訪問介護はどんなサービスが受けられる?できない支援や利用する方法を解説
「訪問介護ではどんなサービスが受けられる?」「利用方法を知りたい」このような悩みはありませんか?
高齢者の家族介護は、身体的・精神的な負担が大きく、家族の健康や生活に影響を与えることがあります。介護認定を受けた方は、訪問介護サービスを利用することで、家族の介護負担を軽減することが可能です。
今回は、訪問介護サービスの内容や利用方法について詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。
とぐち まさき
渡口 将生
訪問介護とは?
ホームヘルプサービスとも呼ばれる在宅サービスのひとつ
訪問介護とは、介護職員が利用者の自宅に訪問し、ケアプランや訪問介護計画書に沿って必要な支援を行います。高齢で要介護状態になっても、自宅で生活できるように支援する在宅介護サービスのひとつです。
自宅に訪問する介護職員のことをホームヘルパーと呼びます。訪問介護が提供するサービスは大きく3種類に分かれます。
サービスの種類 | サービス内容 |
---|---|
生活援助 | 日常生活を過ごすために必要な家事のサポート |
身体介護 | 生活に必要な動作に対して、直接身体に触れて介助を行う |
通院等乗降介助 | 通院時の屋内外への移動や車の乗降介助 |
訪問介護を利用するには、事前にケアマネジャーに相談し、ケアプランに組み込んでもらいます。そのケアプランに沿って訪問介護事業所がサービスの提供を行います。
しかし、平成30年には生活中心型サービスの利用において、回数制限が設けられました。1ヶ月あたりの上限回数は以下の通りです。
要介護度 | 1ヶ月のサービス回数 |
---|---|
要介護1 | 27回 |
要介護2 | 34回 |
要介護3 | 43回 |
要介護4 | 38回 |
要介護5 | 31回 |
平成30年10月から、訪問介護のケアプランに生活援助が多く含まれる場合、市区町村に届け出が義務化されました。生活援助は、高齢者の家事を支援する介護保険サービスですが、一部過剰なサービス提供が行われていると指摘があったためです。
そのため、居宅介護支援における運営基準が見直され、規定された回数以上の生活援助を利用する場合は、ケアプランに必要性を記載し、市区町村に届け出ることが義務付けられました。
訪問介護を利用する条件は以下の通りです。
65歳以上の要介護認定者
40~64歳の介護保険が定める特定疾病に該当する要介護認定者
在宅で生活している
ケアプランに訪問介護の必要性が記載されている
利用するには訪問介護事業所との契約が必要になります。また、利用したい日程や時間が訪問介護事業所の都合と合わない場合は調整が必要です。
要介護認定を受けていても、要介護の認定を受けた人と要支援の人とでは、利用できるサービス内容に違いがあるため注意しましょう。
訪問介護で受けられるサービス
訪問介護では多様なサービスが利用できる
訪問介護で利用できるサービスは以下の通りです。
生活援助サービス | 身体介護サービス |
---|---|
掃除(生活範囲内) ゴミ集め・ゴミ出し 洗濯から収納まで アイロンがけや簡単な衣類の補修 調理(献立・下ごしらえ・味付け等) 買い物代行(食材や日用品・生活家電) シーツ交換 布団の上げ下げ 換気 整理整頓 薬の受け取り など | 排泄介助 食事介助 入浴介助(全身・部分・清拭) 洗面や整容 起床や就寝介助 服薬介助 体位変換 移乗移動介助 通院のための外出介助 専門的配慮が必要な調理 更衣介助 自立生活支援のやめの見守り的援助 認められている医療的ケア など |
上記以外に、混合介護サービスがあります。
混合サービスとは、介護保険サービスと対象外のサービスを組み合わせて介護を行うことを指します。介護保険制度では対応できない利用者のニーズを解消することが可能となり、家族の負担軽減も期待されます。しかし、介護保険サービス費は自己負担分(1〜3割)ですが、対象外サービスは保険対象外のため全額自己負担となります。サービス費用が高くなり自立支援の妨げになる可能性もあるため、利用の際は必要性についてケアマネジャーと相談すると良いでしょう。
また、通院等乗降介助と呼ばれるサービスがあります。このサービスは自宅から通院先、またはその帰りの移動を支援するサービスです。介護用の車などを用い、車内外の乗降介助・院内の移動介助・受診手続き・薬の受取などを行います。
訪問介護でできないサービス
訪問介護では制度上できないサービスがある
訪問介護サービスは、介護保険制度を利用したサービスです。そのため、制度で定められたサービス以外は行えません。生活援助サービスは、一人暮らしの人や、家族が障害や病気で家事ができない場合に利用でき、本人の生活をサポートするために提供されるため、同居家族への支援は含まれていません。
訪問介護で対応できないサービスは、以下の通りです。
本人以外の援助となること
最低限の日常生活に必要ないこと
契約時間内で終わらないような時間がかかること
具体的には以下のようなサービスが該当します。
生活援助サービス | 身体介護サービス |
---|---|
特別な調理(おせち料理や流動食など) 来客の対応 利用者以外への援助 利用していない部屋などの掃除 換気扇掃除 来客対応 家具の移動 衣替え 話し相手 金融機関利用の代行・管理 家族分を含めた買い物や調理・洗濯・掃除 など 中元・歳暮の購入 嗜好品(タバコやお酒)の買い出し 遠くにあるスーパーなどでの買い物 植木の水やりや庭の手入れ ペットの世話 窓ふきなどの大掃除 | 散髪 通院の受診待機時間 墓参りや法事への同行 禁止されている医療的ケア など |
表の内容は、訪問介護の現場で依頼されることが多いサービス例です。基本的に提供できないサービスですが、市区町村によって独自のルールを定めている場合もあります。希望する場合はケアマネジャーに相談し、対応可能か相談してみると良いでしょう。また、訪問介護事業所によっては保険外サービスとして対応している場合もあります。しかし、費用は全額自己負担となるため注意が必要です。
訪問介護の利用頻度と利用料
訪問介護はサービスの内容と提供時間で費用が決まる
訪問介護の利用料金はサービスの内容と時間で異なります。基本的なサービス費は厚生労働省で定められていますが、事業所ごとに加算を算定しているため、詳しい費用は事業所に確認すると良いでしょう。介護保険利用であれば自己負担額(1〜3割)の支払いになります。
サービスの種類 | 提供時間 | 料金 |
---|---|---|
生活援助サービス | 20以上45未満 | 220円 |
45分以上 | 270円 | |
身体介護サービス | 20分未満 | 167円 |
20分以上30分未満 | 250円 | |
30分以上60分未満 | 396円 | |
60分以上 | 579円 | |
それ以降30分増すごと | 84円 | |
通院等乗降 | 1回 | 99円 |
(自己負担割合1割・1単位10円の場合)
参考:厚生労働省「介護給付費単位数等サービスコード表(令和4年4月施行版)」
ケアプランによって1日に複数回利用できますが、サービス提供時間の間隔を2時間以上開けなくてはならない「2時間ルール」があります。前のサービス提供終了から2時間空けずにサービス提供をした場合、前のサービスに合算して算定します。
条件 | 生活援助40分を2回行った場合 |
---|---|
2時間以上開いた場合 | 220円×2回=440円 |
サービスの間隔が2時間未満 | 40分+40分=80分のサービスとなり270円 |
訪問介護のメリット・デメリット
訪問介護サービスには多くのメリットがある
訪問介護サービスを利用することで得られるメリットは、以下の通りです。
【住み慣れた自宅でサービスを受けられる】
介護職員が自宅に訪問するため、環境に変化がなく大きなストレスを受けることがありません。
【必要な分だけサービスを受けられる】
「日中の買物だけ支援してほしい」「デイサービスの送り迎えをしてほしい」など、ピンポイントで支援を受けることができます。
【離れて暮らしていても安心できる】
遠方に住んでいる家族はなかなか様子を確認することができないため、ヘルパーが定期的に訪問することで家や本人の状態を確認してもらえます。また、必要な支援を受けられるため安心です。
【個別対応で柔軟性がある】
個々の生活や身体状況、希望などが違っても、介護保険でできる範囲でサービス内容を考慮できます。
【介護費用の軽減】
介護施設などの入所と比べると費用負担は軽減されます。
【必要なサービスを選択でき自由度が高い】
事業所の種類やサービスも多様にあるため、選択肢が多く希望に沿った(近い)サービスを受けられます。
【家族の負担軽減】
本人のできていない家事や家族が行っている介護を支援してもらえるため、家族の負担軽減ができます。
【本人の自立支援】
料理の下ごしらえはできないが味付けはできるなど、作業の一部ができない場合でも、一緒にできない部分をサポートし自立を促すことができます。
【コミュニケーションをとる時間が増える】
独居で外出する機会が少ない・人と関わることが苦手な人でも、自宅に定期的に来るヘルパーと会話することで第三者とのコミュニケーションを図れます。
上記のように多くのメリットがあります。続いてデメリットを見ていきましょう。
【他人を家に入れる必要がある】
人によっては自宅の中に他人を入れたくないと思う人もいるでしょう。他人が自宅に来ることを嫌う方にとっては大きなストレスになり、必要な支援を受けられないこともあります。
【ホームヘルパーとの相性が合わない可能性がある】
どちらが悪いわけではなく、人として相性が合わないこともあります。本人と合っていても家族と合わない、またその反対もあるでしょう。そのような時は、我慢せずケアマネジャーに相談しましょう。
【希望の日時に訪問調整ができないことがある】
希望している時間や曜日に対応できない場合もあります。その時は、候補日や時間をいくつか用意して検討してみましょう。
訪問介護サービスを受けるまでの手順
訪問介護サービスを受けるためには要介護認定を受ける必要がある
ここからは、要介護認定を受ける手順について紹介します。手順は以下の通りです。
【要介護認定の申請】
本人やその家族が市区町村の担当窓口に申請を行います。一人で外出が困難などの理由がある場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談することで申請の代行をサポートしてもらえます。
【認定調査と主治医意見書の作成】
市区町村の担当者から訪問調査の日程調整の連絡があります。この訪問調査は基本的に自宅で行いますが、入院中の場合は病院で実施することも可能です。日程が決まると、調査員が訪問して調査票をもとに生活状況や心身の状態などをチェックします。同時に市区町村の担当から、主治医に意見書作成の依頼が行われます。
【審査判定】
一次判定は調査票の内容をコンピューターによって判定します。一次判定の結果と主治医意見書の内容から、二次判定が行われ、要介護度が決定します。
【要介護認定の通知】
二次判定の結果は、申請日から30日以内に利用者に通知(送付)されます。要介護度の記載された結果通知書と被保険者証が自宅に届くため、確認しましょう。審査の結果に納得いかない場合は、不服申し立てが可能です。
申し立てをする場合は、結果通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に都道府県が設置している介護保険審査会に行います。
【ケアプランの作成】
要介護認定を受けただけではサービスの利用ができないため、ケアプランを作成・担当してくれるケアマネジャーを探す必要があります。要支援1.2の人は地域包括支援センターに、要介護1〜5の人は居宅介護支援事業所に依頼しましょう。
ケアマネジャーが決まったら契約を行い、今後の希望やサービスの要望、課題などをケアプランに反映し作成してもらいます。
【介護サービスの利用開始】
ケアプランが作成できたら、サービスを提供する介護サービス事業所と契約を行い、開始時期や日程を決めてサービスの提供を受けます。
訪問介護サービスを提供する事業所の職員体制
登録ヘルパーが活躍する訪問介護事業所もある
訪問介護事業所では、以下のような人員基準があります。
職種 | 必要人数 |
---|---|
管理者 | 常勤専従で1人 |
サービス提供責任者(サ責) | 利用登録者40人に1人 端数が出るたびに1人増加 |
訪問介護員(ホームヘルパー) | 常勤介護職員が2.5人以上(サ責を含む) |
登録ヘルパー | 事業所によって異なる |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【管理者】
事業所の管理業務に従事している職員で、サービス提供責任者との兼務も可能です。訪問介護員との兼務は各都道府県によって異なります。
【サービス提供責任者(サ責)】
訪問介護計画書作成・ヘルパーへの指示・指導・ヘルパー業務などを行う職員です。サービスの責任者として、以下の条件を満たす必要があります。
(必要な資格と条件)
介護福祉士
(旧)介護職員基礎研修員
(旧)ホームヘルパー1級
3年以上介護などの業務に従事した介護職員初任者研修者、または(旧)訪問介護員養成研修2級や(旧)ホームヘルパー2級
看護師または准看護師
【訪問介護員(ヘルパー)】
ケアプランに応じた生活援助・身体介護などを提供する職員です。訪問介護員は、介護職として必要な研修を修了し資格を取得した者のみが、サービスの提供をすることができます。
(必要な資格と条件)
介護福祉士(国家資格)
介護職員初任者研修
介護職員実務者研修
(旧)ホームヘルパー1級
(旧)ホームヘルパー2級
生活従事者研修 ※生活援助中心型の利用者宅にのみ訪問することができる
看護師または准看護師
【登録ヘルパー】
常勤や非常勤職員とは異なり、スポット的に利用者宅を訪問し、サービスを提供する職員です。訪問介護事業所に滞在することは少なく、ヘルパーの自宅から利用者宅へ直行する人もいます。
登録ヘルパーが多い事業所は、サービスを提供する時間が確保しやすいため、希望の時間帯にサービスを受けられる可能性が高くなります。
登録ヘルパーであっても、事業所のヘルパーに変わりはないため、不安なことや疑問点は相談すると良いでしょう。
訪問介護サービス事業所の選び方
サービス事業所を選ぶときは様々な視点から選ぶ
訪問介護サービスは高齢者の生活支援に必要なサービスを提供してくれる事業所です。そのため、事業所選びは非常に重要です。
ここからは、訪問介護サービス事業所の選び方のポイントについて見ていきましょう。
事業所の規模
ヘルパーの在籍人数が多い場合は、サービスを提供する時間帯が多いため、希望する時間帯でサービスを受けやすくなるでしょう。
事前説明のわかりやすさ
利用者や家族がサービス内容を正確に理解し、納得の上で利用することは、今後の関係性にも大きく影響します。分からないことを聞けずに疑問を残したままでは、サービスを受ける上でも信頼関係を築きにくくなります。事業者が丁寧に説明してくれるかどうか、また、質問に対して適切な回答が得られるかどうかを確認することが大切です。
事業所の評判や口コミ
近所で訪問介護サービスを利用している方がいる場合はサービスの内容や職員の様子など確認してみましょう。また、ケアマネジャーに確認するのもひとつの方法です。「事務所の対応が良いか」「問い合わせや相談に対する返答が迅速か」「利用者や家族からの評価が高いかどうか」など、様々な観点から評価することができます。自宅の中に入って支援をしてもらうため、訪問介護サービス事業所選びは慎重に行いましょう。
まとめ
今回は訪問介護について紹介しました。訪問介護は自宅に訪問してもらい、日常生活の支援や介護を受けることができるサービスです。支援を受ける本人や家族にとっては、相性の良いヘルパーとの出会いが在宅生活の質を高めることもあります。
しかし、介護保険に基づいたサービス提供のため、できること・できないことがあります。そのため、サービス内容や利用に関するルールを正しく把握することが大切です。そうすることで、より良い在宅生活を継続することができるでしょう。
この記事が、訪問介護サービスの理解に繋がれば幸いです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。