特養(特別養護老人ホーム)の3つの種類について|それぞれの特徴や入居条件から、申し込みできる施設を知ろう

「特養ってどれも一緒?」「入居したい時はどうすればいいの?」こんな疑問はありませんか?

特養は、日常的に介護が必要な状態になった方の支援を行なう介護施設です。介護保険を利用して、比較的安価に利用できる公的施設として人気があります。

今回は、特養の基本サービスや種類について解説します。入居の申し込み方法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


#老人ホーム#特養#介護保険施設#有料老人ホーム
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

特養(特別養護老人ホーム)の基本と種類

要介護3以上の高齢者が生活する「終の住処」と呼ばれる介護施設

特養(特別養護老人ホーム)は、社会福祉法人や地方自治体などが介護保険を適用して運営する公的施設です。身体・精神的に常時介護が必要で、在宅生活を継続することが困難になった要介護3以上の認定を受けた高齢者が利用できます。基本的に長期の利用を想定しており、多くの施設で看取りケアを実施しています。終身まで利用できる特養も多く、人気のある施設です。

利用対象者の要件をまとめると以下の通りです。

年齢
詳細

65歳以上

要介護3以上の認定を受けている

40~64歳

特定疾病があり要介護3以上の認定を受けている

要介護1.2の方でも次のような要件が当てはまれば、特例として入居できる場合があります。

  • 認知症で、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さなどが頻繁にみられる場合。

  • 知的障害・精神障害などを伴い、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難などが頻繁にみられる場合。

  • 家族などからの深刻な虐待が疑われ、心身の安全・安心の確保が困難であると判断された場合。

  • 単身世帯である、同居家族が高齢または病弱などの理由で、家族からの支援が期待できず、地域の介護サービスや生活支援の供給が不十分であると判断された場合。

特養に入居するには、定期的に開催されている入居判定会議で介護度・環境(家族からの支援状況)などの情報をもとに、緊急度を数値化し点数の高い順に入居が決定します。

民間の老人ホーム(有料老人ホームなど)に比べると利用料金が低く、入居に対して一時金などは発生しません。また、所得に合せた減免制度などもあり、預貯金がない・年金額が少ない方でも利用しやすい施設です。

24時間介護職が常駐しているため、必要な時に介護を受けられます。終身までの利用を目的としているため、長く生活する場として人気の高い施設です。

しかし人気が高い分、申し込みをしてもすぐに利用ができないことがほとんどです。待機者が多く、地域や施設によって入居できるまでに1〜2年ほどかかることがあります。また、夜間帯の看護師配置が定められていないことから、医療的ケア(喀痰吸引、点滴など)や処置が必要な方は入居できないこともあります。


特養のタイプは大きく3つある

次に、特養のタイプを見ていきましょう。特養には、大きく分けて従来型」「ユニット型」「その他」の3つのタイプがあります。それぞれの特徴は次の通りです。

従来型

入居する部屋を、4人以下の多床室と個室から選ぶことが可能です。(ただし、空き状況による)大勢の利用者に対して複数人の職員が対応します。古くから運営している施設がほとんどで、長年の経験を生かした安心感のあるケアが期待できるでしょう。

次に紹介するユニット型に比べて、介護サービス費は少し低く設定されています。そのため、収入が少ない方は、費用面から従来型を選ぶ方もいます。

ユニット型

10名前後の入居者を1つのユニットとして、少人数制のケア(ユニットケア)を提供します。ユニットごとに職員を配置しているため、顔なじみの関係が作りやすく、個別のケアができるとして、国からも推奨されているタイプです。

居室はすべて個室のため、プライバシーに配慮された環境で過ごせます。近年では、ユニット型が主流となっているため、建物が比較的新しい施設が多い傾向です。個室料金は多床室に比べて高いことから、従来型よりも月々の費用は高くなります。

その他

上記2つ以外にも「個室的多床室」というタイプもあります。個室的多床室は、従来型の多床室に間仕切りを設置して、個室のような環境を作った居室です。ユニットケアを導入して、サービスを提供しています。そのため、ユニット型よりも費用を抑えて、ユニットケアを受けられる施設です。

元々は従来型特養のため、設備などは従来型と変わりません。

次に、特養の種類を見ていきましょう。特養には大きく分けて、3つの種類があります。


広域型
地域密着型(サテライト型・単独型・併設型)
地域サポート型

入居(利用)条件

要介護3以上

要介護3以上

施設と同じ地域に住んでいる方

在宅介護を継続している方

定員

定員が30人以上

定員が29人以下

なし

サービス内容

食事・入浴・排泄などの日常生活全般の支援

機能訓練

レクリエーション

食事・入浴・排泄などの日常生活全般の支援

機能訓練

レクリエーション

24時間体制の見守り

定期的な巡回や訪問

特徴

居住地に制限がない
施設数が多い

施設と同じ地域の方が利用できる

在宅介護を継続する方にサービスを提供する

施設数が少ない

上記のように、3種類の特養では、入居条件や定員数などに違いがあるため、ひとつずつ解説していきます。


広域型特養について

特養の中でも最も多い種類の施設

定員が30人以上の施設で、居住地に制限がない特養です。居住地以外の人でも入居申し込みができます。他の2つに比べて最も多くの施設が運営しており、一般的に特養と呼ばれている施設のほとんどが広域型です。複数の施設に申し込みを出せば、比較的早く入居できる可能性があります。

しかし、地域(都市部)によっては数百名単位の待機者がいるため、申し込みの際に確認しておくと良いでしょう。

提供されているサービスについては、食事・入浴・排泄などの基本的な日常生活に関わる介護・機能訓練・レクリエーションなどが提供されています。


地域密着型特養について

施設と同じ地域住民に対象を絞った特養

定員が29人以下で、所在地である市区町村に住民票がある人を入居対象としている特養です。住み慣れた地域で、できる限り自立した生活を目的として、利用者の能力に応じた支援を役割としています。

サービスについては、広域型特養と変わらず、日常生活に必要な、食事・入浴・排泄などの基本的な支援や機能訓練・レクリエーション活動などがあります。

また、地域密着型特別養護老人ホームには、以下3つの種類に分かれています。

  • サテライト型特別養護老人ホーム

  • 単独型特別養護老人ホーム

  • 併設型特別養護老人ホーム

サテライト型特別養護老人ホーム

広域型特養など、本体となる施設と連携している特養です。本体となる施設から、原則20分以内に移動ができる場所に設置し運営しています。

入居者が長年住んだ地域で、継続して生活できる場所を提供する目的で設置されました。本体施設に、医師・生活相談員・ケアマネジャー(介護支援専門員)などが配置されていれば、サテライト型には配置しなくても運営ができるなどの特徴があります。また、設備基準も緩和されており、設置しやすい基準が設けられています。

単独型特別養護老人ホーム

サテライト型と違って本体施設を持たずに、単独で運営している小規模型の特養です。ユニット型で運営されている所が多くあります。

そのため、少人数制で介護サービスを提供しており、家庭的な雰囲気で過ごすことができます。

併設型特別養護老人ホーム

併設型施設とは、居宅サービス事業所や地域密着型サービス事業所、短期入居生活介護事業所などが併設されている特養です。多くの事業所が併設されているため、特養を退去する場合があっても、その後のサービスを利用しやすいでしょう。


地域サポート型特養について

在宅生活をサポートするための特養

可能な限り在宅生活ができるように、生活援助員が24時間・365日見守りや援助をおこなう特養です。地域サポート型特養は、要介護認定を受けていない方でも、以下の要件に当てはまる65歳以上の人を対象にサービスを提供しています。

  • 一人暮らし

  • 日中家族が不在

  • 生活に不安がある

  • 高齢夫婦だけで生活している

  • 介護認定は受けていないが見守りなどが必要 など

24時間の見守りでは、日中に生活援助員が巡回訪問をおこないます。夜間や緊急時対応などの際にも、看護師がすぐに対応できるように職員を配置しています。

他にも、家族の介護や悩みなど、様々な相談を受け付けて支援するサービスです。また、訪問だけではなく電話での安否確認や相談援助も行います。

施設によって見守り対象区域が決まっているため、サービスを受けたい場合は、事前に確認が必要です。ただし、全国的に施設数が少ないため、利用したくてもできない可能性があります。


特養の種類が増えた背景

地域包括ケアシステムの普及

現在、団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える2025年に向けて、医療・介護・介護予防・住まい生活支援を一体として、提供する地域包括ケアシステムの構築が進められています。

地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で自分らしく最期まで生活できるよう市区町村が連携を図り、独自の支援やサービスを作り上げる仕組みのことです。

基本的に特養は「住まい」「終の棲家」として機能する目的がありますが、入居待機者が多く、なかなか入居できないという問題点があります。そのため、これまで培ってきた特養のノウハウやサービスを最大限活用し、地域に住む高齢者の在宅サービスや日常生活に不自由を感じている方の相談窓口の役割を担うために、多種多様な特養が設立されてきたのです。

また、人員基準や設備基準を緩和できる制度を作ったことで、介護事業者や従業員の負担軽減を図り、高齢者の受け皿を大きくすることも目的のひとつとして考えられます。


特養の申し込み方法と入居までの経緯

いくつもの手順があるため早めに申し込みをしておく

特養に入居するまでには、いくつか手順があります。待機期間が発生する可能性もあるため、申し込み手続きは早めに行うと良いでしょう。

まずは、入居を希望する施設を探します。特養を探す方法は、以下の通りです。

  • 役所の介護福祉課に相談する

  • 地域包括支援センターなどに相談する

  • ケアマネジャーに相談する

  • 地域広報誌のハートページで探す

  • インターネットで探す

気になった施設には、可能な限り見学に行き、雰囲気や料金形態を確認すると良いでしょう。その際に、申込書などの必要書類やパンフレットをもらっておくと、この後の手順がスムーズです。

申し込み先が決まったら、申込書や必要書類を提出します。入居手続きを進める中でわからないことは、担当ケアマネジャーや特養の相談員に確認すると良いでしょう。

申し込み手続きに必要な書類は、以下の通りです。

  • 介護保険証(コピー)

  • 介護負担割合証(コピー)

  • 介護保険負担限度額認定証(コピー)

  • 介護認定調査票の写しまたは、調査票

  • 主治医の意見書 など

施設によって異なるため、確認が必要です。また、申し込みを複数の特養に出す場合には、施設ごとに申し込みが必要になります。

申し込みが済んだ後は、入居希望者の心身の状態を確認するために、施設の職員が本人の面談を行います。不安な点や心配事など、すべて伝えておくと良いでしょう。

面談が終わると、入居判定会議(検討委員会)で入居の可否を検討します。入居判定会議で入居可の場合は、健康診断書や診療情報提供書の提出が必要です。最後に、利用契約を行って入居となります。

介護施設の利用は初めてという方も多いため、申込書の書き方や必要書類がわからないこともあるでしょう。家族だけで申し込みを進めることもできますが、担当ケアマネジャーがいる場合には、事前に「施設入居を検討している」ことを相談しておき、サポートしてもらうと円滑に進めることができます。

また、特養の相談員やケアマネジャーとも気軽に相談しておくことで、入居後も良好な関係が築けるでしょう。


まとめ

特養は、要介護3以上の認定を受けている方が利用可能な公的施設です。他施設に比べ費用が安い場合が多く、長期的に安価で利用できることから人気があります。

申し込みは要介護3からとなりますが、要介護1や2でも特例措置があるため、緊急時にはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると良いでしょう。

また、在宅生活を継続していると本人や家族の負担が大きくなる場合があるため、お互いが無理なく良い距離感で生活するためにも、施設入居を選択肢の一つに入れることが大切です。

限界が来る前に今後の方向性を話し合い、特養入居が選択肢のひとつになる場合は早めに動くことが重要になります。

後悔しない生活を送るために、この記事がお役に立てれば幸いです。

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