特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いを徹底解説
特別養護老人ホームと有料老人ホームは、サービスの違いや費用の違いなど、理解されていない人も多いです。「特別養護老人ホーム」は同じ「老人ホーム」と名前が付けられていて理解しにくい施設といえます。
今回は、特別養護老人ホームと有料老人ホーム、それぞれの違いについて紹介します。最後まで見ていただくことで、サービスの違いや費用について理解でき、状況に合わせた施設選びができるので、ぜひ参考にしてください。


とぐち まさき
渡口 将生
特別養護老人ホームと有料老人ホームは何が違う?
同じ老人ホームの名前が付いていてもサービス内容が異なる
特別養護老人ホームと有料老人ホームでは、サービス内容が大きく異なります。基本的に介護という点では同じですが、サービスの提供方法や費用に大きく影響します。とくに費用に関しては負担額が大きくことなるので、注意が必要です。
どちらの施設でも、基本的な掃除や食事の提供などの生活支援サービスが受けられます。介護サービスに関しては、大きく2つに分けられ「標準でサービスを受けられる施設」と「外部サービスを利用する施設」です。
有料老人ホームも、3つのタイプに分かれます。3つの施設それぞれで、サービス提供方法が違うので、ひとつずつ確認していく必要があります。
簡単にそれぞれを解説すると
特別養護老人ホーム:介護度の高い方を対象に、長く(終身まで)入居できる施設
有料老人ホーム:3つの施設それぞれにサービス提供方法が異なる施設(長期利用や介護度が高いと入れないなど入居条件も異なる)
上記のように、特別養護老人ホームと有料老人ホーム3施設の計4施設は、それぞれ施設サービスが異なるので注意が必要です。
次からは、それぞれのサービス内容や施設ごとの特徴など、比較していきます。
※以降、特別養護老人ホームは「特養」と略称で表記しています。
特養のサービス内容は?
長期利用が可能で人気の高い施設
特養は、生活の場を提供する施設で、安心した生活が送れるように、日常的な介護を提供しています。また、生活支援として掃除・食事・洗濯といったサービスやクラブ活動・レクリエーションといったアクティビティも提供しています。看護師も配置しているため、医療的ケアも受けられるので、処置や薬の管理も対応可能です。機能訓練指導員の配置もあり、機能訓練が受けられます。
施設ケアマネジャーによって、ケアマネジャーが入居者に合わせてケアプラン(介護計画)を作成します。ケアプランに沿って各職種がサービスを提供していくので、要望などはしっかりと伝えておくとよいでしょう。
特養は「終の住処(ついのすみか)」と呼ばれており、終身までの利用を想定している施設が多いです。終身まで利用の際は、看取りケアを実施します。看取りケアでは、終末期の不安や恐怖を緩和し、穏やかに最期を看取るケアを指します。すべての施設が実施している訳ではないので、気になる施設があれば、事前に確認しておくとよいでしょう。
施設によっては、ショートステイを利用できる場合があります。ショートステイは短期間の入所を指し、お試しとして利用が可能です。事前に利用すると施設の雰囲気やサービスがわかるので、長期間利用する前にショートステイを試すのもよいでしょう。ショートステイを利用する場合は、担当のケアマネジャーに相談しましょう。
近年、特養では「ユニットケア」の導入が推奨されています。ユニットケアは、10人前後の入居者をひとつのユニットとして、ケアをおこないます。少人数制でケアをおこなうため、一人ひとり深くかかわることで、個別ケアを実践しやすいケア方法です。
また、少人数制のユニットは、馴染みの関係が作りやすく、環境の変化がおこりにくいという特徴があり、注目されています。
有料老人ホームのサービス内容は?
施設ごとにサービスの提供方法に違いがある
有料老人ホームは「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」と3つの施設タイプがあります。どの施設においても、食事の提供・掃除・洗濯などの生活支援サービスが受けられます。介護サービスについては、それぞれ違いがあるので、確認しておくとよいでしょう。
介護付き有料老人ホームの場合、24時間介護職員が常駐しており、介護サービスを受けられる施設です。そのため、比較的介護度の高い方の利用も可能で、場合によっては終身まで対応する施設もあります。
住宅型有料老人ホームと、健康型有料老人ホームでは、外部のヘルパー事業所や訪問看護事業所と別途契約をおこない、施設に訪問してもらってサービスを受けられます。施設ごとに併設した事業所がある場合が多いです。
自宅にいるときと同じようにサービスを受けられるので、サービスは必要な分だけ選択できます。入居者に合わせたサービスを組むことで、費用を抑えることも可能です。
施設によっては「ショートステイ」や「体験入居」という形で、短期間の利用ができます。しかし、特養と違い、介護保険などは使えず、自費負担になるので、費用が高くなります。入居前に施設の雰囲気やサービスを確認したい場合には、利用するとよいでしょう。住宅型や健康型の場合は、体験入居の利用だと、介護サービスを十分に受けられない場合があるので、注意が必要です。
特養と有料老人ホームの費用比較
特養は有料老人ホームに比べて費用が安い
特養と有料老人ホームでは、入居時に発生する費用に大きな違いがあります。共通で必要なものとして、居住費・食費・介護サービス費・消耗品費などがあげられます。
特養は、入居一時金や、保証金といった費用は一切かかりません。ほかにも、「介護保険施設」の介護老人保健施設や介護医療院では、入居時に費用負担はありません。オムツやパットなどは、施設の支給となり、費用は発生しません。医療費に関しては、自宅にいたとき同様に必要となります。
特養の場合、収入や財産に合わせて「負担限度額認定」や、利用する介護サービスによって「社会福祉減免」が適応され、利用料金が最大半額程度まで下がる場合もあります。また、施設によっては、従来型の施設で多床室(最大4人部屋)を利用すれば、さらに費用は安くなります。
有料老人ホームでは、入居時に一時金が必要な場合があります。入居一時金は施設によって異なりますが「数百万〜数千万円」必要です。入居一時金は、入居後の家賃などで償却されるので、入居一時金を支払うことで、月々の負担が少なくなります。
入居一時金は想定入居期間から算出されます。想定よりも早くに退去になった場合は、一時金を返還する制度があるので安心です。入居一時金は高額のため、最近では、入居費用が必要ない施設も増えてきました。
毎月の費用として、管理費・サービス費など、特養よりも必要な費用が多くなります。そのため「有料老人ホーム=高額な施設」というイメージが強いかと思います。
「介護付き」の場合、介護度に合わせて介護費用が決まっています。「住宅型」や「健康型」の場合は、外部のサービスを利用するため、利用した分の費用が発生します。介護の必要度に合わせて、必要費用が変わってくるのが特徴です。
生活保護受給者の場合、入居できない施設や生活保護受給者の入居者数を定めている施設があるので、気になる施設には問い合わせてみるとよいでしょう。
特養と有料老人ホームの入居対象者の違い?
入居のしやすさに大きな違いがある
特養の入所条件は「要介護3以上」「65歳以上」の方です。要介護1や要介護2の方でも、緊急性が高く特例が認められた場合は、入居できることもあります。また、40歳以上の方で、特定疾病をもっている方は、要介護認定を受けられます。要介護3以上であれば、65歳に満たなくても入所可能です。
看護師の配置があるので、医療的ケアが必要な方の入居も可能です。ただし、夜間帯に看護師が不在の施設も多いので、夜間帯に医療的ケアが必要な場合は、入居できない場合もあります。
申込書は、都道府県または市区町村で、共通の用紙があり、ホームページからダウンロードが可能です。申し込みをおこなっても、特養の場合はすぐに入所できることは少なく、入居待機期間があります。待機期間は、長い場合は1年以上かかることもあります。入居時には、入居前3ヶ月程度の検査データが必要になるケースが多いですが、慌てて健康診断を受けると、無効になる場合があるので注意しましょう。
有料老人ホームの入居対象者は、施設タイプごとに異なります。入居条件として「60歳以上」や「65歳以上」と施設ごとに定めています。
介護付き有料老人ホームは、要介護1〜要介護5の方を対象にした施設です。他の有料老人ホームに比べると、24時間介護職員が配置されているため、介護度の高い方でも入居が可能です。
住宅型有料老人ホームは、自立した生活が可能な方から、比較的介護度の低い方を対象にした施設です。基本的に生活支援を受けながら、生活できるかどうかがポイントとなります。施設ごとに特色もあり、対応できる範囲は異なるため、気になる施設には問い合わせてみるとよいでしょう。
健康型有料老人ホームは、住宅型有料老人ホームよりも自立した人を対象にしている施設です。しかし、他の施設に比べて数が少なく、選択肢になりにくいです。
各施設ごとに、入居対象者が明確なため、入居者の身体状況に合わせて、施設を選択するとよいでしょう。
特養・有料老人ホームの職員体制に違いがある?
施設によって人数の差は大きい
特養は、入居者3名に対して介護(看護)職員を1名以上配置すると定められています。その他の職種として、看護師・機能訓練指導員・栄養士・ケアマネ・相談員・事務員などの職員配置が定められています。
介護付き有料老人ホームは「特定施設」の指定を受けた施設で、特養と同等の人員配置となります。そのため、24時間の安定したケアをおこなうことができる施設です。
住宅型有料老人ホームと健康型有料老人ホームは、介護の職員数は必要数となっており、施設ごとに人数が異なります。その他の職種も、とくに定めがないため、職員数は少ないと感じるかもしれません。その分、外部の事業所から介護サービスを受けられますが、介護度が高くなると、外部の事業所だけでは必要な支援が足りなくなるため、退去しないといけない場合もあります。
設備の違いはある?
基本的に個室の施設が多い
特養には「従来型」「ユニット型個室的多床室」「ユニット型個室」と居室のタイプがあります。近年では、ユニット型個室が推奨されていることで、個室の施設が多いです。個室の広さは10.65㎡以上と定められています。
従来型は、大部屋(最大4人)のある施設です。ユニット型個室が推奨されたことで、大部屋を間仕切り、ユニット型個室的多床室として運営している施設もあります。
個室は、プライバシーに配慮され、過ごしやすい環境ですが、多床室に比べると費用は高くなります。料金設定については希望の施設に相談するとよいでしょう。
有料老人ホームは、基本的に個室の設計です。夫婦部屋として2人部屋がある施設もあります。個室は13㎡以上と定められており、特養よりは少し広い設計の施設が多いです。
有料老人ホームは、トレーニングルーム・シアタールーム・カラオケルーム・温泉・ペットと住める部屋などさまざまな設備があり、シニアライフを楽しめる設備があります。入居者が楽しめる設備が整った施設を選ぶとよいでしょう。
特養のメリット・デメリット
待機期間の問題はあるが入居できると安心できる
特養のメリットをみていきましょう。
有料老人ホームに比べると費用が安い
終身まで利用が可能(施設の方針による)
ユニット型個室の施設が多くプライバシーに配慮されている
顔なじみの関係が作りやすい
環境の変化が起こりにくい
24時間介護を受けられる
レクリエーション・イベント・行事がある
機能訓練が受けられる
続いて、特養のデメリットをみていきましょう。
多床室の施設が減少傾向
要介護3以上の認定を受けないと申し込みができない(特例は除く)
医療ケアが必要な場合は入居が難しい
医療費は自己負担で支払いが必要
待機期間が長い場合がある
特養は、デメリットもありますが、メリットが多く人気のある施設といえます。
有料老人ホームのメリット・デメリット
入居者に合わせて施設選びができる
有料老人ホームのメリットをみていきましょう。
施設ごとに入居対象者が異なるので入居者にあった施設を探せる
特養や老健などに比べ制約が少なく自由が効く
施設数が多く入居しやすい
設備が豊富でシニアライフも楽しめる
夫婦部屋やペットと暮らせる施設がる
続いて、有料老人ホームのデメリットをみていきましょう。
費用が高額になる場合が多い
身体の状況に合わせて退去となる場合もある
施設だけで介護サービスが十分に受けられない場合がある
外部サービスと都度契約が必要
有料老人ホームのデメリットは、費用面といえます。しかし、費用面をクリアできれば、設備も豊富で入りやすい施設が多くおすすめです。シニアライフを満喫できる施設がみつかるかもしれません。
特養と有料老人ホームは、入居条件が異なり、施設によって様々なサービスがあり選ぶのが難しいかもしれません。有料老人ホームの中でも、介護付き有料老人ホームは、特養に似た職員配置や運営方法のため、比較するなら介護付き有料老人ホームがよいかもしれません。
まとめ
介護度が比較的軽い方は、住宅型有料老人ホームもおすすめです。健康型はさらに元気な方が対象ですが、一時金が高額で施設自体が少ないです。
入居対象者に合わせて、提供されるサービス内容も異なるため、気になる施設には見学やショートステイを利用して様子をみてみるとよいでしょう。
それぞれの違いを理解したうえで、入居者の身体状態や、自宅・ご家族の状況に合わせて施設を検討してみてはいかがでしょうか。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。