サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションの違い
サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションは、高齢者向けの住宅として注目を集めています。しかし、サービスや費用などの違いについてよく分からないという人もいます。今回は、サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションの特徴について比較していきます。ふたつの違いを理解すると、施設探しの参考になるので、ぜひご覧ください。


とぐち まさき
渡口 将生
施設の特徴の比較と違い
サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションは、正確には施設ではありません。ともに、自宅の扱いになり、介護施設とは扱いが異なります。
互いの住宅について、6つの項目から比較していきましょう。
入居条件
まずは、入居条件から比較していきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅の入居条件
サービス付き高齢者向け住宅は、基本的に60歳以上の高齢者が対象の住宅です。また、60歳未満の方でも、要支援や要介護の認定を受けている方は対象になります。
比較的、元気な方や介護度の低い方が入居する傾向にあります。住宅によっては、介護に力を入れている住宅もあり、介護度が高い方や認知症の方が入居している場合もあるので、希望の施設があれば相談してみるとよいでしょう。
シニア向け分譲マンションの入居条件
シニア向け分譲マンションは、介護や医療のサービスを提供しないため、基本的に元気で、日常生活が自立している方が入居対象となります。そのため、介護が必要な方や認知症の症状によっては入居できない場合があります。また、入居していても介護の必要性が高くなり、退去しないといけない場合がある点には注意が必要です。
介護サービスやその他サービスの提供方法
サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションは、基本的に介護や医療のサービスは提供していません。そのため、介護や医療のサービスが必要な場合は、外部のサービスと契約する必要があります。
それぞれのサービスの特徴をみていきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅のサービス
サービス付き高齢者向け住宅で受けられるサービスは「安否確認」と「生活相談」です。
安否確認は、1日に数回居室の訪問や電話などで入居者の異変がないかを確認します。最低回数は1日1回と定められており、実施頻度や方法は住宅によってさまざまです。
生活相談では、日常生活の困り事に対して支援を受けられます。たとえば、ご家族との連絡・郵便物の受け取り・電球交換といったサービスや、適宜緊急コール対応を受けられます。
介護や医療のサービスは、住宅のサービスにはありませんが、住宅によってはオプションサービスとして介護サービスを受けられる場合があります。外部のサービスを利用する場合は、担当のケアマネジャーと相談して必要なサービスを利用しましょう。また、介護型のサービス付き高齢者向け住宅の場合は、住宅内に介護や看護職員が常駐しているので、介護や医療のサービスを受けられます。
シニア向け分譲マンションのサービス
シニア向け分譲マンションでは、住宅ごとに提供されるサービスが異なります。主に提供されるサービスとしては、食堂での食事提供・掃除・洗濯・見守り・緊急時対応・生活相談などです。
介護や医療サービスは提供されていないため、必要な場合は外部の事業所と契約して、サービスを利用します。
住宅の中には、介護などの事業所を併設している場合もあるので確認しておくとよいでしょう。
費用
次はそれぞれの費用についてみていきましょう。どちらの住宅でも、日常生活に必要となる消耗品は、入居者や家族で準備する必要があり、別途費用がかかります。
【日常生活に必要になる主な消耗品】
歯ブラシ
歯磨き粉
入れ歯洗浄剤
尿取りパット
オムツ類
ティッシュ
トイレットペーパー など
住宅で購入できる場合もあるので、確認しておくとよいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅の費用
サービス付き高齢者向け住宅は、入居時に敷金が必要になるケースが多いです。敷金は、家賃の2~3ヶ月分が相場となります。敷金は退去時に、修繕費などを差し引いて返金されます。
他に必要な費用として、毎月かかる家賃・サービス費・管理費・光熱費・水道代・食費などが必要で、金額は住宅によってさまざまです。また、介護サービスなどをオプション費として設定している場合もあるため、確認しておくとよいでしょう。
シニア向け分譲マンションの費用
名前の通り、購入するタイプの富裕層向け住宅で、基本的に高額な場合が多いです。購入費用は数千万~数億円と幅はありますが、住宅の設備などにより変わります。
他にも月々、家賃・光熱費・水道代・管理費・修繕積立金などが必要です。また、分譲マンションのため、固定資産税がかかります。
介護のサービスなどを利用する場合は、適宜サービス利用分の費用が必要になります。予算に合わせて検討していくとよいでしょう。
職員体制
続いて職員数を比べていきます。
サービス付き高齢者向け住宅の職員体制
サービス付き高齢者向け住宅には、日中に介護職員を1名以上配置すると定められており、安否確認や生活相談を受けられます。その他の職種は、配置義務がないため、配置されていない住宅もあります。
夜間帯の職員配置義務がないため、夜間帯は職員不在の住宅があります。しかし、近年は宿直者を配置する住宅も増えてきていますので、入居前に確認するとよいでしょう。
シニア向け分譲マンションの職員体制
特に定めがないため、職員数はさまざまです。日中には、コンシェルジュとして相談サービスを受け付けている場合があるため、入居前に確認しておくとよいでしょう。
設備
設備に関しては、サービス付き高齢者向け住宅・シニア向け分譲マンションともに、住宅によって大きく異なります。住宅ごとの特色や立地条件などでも変わります。
サービス付き高齢者向け住宅の設備
バリアフリー構造で、全室個室の住宅が多い傾向にあります。夫婦で居住できる部屋やペットと同居できる居室などがある住宅もあります。
居室は25㎡以上と定められていますが、共用部のリビングや食堂に十分なスぺ―スを確保されている住宅は、18㎡以上となります。
居室内には、トイレ・浴室・キッチンなどが設置されていますが、これらも共用部に設置されている場合は、居室に設置されていない場合も多いです。
また、トレーニングルームや温泉などを設置している住宅もあるので、希望に合った住宅を探してみてはいかがでしょうか。
シニア向け分譲マンションの設備
完全バリアフリー設計された住宅です。住宅内にトレーニングルーム・映画館・高級レストラン・温泉などが付属している場合があります。設備が豊富な分、費用が高額になる場合があるので、予算と相談して検討してください。
アクティビティ、その他
最後に、アクティビティについてみていきます。
サービス付き高齢者向け住宅のアクティビティ
サービス付き高齢者向け住宅は、住宅によって職員数もさまざまなため、アクティビティの内容は一概には決まっていません。住宅によっては、設備も充実しており、さまざまな活動ができる住宅もあります。たとえば、入居者同士の交流として、麻雀・囲碁・カラオケなどを利用できます。
行事などのイベントや実施状況も住宅ごとに違いがあるため、入居前に確認しておくとよいでしょう。
シニア向け分譲マンションのアクティビティ
シニア向け分譲マンションは通常のマンションに近いものなので、イベントや行事は介護施設に比べて少ない場合があります。
しかし、設備が充実しているため、さまざまな活動ができるでしょう。また、マンションの住人と一緒に過ごすことで、生活にメリハリも生まれる可能性もあり、活動性の向上が期待できます。
サービス付き高齢者向けとシニア向け分譲マンションのメリットとデメリット
介護施設に比べると自由に生活ができる
サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションは、ともに介護施設ではないので、ルールや規則が少ないです。自由に生活がしたいけど、万が一のために見守りや安否確認をしてほしいという方におすすめです。
介護サービスが必要な場合は、外部の事業所と契約し、必要な分のサービスを利用できるのもメリットのひとつです。
しかし、介護や医療のサービスが常時受けられる体制ではないのがデメリットになります。そのため、介護や医療の必要性が高くなると退居しないといけない場合があるので、注意しましょう。
シニア向け分譲マンションは富裕層をターゲットにしているため、購入費用が高いのが特徴です。費用が準備できない場合はシニア向けの賃貸を検討してみるのもひとつでしょう。しかし、住宅の数は少ないので、選択肢が限られてしまいます。
購入した場合は、権利権方式の契約なので、譲渡・リフォーム・賃貸ができます。また、相続することも可能です。サービス付き高齢者向け住宅は賃貸なので、リフォームはおこなえない場合がほとんどなので注意しましょう。
まとめ
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。