老人ホームの行事食にはどんなものがある?メニュー例や食事の効果について紹介

老人ホームでは、入居者の方に季節を感じていただけるよう、時期や行事にちなんだ食事を提供しています。

「行事食ではどのような食事が出るの?」「硬いものが食べられなくなってきたけれど、みなさんと同じものは食べられるかしら?」など、気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は、老人ホームの行事食をご紹介します。食事に力を入れる理由や工夫についても解説しているので、参考にしてください。

#老人ホーム#生活#食事
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

行事食とは

行事食とは四季折々の趣向を凝らしたメニュー

行事食は、四季のイベントに合わせた普段と違ったメニューの食事です。老人ホームに入居すると、外出する機会や楽しみが減り、季節の変化を肌で感じることが少なくなる可能性があります。そのため、行事やイベント活動に合わせた行事食は、入居者の楽しみのひとつとなるよう季節の変化を感じる工夫がされています。

行事食の料金は、食費に含まれていることがほとんどです。施設によっては、寿司バイキングや外食イベントなど、特別なイベントとして別途料金がかかることもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

老人ホームで行事食を企画する理由

行事食は健康と生活の質を向上させ季節を感じることができる

行事食を提供することで、以下のような効果が期待できます。

  • 食欲増進

  • 季節を感じる

  • QOL(生活の質)の向上

それぞれ見ていきましょう。

年齢を重ねると活動量が減るため、食欲が減退する場合があります。生活もパターン化してくるため、日々の食事に対して興味がわかないこともあるでしょう。老人ホームの行事食は、普段と違うメニューで季節を感じる華やかな食事を提供します。見た目や味の変化を楽しむことができ、食欲の増進が期待できます。

また、行事食やイベントで、四季を感じることができます。認知症の見当識障害によって、季節の感覚や記憶を失ってしまった方でも、「正月=冬」「七夕=夏」というように、四季と食事(イベント)を連想して感じられます。メニューによっては、昔の記憶がよみがえり、昔話に花を咲かせるケースもあるでしょう。このように、提供された食事を通して、共通の話題が生まれ、入居者同士の会話が弾むきっかけになることもあります。

老人ホームの行事食は生活の質を向上させる効果もあります。日々の食事は栄養バランスや食べやすさが考えられた食事が提供されていますが、マンネリや単調さを感じることがあるでしょう。行事食が提供されると、食事の時間が華やかになり、楽しく食事ができます。また、楽しみがあると日々の生活にメリハリが生まれ、QOLの向上につながるでしょう。

老人ホームで行われる行事食のメニュー例

老人ホームの行事食メニュー

老人ホームでは月ごとに、行事食が提供されていることがほとんどです。毎月実施される行事食のメニュー例をみていきましょう。

1月・おせち・お雑煮

お正月といえば、おせち・お雑煮です。おせち料理は縁起の良い品目が並んでいます。入居者の中には、昔、おせち料理を作ったことを思い出し、懐かしい気持ちになる方もいるかもしれません。また、お雑煮は地方によって、味付けやお餅の形などが異なります。関東風・関西風で違いがあるため、見た目も楽しめるでしょう。

1月7日には、お正月料理で疲れた胃腸を癒やすと言われる七草かゆを食べて、1年の無病息災を願います。七草を当てるクイズをレクリエーションで実施すると盛り上がります。

※お餅の提供は、誤嚥や窒息のリスクから控える施設もあります。提供する場合は、介護職員の初期対応確認や看護師の見守り・待機の元、安全な環境下で提供されることが多いです。

2月・節分・バレンタインデー

2月3日には節分があります。節分では、恵方巻を食べる方もいるでしょう。しかし、恵方巻に使う海苔は、高齢者には噛み切りにくいため、提供しない施設が多いです。その代わりとして、豆まきなどの節分イベントを楽しめるような工夫をしています。

また、2月14日はバレンタインデーです。チョコレートを使ったプリンやチョコドリンクなどのスイーツを楽しめます。チョコレートは糖質が高いため、糖質制限されている入居者には不向きですが、調理方法を工夫し、チョコレートの風味が味わえるように糖質少なめのスイーツを作ったり、ハートの形にしたりすることで、バレンタイン気分を味わうこともできるでしょう。

3月・ひなまつり

3月のイベントには、ひなまつりとお彼岸があります。ひなまつりのメニューといえば、ちらし寿司を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。見た目が鮮やかで、春らしさを楽しめます。旬の菜の花を調理したメニューが一緒に提供されることも多い傾向です。

また、お彼岸にはぼた餅ですが、嚥下機能が低下した高齢者にはリスクが高くなります。そのため、小さく刻んで提供する場合や寒天ゼリーなどで彩ったひし形のおやつなどで代用することもあるでしょう。

4月・お花見

桜が咲く季節といえば、お花見です。食事にお花見弁当が提供されることがあります。旬のタケノコをはじめとした春野菜が入るとお花見気分が盛り上がるでしょう。食器での提供ではなく、あえてプラスチックの容器に盛り付けることで、お花見に行ったような気持ちになります。

アルコールの提供は施設によって異なりますが、希望される場合は施設に確認してみると良いでしょう。花見の外出イベントを行っている場合も多い傾向です。

5月・端午の節句

端午の節句といえば、ちまきや柏餅です。ただし、おもちは高齢者が飲み込みにくいため、こいのぼりの形をしたケーキやちらし寿司などを提供することがあります。

また、こどもの日にちなんで、「オムライス」や「ハンバーグ」など、子どもが好むメニューで提供する場合もあるでしょう。

6月・和菓子

6月は旧暦で水無月と呼ばれます。和菓子には、水無月という名前のういろうに小豆を乗せた和菓子があります。6月は梅雨の季節で湿度が高いことから、梅の入ったさっぱりとした食事や和菓子も喜ばれます。

7月・七夕・土用の丑の日

七夕には天の川にみたてた、そうめんを提供することが多い傾向です。星形にかたどったトッピングで気分を盛り上げます。さっぱりとした味わいは初夏の暑さをさわやかにするでしょう。

また、7月は土用の丑の日もあります。夏バテ防止のウナギのちらし寿司や混ぜご飯などのメニューが提供されます。

8月・精進料理

お盆がある8月は、仏様に精進料理を供えることから、肉の入っていない食事を提供します。

夏祭りの季節なので、焼きそばやかき氷などのお祭りメニューもあります。8月は暑さで食欲が低下しやすい季節のため、見た目も気持ちも楽しめる夏祭りメニューは、食欲が増進するきっかけになるでしょう。

夏祭りのイベントは、各施設でも力を入れる大きな行事になるため、特徴のある様々な催し物が開かれます。

9月・十五夜

十五夜には、月見団子を食べます。ただし高齢の方には食べにくいので、噛みきりやすいものにします。

9月は重陽の節句もあり、菊の花をあしらった料理や旬の料理を提供します。食欲の秋は他にも、さんまや栗などもおいしい季節です。栗ご飯が好きな方も多いでしょう。

また、敬老の日には、長寿を祝うイベントの開催やお祝い膳のメニューを準備することもあります。

10月・ハロウィン

ハロウィンは高齢の方には、馴染みが少ない人もいるでしょう。しかし、ハロウィンのシンボルであるかぼちゃは10月が旬の野菜です。かぼちゃ料理に親しみを持つ高齢者は多いので、スープやスイーツが楽しめるでしょう。

また、きのこやお芋も旬なので芋煮会を行う施設もあります。

11月・もみじ狩り

11月はもみじ狩りの季節です。お弁当を持ってもみじ狩りに行ったことがある高齢者も多いのではないでしょうか?秋は、野菜や果物など旬の食材が豊富な季節です。行楽弁当に見立てた旬の素材を盛り込んだメニューも提供されています。

12月・クリスマス・大晦日

12月の行事といえば、クリスマスと大晦日です。クリスマスには、飾りつけられたツリーを見ながらケーキを食べると明るい気持ちになるでしょう。大みそかには、年越しそばを食べて、1年の無事を振り返り、翌年の幸福を祈ります。

その他のイベント食

毎月の行事食の他にも、施設では様々なイベント食を企画し提供されています。順番に見ていきましょう。

【誕生会】

毎月、誕生会を開催する老人ホームは多いでしょう。ケーキをはじめとした華やかなお祝いメニューの料理やおやつが提供されます。また、プレゼントなどを準備し、職員や他の入居者と一緒にお祝いします。

開催頻度は、施設ごとに異なりますが、月に1度の実施が多いです。

【食レク】

地域名物のご当地メニューの提供や、目の前でお寿司を握ってもらってできたてを食べるなどの、イベントを実施している施設もあります。ちらし寿司や豚汁など、一緒に作ることから始めるのも楽しいでしょう。機能訓練としての効果もあるため、できることは一緒に取り組みます。

【おやつレク】

職員と一緒に桜餅やクレープなどのおやつを作る老人ホームもあります。他にも、たこ焼きパーティーやホットケーキ作りなど、施設ごとの特徴を生かして行われています。

【バイキング】

パンやデザートのバイキングは、ホテルに行った気分を楽しめます。マンネリ化した食事から、自分で食べたいものを選べる楽しみがあります。低糖質のものや、飲みこみやすいゼリーなども提供すると、食事に制限のある入居者の方も一緒に楽しめるでしょう。食べ過ぎには注意して対応します。

【外食】

外食イベントを行う老人ホームもあります。いつもと違う環境で食べる食事は非日常感を味わえて、食事もおいしく感じられるでしょう。車椅子でも利用できるお店を探す・トイレの設置場所など、細かくリサーチして行います。

施設によっては、家族も参加できる場合もあるでしょう。

【お祭り】

代表的な祭りといえば、夏祭りです。秋に実施する「秋祭り」をする施設もあります。秋の場合は、夏の暑さが抜けている場合も多く、過ごしやすい気候で楽しめるでしょう。

焼きそばやかき氷、焼き鳥など、縁日メニューが提供されます。花火大会をして、お祭りの雰囲気を演出する施設もあります。

老人ホームの食事に関する工夫

行事食でも高齢者の状態に合わせた食事の工夫が必要

老人ホームでは様々な工夫や対応により、それぞれの高齢者に食べやすい食事形態で提供されます。

【咀嚼・嚥下】

入居者の口腔(口の中)の状態はさまざまです。残っている歯の本数・唾液の分泌量・唇や舌の動き・嚥下(えんげ・飲み込み)などによって食べやすさが変わります。入居者が誤嚥(食物が気管に入り込むこと)しないように、それぞれの状態に合わせた食事が提供されます。

食事形態

詳細

普通食

口腔の状態に問題なく食事ができる人に提供される普通の固さの米飯とおかずのことです。

軟菜食

噛む力が弱い人に提供される、主食は柔らかめの米飯またはお粥、副食は柔らかく調理されたものです。

キザミ食

噛むことを減らせるようにすでに細かくカットした状態の食事です。カットの大きさは個々によって異なります。

ミキサー(ペースト)食

噛まずに舌を使って飲み込めるペースト状・裏ごし状の食事です。

凍結含浸

軟化酵素を浸み込ませて、食材の組織を分解することで、食材そのままの形を保ったやわらかい食事を作ることができます。見た目も、鮮やかで食欲がわきます。

老人ホームで提供される食事の形態には種類があり、口腔内や嚥下機能の状態によって変わります。

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【健康面】

健康面では、以下の点で工夫が図られています。

・治療食

入居者の中には、糖尿病・腎臓病・高血圧など、さまざまな疾患を持つ人がいます。疾患の治療には薬物だけではなく、食事に注意することも必要です。

糖尿病の人にはカロリー制限、腎臓病の人にはたんぱく制限、高血圧の人には塩分制限などの対応が必要になります。これらの持病をお持ちの方への食事は、主治医と相談してメニューを考えます。

・水分量

心臓疾患のある人や透析を受けている人は、水分の制限が必要になる場合があります。

水分は飲水だけではなく食物にも含まれるため、1日に摂取する水分量を踏まえてメニューが提供されます。

【環境】

食事の時間帯は、音楽やBGMを流し食欲がわくような雰囲気を作ることも大切です。例えば、クリスマスにはクリスマスツリーを飾りつけてクリスマスソングを流し、雰囲気を演出します。

行事やイベントに合う音楽や飾り付け、照明の工夫は明るい雰囲気が生まれ、食欲が増し楽しく食事ができるでしょう。

参考:【介護食資格おすすめ講座の種類一覧を比較】独学に役立つ通信教育を紹介

まとめ

この記事では、老人ホームの行事食と効果について解説しました。行事食は、入居者に四季折々の風情を感じる食事を提供して、健康と生活の質を向上させます。食事の内容も行事によって工夫されており、行事食が楽しみになっている入居者も多いでしょう。

食事は毎日の生活に欠かせない物ですが、食べることに楽しみがないと日々の生活は味気ないものになります。

老人ホームでは、少しでも楽しく過ごしていただくために、様々な工夫と企画で行事食を提供しています。施設探しの時はどのような行事食が提供されているのかについても確認しておくと良いでしょう。

今回の記事が施設選びの参考になれば幸いです。

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