病院で行うリハビリについて徹底解説!病院と施設、在宅でのリハビリの違いを理解しよう。
「リハビリって何をするの?」
「自宅でもリハビリはやってもらえるの?」
と、リハビリについて疑問はありませんか?
リハビリについてわからないことが多いと、今後の生活も不安になるでしょう。
この記事では、病院で行うリハビリの内容・頻度・入院期間・退院先・制度によるリハビリの違いを解説しています。
最後まで読み進めると、リハビリについて理解が深まり、安心してリハビリを受けることができるでしょう。ぜひ参考にしてください。
とぐち まさき
渡口 将生
病院で行うリハビリは3種類
それぞれの専門領域の知識を持ったリハビリ職員が対応する
病院で行うリハビリは「理学療法」「作業療法」「言語療法」です。それぞれのリハビリを説明していきます。
理学療法
理学療法士が行うリハビリです。病気やけがにより、身体に障害がある方に対して「座る・立つ・歩くなど基本動作能力の回復」「障害の悪化を予防」を目的に運動療法や物理療法などのリハビリを実施します。
作業療法
作業療法士が行うリハビリです。病気やケガ・心の病気・認知症など障害がある人に対して、「日常生活動作(着替え・食事・入浴など)」「仕事・趣味などの活動に必要な能力の回復」「障害の悪化を予防」を目的に運動療法や作業療法を実施します。
言語療法
言語聴覚士が行うリハビリです。病気による「言葉の障害(言葉が出ない、言葉を間違えてしまうなど)」「発音(うまく発音できない)の障害」「食べる機能障がい」「高次脳機能障害(記憶・思考・判断など高度な能力障害)」に対してリハビリを実施します。
病院の種類によって異なるリハビリ内容と主な退院先
目的によって病院の種類が変わる
病院の種類は「急性期病院」「回復期病院」「維持期(慢性期)病院」があります。リハビリ内容や期間・退院先など、それぞれの特徴を確認していきましょう。
急性期病院
急性期病院は、病気発症から間もないことから病状が不安定な患者さんが多く、無理なリハビリはできません。
安静の時間が長いことから、関節や筋肉が硬くならないようにストレッチをしたり、筋力低下予防のため、無理のない範囲でベッドを離れて体を動かします。リハビリ時間は、1回20〜40分で、1日1回(週5日)実施する場合がほとんどです。
状態が安定して、身体機能に大きな問題がなく、在宅生活が可能になると退院になりますが、自宅退院が難しいときは、回復期病院に転院しリハビリを継続します。
回復期病院への転院は、対象となる疾患に加え、医師が継続的なリハビリを必要と判断した場合のみで、病気やけがにより発症から1〜2ヶ月以内に転院する必要があります。
障害の程度により、外来リハビリを検討しても良いでしょう。
回復期病院
回復期は病状が落ち着いているため、在宅復帰・社会復帰に向けて積極的なリハビリを実施します。リハビリは1日最大180分(1回40〜60分を、1日2〜3回)実施します。
身体機能の回復状況により、維持期(慢性期)病院への転院、または介護老人保健施設やリハビリに力を入れている有料老人ホームへの入所を検討します。
回復期病院は入院期間が、以下のように定められています。
病状 | 入院日数 |
---|---|
脳血管疾患・脊髄損傷・頭部外傷などの発症後もしくは手術後 | 150日以内 |
高維持脳機能障害を伴う場合、重度の頸髄損傷など | 180日以内 |
大腿骨・骨盤・股関節・膝関節の骨折 | 90日以内 |
2肢以上(腕と足など)の多発骨折の発症または手術後 | 90日以内 |
外科手術や肺炎など治療時の安静による廃用症候群(過度な安静による筋力低下などの身体障害)を有している | 90日以内 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節または膝関節の神経、筋または靱帯損傷 | 60日以内 |
股関節または膝関節の置換術後(人工関節にする手術) | 90日以内 |
回復期病棟の、詳しい入院可能期間は厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要」20ページを参照してください。
退院先の病院や施設を探す場合は、病院のソーシャルワーカーに相談しましょう。
維持期(慢性期)病院
急性期、回復期を経て病状が安定した状態が維持期です。維持期病院は、急性期や回復期で獲得した機能や日常生活動作能力の維持・向上を目的にリハビリをします。
維持期では医師が「医療保険によるリハビリ継続が必要と判断した場合」は月13単位(1単位20分)までリハビリが可能です。
リハビリは必要ないと判断された場合は、医療保険ではなく、介護保険のリハビリに移行が必要となり病院では実施されません。
精神科病棟
心の病気で精神科病棟に入院した場合も、個々の身体機能や精神状態に合わせた治療やリハビリを実施します。
入院期間の制限はありませんが、入院継続の指示が必要です。詳しくは厚生労働省「精神科の入院制度について」をご覧ください。
病院でのリハビリと在宅リハビリの違い
在宅リハビリではより生活環境にあわせた内容を実施
病院で行うリハビリの目的は身体機能の回復が中心となり、在宅リハビリでは生活の質(QOL)の向上や家族の心理的サポートも視野に入れて実施されます。
病院のリハビリは、機能の回復をはじめ、退院後の生活環境を想定して必要な動作がどこまで出来るか見極めたり、足りない部分のサービスやサポートの調整と並行してリハビリを行います。
在宅でのリハビリは、病院で実施したリハビリ内容を継続することもありますが、家族の介護負担軽減と心理面のサポートも大きな役割となります。
また、在宅リハビリは、介護度別にサービスの利用限度が定められており、他のサービスの利用回数・頻度と調整して実施されます。介護保険の負担内で実施する場合は、1回20分・週6回が限度となり、1回40分行う場合は週3回の利用が可能です。3ヶ月に1度、医師の診察を受け、リハビリに関する指示書も必要です。
病院でのリハビリと施設リハビリの違い
施設や事業所により目的や頻度が異なる
施設リハビリは、回復期病院のリハビリと比べると、長い時間や頻度でリハビリを受けられないことが多いです。一方で、ベッドから起き上がる、立ち上がる、食堂まで歩くなど、日常生活動作すべてをリハビリと考える(生活リハビリ)ため、普段の生活にリハビリが溶け込んでいます。また、病院に比べ自由度が高く、施設の種類により様々な活動があります。施設リハビリは、以下の3つです。
介護老人保健施設
特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム
デイケア
それぞれの特徴について紹介します。
介護老人保健施設
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が入所者100名に1人在籍しており、専門的なリハビリを受けることができます。
入所後3ヶ月間は、短期集中リハビリとして週3回以上リハビリを受けることができますが、基本的に1回20〜30分を週2回行うと定められています。回復期病院では毎日2〜3時間のリハビリを受けているのに比べ、リハビリ時間は少なく、3ヶ月以降は頻度も減る部分に注意が必要です。
また、入所期間は原則3カ月程度とされており、入所を継続したい場合は必要性について施設側の審査が行われます。施設の運営状況により異なるため、入所前に確認しましょう。
特別養護老人ホーム・介護付き有料老人ホーム
特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームでも、リハビリ専門職や機能訓練指導員によるリハビリを受けることができます。機能訓練指導員は、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師の場合もあり、必ず理学療法士や作業療法士などによるリハビリを受けられるわけではありません。
また、介護付き有料老人ホームの場合、リハビリ専門職を常駐させることでご本人の生活リズムに合わせたリハビリを実施したり、最新のリハビリ機器を取り入れて、自立支援や在宅復帰に力を入れている施設も増えています。
一方で、リハビリ機器や専門職をそろえている分、月額利用料が高くなる傾向にあります。入院費と比べると「負担が大きくなる」と感じる方も多いため、リハビリの目的や希望するリハビリの内容にあわせて検討しましょう。
通所リハビリ(デイケア)
通所リハビリは、介護老人保健施設や病院、クリニックに通い、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士によるリハビリを受けることができます。
短時間型・半日型・1日型があり、滞在時間は短時間型で1〜2時間・半日型は3〜4時間・1日型は6〜8時間程度です。
「退院してもリハビリしたい」を叶えるためのポイント
退院後にリハビリを受けたい場合は退院前の調整が必要
退院後のリハビリ継続をスムーズに行うために、4つのポイントが大切になります。
各専門職から経過と見通しを確認する
ご本人の身体状況、希望を確認する
退院先の選択肢を確認する
リハビリの希望を決める
ひとつずつ解説します。
各専門職から経過と見通しを確認する
入院中は、定期的に医師やリハビリ専門職・看護師・相談員と話をする機会が設けられます。
リハビリには医師の指示が必要なため、「病気の状態」「今後の見通し」について確認して、リハビリ継続の希望を伝えましょう。
リハビリ専門職からは「入院から現在までの変化」を聞き、看護師からは「病棟での生活状況・介護状況」を確認すると在宅生活のイメージが具体的になるでしょう。
相談員からは介護保険の申請方法や施設情報、ケアマネジャー・地域包括支援センターなどについて教えてもらうと、退院後に介護サービスを利用するときも安心です。
ご本人の身体状況、希望を確認する
リハビリに対するご本人の希望を確認しましょう。意欲的な方から、身体を動かすことがおっくうな方まで様々です。
入院中のリハビリ内容や実施評価、退院後のリハビリに関する希望、生活のイメージなどを確認し、今後、どのようにサービス(訪問リハビリ・デイケアなど)を利用するか、どのような退院先を検討するべきか決めるための判断材料になります。
退院先の選択肢を確認する
相談員は多くの経験と情報を持っているため、一人ひとりにあわせた情報提供をしてくれます。
「退院後に介護が行えるか」「金銭的に問題はないか」「一人暮らしの生活に戻れるか」など退院先を考えるにあたって多くの悩みが出てきます。どのような選択肢が考えられるか相談すると良いでしょう。
リハビリの希望を決める
退院後にどのようなリハビリを継続したいのかを決めましょう。介護者の負担は思っている以上に大きい場合もあるため、本人のみの意見ではなく介護者の意見も確認が必要です。
退院後に受けられるリハビリ
退院後は介護保険が優先される
退院後に受けられるリハビリは以下の3つです。
医療保険リハビリ
介護保険リハビリ
自費リハビリ
それぞれのリハビリについて見ていきましょう。
医療保険によるリハビリ
医療保険によるリハビリは外来や入院など、病院で行うリハビリのことで、受けられる日数に制限があります。しかし、医師の判断により延長される場合もあるでしょう。
訪問リハビリは、介護保険の認定を受けていない場合や、特定の条件があると医療保険で利用できます。
介護保険によるリハビリ
介護保険でリハビリを受けるためには、介護認定が必要です。
介護認定を受けた方は疾患や期間などの条件はなく、必要性に応じて通所リハビリや訪問リハビリを始めとした介護サービスを利用できます。
医療保険のリハビリと併用はできず、介護保険が優先されるため注意しましょう。
自費によるリハビリ
自費によるリハビリは、医療機関が行っている場合もあれば、特定疾患に対する専門的なリハビリを提供する施設もあります。
期間制限がないことや希望通りの治療を受けられることがメリットです。
しかし、医療機関ではないため医師が常駐していない場合や料金が高いなどのデメリットもあります。自費リハビリの医療費控除に関して国税庁ホームページに明記されていませんが、「治療のためのあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師などによる施術の対価」は医療費控除の対象になっています。広い意味でこの項目を捉え、自費リハビリが医療費控除の対象と認められる場合もあるため、問い合わせるとよいでしょう。
まとめ
病院では理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による専門的なリハビリを受けることができ、リハビリ時間や頻度は入院先の病院により異なります。
急性期病院では週5日1回20〜40分、回復期病院では毎日2〜3時間のリハビリを受けることができ、内容は個別性の高い専門的なものが多いです。
退院先や退院後のサービス利用などは身体状況や家庭状況を考え、医師・リハビリ専門職・看護師・相談員・本人・家族で話し合って決めましょう。
自費サービスを利用してリハビリを受けることもできます。自費リハビリでは期間制限がないことや希望通りの治療が受けられますが、料金が高いので医療費控除も検討するといいでしょう。
この記事が入院中のリハビリと、退院後の生活につながれば幸いです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。