【比較】グループホームと特養の違いを知ろう!サービス内容や費用、入居条件、注意点まで詳しく解説
「グループホームと特養の違ってなに?」「受けられるサービスや入居条件に違いがあるの?」こんな悩みはありませんか?
高齢者向けの施設は種類や数が多く、いざ入居先を探すタイミングで驚く方も多いでしょう。
今回は、施設が多くて選べない・違いがわからないという方に向けて、グループホームと特養のサービス・入居条件などの違いについて紹介します。それぞれのメリット・デメリットを理解して、入居者の状態に合った適切な施設選びの参考にしてください。
とぐち まさき
渡口 将生
グループホームと特養を比較しよう
グループホームは認知症対応の施設|特養は介護度が高い方向けの施設
グループホームと特養(特別養護老人ホーム)では、サービス内容や利用目的が大きく異なります。
グループホームは認知症の方専用の施設です。グループホームの入居は、認知症の診断を受けた要支援2以上の方を対象としています。9人以下のユニットケアを導入し、認知症の方でも安心して共同生活が送れる施設です。
ユニットケアとは、少人数制のグループを作り、同じ職員が対応することで環境の変化が少ないケアのことを指します。また、個別ケアに重点を置いたサービスです。
一方、特養は、「終の棲家(ついのすみか)」と呼ばれ、長期的な利用を目的とした介護施設です。終身まで利用可能な施設もあります。65歳以上で、要介護3以上の認定を受けた方が入所対象で、日常生活上の支援やレクリエーションなどを行う施設です。
特養では、「従来型」と呼ばれる施設がほとんどでしたが、2001年以降からスウェーデン発祥の「ユニットケア」が推進されています。新しく建てられた特養では、ユニット型で全室個室の設計がほとんどです。
特養は、正式には「介護老人福祉施設」という名称ですが、「特養」と呼ぶ方がなじみがある方も多いでしょう。
グループホームと特養の大まかな違いは以下の通りです。
グループホーム | 特養 | |
---|---|---|
対象者 | 要支援2以上で認知症の 診断を受けた方 | 要介護3以上の認定を受けた方 |
認知症対応 | 専門サービスとして提供 | 対応可能 |
主なサービス |
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費用 | 初期費用+月々の費用 | 月々の費用 |
運営 |
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グループホームの初期費用は、入居一時金や保証金などがありますが、施設によって費用が異なります。特養では、入居時に特別な費用はかかりません。
グループホームと特養のサービス内容の違い
サービス内容や目的が異なるためニーズに合った施設選びが重要
ここからは、グループホームと特養で利用できるサービスの違いについてみていきます。
グループホームのサービス
グループホームは、正式には「認知症対応共同生活介護」という名称です。名前の通り認知症対応に特化したケアと共同生活を支援しています。
5〜9人以下のユニット単位で生活している入居者のサポートや見守りが主なサービスです。認知症に特化した職員が、ユニットごとに配置されているため、顔なじみの関係が作りやすく、環境の変化が少ないケアを提供しています。また、少人数制のため、コミュニケーションが図りやすく、安心して過ごせる環境といえるでしょう。
グループホームは、1事業所に最大2ユニット(18人)までと定められている施設です。ユニット内では、家事の分担や個々に役割を持って生活できるため、コミュニケーションも生まれやすく能の活性化が図れます。職員のサポートを受けながら、買い物・調理・掃除などを入居者でおこなう施設です。
また、レクリエーションやアクティビティも実施しており、認知症の進行予防に効果的な活動も行われています。認知症に効果的なケアの一例は以下の通りです。
認知症ケア | 内容 |
---|---|
回想法 | 昔のことを思い出しグループで話し合うことで脳の活性化を図る療法。 |
音楽療法 | 懐かしの曲などを聴く・歌う・演奏するなどを通して脳の活性化を図る療法。 |
園芸療法 | 畑仕事や草木を育てることで脳の活性化や心の平穏を図る療法。 |
アニマルセラピー | 動物と触れ合いながら脳を刺激する療法。 |
ユマニチュード | フランスで考案された新しい認知症ケア。見る・ 話す・触れる・立つという4つの方法に着目し「病人」ではなく「人間」として接することで症状の緩和を図る手法。 |
バリデーション | 利用者の感情に合わせて介助者も感情を合わせることで、ラポール(信頼)を形成する手法。 |
特養のサービス
特養では日常生活に必要な、入浴・排せつ・食事の介助を中心に日々のレクリエーションや機能訓練などのサービスを提供しています。施設によっては、看取りケアを実施しており、終身までの利用が可能です。
看護師の配置があるため、医療的ケアも可能です。ただし、夜間帯に看護師を配置していない施設も多いため、医療的ケアが常時必要な場合は確認しておくと良いでしょう。また、機能訓練指導員の配置もあるため、機能訓練が受けられます。
グループホームと特養の設備の違い
設備の基準が異なり居室タイプによってサービス提供方法が変わる
グループホームでは、1ユニット5〜9名で分けられ、同一敷地内に2ユニットまでの設置と定められています。居室はすべて個室が準備されており、プライバシーに配慮されています。居室の広さは、収納などの設備を除いて、7.43㎡以上(最低床面積4.5畳以上)と定められており、特養に比べてやや狭い設定です。
トイレ・洗面所・台所・浴室など、日常生活に必要な設備や各所にスプリンクラーなどの消防設備の設置が義務付けられています。また、入居者が過ごしやすいように、バリアフリー化が進められています。
特養では、居室タイプが複数あり、それによってサービス内容に違いがあります。近年では、ユニット型個室が主流(国が推奨している)です。それ以前のタイプは、「従来型(多床室)」と呼ばれており、従来型からユニット型に移行した形の「ユニット型個室的多床室」があります。
それぞれの違いは以下の通りです。
従来型 | ユニット型個室的多床室 | ユニット型 | |
---|---|---|---|
居室 | 4名以下の多床室と個室で形成 | 多床室に間仕切りなどで個室空間を作った部屋 | 全部屋個室 |
食事やアクティビティ | 大人数での対応 (フロアごとなど) | 10名前後のユニットごとに対応 | 10名前後のユニットごとに対応 |
床面積 | 10.65㎡以上 | 10.65㎡以上 | 10.65㎡以上 |
居室のタイプによって、対応する人数が大きく異なるため、サービスの手厚さに違いが生じます。また、新しい施設ほど、ユニットケアを導入しているため、一人ひとり個別に入浴するケースが多いです。従来型は、大浴場で複数人が一緒に入る入浴介助が行われています。
グループホームと特養の費用の違い
初期費用の有無など費用設定が大きく異なる
ここからは、グループホームと特養の費用について見ていきましょう。
グループホームは民間の施設で、特養は公的施設のため、それぞれ費用設定が異なります。それぞれの費用目安は以下の通りです。
グループホーム | 特養 | |
---|---|---|
一時金・保証金 | 数十万~数百万円 | なし |
介護サービス費 (1割負担) | 要介護3|24,690円 (1ユニットの場合) | 要介護3|23,790円 要介護3|21,360円 |
※地域加算などは含まない
初期費用
グループホームでは、入居時に一時金や保証金が必要な場合があります。一時金の費用は数十万〜数百万と施設によって様々です。一時金を支払った場合、月々の支払いが安くなります。一方、特養では初期費用は必要ありません。
介護サービス費
介護サービス費用には1日単位で設定されているため、月途中の入居や退去の場合でも日割り計算が可能です。従来型はユニット型に比べると費用は低く設定されています。
他にも、月々必要な費用として次のものがあります。
食費・おやつ代
居住費
日用品費
介護サービス費(加算分)
理美容費
医療費・薬 など
それぞれの事業所によって費用は異なるため、希望する施設のホームページやパンフレットから確認すると良いでしょう。
東京都にあるグループホームと一般的な特養の料金体制(例)を紹介します。
グループホーム (千代田区) | ユニット型特養 | 従来型特養 | |
---|---|---|---|
家賃/居住費 | 58,000円 | 60,180円 | 11,310円 |
共益費 | 30,000円 | なし | なし |
光熱水費 | 20,000円 | 施設による | 施設による |
食費 | 45,000円 | 43,350円 | 43,350円 |
その他・サービス費 | 利用分 | 20,000円 | 20,000円 |
おむつ・パット | 使用分 | なし | なし |
グループホームでは、共益費などが必要ですが、特養では不要です。また、公的施設の特養では、おむつやパットの費用は必要ありません。必要な方は施設負担で利用できます。
ユニット型と従来型では、居住費に大きな差が出るため、予算に合わせて検討すると良いでしょう。施設によっては、特別室料などの設定があり、部屋代として「1,000〜3,000円/日」程度の費用負担が発生する場合もあります。
食費は1日(3食)単位で請求される場合がほとんどです。そのため、外出などで1食抜いたとしても費用は変わりません。しかし、外泊などで1日(3食)分欠食する場合は、その日分の費用はかかりません。
グループホームと特養の入居条件の違い
それぞれの施設で入居条件が大きく異なる
グループホームと特養では、入居条件が大きく異なります。
グループホームの入居条件
グループホームは、認知症特化型の施設のため、認知症の診断を受けた方のみが入居できます。また、要介護認定で要支援2以上の判定を受けた方が対象です。
40〜64歳の方でも、若年性認知症の診断を受けた要支援2以上の方は入居対象になります。
また、グループホームは地域密着型サービスのため、事業所と同じ市区町村に住んでいる方だけが入居できる施設です。
特養の入居条件
特養は65歳以上で、要介護認定3以上の認定を受けた方が入居できる施設です。40~65歳の方でも特定疾病の診断を受けた方で、要介護3以上の認定を受けた方は入居対象になります。
それぞれをまとめると以下の通りです。
グループホーム | 特養 | |
---|---|---|
年齢 | 65歳以上 ※40~64歳でも認知症の診断を受けている方も含む | 65歳以上 ※40~64歳でも特定疾病の診断を受けている方も含む |
介護度 | 要支援2以上 | 要介護3以上 |
住所 | 事業所と同じ市区町村 | 特になし |
特養の場合、条件に住所はありません。ただし、入居する特養が「地域密着型」の特養の場合は、同じ市区町村に住んでいる方のみ入居対象となります。
また、要介護1・2でも、緊急性や切迫性が認められた場合に限り、特養の入所が可能です。
グループホームと特養のメリット・デメリットの違い
目的に合わせて選択が必要な一長一短のサービス
ここからは、グループホームと特養のメリット・デメリットを見ていきましょう。
グループホーム | 特養 | |
---|---|---|
メリット |
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デメリット |
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グループホームのメリット
グループホームは認知症ケアに特化している点がメリットです。認知症ケアに特化した職員がケアを提供するため、安心して利用できるでしょう。少人数制のユニットケアでは、顔なじみの職員によるケアが受けられるため、環境の変化を減らせます。
グループホームのデメリット
グループホームには看護師の配置が義務ではないため、不在の施設も多くあります。処置や治療が必要な場合は、往診や通院が必要です。また、グループホームでは、初期費用として「一時金」や「保証金」がかかる場合があり、入居時にまとまった費用が必要になります。月々の費用は、公的施設に比べるとやや高く設定されています。
特養のメリット
公的施設のため、費用を抑えて利用できます。また、長期で利用可能なため、一度入居できると転居の心配は少ないです。また、個室や多床室が選択できるため、ニーズに合わせて施設や居室を選べます。施設によっては看取りケアを実施しているため、終身まで利用かのうです。希望する場合は利用前に施設に確認しておくと良いでしょう。
特養のデメリット
特養は、多くの方との共同生活の場でもあるため、個々の自由度は少なくなります。例えば、食事や入浴の時間は決まっているため、希望通りにはいかないでしょう。また、夜間帯に看護師がいない施設が多いため、適宜、医療的ケアが必要な方は適さない場合があります。
最大のデメリットとしては、施設の特性上、即入居が難しく半年〜1年ほどの待機期間が発生することもあります。そのため、入居の意向がある場合は、できるだけ早く入所申し込みを出しておくと良いでしょう。
それぞれのメリット・デメリットがあるため、施設選びの参考にしてください。
グループホームと特養、それぞれにおすすめの人
サービスの特徴が違うため内容を理解して施設を検討する
施設の特徴に合わせて利用する施設を検討しましょう。それぞれの施設でおすすめの人を紹介します。
グループホームがおすすめの人
グループホームは、認知症ケアに特化した施設のため、認知症でお困りの方が利用する施設です。1ユニット5~9人の施設で共同生活を行いながら、顔なじみの職員と安心して過ごせるでしょう。認知症を発症し、「症状の進行を抑えたい」「症状を少しでも改善させたい」と考えている方にとって、グループホームはおすすめの施設です。
特養がおすすめの人
特養は、介護度が高く日常生活になんらかの援助が必要になった方におすすめです。在宅での生活ではなく、継続的に施設利用を考えている方は特養が選択肢のひとつとなるでしょう。他の施設に比べ、費用面で安価な場合が多いため、収入面で不安な方でも利用できます。また、低所得の方には減免制度があり、生活保護でも利用できる施設もあるので安心です。
ただし、費用がやすく長期的に利用できることから利用ニーズが高いため、入所申込をしてもすぐに入居できず待機になることも珍しくありません。そのため、利用したい場合は、できるだけ早い申込や複数の施設へ相談しておくと良いでしょう。
グループホームから特養に入所するときの注意点
同一算定に注意が必要
グループホームは長期利用もできますが、認知症の進行度合によっては退去を求められる場合があります。例えば、認知症状が重度化した方や、精神疾患を患った場合です。また、グループホームの費用が若干高いことから、経済的に入居を継続できない方もいます。そのため、特養に転居を考える方もいるでしょう。
グループホームから特養へ転居する際は、いくつか注意点があります。注意する点は以下の通りです。
環境の変化による認知症状の悪化
費用が必ず安くなる訳ではない
同日算定による費用負担
それぞれ見ていきましょう。
環境の変化による認知症状の悪化
グループホームから特養に転居すると環境が変化します。認知症は環境の変化に弱いと言われているため、転居後は認知症の悪化や精神面が不安定になる場合があるため注意が必要です。
費用が必ず安くなる訳ではない
費用面を考えて特養に移る方もいますが、居室料金だけではなく、部屋代やその他の費用体系は特養ごとに異なります。入居前に料金体系は必ず確認しておくと良いでしょう。
同日算定による費用負担
グループホームから特養に転居すると、1日だけ双方の費用が発生します。例えば、10日に転居した場合、グループホームでは10日までの利用料が発生し、入居先の特養でも利用算定されます。この時、どちらの施設でも1日分の食費が算定される場合が多いため注意が必要です。
入居時の食費に関しては、1日に1食または2食欠食された場合においても、3食分の請求をする施設がほとんどのため、グループホームの退所日と特養の入所日で、2日分の食費が請求されます。
利用料や部屋代が2日分請求される場合があることを理解しておくと良いでしょう。
まとめ
グループホームと特養では、提供するサービスや目的に大きな違いがあります。利用前に目的やサービス内容を確認し、入居者に合った施設選びが大切です。
「認知症ケア」を求めるならグループホーム
「長期的に安心できる施設」を求めるなら特養
上記のように目的に合わせた施設選びをしてみてください。
認知症の方は環境の変化に弱いため、症状の悪化を防ぐためにも慎重に施設選びを行う必要があります。ミスマッチが発生しないように入居先を検討する場合は、できる限り見学や体験利用をして施設の雰囲気を見ておくと良いでしょう。
この記事が施設選びの参考になれば幸いです。
施設を選ぶ
介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。