老人ホームでの介護職員の仕事内容は?受けられるサービスを徹底解説
「介護職員は介護だけが仕事なの?」「介護事業の種類によってサービス内容に違いはあるの?」「有料老人ホームではどんな仕事をしているの?」など疑問に感じることもあるでしょう。
介護職員は、資格の有無や事業所ごとの仕事内容が様々なため、提供するサービスも異なります。
今回は、老人ホームで働く介護職員について紹介しています。最後までみていくことで、各施設における介護職員の働き方の違いや特徴も理解が深まるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
とぐち まさき
渡口 将生
介護職員とは
資格の有無ではなく介護職として働く人の総称
介護職員は、介護の事業所や施設で働く介護職員の総称です。介護職員の中には、国家資格である「介護福祉士」や「介護職員実務者研修」「初任者研修」を修了し、資格を取得した職員もいますが、無資格で勤務している職員もいます。
また、看護師やケアマネジャーの資格をもった人でも、事業所や施設の辞令で「介護職員」として配置(配属)されている場合は、介護職員となります。例えば、看護師の資格を持った介護職員の場合でも、介護職員の業務内容を遵守するため、医療行為は行えません。
介護職員は、高齢者や障がい者に対して、日常生活上自分でできない動作などを支援します。利用者が自分で出来るように指導や工夫、または直接的な援助を行うことで、「自立」をサポートする仕事です。
働く場所は、介護施設・病院・訪問介護事業所(ヘルパー事業所)などがあり、それぞれで役割や業務内容に違いがあります。特に老人ホームと呼ばれる「有料老人ホーム」では、ホームごとに特徴や力を入れている部分が異なるため、違いが出やすい場所となります。
老人ホームの種類別における介護職員の役割
老人ホームには3種類の施設がある
老人ホーム(有料老人ホーム)には「介護付き有料老人ホーム(特定施設)」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」と3つの種類があり、それぞれ介護サービスの提供方法が異なるため、必要な人員数にも違いがあります。
簡単な違いについては以下の表をご覧ください。
介護職員の役割 | 人員数 | |
---|---|---|
介護付き有料老人ホーム (特定施設) | 24時間介護サービスを提供できるように常駐 | 要支援2以上の方3名に対して看護・介護職員1名を配置する「3:1」の基準 |
住宅型有料老人ホーム | 住宅に住んでいる方に対して訪問介護としてサービスを提供 常駐はしない | 必要数(規定なし) |
健康型有料老人ホーム | 安否確認と生活相談がメイン 身体的な介護は基本的に行わない | 必要数(規定なし) |
それぞれの施設の特徴や詳細については、以下の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
介護付き有料老人ホームは、厚生労働省の定めた基準を満たした施設で特定施設の指定を受けた施設です。長期的な介護支援が可能で、人員配置基準などが細かく定められているのが特徴です。特定施設になると、介護福祉施設の特別養護老人ホームと同等の扱いとなるため、看護・介護職員の配置を「3:1」の割合に設定する必要があります。
「3:1」の配置割合については以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
老人ホームによって働き方が異なる
介護職員はケアプランに沿って介護を提供する
介護職員は、施設によって行うサービスや業務が異なります。例えば、前述のように介護付き有料老人ホームでは、24時間介護サービスを提供するため、交代制で常駐する必要があり、生活全般を援助していきます。食事・入浴・排泄の三大介護が主な仕事内容です。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
しかし、住宅型有料老人ホームでは、併設された訪問介護事業所やその他の事業所から、ヘルパーが決まった時間に入居者の居室を訪問します。そのため、ホームに常駐するスタッフは少なく、介護度の低い方が入居するケースが多い傾向です。
訪問介護は、ケアマネジャーが入居者に合わせた介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、計画に基づいて介護サービスを提供する仕事です。計画には、生活援助(掃除や買い物)や身体介護(排泄介助や入浴介助)があり、開始から終了時間までが決められています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
業務内容と老人ホームの1日の流れ
三大介護を中心に様々な業務を行う
介護職員は介護業務のなかでも、「食事・入浴・排泄」の三大介護を中心に、業務スケジュールに合わせて分担しながら利用者のケアを行います。業務の合間に利用者の相談にのることもあれば、レクリエーションや機能訓練など様々な業務を行う仕事です。
ここからは、老人ホームの一日の流れを紹介します。
【介護付き有料老人ホームの例】
時間 | 業務内容 |
0:00 | 巡視 排泄介助 |
1:00 | 巡視 |
2:00 | |
3:00 | 巡視 排泄介助 |
4:00 | 巡視 |
5:00 | |
6:00 | 起床介助 着替えなど |
7:00 | 朝食準備 |
8:00 | 朝食介助 口腔ケア |
9:00 | 入浴介助・レクリエーション・機能訓練など |
10:00 | |
11:00 | 昼食介助 |
12:00 | 昼食介助 口腔ケア |
13:00 | 入浴介助・レクリエーション・機能訓練など |
14:00 | |
15:00 | おやつ介助 |
16:00 | 余暇時間 |
17:00 | 夕食介助 |
18:00 | 夕食介助 口腔ケア |
19:00 | 就寝介助 |
20:00 | |
21:00 | 排泄介助 |
22:00 | 巡視 |
23:00 |
上記のような流れで、日々介護サービスを提供しています。
勤務形態は、早出・日勤・遅出・夜勤など時間帯別にシフトが組まれ、引き継ぎを行いながら高齢者を支援しています。
夜間帯にも定期的に巡視を行い、急な体調不良はないかを確認し、排泄介助なども行います。また、ご家族の対応や相談なども業務のひとつのため、訪問・面会時には利用者の様子や疑問などを聞いてみると良いでしょう。
老人ホーム以外の介護サービスは?
それぞれの施設で様々な役割を持つ
老人ホーム以外でも施設系であれば大きく業務内容は変わりません。しかし、種類によって特徴的な業務もあるため、確認していきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者向けの賃貸住宅です。常駐する介護職員は少なく1名程度で、基本的に介護サービスは行いません。主な業務は、生活支援サービス(掃除・ゴミ捨て・食事の提供など)とフロント業務(相談援助)です。マンションの管理人さんをイメージするとわかりやすいかもしれません。入居中の介護サービスは、外部や併設の訪問介護事業所が利用者宅を訪問し、サービス提供します。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは近年ユニットケアの推奨が行われており、10人程度の1グループを少人数で見守る形の施設が増えています。そのため、身近に職員がいることで、安心感をもってもらうことが可能です。また、夜間帯では利用者20名に対し介護職員1名で対応している場合も多い傾向です。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設の介護職員は、医師・看護師・リハビリスタッフと連携しリハビリの補助や機能訓練を行います。また、自宅に帰ることを目標にしている人も多いため、その分ご家族との接点が増え、情報交換の場や助言を行う場面もあるでしょう。
グループホーム
認知症対応型施設のため、認知症の方の生活を支援していきます。認知症の知識や理解をもった介護職員も多く、専門性の高いアドバイスを受けることもできるでしょう。他の施設にはあまり見られない業務として、入居者と一緒に調理・買い物などを行うこともあります。認知症のケアについて不安や疑問がある場合は、グループホームの介護職員に相談してみるとよいでしょう。
訪問介護(ヘルパーステーション)
利用者宅を訪問して、身体介護(排泄・入浴・食事などの介助)と生活援助(食事の買い物や準備・掃除・洗濯などの介助)を行います。様々な家を訪問する職員が多いため、自宅の改修や介護のポイントなども教えてもらえるかもしれません。身近に介護を支援してくれる心強い存在です。
通所介護(デイサービス)
通所介護(デイサービス)は、レクリエーション活動に力をいれている事業所が多いです。また、自宅まで送迎してくれるので、日々の様子や依頼したいことも伝えてもらいやすいことが特徴です。事業所により異なりますが、一般的に9時〜17時がサービス提供時間となっており、職員の勤務交代が少ないため利用者と顔なじみになりやすく、安心して通うことができるでしょう。デイサービスでは食事や入浴の介助を行うことが多いため、自宅にお風呂がない、あるいは使えない場合は対応可能な事業所を依頼すると良いでしょう。
近年では、リハビリ特化型の事業所も増えており、介護職員が機能訓練を行う場合もあります。
通所リハビリテーション(デイケア)
もう1つの通所サービスとして、デイケアがあります。デイケアは「通所リハビリテーション」のことで、デイサービスとは違うので注意が必要です。デイケアはリハビリがメインになっているため、リハビリ専門職も勤めていますが、介護職員でも行える内容の体操や機能訓練を中心に行います。介護方法とリハビリについて相談もできるので、自宅でできる体操など相談してみても良いでしょう。
医療行為ができる介護職員
介護職員は基本的に医療行為が行えません。医療行為に該当するものを介護士が行ってしまうと違法行為となり、責任を課せられてしまう場合もあるので依頼はできません。
【介護職員が行える医療行為】
体温計を使った体温測定
自動血圧測定器を使った血圧測定
パルスオキシメータの装着
軽い傷ややけどの専門的な判断や技術を必要としない処置
医薬品使用の介助
包化された内用薬の服薬介助
湿布を貼る
軟膏を塗る(床ずれの処置は含まない)
目薬の点眼
座薬の挿入
鼻腔粘膜への薬剤噴霧
【条件が合えば行える医療行為】
耳掃除
(耳垢栓塞の除去はNG)爪切り
(爪やその周辺の皮膚などに異常がなく、糖尿病などの疾患に伴う専門的な管理が必要ない場合のみOK)口腔ケア(歯周病などの異常がない場合のみOK)
カテーテルの準備や体位の保持
ストーマのパウチに溜まった排泄物の除去
(肌に接着したパウチの取り換えはNG)市販の浣腸による浣腸
(使用する浣腸に規定あり)
【研修修了者のみが行える医療行為】
喀痰吸引や胃ろうは医療行為として考えられてきていましたが、自宅では家族が行っているという拝啓もあり、研修カリキュラムを修了した人のみが実施可能な行為です。しかし、ひとつ注意点があり、カリキュラム修了者であっても、その人が働く事業所が申請や契約ができていない場合、医療行為は行えません。
良い介護職員って?
良い介護職員を見極めるポイントは人によって様々ありますが、判断基準をいくつか紹介していきます。判断基準は以下の通りです。
人と関わることが好き
チームで行動できる
気づきが多い
接遇ができている
話を聞ける
対応が早い
明るくて笑顔が多い
過剰な支援をしない
ひとつずつ見ていきましょう。
人と関わることが好き
介護の仕事は対人援助業務のため、必ず人と接する必要があります。人とのコミュニケーションや援助を行うことに抵抗があるようでは仕事にならないでしょう。
チームで行動できる
介護の仕事は介護職だけではなく、看護師・医師・リハビリ・ケアマネジャー・ご家族など、利用者に関わるすべての方とチームで行う仕事です。「単独で判断し行動できること=良い介護」という訳ではありません。ご家族からすると、すぐに動いてもらえる頼りになる介護職員に映るかもしれませんが、単独の判断はチームの輪を乱すこともあるでしょう。多職種の専門的な視点・意見を加えて総合的に判断していくことが重要です。そのため、チームケアを意識して介護できる職員は良い介護職員と考えられます。
気づきが多い
些細なことでも気づく介護職員は良い介護職員です。些細なことに気づき報告できるということは、普段から利用者をよく見ているといえるでしょう。例えば「血圧や体温は正常だけど、なんか変な感じがする」このような気づきから、脳梗塞の早期発見につながったという事例もあります。測定器の数値だけではなく肌感覚で感じ取れる介護職員はとても頼りになるでしょう。
接遇ができている
利用者やご家族に対して、言葉使いや対応が雑だと感じる介護職員もいるかもしれません。普段から接遇を意識して、言葉使いや身だしなみを整え対応している介護職員は、いつでも気持ちよく接してくれるでしょう。他人のお世話をする仕事なので、自分自身の見だしなみを整えられない人には難しい仕事とも考えられます。
話を聞ける
話を聞くことは、意外に難しいスキルです。また、介護や医療職では、話を「聞く」ではなく「傾聴する」ともいわれます。相手の話に耳を傾け、意見や希望を傾聴できるスキルは、介護だけでなく人として大きな存在で安心して相談できる人といえるでしょう。
対応が早い
対応の早い介護職員は良い介護職といえるでしょう。しかし、前述の通り単独で行うことが必ずしも良いという訳ではありません。チームで行うことは基本ですが、ニーズに対してすぐに行動に起こし問題解決や問題提議してもらえる介護職員は安心できるでしょう。
明るくて笑顔が多い
対人援助の仕事なので、いくら技術や知識、経験をもった職員でも暗くて元気がないと不安が残ってしまいます。明るく元気に返事をしてくれるだけでも、安心して介護を任せられるでしょう。
過剰な支援をしない
支援をたくさんしてもらえる介護職員は良い介護職員と感じますが、介護はできないことを援助して自立を目指す仕事です。過剰な支援は、利用者の行動する機会を減らし、できることをできない状態にしてしまう可能性もあります。なんでもやってくれることが決して良い介護職員の基準にはならないことを知っておきましょう。
まとめ
老人ホームには3つの種類があり、それぞれ介護職員の業務内容や働き方に違いがあります。
介護職員は主に「排泄」「入浴」「食事」の三大介護を行いますが、その他にも「機能訓練」「送迎」「掃除」「洗濯」「調理」など日常生活において必要な支援を行います。もちろんご家族からの相談も可能なので、普段から近くで支援している介護職員から情報をもらうこともできるでしょう。
施設によって様々な働き方をする介護職員について、理解が深まれば幸いです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。