医療費控除を活用して、在宅介護にかかる費用を抑えよう!手続き方法まで詳しく解説

「医療費控除ってなに?」「どうやって申請するの?」「医療費控除の対象ってなに?」このような疑問はありませんか?

在宅介護では、介護サービスや医療費など、様々な費用が必要です。特定の費用には医療費控除を受けられるため、確定申告に合わせて申請すると節税ができます。

今回は、医療費控除について紹介します。また、申請方法や注意点もわかりやすく紹介しているため、医療費控除の理解が深まるでしょう。ぜひ参考にしてください。

#お金#制度#手続き関係
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

医療費控除について

確定申告で支払った医療費による控除を受けられる

1/1〜12/31の1年間で、本人または生計をともにしている配偶者や親族のために支払った医療費の合計が一定以上の額になった場合、控除を受けられる制度です。医療費控除を受けると翌年からの税金が安くなるため、節税対策として活用すると良いでしょう。

医療費控除額の計算式

医療費控除※1

1年間に実際支払った医療費の総額ー保険金等で補填される金額ー10万円※2

※1 控除額は最大200万円まで

※2 その年の総所得額が200万円未満の方は、総所得額の5%

出典:国税庁「医療費を支払ったとき」(医療費控除)

総所得が200万円未満の方は、「総所得から、生命保険などの入院給付金や高額医療費の支払いを受けた金額を引き、総所得の5%を引いた金額」になります。

医療費控除を受けるためには、確定申告の時期に、確定申告書と医療費明細書を税務署に提出します。医療費控除には、控除対象になるものとならないものがあるため注意しましょう。医療費控除の対象になるものは、次の通りです。

医療費控除の対象

医療費控除の対象外

病院で受けた診療費・治療費・入院費

美容整形の費用

歯科医院で受けた診療・治療費

健康診断・人間ドックの費用

治療のために支払った薬代(市販薬も含む)

※ビタミン剤やサプリメントなど治療目的以外のものは含まれない

通院時に使用したタクシー代(公共交通機関が利用できない場合を除く)

治療で必要になったコルセットや松葉杖などの購入費

自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場料金

通院時に利用した電車・バスの運賃・タクシー代などの交通費

※タクシー代は、電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合のみ対象になる

病気の予防や健康増進のためになるとされるものの購入費用(病気の予防接種を含む)

治療や診察のための医師の送迎費用

自分で希望して個室を利用したときのベッド代

治療としてマッサージなどで支払った費用


傷病により、6ヶ月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合のオムツ代


介護保険等の制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担分


医療費控除を受けるためには、毎年2/16〜3/15に受付が行われる、確定申告で申請します。万が一、時期を過ぎてしまった場合でも、過去5年間分はさかのぼって申告可能なため、レシートや領収書は確実に保管しておくと良いでしょう。

医療費控除と介護サービス

介護サービス費用にも医療費控除の対象になるものがある

医療費控除は、病院の治療費や診療費だけではなく、介護サービス費にも適応されるものがあります。在宅介護で受けられるサービスの中で、医療系サービスに分類されるものは次の通りです。

  • 訪問看護(予防)

  • 訪問リハビリ(予防)

  • 通所リハビリ(予防)

  • 短期入所療養介護(予防)

  • 居宅療養管理指導

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で「訪問看護を利用する場合」に限る)

  • 看護小規模多機能(上記のサービスと併用の場合)※生活援助中心型の訪問介護の部分を除く

前述の医療系サービスを併用すると、次のサービスも医療費控除の対象になります。

  • 訪問介護(調理・洗濯・掃除などの生活援助中心型を除く)

  • 夜間対応型訪問介護

  • 訪問入浴介護(予防)

  • 通所介護

  • 認知症対応型通所介護(予防)

  • 小規模多機能型居宅介護(予防)

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合および連携型事業所の場合)

  • 短期入所生活介護(予防)

  • 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除く)

  • 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除く)

出典:国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」

次に施設介護の費用についてもみていきましょう。まず、医療費控除対象になる施設は次の通りです。

  • 介護老人保健施設(老健)

  • 介護医療院

  • 介護療養型医療施設※R5.3.31に廃止予定のサービス

これらの施設を利用した場合は、費用から2分の1が医療費控除の対象です。ただし、「介護サービス費・食費・居住費」に限ります。また、食費や居住費など、負担軽減サービスを利用している場合は、その分の額が差し引かれます。

排泄用品も医療費控除の対象となる

おおむね6ヶ月以上寝たきりの状態であり、医師による治療のもとでおむつの使用が必要であると認められる場合に、おむつや尿取りパット代も医療費控除の対象となります。かかりつけの医師に「おむつ使用証明書」を記載してもらう必要があるため、市区町村の窓口でもらう、あるいは国税庁や各市区町村のホームページからダウンロードしておきましょう。

ただし、介護福祉施設である特別養護老人ホーム・介護老人保険施設・介護医療院・介護療養型医療施設の場合、おむつは施設負担のため請求はありません。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、実費負担のため医療費控除の対象になります。

国税庁:おむつ使用証明書

最後に、医療費対象外のサービスをみていきましょう。医療費控除の対象にならないサービスは次の通りです。

  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(予防)

  • 福祉用具貸与(予防)

  • 訪問介護(生活援助中心型)

  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)

  • 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービス)

  • 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービス)

  • 地域支援事業の生活支援サービス

このように、様々な種類や条件があるため、利用している介護サービスが医療費控除対象か確認しておくと良いでしょう。

医療費控除の手続き

医療費控除の手続きは現住所管轄の税務署で行う

医療費控除を受けるためには、毎年2/16〜3/15の間に受付される確定申告の時期に一緒に申請します。確定申告や医療費控除の申請は、現住所管轄の税務署に医療費控除明細書を提出または郵送します。

※医療費控除明細書は、医療費控除対象サービスの領収書を基に作成

医療費控除の手続きで必要な書類は、次の通りです。

  • 確定申告書

  • 源泉徴収票等

  • 医療費控除の明細書(現住所管轄の税務署で取得、または国税庁ホームページからダウンロードする必要があります)

  • 医療費の領収書

  • 交通費の領収書

  • おむつ使用証明書(必要に応じて)

医療費控除のポイント

医療費控除は国税庁で相談可能

医療費控除を利用するときのポイントを3点、紹介します。

  • 医療費控除は合算可能

  • 高額介護サービス費分は対象外

  • 5年間さかのぼって申請可能

【医療費控除は合算可能】

医療費控除は、離れて暮らす家族の分も合算できます。医療費や介護費なども合わせて控除されるため、家族にかかる費用もまとめておくと良いでしょう。しかし、家族分を合算するときは注意点があります。

家族分の医療費や介護費を合算する場合、生計を一緒にしているかどうかが問われます。同居している家族であっても、それぞれに収入があり、経済的に自立している場合は合算の対象にはなりません。(離れて暮らしていても、仕送りなどで援助している時は合算できる場合があります。)国税庁のホームページでは、税についての相談窓口を案内しています。申請に関することは、確認しておくと良いでしょう。

【高額介護サービス費分は対象外】

高額介護サービス費は、介護サービス費用が1ヶ月の上限額を超えた分払い戻される費用です。上限額は個人や世帯によって変わります。それぞれの上限額は次の通りです。

条件

上限額

課税所得690万円(年収約1,160万円)以上

141,000円(世帯)

課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)

93,000円(世帯)


市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満

44,400円(世帯)

前年の公的年金収入やその他合計所得金額の合計が80万円以下

老齢福祉年金受給者

24,600円(世帯)

15,000円(個人)

生活保護受給

15,000円(個人)

例えば、前年度合計所得が100万円の方は、上限額が「24,600円」になります。この方が、1ヶ月で介護サービス費用を30,000円分利用した場合、上限額を超えた5,400円は後日、市区町村から払い戻されます。この場合、5,400円は控除対象外となり、24,600円が医療費控除の対象です。

【5年間さかのぼって申請可能】

医療費控除の申告期間は、2/16〜3/15の間ですが、何らかの事情で申請時期を逃してしまった場合でも、5年間さかのぼって申請が可能です。そのため、介護や医療費の領収書は保存しておくと良いでしょう。

医療費控除以外で、在宅介護の費用を抑える方法

介護にかかる費用の見直しは定期的に必要

介護費用を抑えるための方法を紹介してきましたが、介護費用そのものを減らす方法もあります。

ここでは3つご紹介します。

【要介護度を見直す】

介護費用が高額になる場合、介護度が利用者の心身状態に合っていない可能性があります。要介護度によらず起こりうるため、見直しを検討したいときは担当のケアマネジャーに相談すると良いでしょう。

<介護度が実際よりも高い>

骨折や急性の疾患により入院し、突然介護が必要になった方に多いです。入院中の認定調査は、治療中で安静を指示されている方も多いことから、介護度が高く出る傾向にあります。リハビリにより、状態が回復した方は、介護度の見直しを検討しても良いでしょう。

<介護度が実際よりも低い>

ゆっくりと生活動作が低下して行く方に多いです。介護保険証更新の際に、前回の認定時と状態が変わらない場合、長期間(2〜3年)設定されることがあります。高齢者の場合、2〜3年の間に大きく体調が変わる場合もありますが、見直しができることを知らず、そのままにしている方も少なくありません。

介護度が低いと利用できる介護サービスの量に限りがあるため、限度額を超えて実費費用がかかる場合もあります。心身の状態が変わったり、介護サービスが少ないと感じるときは、介護度が低い可能性があるため、担当のケアマネジャーと相談すると良いでしょう。

【月額利用料が低い施設に入居】

介護費用を抑えるために介護施設を利用する場合は、月額利用料の低い施設を探すと良いでしょう。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは、施設ごとに利用料が大きく異なります。比較的費用負担の少ない施設は次の通りです。

  • ケアハウス

  • 特別養護老人ホーム(従来型)※最近では、ユニット型個室が主流のため、費用が高い傾向にあります

  • 介護老人保健施設(従来型)※ユニット型個室の場合は、費用が高くなる傾向にあります

ショートステイの場合、利用する部屋や施設の形態により、1日1,000〜3,000円ほどの差があります。契約前に、重要事項説明書や見積もりを確認しておくと良いでしょう。

【家族介護を増やす】

家族の負担は増えますが、介護サービスを減らすことで毎月の費用負担は軽減できます。しかし、家族の負担が増えることによるリスクもあります。

本人の状態変化に気づきにくい、あるいは家族の介護離職や介護うつの危険もあるため、在宅介護は、費用負担と介護者の身体・精神的負担のバランスを考えて長期計画を立てていくと良いでしょう。

まとめ

在宅サービスの中にも、医療費控除の対象サービスは、たくさんあります。利用しているサービスが、医療費控除の対象なのか確認しておくと良いでしょう。

在宅サービス以外にも、医療費(家族含む)やおむつ代なども対象となる可能性があるため、国税庁のホームページを参考にしてください。

また、確定申告の際に必要になる書類の準備や領収書などは、大切に保存しておきましょう。5年間さかのぼって申告も可能なため、忘れた場合は翌年に提出できます。

今回の記事で、在宅介護における医療費控除の理解が深まれば幸いです。

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