介護ロボットとは?種類や導入のメリット・デメリット、課題を解説

近年介護現場で注目されているのが、介護ロボットです。介護ロボットは、介護する側やされる側の負担を軽減し、介護現場の人手不足問題を解決する手段として期待されています。しかし、介護ロボットに対する正しい理解が進んでおらず、普及していないのが現状です。

この記事では、介護ロボットとは何か、種類や現状、導入のメリット・デメリット、今後の課題などを詳しく解説しています。介護ロボットについて理解を深めるために、ぜひご覧ください。


#老人ホーム#施設サービス#介護保険施設#豆知識
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

介護ロボットとは?

介護ロボットについて、厚生労働省は、「情報を感知(センサー系)、判断し(知能・制御系)動作する知能化した機械システム」のうち、「ロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器」と定義しています。

出典:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」

つまり、介護ロボットとは、日常生活において介護が必要な方を補助し、介護する方の負担を軽減するロボット機器のことです。介護支援ロボットや介護福祉ロボットとも呼ばれます。

例えば、要介護者をベッドから車椅子、あるいは車椅子からトイレに移動させる際、介護側には身体的な負担がかかります。このような場面で介護ロボットを活用することによって、介護側の負担を軽減しながら、スムーズな介護が実現します。

介護ロボットには、ほかにも排泄支援やコミュニケーションがとれるものなど、様々な種類があります。

介護ロボットが注目されている理由

介護ロボットは、介護現場における人手不足問題を解決する手段として注目されています。少子高齢化で介護ニーズがますます高まっている一方、介護に携わる方の不足は深刻化しています。また、介護する側の高齢化も進んでおり、身体的に負担がかかる介護の際に足腰を痛め、仕事に支障が出るリスクもあります。

2013年6月には、日本政府が介護ロボットの開発・導入促進に取り組むことを発表し、厚生労働省と経済産業省が「ロボット技術の介護利用における重点分野」を策定しました。以降、様々な企業が政府の支援のもと、介護ロボット開発に取り組んでいます。

介護ロボットの現状

政府の支援のもと開発が行われている介護ロボットですが、未だに普及していないのが現状です。令和3年度の「介護労働実態調査」によると、介護ロボットをいずれも導入していない、と回答した事業者は80.9%でした。最もよく用いられている「見守り・コミュニケーション(施設型)」の介護ロボットについても、導入率は2.8%という結果です。

出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」

介護ロボットは、コスト面や技術面などに課題があり、現場における実用性が高いとは言えないのが現状です。今後も、補助金制度や開発から普及を支援する事業など、介護ロボットの実用化や普及に向けた積極的な取り組みが求められています。


介護ロボットの重点開発分野とは

介護ロボットの重点開発分野とは、厚生労働省と経済産業省が介護ロボットの開発・普及促進のために定めた、以下の6分野13項目のことです。

<1.移乗支援>

要介護者を抱え上げてベッドに移動させる、といった移乗動作を支援する機器です。介護者のパワーアシスト機能を備えており、身体的な負担を軽減します。さらに以下の2つに分かれます。

  • 装着型

  • 非装着型

<2.移動支援>

要介護者が外出する際や、屋内を移動する際など、歩行を支援する機器です。立ち上がったり座ったりといった動作や、荷物の運搬もサポートします。

  • 屋外用

  • 屋内用

  • 装着型

<3.排泄支援>

要介護者をトイレに誘導して一連の動作を支援したり、排泄物を処理したりといった機能を持つロボットです。便座に座って排泄できます。

  • トイレ誘導

  • 排泄物処理

  • 動作支援

4.見守り・コミュニケーション>

センサーによる見守り機能やコミュニケーション機能などを搭載しており、介護施設や在宅介護などで活用されます。

  • 施設型

  • 在宅型

  • 生活支援型

<5.入浴支援>

要介護者の入浴に関する一連の動作をサポートする機器です。

<6.介護業務支援>

そのほか、様々な介護業務を支援する機器です。

これらの分野に基づいて、ロボットの開発が進められています。


介護ロボットの種類

介護ロボットには、上記の重点開発分野に基づいて様々な種類があります。以下では、介護ロボットを3つに分類し、それぞれの機能や特徴を解説します。

  • 介護支援型

  • 自立支援型

  • コミュニケーション・セキュリティ型

介護支援型

介護支援型の介護ロボットは、移乗や移動、排泄や入浴といった介護業務を支援するロボットです。介護施設で導入される場合が多く、スタッフの身体的・精神的な負担を軽減します。また、介護を受ける側にとっても、安心して体を委ねられたり、「申し訳ない」「恥ずかしい」といった精神的負担を軽減できたりなどのメリットがあります。

自立支援型

自立支援型の介護ロボットは、利用者の日常生活におけるあらゆる動作をサポートし、自立した生活が送れるよう支援するロボットです。具体的には、歩行や食事、リハビリなどのサポートを行います。自分でできる動作の幅が増えることによって、ストレスを和らげたり、自信につながったりといった効果が期待されます。

コミュニケーション・セキュリティ型

コミュニケーション・セキュリティ型のロボットは、AI(人工知能)を搭載して人とコミュニケーションが取れたり、センサーで要介護者の様子を見守れたりするロボットです。

コミュニケーションが取れるロボットには、会話ができるものや、要介護者の動き・反応などに応じて声かけを行うもの、歌やダンスなどのレクリエーションができるものなど、様々な種類があります。また、動物の形をしており、動物らしい動作や感情表現でアニマルセラピーのような効果をもたらす「セラピーロボット」も注目されています。

セキュリティ型のロボットは、センサーが要介護者の様子を観察し、異変を検知した場合アラームなどで介護者に知らせてくれます。転倒やひとり歩き(徘徊)などの予防に役立ち、介護施設だけでなく、一人暮らしの高齢者世帯や認知症を患っている方と同居している家庭でも活用されています。


介護ロボットを導入するメリット3つ

介護ロボットは、介護者・要介護者双方にメリットがあります。ここでは、介護ロボットを導入するメリットとして、以下の3点をご紹介します。

  • 介護者の負担を軽減できる

  • 介護現場の生産性向上につながる

  • 要介護者の心理的負担を軽減できる

介護者の負担を軽減できる

介護ロボットは、介護者の負担の軽減ができます。移動介助や夜間の介護など、介護には精神的・身体的に大きな負担がかかります。介護ロボットを導入することによって、足腰に負担がかかる介助作業をロボットに任せたり、見回りセンサーで異変に気づきやすくなります。介護者の負担を軽減することにより、長期間健康的に働くことが可能です。

介護現場は、「仕事がきつい」というイメージを持たれやすいです。介護ロボットの活用で介護者の負担が軽減することにより、マイナスなイメージを払拭でき、人員確保も期待できます。

介護現場の生産性向上につながる

人手不足が深刻な介護現場では、生産性向上は重要な課題です。介護ロボットが介護者の業務負担を軽減することによって、介護者はその分、別の業務を行えるようになります。その結果、業務が効率化し、生産性向上につながります。

要介護者の心理的負担を軽減できる

介護ロボットは、介護する側だけでなく、される側にもメリットがあります。介護してもらうことを申し訳なく思ったり、排泄や入浴介助などを恥ずかしいと感じる方は少なくありません。自動で介護を行うロボットを活用することによって、こうした要介護者の心理的負担も軽減できます。

また、コミュニケーションが取れる介護ロボットを導入することにより、コミュニケーション不足の解消にもつながります。要介護者に癒しを与え、認知症を予防することも期待できます。


介護ロボットを導入するデメリット3つ

介護ロボットには様々なメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。

  • 導入や維持・管理にコストがかかる

  • 操作に慣れるまで時間がかかる

  • 導入事例が少なく、抵抗を持たれることが多い

導入や維持・管理にコストがかかる

介護ロボットは、普及率が低く大量生産が進んでいません。そのため、単価が高く、導入にかなりのコストがかかります。セラピーを目的とした小型のロボットであっても数万円、大型のものや様々な機能が搭載されているものの中には数百万円ほどかかるロボットもあります。また、導入した後も維持・管理にコストがかかります。このように、費用面の問題から導入を断念する事業者が多いです。

さらに、大型ロボットの場合は設置・管理のためのスペースが必要です。十分なスペースが用意できない場合、ロボットを導入できないこともデメリットです。

操作に慣れるまで時間がかかる

介護ロボットは、操作に慣れれば非常に利便性が高い機器ですが、使い方を習得するまでに時間がかかります。特に、様々な機能が搭載されている介護ロボットの場合、操作を難しく感じることが多いです。安全に使用するためには、機能や操作方法を十分に理解する必要があり、導入初期はスタッフにとって負担になることもあります。

導入事例が少なく、抵抗を持たれることが多い

介護ロボットは未だに普及しておらず、導入事例が少ないです。そのため、導入にあたって不安を抱く事業者は多く、普及を妨げています。また、「ロボットが介護する」「ロボットに介護される」という事実に抵抗を抱く介護者・要介護者も少なくありません。介護ロボットを普及させるためには、ロボットに対する正しい理解を促進し、抵抗をなくすための取り組みが必要です。


介護ロボットの課題

介護ロボットを普及させるためには、開発側・利用者側双方に課題があります。

開発側は、介護現場の実態やニーズに沿ったロボットを開発することが必要です。例えば、各業務ごとにそれぞれロボットを導入する必要がある場合、コストや維持管理の手間などから普及は進みにくいです。また、操作が複雑で習得に時間がかかる場合、忙しい介護現場では敬遠されてしまう可能性があります。高い技術を駆使して開発しても、実際の現場で活用されなければ無駄になってしまいます。介護現場の実態を把握したうえで、ニーズを捉えた実用性のある介護ロボットを開発することが必要です。

介護ロボットの利用者側は、介護ロボットに対する正しい知識を身につける必要があります。介護ロボットの導入メリットを理解しないまま、ネガティブなイメージが先行して抵抗を抱いているケースは少なくありません。利用者側が介護ロボットについて適切な理解を深めることによって、普及につながります。

参考:最新のAI技術を活用したライティングツール「AItools」を開発|株式会社Catch the Web

まとめ

今回は、介護ロボットについて機能や現状、種類やメリット・デメリットなどを解説しました。介護する側・される側双方の負担を軽減できる介護ロボットですが、未だに普及していないのが現状です。介護ロボットが普及することによって、価格が低下して導入ハードルが下がることや、介護現場の人手不足問題が解消することなどが期待されます。そのためには、開発側の努力だけでなく、私たちが介護ロボットについて正しく理解することが必要です。介護現場の救世主として活躍が期待される介護ロボットの今後について、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

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