訪問入浴はどんなサービス?入浴方法や費用について紹介

「自宅の浴槽では入浴が大変」「施設にいかないと入浴できない」このような悩みはありませんか?

寝たきりの状態や浴室が狭くて介助できないなど、自宅で入浴できない状態の方は少なくありません。また、もともと自宅に浴室がない方もいるでしょう。

しかし、入浴をしないと身体の清潔を保持できず、様々なリスクを招く恐れがあります。

今回は訪問入浴サービスについて紹介します。訪問入浴サービスでは、自宅に浴室がなくても、簡易浴槽を設置して入浴が可能です。身体全体を温めることで血行促進やリラックス効果が期待できるため、ぜひ参考にしてください。

#在宅サービス#在宅介護#費用
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

居宅サービスの訪問入浴とは

浴槽がない自宅でも入浴介助を受けられるサービス

訪問入浴サービスとは、自宅で入浴が困難な人(寝たきりなど)に対して入浴介助サービスを行います。簡易浴槽を持ち込むため、自宅に浴室・浴槽がない場合でも入浴が可能です。簡易浴槽は、畳み2.3畳程度のスペースがあれば設置可能で、防水マットを敷いて室内が濡れないように配慮してサービス提供します。

訪問入浴は、主に介護職員2名と看護師1名が利用者宅を訪問します。看護師が同行しているため、入浴中の体調変化などが起こっても安心です。また、3名で介助するため、寝たきりの方でも、簡易担架などを使用することで安全な移動と入浴ができます。入浴後には、軟膏塗布や爪切り・水分補給のケアなど、必要に応じて対応可能です。

入浴には以下のような「三大作用」があります。

【入浴の三大作用】

温熱作用

静水圧作用

浮力作用

血液循環促進

自律神経の刺激

リンパ循環促進

など

心臓への静脈還流の増

など

運動機能の改善

リハビリ効果

など

反対に入浴しないと以下のような症状を引き起こします。

  1. 皮膚疾患や感染症のリスクが上がる

  2. 体臭が生じる

  3. 免疫力の低下が起こる

全身状態の悪化が心身機能低下のきっかけとなることもあり、定期的な入浴で清潔保持を行う必要があります。

訪問入浴介護の対象者

要介護認定を受けており自宅で入浴が困難な方が対象のサービス

訪問入浴の対象者は、以下の通りです。

  • 要介護1~5

  • 主治医から入浴の許可がおりている

訪問入浴を検討している場合は、まずケアマネジャーに利用したい旨を伝え、かかりつけ医(主治医)に入浴の許可・入浴を控える条件(血圧の数値など)を確認しておきましょう。

訪問入浴を利用している人の特徴は以下の通りです。

  • 寝たきりで入浴自体に介助が必要な人

  • 自宅の浴室が狭く家族のサポートがあっても入浴が困難な人

  • 体調の変化が激しく看護師のサポートが必要な人

  • デイサービスなどの利用が困難な人

  • ターミナル期の人

原則として、要介護1~5の方が対象ですが、要支援1.2の認定を受けた方でも、特別な事由がある場合には利用を認められています。条件は以下の通りです。

  • 自宅に浴室がない

  • 感染症に罹患しているためデイサービスなどの利用が困難

介護保険を利用して入浴する方法は、訪問入浴以外にもあるため、入浴で困った場合は担当のケアマネジャーに相談してみると良いでしょう。

介護保険を使って入浴する方法

訪問介護でも自宅で入浴が可能

介護保険を利用した入浴方法には、訪問入浴の他にもいくつかありますが、自宅で入浴する方法には、訪問入浴の他に訪問介護があります。訪問介護を利用した入浴介助と訪問入浴の違いは、以下の通りです。

【訪問介護と訪問入浴の違い】

訪問介護(入浴介助)

訪問入浴

自宅の浴槽を使用する

事業所が持参した組み立て式の浴槽を使用する

基本的に介護職員が1人で対応

看護師1名と介護職員が2名の合計3名で対応

訪問介護では、基本的に準備から片付けまで、1人の介護職員が行います。だいたい60分程度で実施しますが、30分単位で延長が可能です。また、訪問介護では、自宅の浴室を利用するため、利用者と介助者の2人が入れるスペースが必要になります。入浴動作がある程度行える(自分で洗身ができる・浴槽をまたげる)方は、訪問介護を利用すると良いでしょう。

体調不良などの場合には、清拭や部分浴(身体の一部分だけを湯に浸す入浴法)に切り替えて対応することも可能です。利用者の状態や浴室などの環境に合わせて介護職員が2人体制で対応することもあります。その場合、2人体制の費用が必要となるため注意が必要です。

訪問入浴を利用する場合、体調確認や軽微な身体的ケアでは看護師が、その他入浴に関しては2名の介護職員が対応します。利用者の状態にもよりますが、だいたい40〜60分程度で入浴を実施します。体調不良などの場合、部分浴を実施したり清拭に切り替えて対応することも可能です。

費用面では、訪問入浴を利用する場合の方が高くなります。自己負担割合1割の場合を比べてみましょう。

【訪問介護】

サービス内容

費用

30分以上60分未満

396円(身体介護中心型)

60分以上90分未満

579円

以降30分を増すごと

84円

職員2名体制で実施した場合

基本サービス費×200/100

【訪問入浴】

サービス内容

費用

全身浴

1,260円

部分浴

1,134円

清拭

1,134円

※1単位=1円

※訪問介護・訪問入浴共に上記サービス費用に加算等を含めた費用が必要となります

参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造」 

費用だけを見比べると訪問入浴の方が高く感じるでしょう。しかし、訪問入浴では3名のスタッフで対応することや簡易浴槽の組み立てなども訪問時間内に行います。

その他に介護保険を利用した入浴方法として、デイサービスやショートステイなどがあります。

訪問入浴の手順

自宅内に簡易浴槽を組み立てる

訪問入浴サービスを利用した場合の基本的な流れについては以下の通りです。

  1. 訪問・健康チェック

  2. 入浴の準備

  3. 入浴

  4. 着衣・健康チェック

  5. 片付け

【訪問・健康チェック】

看護師が血圧・体温・脈拍などを計測し、利用者や家族から健康状態の確認を行います。健康状態を確認して、入浴の可否を判断します。看護師にて判断できない場合は主治医やケアマネジャーと相談することもあるでしょう。

【入浴準備】

防水マットを敷き、その上に簡易浴槽を組み立てて湯をはります。その間に、利用者はベッド上で脱衣を行い入浴の準備と、身体に傷などの異常がないか確認します。(ボディチェック)

【入浴】

浴槽に浸かった状態で洗髪・洗身を行います。湯温や量も調節可能です。

【着衣・健康チェック】

入浴後、ベッド上にて着衣を行います。迅速にボディチェックと着衣を行い、安静後、もう一度、血圧・体温・脈拍などの体調変化がないか確認します。

【片付け】

使用した浴槽などを洗浄・消毒し搬出します。サービス実施の記録などを行い、サービス終了です。入室から退室まで、約40〜60分以内で行われます。

事業所によって、入浴中にベッドのシーツ交換を行ったり、入浴時にアロマを焚く・季節に応じたお風呂(柚子湯等)を楽しんでいただくなど、付加価値を提供している所もあります。

訪問入浴介護で得られる6つのメリット

入浴には清潔の保持の他にも様々なものがある

訪問入浴を利用するメリットは以下の通りです。

1.身体の清潔を保てる

寝たきりやターミナル期であっても住み慣れた自宅で入浴できます。また、清拭だけでは落としきれない汚れを落とし、清潔な状態を保つことができます。

2.身体機能の維持・向上

浴槽に浸かることで、水圧を受ける影響で呼吸数が増え、心肺機能を高めます。また、浮力により普段動かさない部位(筋肉や関節)でも、身体に大きな負担をかけることなく動かすことが可能です。また、全身浴は血行促進や新陳代謝を促し、便秘の解消・浮腫み軽減などの効果が期待できます。

3.リラクゼーション効果

1人で温かいお湯につかることで、身体の重みから解放され、緊張をやわらげます。脳への刺激が減ることで、心や身体が開放的になりストレス解消につながるでしょう。その結果、睡眠の質の向上や新陳代謝の向上が期待できます。

4.利用者・家族の負担を軽減

寝たきりや下半身の運動障害などがある場合、家族が介護するのはとても大変なことです。さらに、入浴時は裸になるため、通常の介助法では介助できないこともあります。入浴介助に慣れていない人が行うと、転倒などの事故につながる恐れもあります。入浴介助に慣れた専門の職員が入浴を行うことで、本人や家族への負担を軽減することができます。

5.家族以外の人とコミュニケーションをとり気分転換ができる

要介護度が高くなると、思うように動けないことから第三者との交流の機会が減ります。入浴時、職員とコミュニケーションをとることで気分転換にもなるでしょう。

6.介護保険が利用できる

介護保険を利用できるので、自己負担割合(1〜3割)で専門職の入浴介助を受けることができます。

このように、訪問入浴には多くのメリットがあります。続いてはデメリットを見ていきましょう。

訪問入浴介護のデメリット

デメリットを理解して利用しましょう

訪問入浴にもデメリットがあります。利用する際は、デメリットを理解した上で検討しましょう。

1.訪問介護に比べ費用が高い

60分以内の利用を想定した場合、訪問入浴が1回1,260円なのに対して、訪問介護は30〜60分で396円になります。前述の通り、訪問入浴が3名体制のサービスであることを考えると適正な費用ですが、費用面が心配な方は、訪問介護やデイサービスなどを利用すると良いでしょう。

2.医療行為が行えない

看護師が行える業務は入浴前後の体調確認や浴後に軟膏塗布・湿布を貼るなどの入浴に関係するサービスです。褥瘡処置・摘便・喀痰吸引などの医療的ケアは原則として実施できません。医療的ケアが必要な場合には、別に訪問看護などを利用する必要があります。

3.羞恥心を感じやすい

人前で裸になること・複数人に見られることに対して、羞恥心を感じる方も多いでしょう。また、訪問入浴では組み立て式の浴槽を事業所が持ち込んで使用するため、男性職員が対応する場合も多い傾向です。利用者が女性で同性介助の希望があるときは、事前に訪問入浴事業所やケアマネジャーに相談・確認すると良いでしょう。ただし、同性で3名のスタッフを調整することは困難な場合もあるため、希望が通らない可能性もあることを理解しておきましょう。

4.駐車スペースが必要

ボイラーを搭載した入浴車を使用するため、自宅に近い場所に車を止める必要があります。

駐車場などがなくても、駐車許可証の発行で対応可能か、ケアマネジャーに相談しましょう。

参考:警視庁「駐車許可制度及び申請手続きについて」

訪問入浴介護を選ぶポイント

事業所の特色と安全性の確認

基本的には、どの訪問入浴事業所を利用してもサービスに大きな違いはありません。しかし、訪問入浴の事業所によっては、他事業所と違いを出すため、色々なサービスや特徴があります。例えば以下の通りです。

  • リラックス効果のあるアロマを使用している

  • 温泉(人口・天然)を使用している

  • 訪問看護が併設されており、医療との連携がとりやすい

その他にも色々なサービスを実施している事業所もあるため、利用開始前に確認し、事業所選びの参考にすると良いでしょう。

また、サービス内容以外に必ず確認が必要なポイントが3つあります。

1.緊急時の対応方法

2.キャンセル料・交通費

3.衛生面の管理体制

【1.緊急時の対応方法】

入浴中に、利用者が急変した場合、主治医や医療機関との連絡体制が整っているのか、また、救急車の要請は誰が行うのかなどを確認しておくと良いでしょう。

【2.キャンセル料・交通費】

サービス利用日に体調不良などで当日キャンセルする場合、キャンセル料金がかかることがあります。キャンセル料金は事業所によって異なるため、金額を確認しておきましょう。訪問入浴事業所によっては、入浴予定日を別日に振替えることで、キャンセル料金を相殺することもあります。

また、事業所の訪問エリア外の場合、交通費を請求する場合があるため注意が必要です。

【衛生面の管理体制】

感染症対策には、新型コロナウイルスやインフルエンザだけではなく、C型肝炎や疥癬などもあります。毎回の手洗い・うがいはもちろん、使用した浴槽や備品・機材を洗浄・消毒しているかが重要です。また、利用者本人が感染症にかかった場合、サービス提供してもらえるか、どのような対応になるか確認しましょう。

訪問入浴の利用を希望すると、多くの場合ケアマネジャーが訪問入浴事業所を提案してくれるでしょう。しかし、自分で探す場合は、厚生労働省や独立行政法人福祉医療機構のサイトも参考になります。

参考:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」独立行政法人福祉医療機構「WAM NET」 

訪問入浴介護に関する疑問

よくある3つの質問

ここでは、訪問入浴でよくある疑問について答えていきます。

Q.入浴拒否をしたときはどうする?

A.本人の意思を尊重することが大切です。服を無理やり脱がせようとしたり、強い口調で叱責・指示してはいけません。入浴に関して余計にストレスを感じて、今後も拒否が続く可能性があります。

認知症の場合、特に注意が必要です。まず、入浴に対する理解やなぜ嫌なのか知る必要があります。その時の理由や本人の状況に応じて対応するため、入浴ができない可能性もあるでしょう。

【入浴がめんどくさい場合】

高齢になると一つひとつの動作に時間を要し、入浴自体も体力が必要です。そのため、まずは月1回の清拭から始めて、少しずつ入浴につなげる方法もあります。

Q.サービス以外にかかる費用は?

A.訪問入浴サービス費以外に各加算(サービス体制加算・処遇改善加算など)・水光熱費が必要です。一方、訪問するスタッフに看護師が不在の場合や3名に満たない場合は減額となります。

医療費控除の対象となる場合があるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

参考:国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価

Q.お湯はどこから出すの?

A.訪問入浴の職員が移動の時に使用する車には、ボイラーが搭載されています。そのため、入浴で使用するお湯は、利用者の自宅から車に水を引き、お湯を沸かし使用します。車から水が引けない場合には、自宅からお湯を引いて使用します。

Q.週に何回利用できますか?

A.介護保険上、利用回数に制限はありません。しかし、介護度別に区分支給限度額があり、それを超えた分に関しては、全額自己負担となります。そのため、区分支給限度額の範囲内に収まるようにケアマネジャーと相談し、入浴回数を決めると良いでしょう。ただし、訪問入浴事業所の空き状況にもよるため、必ずしも希望する日時や回数で利用できるとは限りません。

まとめ

今回は、訪問入浴について紹介しました。身体の状態や環境によって、入浴ができない場面があります。しかし、訪問入浴を利用することで、寝たきりやターミナル期になっても自宅で入浴が可能です。

入浴介助は介護の中でも特に技術や知識が必要な介助のため、利用を検討している人はケアマネジャーに相談することで、家族の介護負担軽減につながるでしょう。

今回の記事内容が、訪問入浴の理解につながれば幸いです。

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