介護医療院と老健、新型老健の違い|入所対象や受けられるサービスの違いを知ろう
「介護施設はたくさん種類があって、理解ができない」「介護医療院と老健って何が違うの?」こんな疑問はありませんか?
高齢者の増加に合わせて、さまざまなタイプの介護施設が増えてきました。施設の利用状況や社会的ニーズにより、役割を変えるケースや新しく創設されるサービスもあります。そのひとつとして、2024年3月に介護療養型医療施設の廃止が決定しています。そのため、2018年より介護医療院や新型老健が創設されました。
今回は、介護医療院・老健・新型老健の違いについて解説します。それぞれ、役割やサービス内容が異なるため、施設の違いを理解して、施設を選ぶときの参考にしてください。


とぐち まさき
渡口 将生
介護医療院、老健、新型老健とは?
医療的ケアと介護支援が提供される施設
介護医療院・老健(介護老人保険施設)・新型老健(療養型老健)は、すべて介護保険施設のひとつです。介護保健施設は公的施設のため、有料老人ホームに比べて安価な費用で利用できる特徴があります。
それぞれの施設の特徴について、見ていきましょう。
介護医療院
介護医療院とは、2018年4月から始まったサービスです。医師や看護師の配置が多く、医療ニーズのある方でも安心して利用できます。継続して行う医療的ケアと介護支援が必要な方でも入居できる施設で、2024年3月にサービスが終了となる介護療養型医療施設の代わりのサービスとして注目されています。
老健(介護老人保健施設)
老健とは、主にリハビリテーションを目的とした施設です。管理者である医師の指示のもと、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がリハビリを実施して在宅復帰を目指します。医師と看護師が配置されているため、一部、医療的ケアが必要な方でも利用できます。
新型老健(療養型老健)
新型老健とは、老健の中でも看護師の配置が多い新しい形の老健です。特に夜間帯の配置が義務付けられており、24時間医療的ケアの提供が可能となっています。従来型の老健はリハビリテーションを目的としている一方で、医療的ケアに力を入れているのが特徴です。
新型老健は、廃止が決まった介護療養型医療施設が方針を変え、新型老健としてサービスを開始しています。そのため「転換型老健」と呼ばれることもあります。
それぞれの施設で、医療的ケアと介護支援が提供されていますが、目的やサービスの量に違いがあるため、利用者の状態に合わせた施設選びが重要です。
介護医療院と老健、新型老健の比較
それぞれ異なるサービス内容や特徴がある
介護医療院や老健、新型老健では医療的ケアと介護支援が受けられますが、施設ごとに特徴や役割が異なります。
介護医療院 | 老健 | 新型老健 | |
---|---|---|---|
役割 | 長期療養 見取り | リハビリテーション 在宅復帰 | 医療的ケア リハビリテーション 在宅復帰 |
入居条件 | 要介護1~5 | 要介護1~5 |
|
設備 | 処置室 検査室 | リハビリ室 | 処置室 リハビリ室 |
サービス内容 | 長期にわたる医療的ケア 看取り 医療的ケアがメイン | リハビリテーション レクリエーション 行事 日常生活支援や介護がメイン | リハビリテーション レクリエーション 行事 看取り やや医療的ケアより |
生活 | 終身利用可能 | 3ヶ月ごとに継続利用の見直し | 長期利用が可能 |
費用 | 高め | 安い | 老健よりも若干高い |
施設の役割の違い
介護医療院
介護医療院は、長期療養と介護支援が目的の施設です。医療的ケアが必要な方は介護施設では対応できない可能性があるため、長期で医療ニーズが高い方を対象としています。
対応可能な医療的ケアは、次の通りです。
胃ろう
喀痰(かくたん)吸引
褥瘡
酸素療法
看取り
インスリン
これらのケアは介護職員では行えないため、看護師が手厚く配置されている施設でないと対応が困難になります。喀痰吸引に関しては、要件を満たした施設や介護福祉士のみ対応可能です。
老健(介護老人保健施設)
老健は、リハビリテーションを目的とした施設で、在宅復帰を目標とする方が多いです。3ヶ月ごとに判定会議が実施され、在宅生活が送れると判断された場合は退所支援を行います。
新型老健(療養型老健)
新型老健(療養型老健)は、介護療養型施設がサービス廃止となる代わりに2018年に誕生した新しい形の老健です。従来型の老健と異なり、夜間帯の看護師配置が義務付けられていることから、介護施設の中でも医療的ケアに手厚い施設です。また、従来型老健と同様にリハビリも受けることができます。
入居条件の違い
3施設の入居条件は、大きく変わりません。基本的に、65歳以上の要介護1~5の介護認定を受けた方が対象です。40〜64歳の方でも特定16疾病を患った方で、要介護の認定を受けている方なら入居可能です。施設の特徴に合わせて、施設選びをするとよいでしょう。
入居の判断基準として、介護医療院は長期的に医療的ケアが必要な方が優先されます。老健はリハビリテーションを目的とし在宅復帰を目指している方、その中でも医療的ケアが必要な方は新型老健と考えると良いでしょう。
設備の違い
介護医療院は、医療設備が充実しており、処置室・臨床検査施設・エックス線装置・調剤所などの設置基準が定められています。居室は多床室(4人以下)の広さは、老健や新型老健と変わりなく、8.0㎡以上(転換の場合は大規模改修まで6.4㎡以上)が基準です。その他に大きな違いはありませんが、施設内で検査ができる点は大きな特徴と言えます。
サービス内容の違い
介護医療院では、長期的な医療ケアと介護支援を受けることができます。医療ニーズの高い方、身体的にも重度な方を対象としているため、レクリエーションや行事は少ない傾向と言えます。
老健では、日常的な介護支援を受けながら、リハビリテーションを実施します。レクリエーションや体操なども行い、身体機能の維持を目指す施設です。看護師の配置が他の介護施設と比べて多いため、医療的ケアが必要な方も相談が可能です。リハビリテーションは1週間に最低2回は受けられます。
新型老健では、医療的ケア・介護支援・リハビリテーションとさまざまなサービス提供が実施されています。しかし、中でも医療的ケアに力を入れている施設が多い傾向にあることから、リハビリテーション目的で入居した場合、思ったような成果が出ない可能性があるため、注意が必要です。
施設生活の違い
病院のように治療や療養を目的としているのではないことから、施設内では基本的に自由な生活が可能です。他者との会話やコミュニケーション、テレビ鑑賞など居室を出て過ごすことができます。
食事や入浴などのスケジュールの合間に、リハビリテーションやレクリエーションを実施しています。施設や医師の許可がある方は自主トレーニングも可能で、廊下で歩行訓練や手すりを使った立ち座りの練習など積極的に体を動かすことができます。
介護医療院では、施設内に検査室もあるため、状況に応じて臨床検査やエックス線検査を受けることもできます。検査結果に応じて医療的ケアが受けられるため安心です。
費用の違い
今回紹介している3つの施設では、介護医療院の費用負担が若干高い傾向にあります。次いで新型老健、一番費用が低い施設が老健となります。
ただし、比較しているのは介護保険上の単位数(基準値は全国共通)です。老健よりも看護職員の配置が手厚い新型老健、更に医療的ケアが充実した介護医療院と考えれば、基本費用が高くなるのは必然と言えるでしょう。
しかし、費用総額で考えた時には注意が必要です。費用には介護サービス費以外に、食費・居住費などさまざまな費用があります。施設ごとに食費や居住費、その他の費用を設定できることから、費用負担が大きく異なる場合があります。
費用目安は、多床室の利用で10〜13万円程ですが、前述のように食費や居住費、その他の費用で20万円近くまで増える場合もあるため、契約時に確認しておくと良いでしょう。
介護医療院と老健、新型老健のメリット・デメリット
医療体制や入居期間に大きな違いがある
介護医療院・老健・新型老健のメリットデメリットを比較してみましょう。
介護医療院 | 老健 | 新型老健 | |
---|---|---|---|
メリット | 医療的ケアと介護支援を同時に受けられる 看取り対応ができる 当直で医師が勤務 | リハビリテーションが充実している 費用が安い 施設数が多い | 医療的ケアが受けられる 看護師配置が多い 長期利用が可能 |
デメリット | 費用負担が大きい 施設数が少ない | 入居期間が短い 終身利用ができない | 施設数が少ない |
介護医療院
介護医療院のメリットは、介護施設で長期にわたる医療的ケアと生活全般の介護支援を受けられることです。また、看取り対応が可能なため、終身まで利用することもできます。100名の入居者に対して医師が3名配置されており、夜間の当直医師もいることから安心して生活できるでしょう。
デメリットは、他の施設に比べ費用が高くなることです。また、サービス自体が新しいため、施設数が少ない点があげられます。近くで探しても「見つからない」「満床で入れない」ことも考えられるでしょう。
老健
老健のメリットは、リハビリテーションが充実している点です。介護施設の中でリハビリ職員の配置が手厚く、個別に実施しています。医師による回診や処方を受けられるため、外の病院受診をする必要がなく、本人とご家族双方の負担軽減になります。夜間帯に看護師を配置しているケースも多く、夜間に医療的ケアが必要な方も安心です。
デメリットは長期利用ができない点です。施設によって長期利用も可能な場合がありますが、基本的に在宅復帰を主な役割としており、3ヶ月ごとに入居を継続するか判定会議が行われます。在宅復帰に力を入れている施設では3ヶ月で退去になるケースも珍しくありません。また、看護師が24時間配置されていない施設もあります。検査室もないため、医療ニーズの多い方に関しては利用が困難になるため注意が必要です。
新型老健
新型老健のメリットは、看護師が24時間配置されていることです。そのため、夜間帯に医療的ケアが必要な方や介護施設では断られる場合でも安心して利用できます。老健に比べ対応できる医療的ケアが多く、長期利用も可能です。施設によって看取りも実施しているため、希望する場合は相談するとよいでしょう。
デメリットは、新しい施設形態であることから新型老健自体を知らず、施設数も少ないことです。介護療養型医療施設のサービス廃止の話題から転換先として誕生しましたが、介護医療院の登場により、新たに増えることは少ないと考えられます。
施設数の推移
転換が進まず全国的に施設数は少ない状況
介護療養型医療施設は、2006年に行われた実態調査の結果により、2012年3月をもってサービスの廃止が決まっていました。しかし、移行先である介護老人保健施設などへの転換が円滑に進まず、2018年3月まで延長措置がとられました。この時期に転換された老健が新型老健です。2018年4月には新たに介護医療院が創設されたことから、新型老健への転換は進まなくなりました。
介護医療院は新たな転換先として施設数を増やしており、2024年3月までの移行期間にさらに増幅することが予想されます。しかし、介護医療院の造設も円滑とは言えず、2021年12月末時点で662施設でしたが、令和4年6月末時点で727施設と65施設の増加と厚生労働省から発表されました。6ヶ月間で65施設ということは、1ヶ月で約10施設の増加と少ない状況と言えます。
地域別に見ると、山梨県は2施設、岩手県は3施設、山形県・滋賀県では4施設というように極端に少ない地域もあります。一番多い施設でも福岡県の44施設、北海道が42施設という状況です。(令和4年10月現在)
出典:厚生労働省「介護医療院の開設状況について」
まとめ
今回は、介護医療院・老健・新型老健の違いについて解説しました。介護施設は種類が多いため、それぞれの特徴を理解したうえで利用することが望ましいです。
介護医療院や新型老健は医療的ケアや介護支援とサービスが充実していますが、施設数が少なく希望のエリアで見つからないこともあるでしょう。
医療的ケアが必要だけど、入院はしたくないという方は介護医療院や新型老健の利用を検討してみると良いでしょう。
今回の記事が、介護医療院の理解につながれば幸いです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。