在宅介護の準備で必要なものは何?押さえておきたい大事なポイントを具体的に解説

「在宅介護にはどんな準備が必要?」「在宅介護を継続するためのポイントが知りたい」このような疑問はありませんか?

介護者や要介護者の安全や健康を守りながら、在宅介護を始めるには準備が欠かせません。在宅介護では、介護者に様々な負担が掛かりやすく、体調や生活のリズムを崩してしまうケースがあります。介護者が体調を崩してしまうと、在宅介護は破綻し、要介護者は自宅で生活ができなくなることも考えられます。

今回は、在宅介護において負担となる要素についてご紹介します。また、それらの負担解消方法についても解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。


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この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

在宅介護で負担になる要素

在宅介護では介護者に様々な負担がかかる

在宅介護は介護者にとってさまざまな負担がかかるため注意が必要です。主に、身体的負担や精神的負担があります。その他にも、時間的負担、金銭的負担などがあり、心身共に疲弊する方も少なくありません。

身体的負担

在宅介護は、身体的なケア(身体にふれる直接的な介護)が必要で、介護者にとって負担が生じる可能性があります。例えば、ベッドから車椅子への移動・入浴の介助・排泄の介助などがあり、これらは基本的な介助として欠かすことはできません。また、専門的な知識や経験がない方が介助を行うと、腰を痛めたりや怪我をする事も考えられるため注意が必要です。

精神的負担

在宅介護は終わりが見えにくく、いつまで続くかわからない不安が強くなることがあります。要介護者から夜間に呼び出されることや心無い言葉を浴びるかもしれません。また、認知症の場合、自分の存在を忘れられることや泥棒扱いされるケースもあります。

介護者の心配や不安に加えストレスが大きくなると、うつ病などの精神疾患を患うこともあるため注意が必要です。

時間的負担

在宅介護では、介護者の時間的なゆとりがなくなる場合があります。日常生活の介助や見守り・掃除や洗濯などの家事・医療機関への通院など、様々な支援が必要なため、介護者とって自由な時間が減り大きな負担となる場合もあるでしょう。

認知症の場合、外に出て帰ってこられない・事故に遭うなどのリスクが考えられ、24時間見守りが必要な場合もあります。このような場合、家族にとって休息やリフレッシュする時間がとれなくなり、精神的負担に繋がってしまう場合もあるでしょう。

金銭的負担

在宅介護は、必要な介護サービスや日常生活にかかる費用が必要で、金銭的な負担となる場合があります。また、オムツ代・交通費・お薬代などの費用も必要です。本人の年金内で収まらない場合は、家族が負担することもあり、生活を圧迫する可能性もあります。

また、介護者が仕事を休んで介護に専念する場合、収入が減少するため、さらに金銭的負担となるでしょう。金銭的負担は、介護サービスの選択肢の幅を狭めてしまい、身体的や時間的負担を増やす場合もあるため注意が必要です。

これらの負担を軽減するためには、在宅介護に必要な適切なサポートやサービスを準備する必要があります。介護者自身の健康に気を付け、リフレッシュの時間や社会的なつながりを持つことが在宅介護を継続するポイントになります。地域包括ケアセンターや担当のケアマネジャー、介護サービス事業所など様々な専門職と相談し、介護ができる環境を整えていきましょう。


在宅介護の準備で揃えておくこと

在宅介護では介護しやすい環境作りが大切

在宅介護の負担を減らすためには、介護しやすい環境作りが大切です。築年数の古い自宅の場合、段差が多い・トイレが和式・お風呂がないなど、介護に適さない状況があります。まずは以下の点について対策しておくと良いでしょう。

住環境を整える

在宅介護を行うためには、住環境を適切に整える必要があります。例えば、バリアフリーや手すりの設置、車椅子や歩行器の使用に適したスペースなどが必要です。また、必要に応じてベッドやトイレの改修なども検討すると良いでしょう。住環境を整えることで、介護者や要介護者の安全性と利便性が向上し、介護の効率も高まります。

資金を準備する

在宅介護には、介護保険で支給されるサービスの他にも、医療費や食費、オムツ代など様々なものに費用が必要です。そのため、介護に必要な費用を事前に計画し、資金を準備しておくと、在宅介護が始まったときの不安がひとつ解消されるでしょう。また、介護保険や補助制度を適切に利用することで、経済的負担の軽減につながります。


在宅介護の準備で確認しておくこと

親の情報は事前に確認しておくことが大切

元々一緒に暮らしている場合は、知っていることも多いかもしれませんが、離れて暮らしている場合、親の近況を知らないという方は少なくありません。介護サービスやその他の支援を受ける場合でも、サービス事業所に情報提供を行う必要が出てきます。そのため、以下の点について事前に確認し、ノートなどにまとめておくと便利です。

身体の状況

まず、基本的な部分として、親のADL(日常生活動作)、持病や骨折歴などを確認しましょう。ADLとは、食事の摂取・入浴・着替え・トイレの使用・移動方法など、日常生活の基本的な動作や機能のことです。親がどの程度の自立度で、どのような介助が必要かを把握する、介護計画や支援内容を適切に相談することができます。

使用している薬

親が内服している薬や処方箋を確認することも重要です。薬の種類・用量・内服のタイミングなどを把握し、適切な管理やサポートを行う必要が出てくるでしょう。また、薬の相互作用や副作用についても理解し、必要な場合には医師や薬剤師に相談することが大切です。また、複数の薬がある場合は、お薬手帳などでまとめて管理すると良いでしょう。

精神状態

親の精神的な状態や認知機能についても確認する必要があります。認知症やうつ病などの精神疾患がある場合、それに対する適切なケアやサポートが必要です。親の精神状態を理解することで、適切なコミュニケーションや心理的な支援を行うことができます。

親の資金(収入)

介護にかかる費用や生活費を算出するために、親の資金状況や収入についても確認します。また、親の年金や貯蓄、保険給付などを把握しておくと、必要な経済的支援や福祉制度の利用などを検討しやすくなります。資産が多くある場合は、事前に相続などの話も進めておくと良いでしょう。

親の希望する介護生活

親自身が望む介護生活の希望や意向を確認することも大切です。親が自分の生活やケアに対してどのような希望や要望を持っているのかを確認し、それに沿ったケアやサービスを検討すると良いでしょう。尊厳や自己決定権を尊重し、希望に沿った快適な介護生活を提供することが大切です。

家族間の協力体制

在宅介護には、家族間の協力体制を整えることも重要です。介護を担う家族間のコミュニケーションや役割分担を確認し連携を図ることで、在宅介護の負担の軽減や分散が期待できます。偏った負担がある場合には、分散できるかどうかを検討すると良いでしょう。

これらの情報をまとめておくことで、介護サービスの導入や通院時に情報提供ができるようになり、サービスの介入や導入がスムーズになります。


在宅介護の準備期間に家族で決めておくこと

トラブルが起きる前に家族間で事前に話し合いをしておく

在宅介護を始めるには、本人にかかる資金や物品以外にも、介護の方向性や役割を決めておくと良いでしょう。それぞれ確認していきます。

介護の方針について

在宅介護が始まる前に、介護の方針や今後の方向性は決めておいた方が良いでしょう。家族が多い場合は、家族全員で介護の方針や今後の方向性について話し合い、合意することが大切です。介護の目的や目標、必要なサービスなどを家族間で共有しておくことで、トラブルが起こりにくくなります。

役割分担について

在宅介護では、家族間での役割分担が重要となります。介護に必要なサポートや責任を分担し、家族それぞれの得意分野や時間の都合などから、役割を決めましょう。例えば、介護業務・日常生活のサポート・医療機関の通院・薬の管理・家事や買い物・お金の管理など、それぞれの役割と責任を決めておくことで、家族間の協力体制を築くことができます。

高齢になると、認知症を発症するリスクが高くなります。認知症が進行すると、判断力・理解力が低下するため、本人が判断できる内に確認しておくと良いでしょう。


介護の準備期間に知っておきたい3つこと

在宅介護の準備期間は短い場合がある

在宅介護の準備には自宅の環境整備や、介護サービスの知識を得ておくなど、様々なものがあります。しかし、介護が必要な状況は突然訪れることがほとんどです。ここからは、準備期間が短い場合でも知っておきたい在宅介護のポイントを3つ紹介します。

介護サービスが必要になるタイミング

在宅介護を続けるにあたり、介護サービスを導入するタイミングが訪れます。家族の仕事・介護技術・資金などが異なるため、家庭によってタイミングは様々ですが、介護する家族が負担を感じるようになった時が、介護サービスを導入するタイミングと考えておくと良いでしょう。

「まだ大丈夫」と無理をすると、今後の介護生活に支障をきたす場合があります。判断が難しい場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどの専門職に相談すると良いでしょう。

介護休暇

介護休暇とは、労働者が要介護状態にある家族の介護や世話をするために取得する休暇取得制度のことです。労働基準法の年次有給休暇とは別に、会社の規定により有給または無給で取得できます。

※要介護状態とは、労働基準法における定義に従い、負傷・疾病・身体上または精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことです。

介護保険制度の介護サービスや育児・介護休業法の両立支援制度と組み合わせることで、介護と仕事の両立ができます。具体的な制度やサポートは地域や会社によって異なるため、所属する会社や地域の関連機関に相談し条件などを確認すると良いでしょう。

参考:厚生労働省「介護休暇とは

各サービスの違い 

介護の準備を進める上で、様々な介護サービスや制度の違いなどを理解しておくと良いでしょう。介護サービスの種類や受けられるサービス・介護施設の種類(特別養護老人ホーム・有料老人ホームなど)・サービス利用時の費用などについて知っておくことで、適切なサービスの選択ができるでしょう。


在宅介護で必要な費用を抑える方法

介護保険サービスの利用を見直し補助金などを活用する

在宅介護をすると、様々な費用が発生します。経済状況にもよりますが、生活を圧迫する方も少なくありません。ここでは、在宅介護にかかる費用の抑え方を見ていきましょう。

適正なケアプランの作成

ケアプランは、介護の必要性・目標・サービスの内容・費用の見積もりなどを含む計画書になります。本人に必要なサービスを適切に組み合わせることで、費用を抑えることができるでしょう。家族で対応できる部分は家族で行い、地域の福祉事業やボランティアなどを活用することで、費用負担を軽減できます。

サービス事業所を比較する

在宅介護に利用するサービス事業所は、費用や提供するサービス内容に違いがあります。費用を抑えるためには、複数のサービス事業所を比較し、適切な選択を行うことが重要です。価格やサービス内容だけでなく、信頼性や評判、スタッフの質なども確認すると良いでしょう。自身で比較できない場合は、ケアマネジャーに相談してみるのもひとつの方法です。

利用できる補助金などがないか確認する

在宅介護に関連する補助金や助成金、福祉制度などを活用することで、費用を抑えることができる場合があります。地方自治体や国の制度によって提供される補助金や割引制度、介護保険の給付などを確認すると良いでしょう。また、地域の福祉施設や支援団体に相談することで、利用できる補助金や支援策についての情報を得ることができます。


在宅介護を続けるためのポイント

無理なく続ける環境を整える

在宅介護を続ける場合は、家族に負担が大きくならないように介護保険の利用を検討すると良いでしょう。介護保険では訪問介護や訪問リハビリなどのサービスを自宅で受けることができます。

サービス利用中は、職員が付き添っているため、家族は休息の時間をとることができます。また、デイサービスなどで長時間通所している場合は、家族自身の仕事や趣味活動などにあてることも可能です。ただし、介護保険を利用するためには、事前に事業所に対して、利用申請や面談が必要になるため、早めに手続きを行う必要があります。

無理をせずに在宅介護を続けるためには、以下の点を押さえておくと良いでしょう。

保険外サービスも利用する

在宅介護の継続には、介護保険外のサービスを活用することも重要です。民間の介護サービスや地域の支援団体などが提供する保険外のサービスを利用することで、介護の負担を軽減できます。しかし、利用料は全額自己負担です。

介助者のできることを把握する

介助者自身ができる範囲や限界を把握しておくことが重要です。自身の体力や技術、時間の制約を把握し、自分に合った介助やケアの方法を考えましょう。

相談先や協力者を確保する

相談先や協力者を確保することが大切です。地域の福祉事務所や介護支援機関、地域のボランティア団体などに相談し、必要な情報やサポートを得ることができます。また、家族や友人、近隣住民などの協力者と連携を築くことも重要です。

介護に関して相談できる場所を把握する

介護に関して相談できる場所を把握することも、在宅介護を続けるために大切なポイントです。例えば、地域の相談窓口や電話相談、インターネット上の情報サイトやコミュニティなどが挙げられます。介護に関する悩みや問題を共有し、必要なアドバイスやサポートを受けることで、孤独感や閉じこもりの解消に繋がるでしょう。

介助者の時間も大切にする

介護者も休息やリフレッシュの時間を確保し、自身の健康や心のケアに努め、無理をしない環境作りに努めましょう。無理な負担やストレスを避け、バランスの取れた生活を送ることで、介護の継続が可能になります。

安全面に配慮する

要介護者の身体状態や環境に合わせて、転倒や事故の予防を検討していきましょう。例えば、住宅の改修やバリアフリー化、手すりや滑り止めの設置などが挙げられます。安全対策を行うことで、介護者と要介護者の安全を確保できるため、安心して在宅介護を続けることができます。

介護にかかる費用を把握する

介護にかかる費用を把握し、介護保険や補助金制度をはじめとした経済的な負担を軽減しましょう。また、予算の管理や費用の見直しを行うことで、経済的な負担を軽減することができます。

これらのポイントを意識し、在宅介護を行うことが重要です。適切なサポートや情報の活用、自己のケアに努めることで、介護者と要介護者の双方が健康で満足のいく生活を送ることができます。

参考: 紙おむつなどの簡単購入オンラインショップ | ネピア 介護のしたく。

在宅介護に限界を感じたときは

疲れが出たときは無理せず他者を頼る

在宅介護では、介護者の体調管理が重要なポイントになります。介護者が体調を崩してしまうと要介護者の日常生活のサポートが不足し生活が不安定になる可能性があります。そのため、限界を迎える前に、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談をしたり、これから紹介するサービスの利用を検討すると良いでしょう。

宿泊できるサービスも利用する

介護者が一時的に休息を取るためには、宿泊サービスを利用することがおすすめです。宿泊サービスは1泊から利用可能で、介護者の負担を軽減することができます。介護者が体力と精神的にもリフレッシュできることが、在宅介護の継続には欠かせません。

介護の専門職に相談する

在宅介護に限界を感じた場合は、介護の専門職に相談すると良いでしょう。医師や看護師、ケアマネジャーなど、介護に関する専門家の助言やアドバイスを受けることで、適切なサポートや解決策を見つけることができます。

地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターは、地域の高齢者や障がい者を支援する機関です。社会福祉士やケアマネジャーなど福祉の専門職が在籍しているため、地域独自のサービスやネットワークなど、介護負担の軽減方法や適切なアドバイスを受けることができます。

介護サービスの利用を増やす

在宅介護に限界を感じた場合は、介護サービスの利用を増やすことも検討すると良いでしょう。例えば、訪問介護の利用時間を増やしたり、訪問看護や訪問リハビリテーションなど、医療的なサービスを活用することで、介護者の負担を軽減することができます。

介護施設の入居を検討する

在宅介護に限界を感じた場合は、介護施設への入居を検討するのも一つの選択肢です。介護施設に入居すると、専門のスタッフによるケアやサポートを受けることができます。介護施設に入居後、再度自宅に戻る方もいるため、選択肢の一つとして検討しても良いでしょう。

レスパイトケアを検討する

レスパイトケアは、介護者が一時的に休息を取るためのサービスです。一定期間、利用者を施設や病院などに預け、介護者がリフレッシュする時間を確保します。レスパイトケアを利用することで、介護者の負担を軽減できるでしょう。

これらの方法を利用して、介護者の負担を軽減し、在宅介護の継続やサービスの利用を検討していきましょう。


まとめ

まとめ

今回は、在宅介護の準備について紹介しました。在宅介護では、介護者に様々な負担がかかるため、家族が体調を崩すことも珍しくありません。そのため、適切な準備を行い、可能な限り負担を軽減することが重要です。

家族が複数いる場合には、それぞれの希望や方向性、介護の役割などを話し合っておくと良いでしょう。親の介護は突然始まることがほとんどです。親の持病や薬の情報、身体状況については事前に確認してまとめておくと、医療機関や介護事業所への情報提供がスムーズになります。

在宅介護は、介護者の体調管理が重要なポイントです。介護者が体調を崩さないように、介護保険やその他のサービス、補助金制度などを活用し、負担軽減を図ると良いでしょう。

今回の記事を参考に、在宅介護の準備を行っていただけると幸いです。​

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