苦手な人には、ストレスを感じる場合があかもしれません。
通所リハは通所介護(デイサービス)に比べると施設数が少ないため、利用を検討している場合は早めにケアマネジャーに相談しましょう。
通所リハ(デイケア)の利用方法
通所介護(デイサービス)よりも利用までに時間がかかる場合が多い
通所リハを利用するためには、まずは担当のケアマネジャーに利用希望の相談をします。相談を受けたケアマネジャーが、利用可能な通所リハを探してくれます。候補となる通所リハが見つかったら、可能な限り施設見学(体験)を行い、利用のイメージを持つと良いでしょう。
利用の方向性が決まれば、申込書や必要な書類を揃えて通所リハに提出します。その際、主治医の指示書・診療情報提供書や健康診断書が必要になる場合が多いため、準備しておきましょう。健康診断書や診療情報提供書の作成には費用が発生することがあります。この費用は、全額自己負担となるため、通所リハの事業所に必要かどうかを事前に確認しておくと良いでしょう。申込書・必要書類を提出後、通所リハの医師や職員で判定を行い問題がなければ利用に繋がります。
担当ケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、利用が決まれば通所リハとの契約を行います。利用開始日・送迎時間の確認・持参するものなどを確認しておくと良いでしょう。
通所リハ(デイケア)の職員体制
医師・リハビリ職員の配置が義務付けられている
通所リハの特徴として、医師やリハビリ職員の配置が義務付けられ、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は100名の利用者に対して1名以上の配置が義務付けられています。
通所リハに配置されている職種は以下の通りです。
職種 | 必要数 | 役割 |
医師 | 専任の常勤 | 体調の把握 転倒やけがの際の処置や受診の判断 |
理学療法士 (PT) | いずれか1名以上 | 基本的な動作や機能の回復、予防のためのリハビリを行う |
作業療法士 (OT) | 基本的な動作能力に応じた応用動作のリハビリ 社会的適応能力に対するリハビリ、精神心理面の領域に対するアプローチ | |
言語聴覚士 (ST) | コミュニケーションや食べること(嚥下・咀嚼)に関するリハビリ | |
介護職員 | 以下に詳細を記載 | 自宅から事業所間の送迎やリハビリ補助 事業所での排泄や食事などの介護支援 |
看護師 | 体調管理と医師との連携 ※配置義務はない(病院や診療所、介護老人保健施設には配置されている) | |
支援相談員 | 配置義務なし | 利用の相談や契約 ※介護職員が行う場合あり |
通所リハでは、利用者の利用人数に合わせて職員の配置人数が異なります。対象となる職種は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護職員です。
必要な職員数は、利用者数÷10で計算します。例えば、利用人数が30人の場合は、「30÷10=3」となり3人の配置と考えます。24人の場合は、2.4人の配置となるため、少数点以下を繰り上げて3人が配置される計算です。
利用者の数が10人に満たない場合は、サービス提供時間を通じて1人以上の配置が必要です。前述した5つの職種の内、いずれかが配置されていれば満たされます。
通所介護(デイサービス)との違いや選び方
通所リハはリハビリがメインのサービス
通所介護は、日常生活の介護を目的とし生活を支えるサービスですが、通所リハはリハビリ専門職によるリハビリを提供するサービスです。利用時間の違いや提供されるサービス・利用料金など異なる点が多くあります。目的や希望に合わせて利用を検討すると良いでしょう。
それぞれの特徴は以下の通りです。
デイケア | デイサービス |
医療的なフォローができる リハビリ専門職によるリハビリで運動機能向上が期待できる 栄養改善や口腔機能面のリハビリができる 専門的なリハビリ器具を用いたリハビリができる 医師が常駐しているため体調変化時でも対応が早い | 機能訓練を取り入れている施設もある レクリエーションがある 入浴・食事・排せつなどの日常生活支援 生活相談員がいるため、介護や生活の悩みを相談することができる 他者との交流がしやすい デイケアよりも安価で利用することができる 多様な特徴を持ったデイサービス事業所がある |
料金の違いについても見ていきましょう。
利用時間 | 通所リハ | 通所介護 |
1~2時間未満 | 366円 | - |
2~3時間未満 | 380円 | - |
3~4時間未満 | 483円 | 368円 |
4~5時間未満 | 549円 | 386円 |
5~6時間未満 | 618円 | 567円 |
6~7時間未満 | 710円 | 581円 |
7~8時間未満 | 757円 | 655円 |
8~9時間未満 | - | 666円 |
※介護保険負担割合1割の場合 1単位=10円
要介護1の料金を比較
デイケアでは、専門的なリハビリを行うことができるため、費用が高いです。次にサービス利用者の主な特徴をみていきましょう。
通所リハ | 通所介護 |
退院後の生活に不安がある人 脳血管疾患の後遺症・呼吸器疾患などがあり医療面でも管理が必要な人 骨折や変形性関節症などがあり通院している人 積極的にリハビリを行いたい人 | 日常生活支援(排せつ・入浴・食事)が必要な人 他者との交流を希望・必要な人 レクリエーションなど活動や娯楽を希望する人 |
希望や身体状況により、機能訓練を行うデイサービスか、リハビリ専門職の配置が必要か、事業所の選択が変わります。状況によってはどちらも利用可能のため、ケアマネジャーと相談すると良いでしょう。
【リハビリと機能訓練の違い】
通所リハでは、専門のリハビリ職員(PT・OT・ST)が医師と連携して一人一人の心身機能に応じた計画書を作成しリハビリを提供します。デイサービスでは、リハビリの専門資格を有しない看護師などが機能訓練を提供しています。リハビリをしっかり行いたい・機能回復や維持を希望している人はデイケアの方が望ましいといえるでしょう。
まとめ
まとめ
今回は、通所リハについて紹介しました。リハビリは本人が意欲的に取り組むことで効果が期待できます。そのため、利用を検討した際には、しっかりと本人の希望などを聞き取り本人に合った施設を選ぶことが重要です。
介護サービスについてわからないことがあれば、担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談して解決していきましょう。
この記事が通所リハの理解に繋がれば幸いです。
施設を探す
介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。