24時間看護師が常駐している介護施設とは?利用できる医療的ケアや費用について解説
「看護師が24時間常駐している施設はどこ?」「どんな医療的ケアが受けられるの?」このような疑問はありませんか?
常時医療的ケアが必要となる方は、一般的な介護施設の利用が難しい場合も多く、困っている方もいるでしょう。介護施設は多くの種類とそれぞれに役割や目的を持っています。しかし、あくまでも介護が主に考えられているため、看護師の数は介護職員に比べて少ない施設がほとんどです。
そこで今回は、看護師が24時間配置されている施設について紹介します。また、施設ごとの費用やサービスを比較して紹介しているため、施設選びの参考にしてください。


とぐち まさき
渡口 将生
24時間看護師が常駐する介護施設とは
24時間看護師が常駐しているとは限らない
介護施設には様々な職種が働いていますが、看護師が必ず勤務しているとは限りません。施設の基準や運営方法によって、看護師の配置は異なります。
介護施設での看護師の仕事内容は、主に医療的ケアです。医療的ケアとは、在宅や日常生活の中で、本人や家族などが日常的におこなう医療行為のことです。
医療的ケアには、服薬介助・バイタル(血圧・体温・血中酸素飽和度など)測定や、喀痰(かくたん)吸引・経管栄養・気管切開部の衛生管理・酸素療法・人工呼吸器の管理など、看護師しか行うことができないものがあります。
医療的ケアが必要な人が介護施設に入居する場合は、ケアに対応している施設選びが必要です。そのため、看護師の配置人数が手厚い介護施設と、配置人数を確認しましょう。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、介護を必要とする高齢者の自立や在宅復帰を目指すための施設で、医師による医学的管理の下、看護・介護・リハビリ・栄養などの職種がサービスを提供しています。
入所基準は以下の通りです。
65歳以上(40歳以上で特定疾病の診断を受けた要介護認定を受けた人)
病状が安定している人
要介護1~5の認定を受けている人
リハビリを行い在宅復帰が望まれる人
上記を原則的な条件として入所受入を行っており、基本的には入所期間を、3〜6ヶ月程度と考えている施設が多い傾向です。そのため、退所後の方向性も考えながら利用を検討すると良いでしょう。
職員の配置は以下の通りです。
職種 | 割合 |
---|---|
医師(管理者) | 100人に対して1人 (夜間配置義務なし) |
看護師 | 100人に対して9人 (夜間配置義務なし) |
介護職 | 100人に対して25人 |
リハビリ職 | 100人に対して1人(PT/OT/STのいずれか) |
介護支援相談員(ケアマネ) | 100人に対して1人 |
介護老人保健施設は、看護師の配置が多い施設ですが、24時間の配置義務はなく、入所者数に対して、介護または看護職員のいずれかの配置と定められています。しかし、多くの施設では、看護師を24時間配置しているため、常時医療的ケアが必要な方でも利用しやすい施設です。
介護医療院
介護医療院は、要介護者で長期間の療養が必要な人に対し、療養上の管理・看護・介護・機能訓練・日常生活のケアを提供しています。
入所基準は以下の通りです。
65歳以上(40歳以上で特定疾病の診断を受けた要介護認定を受けた人)
要介護1~5の認定を受けている
日常的に医療的ケアが必要
一般的な介護施設では対応が困難
介護老人保健施設との違いは、継続的な医療的ケアが長期間必要な方を対象にしている施設で、入居期間が定められていません。また、看取りケアにも対応しています。
介護医療院はⅠ型とⅡ型の2種類に分かれているため、それぞれの違いを見ていきましょう。
Ⅰ型 | Ⅱ型 | |
---|---|---|
入居者 |
|
|
Ⅰ型とⅡ型の人員基準は以下の通りです。
職種 | Ⅰ型 | Ⅱ型 |
---|---|---|
医師 | 100人に対して3人 (宿直あり) | 100人に対して1人 (宿直義務なし) |
看護師 | 100人に対して17人 | 100人に対して17人 |
介護職 | 100人に対して20人 | 100人に対して17人 |
リハビリ職 | 必要に応じて | 必要に応じて |
介護支援相談員(ケアマネ) | 100人に対して1人 | 100人に対して1人 |
Ⅰ型は、夜間帯に医師の宿直があるため、夜間の緊急時でも迅速に対応できます。Ⅱ型に関しては、介護老人保健施設と同様の看護師配置や対応となります。他施設よりも高度な医療サポートがおこなえるため、看取りやターミナルケアを視野に入れた、長期入所ができるという点が他の施設にはない特徴です。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、病院と介護施設の中間的な施設です。2000年の介護保険施行以来、医療と介護を同時に提供する施設として運営しています。しかし、医療療養型病院との差別化ができていないことを理由に、2024年3月にサービスを終了することが決まっています。
人員配置配は以下の通りです。
職種 | 割合 |
---|---|
医師 | 100人に対して3人 (1人は常勤) |
看護師 | 100人に対して17人 |
介護職 | 100人に対して17人 |
リハビリ職 | 必要に応じて |
介護支援相談員(ケアマネ) | 100人に対して1人 |
2024年3月にサービスが終了するため、現在は介護医療院への転換が進められています。
ここからは、上記以外の施設を紹介します。看護師の配置はそれぞれ異なるため、確認しておきましょう。
特別養護老人ホーム
要介護3以上の方を入所対象とした施設です。「終の棲家(ついのすみか)」として長期入所が可能で、費用も抑えられることから人気があります。特別養護老人ホームでは、入所者3人に対して、介護職員または看護師を1人以上配置する義務があります。多くの施設が日中に看護職員を配置しているため、夜間帯は不在のことが多いです。また、24時間継続的に医療的ケアが必要な場合は入所が難しいこともあります。
養護老人ホーム
環境的・経済的に在宅生活の継続が難しく、養護・療養が必要な人を対象とする施設です。社会復帰・自立を目的としているため、長期間の入所はできません。看護師は、100人に対して1人以上配置となっているため、夜間帯に配置している施設は少ない傾向です。
介護付き有料老人ホーム(特定施設)
24時間介護職員が常駐しており、日常生活の生活援助や食事・排泄・入浴の支援を提供している施設です。看護師は入居者30人までは1人、50人増すごとに1人増える体制となります。看護師の24時間配置を特徴に運営している施設もあります。
次に看護師の配置が義務付けられていない施設を紹介します。
施設 | 詳細 |
---|---|
グループホーム | 要支援2以上で認知症により在宅生活が困難になった人が、9人以下のグループ(ユニット)で共同生活を行う施設です。 |
住宅型有料老人ホーム | 基本的に介護や医療サービスを提供しておらず、日常生活の生活援助や緊急時の対応、見守りサービスを提供する施設です。外部サービスを利用すれば、介護や医療が受けられます。 |
サービス付き高齢者向け住宅 | バリアフリー設計で安心して暮らせるように工夫されており、安否確認・生活相談などのサービスがある賃貸住宅です。 |
軽費老人ホーム (ケアハウス) | 家庭環境・住宅事情などの理由で在宅生活が困難な人が、低額で入所できる施設です。主に、生活支援サービスを受けることができます。 (ケアハウス) 60歳以上で身体機能の低下などにより、在宅で自立した生活に不安がある方や家族の支援が困難な人が利用できます。基本的に自立した生活ができるように工夫されています。 |
シニア向け分譲マンション | バリアフリー設計で、緊急時のコールや手すりなどが設備されている住宅です。居室内にキッチン・トイレ・浴室が備わっておりこれまでと同様の生活を過ごすことができます。基本的に介護や医療サービスの提供はありません。 |
このように、看護師が24時間配置している施設は限られています。また、配置義務もない施設もあるため、希望するサービスや身体状況により施設選びは重要です。
24時間看護師が常駐していることで受けられるサービス
看護師が常駐していても病院レベルの医療は受けられない
介護施設は、病院のように高度な設備が備わっている訳ではありません。そのため、介護施設で行える医療サービスには限度があります。
基本的に看護師が介護施設で行える医療的ケアは以下の通りです。
インスリン注射
ストマ交換
点滴
導尿
摘便
内服薬の仕訳
褥瘡処置
在宅酸素療法
中心静脈栄養(IVH)
人工呼吸器の管理
病変のある爪やその周囲に異常がある爪切り
また、医療的ケアの中でも、介護職が行えるものがあります。
(以下については看護師も行うことができます)
体温測定
点眼
自動血圧計での血圧測定
パルスオキシメーターの装着
坐薬挿入
鼻粘膜への薬剤噴霧
軽度の傷ややけどの処置
一包化された内服薬の服薬介助
耳掃除
爪切り(皮膚に異常がない)
湿布貼付
口腔ケア
軟膏塗布(褥瘡以外)
ストーマパウチ内の排せつ物の除去
カテーテルの準備や体位の保持
市販の浣腸による浣腸
また、条件を満たすことで介護職員でも下記の2つの医療行為を行うことができます。
喀痰吸引
経管栄養
条件は、以下の2つがあります。
事業所側:介護職員が喀痰吸引や経管栄養を行う施設として行政へ届出をする
実施者:規定されている研修及び講習を終了している
参照:厚生労働省「喀痰吸引等制度について」
24時間看護師が常駐する介護施設がおすすめの人
慢性的・進行性の疾患を持っている方にはおすすめ
介護施設では、病院と同等の医療が受けられる訳ではありません。そのため、利用できる状態には制限があります。その中で、おすすめの人は以下の通りです。
慢性的に医療的ケアが必要な疾患がある人
てんかんなどの突発的に病状の変化が見込まれる疾患がある人
パーキンソン病などの進行性の疾患がある人
内服の管理が必要な人
定期的に喀痰吸引が必要な人
酸素療法が必要な人
中心静脈栄養(IVH)が必要な人
経管栄養が必要な人
喀痰吸引が必要な人
排尿困難で導尿が必要な人 など
日中に看護師を配置している施設は多くあるため、一般的な処置や管理は十分対応可能です。ただし、上記に挙げたような疾患や処置が必要な方に関しては、介護職員では対応できない(一部を除く)ため、看護師が24時間常駐している施設の利用が必要となります。
24時間看護師が常駐する介護施設の費用
看護師配置による費用の差は少ない
看護師が24時間常駐する介護施設とその他の費用について比較してみましょう。
それぞれの違いは以下の通りです。
公的施設 | 民間施設 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
介護老人保健施設 (従来型個室) | 介護医療院 (従来型個室) | 介護療養型医療施設 (従来型個室) | 特別養護老人ホーム (ユニット型個室) | 介護付き有料老人ホーム(特定施設) | グループホーム | サービス付き高齢者向け住宅 | |
看護師の配置 | 24時間対応している施設が多い | 基本的に24時間対応 | 基本的に24時間対応 | 日中のみが多い | 24時間対応している施設もある | 看護師の配置義務はない | 看護師の配置義務はない |
入居時費用 | なし | なし | なし | なし | 0~数千万円 | 0~数十万円 | 敷金 |
介護費用 (要介護5・1割負担) | 33,870円 | 37,530円 | 31,560円 | 27,900円 | 24,210円 | 25,740円 | 利用した分 |
食費 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 施設による | 施設による | 施設による |
居住費 (家賃) | 50,040円 | 50,040円 | 50,040円 | 60,180円 | 施設による | 施設による | 施設による |
※1単位=1円の計算
介護費用には、それぞれ地域区分・サービス・体制にかかる加算がプラスされます。さらに、消耗品や理美容代、おやつなどの費用が必要です。公的施設では、おむつや尿取りパットなどの費用は不要です。
上記表で見ると、看護師が24時間配置による費用の差は少ないと言えます。公的施設は民間施設に比べて安価に利用できる施設が多いですが、人気が高く利用までに時間を要する場合があります。
24時間看護師が常駐する介護施設の注意点
各施設の特徴を理解して安心できる施設を探す
看護師が24時間配置されている施設を検討する上で、注意点がいくつかあります。施設ごとに運営状況や受け入れ条件が異なるため、施設見学や契約時に確認しましょう。
まず、看護師が24時間常駐する施設でも、身体状況の変化によって退去しなければならない場合があります。前述したように、介護施設は、あくまで生活の場であることから病院と同様の医療ケアを提供することはできません。24時間のモニター管理や点滴治療などの高度な医療ケアが必要になると、多くの場合は入院や治療が必要です。施設で、どの程度まで医療対応ができるかは、施設や看護師のスキルによって異なるため注意しておくと良いでしょう。
また、介護保険サービス内で提供する医療的ケア以外にも、追加オプションや外部サービスの利用によってサービスを提供する場合があります。その場合は、追加で契約や費用が発生するため注意が必要です。
次の注意点は、看護師の24時間配置を特徴としている施設でも、厳密には不在の時間帯が発生する可能性があるということです。国の定める配置基準には、1日に24時間分の看護師が配置されていることが定められています。休憩時間や看護師の勤務交代による空白の時間帯が発生していても問題にはなりません。そのため、特に夜勤を担当する看護師が休憩や仮眠をとる場合、不在になる場合もあるということです。
最後に、マンパワー(人員)が不足していないかも確認しておくと良いでしょう。例えば、医療的ケアが必要な人が多く入居する施設では、介護度の高い方が必然的に増えていきます。介護度が高くなるということは、その分ケアを必要としている方が多くなるため、介助や処置に人員が必要です。しかし、入居者に対して看護師や介護職員を多く配置している施設は少ないため、ケアに手が回らない状況が生まれる可能性があります。
入居後に後悔しないためにも、施設で出来ること・出来ないこと、様々な場面を想定した対応を事前に確認することが大切です。
24時間看護師が常駐する介護施設以外の選択肢
介護施設以外の選択肢も持っておくと柔軟に対応できる
看護師が24時間常駐している施設は、万が一の時でも迅速に対応してもらえるため安心感につながります。しかし、月額利用料が高い傾向にあり、入居希望も多いことから、すぐに利用できない可能性もあります。他施設にも入居できない時は、在宅で介護をする必要もでてくるでしょう。そのようなときは、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス」の利用もおすすめです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスは、在宅で医療や介護のサポートが必要な方に、定期的または随時訪問を行い、必要なサービスを提供しています。24時間、随時対応可能なため、訪問看護や訪問介護が対応できない夜間帯でも利用可能です。健康状態を維持するためにケアマネジャーと連携をとり、個別のケアプランを作成して、一人ひとりに合ったケアと医療を提供するサービスです。
また、看護師が常駐していない施設でも、介護職員やコンシェルジュなどが24時間サポートし、緊急通報などの対応をする事業所も多いため、状況に合せて選択すると良いでしょう。ただし、サテライトとして運営する施設では、「常駐」ではなく主になる事業所で待機して対応する施設もあるため、事前に必ず確認しましょう。遠隔での対応は、的確な判断ができず、初期対応が遅れるリスクがあります。
まとめ
看護師が24時間常駐する施設は、体調不良や不測の事態があっても、迅速に対応が可能なため、安心して利用できるでしょう。しかし、数ある介護施設の中でも、看護師が24時間常駐している施設は少ないのが現状です。
そのため、入居を検討する方の疾患や状態に合わせて施設選びをすることが重要です。今回紹介した施設の特徴を理解しておくと、様々な選択肢を持って適切なサービスを選ぶことができるでしょう。
看護師が24時間常駐していない施設でも、医療的ケアを介護職員が担っている施設もあります。また、不在の場合でも、それを補える体制を整えている施設は多いため、担当のケアマネジャーや施設の相談員などに相談して検討していくと良いでしょう。
今回の記事が、看護師配置の理解と施設選びの参考になれば幸いです。
介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。