通所介護(デイサービス)の1日ってどんな感じ?費用や通所リハビリとの違いについても紹介
「通所介護ってどんなサービスが受けられるの?」「通所リハビリとはなにが違う?」このような疑問はありませんか?
通所介護は、通称デイサービスと呼ばれる在宅介護サービスのひとつです。日中、事業所に通って、日常生活の支援を提供し、様々なレクリエーション活動を行っています。通所介護では、事業所の規模や利用する時間によって必要な費用も変わるため、予算にあった事業所選びが大切です。
今回は、通所介護(デイサービス)のサービス内容や必要な費用、デイケアとの違いについて紹介します。利用を検討している方や事業所を決めかねている方は、ぜひ参考にしてみてください。
とぐち まさき
渡口 将生
通所介護(デイサービス)とは
日中の生活支援やアクティビティを利用できるサービス
デイサービス(通所介護)とは、要介護状態にある高齢者が自宅にいながら日常生活を自立して送ることができるよう、日帰りで通所介護センターなどに通い、入浴・排せつ・食事などの介護や機能訓練を受けるサービスです。自宅から施設まで送迎があるため、利用者の移動に対する負担を軽減できます。
通所介護では様々なプログラムが用意され、書道・陶芸・生け花・リズム体操などのアクティビティを通じて利用者が楽しく過ごせるようにサービスを提供しています。デイサービスに通うことで、外出の機会や人との交流ができるため、社会的孤立感の解消につながるでしょう。また、在宅介護をしている家族の方も、一時的に介護から離れることができます。
リハビリテーションを必要とする場合は、通所リハビリテーション(デイケア)の利用がおすすめですが、デイサービスでも機能訓練指導員による機能訓練を提供する施設が増えているため、身体機能の維持や向上を期待できるでしょう。
2016年4月からは、定員が18人以下の通所介護事業所は「地域密着型通所介護」というサービスとして提供されるようになりました。地域密着型サービスでは、定期的に運営推進会議が開催され、事業所の取り組みを確認でき、家族や地域の声を事業所に伝えやすい環境もあります。
通所介護(デイサービス)で提供されるサービス
通所介護では日常生活の支援からイベントまで様々な取り組みがおこなわれる
通所介護では、日常生活の支援から機能訓練、レクリエーションなど、多様なサービスが提供されています。まず、通所介護に到着すると、健康チェックが行われます。健康チェックでは、血圧・脈拍・体温などの基本的なチェックの他に、健康に関する相談なども受けることができるでしょう。また、デイサービスでは、栄養バランスのとれた食事を提供する施設もあります。
通所介護では、入浴のサポートも行われており、自分で入浴できない高齢者に対しては入浴介助、自分で入浴ができる方には、見守りの支援を行います。
そのほか、レクリエーション活動や、クラブ活動が盛んに行われるのもデイサービスの特徴のひとつです。ボールを使った運動や塗り絵や絵手紙などの手作業、脳トレなど、様々なレクリエーションが実施されています。
また、機能訓練ができる事業所では、日常生活で必要とする動作や筋力、バランス感覚などの維持・向上も期待できるでしょう。機能訓練には、運動療法・作業療法・言語療法・音楽療法などがありますが、リハビリとは異なるため、理学療法士や作業療法士などのリハビリテーションの国家資格を有していない場合もあります。
通所介護(デイサービス)の対象者
要介護認定を受けた方が利用できる
通所介護は、65歳以上の要支援1.2または、要介護1〜5の認定を受けた方が対象のサービスです。また、40〜64歳の方でも、介護保険法の定める16種類の特定疾病に該当し、要介護の認定を受けた方も対象となります。
利用頻度は、要介護度の認定区分によって定められている、区分支給限度基準額の範囲内で利用します。要介護度ごとの区分支給限度基準額は以下の通りです。
要介護度 | 単位 | 上限額 |
要支援1 | 5,032単位 | 50,320円 |
要支援2 | 10,531単位 | 105,310円 |
要介護1 | 16,765単位 | 167,650円 |
要介護2 | 19,050単位 | 197,050円 |
要介護3 | 27,048単位 | 270,480円 |
要介護4 | 30,938単位 | 309,380円 |
要介護5 | 36,217単位 | 362,170円 |
上記の範囲内で、事業所の受け入れが可能であれば毎日利用することもできます。ただし、区分支給限度基準額の上限を超えた場合は、全額自己負担となるため注意が必要です。
通所介護(デイサービス)の費用
通所介護事業所の規模や利用する時間によって費用が異なる
デイサービスは規模や利用時間によって費用が異なります。規模は主に以下のように分けられています。
規模 | ひと月の延べ利用者数 | 管轄 |
小規模 (地域密着型) | 300人以下 | 市区町村 |
通常規模 | 301~750人 | 都道府県 |
大規模(1) | 751~900人 | |
大規模(2) | 901人以上 |
利用時間・要介護度別の1回利用時にかかる費用は以下の通りです。
【通常規模】
利用時間 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
3~4時間未満 | 368円 | 421円 | 477円 | 530円 | 585円 |
4~5時間未満 | 386円 | 442円 | 500円 | 557円 | 614円 |
5~6時間未満 | 567円 | 670円 | 773円 | 876円 | 979円 |
6~7時間未満 | 581円 | 686円 | 792円 | 897円 | 1,003円 |
7~8時間未満 | 655円 | 773円 | 896円 | 1,018円 | 1,142円 |
8~9時間未満 | 666円 | 787円 | 911円 | 1,036円 | 1,162円 |
※介護保険負担割合1割の場合
1単位=10円
【地域密着型】
利用時間 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
3~4時間未満 | 415円 | 476円 | 538円 | 598円 | 661円 |
4~5時間未満 | 435円 | 499円 | 564円 | 627円 | 693円 |
5~6時間未満 | 655円 | 773円 | 893円 | 1,010円 | 1,130円 |
6~7時間未満 | 676円 | 798円 | 922円 | 1,045円 | 1,168円 |
7~8時間未満 | 750円 | 887円 | 1,028円 | 1,168円 | 1,308円 |
8~9時間未満 | 780円 | 922円 | 1,068円 | 1,216円 | 1,360円 |
※介護保険負担割合1割の場合
1単位=10円
上記の基本費用のほかにも、事業所ごとに算定している加算が必要となる場合があります。主な加算は以下の通りです。
加算名 | 費用 |
個別機能訓練加算Ⅰイ | 56円/回 |
個別機能訓練加算Ⅰロ | 85円/回 |
入浴介助加算Ⅰ | 40円/回 |
認知症加算 | 60円/回 |
栄養改善加算 | 200円/回 |
口腔機能向上加算 | 150円/回 |
※介護保険負担割合1割の場合
1単位=10円
要支援の認定を受けた方は以下の費用となります。
要支援1 | 要支援2 | |
基本費用(月定額) | 1,672円 | 3,428円 |
利用回数 | 週1回程度 | 週2回程度 |
※介護保険負担割合1割の場合
1単位=10円
要支援の方は、予防通所介護サービスを利用します。予防通所介護サービスは、予防通所介護の指定を受けた事業所のみが提供できるサービスのため、すべての通所介護で利用できるわけではありません。
また、費用は月定額で、利用回数は事業所ごとに定められた回数(主に週1回や週2回)となります。月1回しか利用していない場合でも全額費用が必要となるため、注意が必要です。
介護保険の他にも以下の費用が必要になる場合があります。
介護保険以外で必要なもの | 費用 |
食事代 | 500円前後 |
オヤツ代 | 100円前後 |
紙パンツ・尿取りパット・オムツ | 50~200円程度 |
費用については、利用する通所介護事業所に確認しましょう。
通所介護(デイサービス)の一日の過ごし方
入浴やレクリエーションなどのプログラムがある
通所介護では、時間ごとにさまざまなプログラムが準備されています。1日のスケジュール例は以下の通りです。
時間 | プログラム |
8:30 | 送迎 バイタルチェック(血圧・体温測定) |
9:30 | 入浴 |
10:00 | 個別レクリエーション 体操 機能訓練 |
12:00 | 口腔体操 昼食 服薬介助 口腔ケア |
13:00 | 休憩 |
14:00 | レクリエーション 体操 |
15:00 | おやつ |
16:30 | 送迎 |
上記は、あくまでも一例です。事業所によって、半日型や入浴特化型など提供サービスに違いがあるため、利用する事業所に確認しましょう。
通所介護(デイサービス)を利用するメリットとデメリット
家族の負担を軽減し生活リズムを整えられる
ここでは、通所介護のメリットとデメリットを見ていきましょう。
【メリット】
・健康の維持ができる
通所介護を利用することで、心身の健康維持や向上が図れます。生活機能訓練や口腔機能訓練に加え、健康チェックも行われるため、健康管理に役立つでしょう。また、人と交流することで閉じこもりを防ぎ、孤立感を解消して精神的な安定をもたらすことができます。
・家族の負担軽減ができる
通所介護の利用は、家族の負担軽減にもつながります。通所介護を利用中は介護から離れて、身体的・精神的負担を減らすことができます。さらに、自分の時間が確保できることから心にも余裕が生まれ、「介護ノイローゼ」などに陥るリスクを軽減することもできます。
・楽しみができる
機能訓練やレクリエーションなどの活動が行われ、趣味や娯楽を楽しむこともできます。そこで「楽しみ」や「生きがい」が見つかると、生活に活力が生まれるでしょう。
・安全に入浴できる
高齢者にとって風呂場は滑りやすく危険な場所です。通所介護では、介護スタッフによる入浴サービスが提供されているため、安心して入浴することができます。
続いてデメリットを見ていきましょう。
【デメリット】
・ストレスに繋がる場合がある
事業所の雰囲気が合わない、他の利用者との相性が悪いなどの理由で、本人がストレスを感じる場合があります。しかし、体験利用・利用日の変更・職員との話し合いなどによって、解消されることもあります。
・介護費用がかかる
通所介護を利用するには費用がかかります。費用は要介護度数や利用する時間によって異なり、通う回数に応じて発生します。費用が多くかかるケースもあるため、利用前に費用の詳細を確認し、予算に合ったプランで利用すると良いでしょう。
通所介護(デイサービス)の利用方法
利用までには時間を要する場合があるため早めに申し込む
通所介護を利用するためには、まずは要介護認定を受けている必要があります。要介護認定は住所地の役所や地域包括支援センターなどで申請ができます。
要介護認定を受けたら、担当のケアマネジャーに通所介護の利用希望を伝えましょう。希望する事業所がない場合でも、担当のケアマネジャーが通所介護事業所を紹介してくれます。地域や目的に応じて様々な種類があるため、希望に沿った施設を選ぶことが重要です。事業所の情報は、市区町村や介護保険制度の窓口、インターネットなどで入手できます。
事業所を決めたら、利用申込を行いましょう。申込方法は、直接施設を訪問して申し込む場合や電話、オンラインでの申し込みなど様々あります。わからない場合は、担当のケアマネジャーに依頼すると良いでしょう。
利用時間や曜日は、事業所によって異なるため、事前に確認が必要です。ケアマネジャーがサービス担当者会議を開催し、事業所の空き状況や希望する時間帯などの確認・調整を行います。日時が決定したら、ケアプランが作成され利用が開始となります。
通所介護(デイサービス)の職員体制
事業所の規模によって職員の配置人数が異なる
通所介護の人員基準は以下の通りです。事業所の規模や自治体によって異なります。人員基準とは、介護保険上で定められた、最低人員のことです。
職種 | 配置基準 | 業務内容 |
管理者 | 専従・常勤1名 (兼務可) | 事業所の管理を行います。以下の職種と兼務する場合があります。 |
生活相談員 | 専従1名 | 家族からの利用相談・契約やケアマネジャーや他の事業所との連絡調整を行います。 主に社会福祉士・精神保険福祉士・社会福祉主事任用資格などを所持している者が就くこととなっていますが、市区町村によって所持資格などの緩和があります。 |
機能訓練指導員 | 専従1名 (利用定員10名以下の地域密着型の事業所は介護職員との代替配置可) | 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師などの国家資格を持った者が機能訓練を行います。 |
看護職員 | 専従1名 | バイタルチェック(体温・血圧・脈拍)・服薬管理・健康観察・医療的ケア(インシュリン・バルーンカテーテル管理)・応急処置や急変時の対応を行います。 |
介護職員 | 専従1名 (15名を超える場合は1人増えるごとに0.2名以上の介護職員を配置) | 日常生活のケア(入浴・排せつ・食事)やアクティビティの企画、レクリエーションの実施を行います。 |
この他にも、調理担当や送迎担当などの職員を配置している事業所もあります。
通所リハビリ(デイケア)との違いや選び方
通所介護と通所リハビリを比較
同じ通所サービスである通所介護と通所リハビリの違いを確認しておきましょう。
通所介護 (デイサービス) | 通所リハビリ (デイケア) | |
利用目的 | 社会交流 心身の健康維持 生活リズムの安定 家族負担の軽減 | 通所介護の目的に加えリハビリテーション |
職員の配置 | 管理者1名(常勤) 生活相談員1名以上 看護職員1名以上 介護職員1名以上 機能訓練指導員1名以上 | 医師1人(常勤) 理学療法士・作業療法士・言語療法士のいずれか1名以上 介護または看護職員1名以上 |
機能訓練 | 機能訓練指導員による機能訓練 | リハビリ職員によるリハビリテーション |
利用料金 | 通所介護に比べ通所リハビリの方がが高い |
大きな違いは、利用目的です。通所リハビリには、利用目的にリハビリテーションがあります。
しかし、通所サービスは限られた時間の中、入浴や食事などを行なうため、プラグラムが多い分忙しく感じたり、他者交流ができなかったりと不満が発生する場合もあるでしょう。希望に合わせて利用するサービスを適切に選ぶことが大切です。
まとめ
今回は通所介護(デイサービス)について紹介しました。通所介護は日中、事業所に通って入浴・排せつ・食事の支援が受けられるほか、レクリエーションや趣味活動を通して他者交流を目的に利用するサービスです。
閉じこもり予防や同居する家族が仕事があり日中に支援が受けられない方が利用します。送迎は事業所の車で送迎してもらえるため、移動の負担も少なく安心して利用できるでしょう。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。