要支援・要介護ってどんな状態?要介護度の目安と介護認定に関する手続き方法を知っておこう。

「要支援と要介護ってどう違うの?」「要介護度が高くなるメリットとデメリットは?」このような疑問はありませんか?

介護サービスを受けるためには、要介護の認定を受ける必要があります。要介護度が決定すると、決定した区分ごとに定められた範囲で介護サービスを利用できます。要介護度が高いと受けられるサービスが増えますが、一部サービス利用料が高くなるものがあるので、注意が必要です。

今回は、要介護度について紹介しています。また、認定申請の流れや認定結果に対する不服申し立てについても解説しているため、ぜひご覧ください。


#要介護度#制度#手続き関係
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

要介護度とは

7段階の要介護度介護区分

要介護度は、高齢者や障がいをもった方の身体や精神状態から審査を行い、要支援1〜要介護5までの7つに分けられた介護区分です。要介護認定を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

年齢
区分
申請要件

65歳以上

第1号被保険者

特になし

40~64歳

第2号被保険者

特定疾病(16種類)の診断を受けた方

介護度の区分に関しては「要支援」と「要介護」の2つに分けられます。非該当を含む8つの要介護度の区分の目安は、以下の通りです。


区分
認定の目安
状態の目安

非該当

自立

支援の必要がない状態

一人で支障なく生活できる

要支援

要支援1

自立して生活ができるが、見守りや確認などの支援が必要

時々、物忘れがある程度

要支援2

自立して生活できるが、見守りや一部の支援が必要

物忘れなどがあるが声掛けにより自力で解決できる

要介護

要介護1

基本的に一人で生活できるが一部の支援が必要

内服の管理や食事の準備などができない

要介護2

食事や排泄などの日常動作はできるが、食事の準備や薬の確認などの支援が必要

内服管理や食事の準備、排泄がひとりではできない


要介護3

日常生活の動作に支援が必要

車いすの生活で立ち上がりが難しい

要介護4

一人では移動ができない状況で常に見守りや支援が必要

介助がないと動けない状態で、排泄はオムツの対応をしている

要介護5

支援がないと生活ができない

すべての動作で介助が必要

※上記表はあくまでも目安です。正確な判定は、要介護認定にて決定いたします。

ここからは、要支援の区分について見ていきましょう。要支援の場合は、介護の必要性は少なく、自立〜見守りの必要な状態と判断されています。受けられるサービスは介護サービスとは違い、介護予防サービスになります。

要支援1

要支援1は、基本的に一人で生活できる状態です。要介護状態にならないように介護予防サービスを利用して、状態の維持を目標とします。介護認定の区分では一番軽度の認定です。

要支援2

要支援2も、基本的に一人で生活できる状態です。要支援1と大きな違いは見られませんが、支援や声掛けがより必要となります。要介護状態にならないように介護予防サービスを利用して、状態の維持を目標とします。要支援2以上の認定を受け、認知症の診断があると、グループホームの入居が可能です。

続いては、要介護度について見ていきましょう。要介護の認定を受けると介護サービスを利用できます。施設などの利用も、要介護の認定が必要な場合もあるため、それぞれの区分の違いを知っておくと良いでしょう。

要介護1

身体機能は要支援2と大きく変わりません。身体機能が高くても、認知機能・判断能力の低下が見られる方も多くなり、見守りが必要な時間が増えます。要介護1から介護老人保健施設の入所が可能になります。

要介護2

身体能力はできることも多い状態ですが、ふらつきやつまづきがあるなど、目が離せない状態です。また、認知機能・判断能力の低下から、外出して帰って来られなくなる方もいます。

反対に判断能力や意思決定能力があっても、脳梗塞などで半身麻痺になり、介助を要する人もいます。要介護2から福祉用具の介護用ベッドや車いすを介護サービスでレンタル可能です。

要介護3

車いすを使用している方も多く、歩く、トイレに行くなどの日常生活動作に介助を必要とする方が多いです。食事は自分で食べられる方が多いですが、準備や片付けなどに支援が必要です。立ち上がりができても、ズボンの上げ下ろしなどの着脱動作が困難で、排泄時には介助を要します。

身体機能が高い場合は、認知症の診断を受けており、判断力や意思疎通が難しいケースもあります。要介護3から、特別養護老人ホームの入所が可能です。

要介護4

自力では起き上がることが難しい状態です。食事は自分で食べられる方と介助を要する方がもいます。排泄はオムツ対応または、介助によってトイレで行うことがほとんどです。

要介護5

日常生活のほとんどに、介助を必要とする状態です。自分では意思決定が難しく、中には意思疎通が図れない場合もあります。7つの介護認定区分の中で、一番重度の状態です。

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要支援・要介護認定者数の推移

少子高齢化が進み高齢者数はどんどん増えている

介護保険は2000年にスタートしました。その頃より、少子高齢化が問題視されていましたが、20年以上経った今、どうなっているのか、2000年当時と現在の高齢者数の推移を確認してみましょう。


2000年4月
2021年3月
倍率

65歳以上の高齢者

2,165万人

3,579万人

1.7倍

介護認定を受けている人

218万人

682万人

3.1倍

介護サービス利用者

149万人

509万人

3.4倍

21年間で大きく増加していることがわかります。続いて介護認定を受けた方の数を見ていきましょう。

要介護(支援)の認定を受けた方は、2000年から2019年の間で約2倍近く増加しています。要支援が1と2の区分で分かれた、2009年以降を参考に見た場合、要介護1と要介護2の増加率が高いことがわかります。

毎年の集計では、認定調査を受ける方は、21年間連続で増加しており、認定者も合わせて増えている状況です。しかし、要介護5のみ若干ではありますが、減少傾向にあります。

今後、2025年には団塊の世代が65歳以上の高齢者になることが課題のひとつとして挙げられています。また、2042年に高齢者数のピークを迎え、以降も総人口における高齢者割合は増加していき、2055年には25%を超える予想となっています。

そのため、今後も要介護や要支援の認定を受ける方は増加する一方と考えられるでしょう。

出典:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」


要介護度の認定基準と状態

介護区分が決まるのは介護を要する時間から

介護認定が決定する基準は、身体状況の低下や認知機能の評価だけではなく、これらをもとに「介護にあてる時間がどの程度必要か?」で判断します。時間を割り出すための認定調査項目は、以下の通りです。

属性
項目
設問数

第1群

身体機能・起居動作

13項目

第2群

生活機能

12項目

第3群

認知機能

9項目

第4群

精神・行動障害

15項目

第5群

社会生活への適応

6項目

その他

過去14日間にうけた特別な医療について

12項目


参照:認定調査票(特記事項)の構成

これらの評価から時間を算出し「要介護認定等基準時間」と照らし合わせます。「要介護認定等基準時間」は以下の通りです。

要介護度
基準

要支援

25分以上32分未満又はこれに相当する状態

要介護1

32分以上50分未満又はこれに相当する状態

要介護2

50分以上70分未満又はこれに相当する状態

要介護3

70分以上90分未満又はこれに相当する状態

要介護4

90分以上110分未満又はこれに相当する状態

要介護5

100分以上又はこれに相当する状態

例えば、1日の内に50分間介護が必要とみなされると「要介護2」、また1日100分間介護が必要な場合は「要介護4」となります。

要介護認定は全部で7つの区分に分かれます。介護の認定を受けると介護サービスや介護予防サービスが利用可能です。しかし、サービス利用には支給限度額が設けられており、介護度が高くなるにつれ上限額も高くなります。それぞれの上限額について見ていきましょう。


要介護度
上限額
単位

非該当

なし

0円

0

要支援

要支援1

50,320円

5,032

要支援2

105,310円

10,531

要介護

要介護1

167,650円

16,765

要介護2

197,050円

19,705

要介護3

270,480円

27,048

要介護4

309,380円

30,938

要介護5

362,170円

36,217

(令和4年8月現在)

支給限度額は1ヶ月で利用できる介護サービスの上限額で、超えた分は全額自己負担となります。介護保険の単位は、基本「1単位=10円」ですが、市区町村や介護サービスの種別により変動があるため、注意が必要です。

この、支給限度額の範囲でサービスを調整するのが、ケアマネジャーの仕事です。要支援者は地域包括支援センターのケアマネジャーが担当、要介護者は居宅介護支援事業所などのケアマネジャーが担当します。ただし、要支援者であっても、地域包括支援センターから委託があれば、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当する場合もあります。


要介護度が決まるまでの流れ

申請から決定までは原則30日程度かかる

要介護度の認定を受けるためには、要介護認定申請が必要になります。流れは次の通りです。

  1. 要介護認定の申請

  2. 認定調査・認定審査

  3. 要介護度の決定

  4. ケアマネジャーとの契約

  5. 介護サービス計画書の作成

  6. 各事業所と契約・サービスの開始

ひとつずつ確認していきましょう。

要介護認定の申請

要介護の認定を受けるためには、市区町村の窓口に要介護認定の申請書を提出します。要介護認定の申請書には、かかりつけ医や認定調査のおおまかな予定を記載します。また、40〜65歳未満の第2号被保険者が申請する場合は「医療保険証」が必要になるため、忘れずに準備しましょう。

認定調査・認定審査

要介護認定の申請書に書いた連絡先に連絡があるため、認定調査日を調整しましょう。調査は、市区町村の職員が、自宅に訪問しご本人の身体の動きや精神状態について聞き取りと確認を行います。入院中の場合は、病院で行います。また、要介護認定の申請書に記載したかかりつけ医に対して、主治医の意見書を作成してもらいますが、市区町村から依頼するため、利用者や家族で対応する必要はありません。

認定調査の結果と、主治医の意見書をもって、コンピューターによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定が行われます。原則30日以内に認定結果が出るため、認定調査の後は結果が届くまで待ちましょう。

要介護度の決定

要介護度が決まったら、要介護度や認定日が記載された介護保険証が自宅に郵送されます。介護保険証には有効期限も記載されているため、確認しておくと良いでしょう。新規申請の場合は、原則6カ月間の有効期間があり、有効期間が切れる前に、更新申請と認定調査を行います。要介護度は、要支援1〜2、要介護1〜5の7段階から決まります。認定結果が納得いかない場合は、不服申し立ても可能です。

ケアマネジャーとの契約

要介護度が決まったら、次はケアマネジャーとの契約を行います。近くの居宅介護支援事業所や市区町村の窓口で相談すると、担当のケアマネジャーを探してもらえます。要支援の場合は、お近くの地域包括支援センターに相談すると良いでしょう。担当のケアマネジャーが決まったら必要な支援を相談して、サービス内容を相談します。

介護サービス計画書の作成

各サービス内容が決まったら、担当ケアマネジャーにサービス計画書を作成してもらいます。サービス計画書の作成は介護保険を利用できるため、費用負担は必要ありません。

各事業所と契約・サービスの開始

利用するサービスと事業所が決まったら、各事業所との契約が必要です。契約後、サービスの実施日時を調整し、サービスが開始されます。


要介護度の更新、変更、不服申し立てについて

介護認定には最長でも48ヶ月ごとに更新が必要

介護認定結果には有効期間があります。介護保険者証や介護認定決定通知書で確認すると良いでしょう。新規申請の場合は、6カ月間の有効期間です。有効期間が切れる2ヶ月前から更新申請が可能になります。新しい認定を受けずに介護認定の期間が過ぎた場合は、一時的に介護保険サービスが利用できなくなるため注意が必要です。

認定期間中であっても、状態の変化などにより、介護認定変更の手続きが可能です。例えば、低い介護認定(要介護1や要支援)で認定されていても、脳梗塞などで介助が必要となった場合、要介護1以下の支給限度額では十分な介護サービスが受けられないでしょう。そのため、変更申請をして現在の状態を新たに見直してもらいます。

介護認定の結果に納得できない場合は不服申し立てが可能です。不服申し立ては要介護認定を申請手続きをした市区町村の窓口ではなく、都道府県の介護保険窓口で行います。申請が妥当と判断されれば再審査を行いますが、時間がある程度かかってしまうことには注意しましょう。


要介護度が変わるメリット・デメリット

介護度が高くなれば受けられるサービスが増える

要介護度が高くなると支給限度額も上がるため、サービス利用料は増えますが、受けられるサービスの選択肢が増えます。

反対に、介護度によってサービス利用料が変わらないサービスは以下の通りです。※毎月支払う介護保険料は変わりません。

  • 福祉用具貸与

  • 福祉用具の購入

  • 住宅改修

  • 訪問介護

  • 訪問看護

  • 居宅療養管理指導

施設を利用する場合、施設の形態にもよりますが、要介護1と要介護5では利用料金が月々1~2万円ほど差があります。また、施設によって入居要件が「要支援2以上」「要介護3以上」など設けられているため、施設入居を希望する場合は介護度が高い方が有利と言えます。

まとめ

要介護度は、認定を受ける方の身体状況や精神状態から決まります。認定調査や主治医の意見をもとに「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神」「行動障害・社会生活への適応」など5つの項目ごとに介護が必要な時間を算出して、要介護認定等基準時間に当てはめ、7つの区分に分類します。

介護認定が決定するまでに、30日前後かかるため、必要な場合は早めに申請しておくと良いでしょう。介護度が高くなると、支給限度額の上限が高くなるため、受けられる介護サービスの量が増えます。

また、施設の入所要件に一定の介護度が必要な場合もあるため、施設入居を検討している方は、どの程度の介護度が必要か調べておくと良いでしょう。

今回の記事が、要介護度の理解に繋がれば幸いです。

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