ケアマネジャーの選び方を紹介!知っておくべきポイント5つ

要介護認定を受けると、介護保険の給付を受けて介護サービスを利用できるようになります。しかし介護サービスを利用するためには、「介護サービス計画書(ケアプラン)」を用意しなければなりません。そして、計画作成の役割を担うのがケアマネジャー(介護支援専門員)です。この記事ではケアマネジャーを選ぶ際に知っておくべきポイントを5つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

ケアマネジャーの選び方を紹介!知っておくべきポイント5つ
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ケアマネジャーとは?

ケアマネジャー(介護支援専門員)は都道府県が認定する公的資格で、次のような役割を担っています。

●    「サービス利用者(要介護者)」と「介護サービス事業所・自治体」との連絡調整

●    介護サービス計画書(ケアプラン)の作成

●    介護給付管理(介護保険利用料の請求業務)

●    要介護者宅への定期的な訪問を通じたモニタリング(進捗状況の確認)・アセスメント(評価)

これらの役割をまとめると、ケアマネジャーは介護サービスをスムーズに導入・提供するための調整役ともいえるでしょう。特別養護老人ホームなどの施設へ入居する場合には、それら施設に勤務するケアマネジャーに頼るケースが多いです。一方、自宅や住宅型有料老人ホームなどで暮らす要介護者には、地域包括支援センターなどの公的機関、もしくは居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当につきます。


ケアマネジャー選びは介護において重要な要素

ケアマネジャーの重要な役割は、要介護者の心身の状況にあわせたケアプランを作成することです。要介護者には一人ひとり担当ケアマネジャーがつき、身体状況や生活環境などを評価します。この評価に基づき介護サービスを受けることになるためケアマネジャーとの相性で生活の質が左右されるといっても過言ではありません。
また、介護保険制度は複雑であるため、要介護認定を受けたばかりの方にとって分かりづらいことも多いです。しかし実力のあるケアマネジャーは、利用できる補助制度や、サービスの上限・注意点なども丁寧に教えてくれます。
さらに、介護は短期間で終わるものではなく、数年単位で続くものです。そのため要介護者だけではなく家族のケアも必要になりますが、親身になってくれるケアマネジャーは家族の相談にも乗ってくれるでしょう。このような介護によって生じる経済的・精神的負担を減らすためにも、良いケアマネジャーを選ぶことが重要なのです。

ケアマネジャーは選べるの?

居住地のある地域包括支援センターに相談すると、希望に沿ったケアマネジャーを紹介してもらうことが多いです。在宅生活で介護サービスを利用していく予定があれば、居宅介護支援事業所のリストやハートページを利用して、ご自身(家族)が選定することも可能です。

口コミなどをネットで確認し依頼する方法や、身近な友人などからの紹介で選ぶことができます。事業所によっては名指しでの依頼を引き受けることが困難な場合もあります。

 

また、要介護認定が要介護と要支援では管轄が異なるため、注意する必要があります。基本的に要支援者は、地域包括支援センターの管轄ですが、地域包括支援センターから委託を受けた、居宅介護支援専門員のケアマネジャーが担当する場合もあります。

ただし、老人ホームなどの施設に入所予定であれば施設のケアマネジャーが担当するため、探す必要はありません。

 


ケアマネジャーを選ぶときのポイント5つ

ケアマネジャーの探し方は、地域包括支援センターに相談したり、居宅介護支援事業所のリストやハートページ(介護保険専門の情報誌)を利用したりすることが挙げられますが、実際にどのケアマネジャーに相談すべきか迷っている方もいるでしょう。介護のパートナーとしてふさわしいケアマネジャーを選ぶために意識すべきポイントとしては、次の5つが挙げられます。

●    利用者や家族の意見をしっかり聞いてくれる

●    柔軟で迅速な対応をしてくれる

●    地域の介護サービスに詳しい

●    契約前に話を聞ける・相談できる体制がある

●    介護保険制度の最新情報を把握している

それぞれ詳しく見ていきましょう。


1.利用者や家族の意見をしっかり聞いてくれる

繰り返しとなりますが、ケアマネジャーの最も重要な役割は「要介護者の希望する生活」を支えるケアプランを作ることです。そのためには、利用者本人の要望をしっかりヒアリングする姿勢が欠かせません。しかし現実的には、本人だけではなく家族の意見も重要です。たとえば本人が在宅介護を望んだとしても、家族としては施設への入居を希望することもあるでしょう。このような利用者や家族の意見をしっかりと聞き、ベストな介護計画を提案してくれるケアマネジャーを選ぶことが大切です。

2.柔軟で迅速な対応をしてくれる

介護の現場では、突発的な変化が生じることもあります。たとえば要介護1(介護の必要性が軽度)と認定を受けて生活していたものの、転倒したことを原因に心身の状況が悪化してしまうケースもあるでしょう。このような時に頼りになるのが、柔軟で迅速な対応をしてくれるケアマネジャーです。

たとえば急なショートステイの手配や訪問介護の追加、さらにはケアプランの見直し、状況によっては要介護認定の変更手続きの案内など、トラブルが生じたときこそケアマネジャーの実力が発揮されます。いざという時に備えるためにも要介護者や家族の状況によってすぐに動いてくれるかどうかを重視してみてください。

3.地域の介護サービスに詳しい

実は介護サービスには、全国的に適用される制度もあれば、自治体ごとの独自制度も存在します。そのため、地域の介護サービスに詳しいケアマネジャーに相談したほうがいいでしょう。

また、在宅介護であっても「通所介護(デイサービス)」「通所リハビリテーション(デイケア)」「ショートステイ」などのために地域の介護施設を利用することがありますが、それぞれの施設によって状況・特徴・強みは異なります。利用者にとってベストな施設がどこなのか教えてもらうためにも、地域密着型のケアマネジャーに相談してみてください。

4.契約前に話を聞ける・相談できる体制がある

ここまで3つのポイントを紹介しましたが、これらのポイントを満たしているかどうか判断するためにも、契約前に話を聞ける・相談できるケアマネジャーを選んだほうが安心でしょう。相性や信頼感を見極めるためにも、契約前に無料相談できるかどうか確認してみてください。この相談の場で相性が合わない、しっかりヒアリングしてもらえないなど違和感を覚える場合は、無理に契約せず他のケアマネジャーに相談してみるのも選択肢の一つです。

5.介護保険制度の最新情報を把握している

最後のポイントとしては、介護保険制度の最新情報を把握しているかどうかも挙げられます。介護保険制度は数年ごとに改正されるため、制度の動向を把握しているケアマネジャーに相談しないと、最新の制度を利用できない可能性があるためです。
また、たとえば最近では、令和6年度に介護報酬が改定され、1割負担で介護サービスを受けられる利用者が減り、2〜3割負担を求められる利用者が増加しました。このような費用増減についても、あらかじめ伝えてくれるケアマネジャーに相談すべきでしょう。
さらに令和7年4月から介護離職を防ぐために育児・介護休業法が段階的に改正・施行され、要介護状態の家族を介護する労働者に対し、企業側はテレワークを選択できるような措置を講ずることなどが努力義務化されています。このような要介護者の家族に影響する最新情報を教えてくれるケアマネジャーかどうか、ぜひ初回面談時に確認してみてください。


経験豊富なケアマネジャーであれば安心?

ここまで紹介したポイントを読み、経験豊富なケアマネジャーを選べば安心なのではないかと思った方もいるかもしれません。たしかに経験豊富なケアマネジャーなら、さまざまなアドバイスをしてくれるでしょう。しかし最終的には、経験だけではなく、相性や対応力などの要素から総合的に判断すべきです。
たとえば経験豊富なケアマネジャーは知識が豊富で地域内の情報にも精通しているかもしれませんが、担当している件数が多いと、要介護者一人あたりにかける時間は少なくなってしまいます。一方、新人ケアマネジャーは知識・経験は少ないかもしれませんが、担当件数が少ないため時間に余裕があり、すぐに相談しやすいこともあるでしょう。

また、ケアマネジャーになるためには、次のような資格を有したうえで試験に合格しなければなりません。

医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師・栄養士・管理栄養士・精神保健福祉士

たとえば持病があり医療面での配慮も必要な場合、看護師など医療資格を有したケアマネジャーに相談したほうが安心でしょう。一方、リハビリテーションを重視したい場合、理学療法士や作業療法士の資格を有したケアマネジャーに相談したほうが具体的なアドバイスをもらえます。そのため知識・経験だけではなく、ケアマネジャーの得意分野を見極めることも重要です。


ケアマネジャーと付き合うときのポイント

さて、ケアマネジャーとの関係は、一度相談して終わりではなく、長期にわたって続きます。困ったときに相談しやすい関係を構築するためにも、ケアマネジャーと付き合う際は次のポイントを意識してみてください。

●    こまめに連絡を取り合う

●    被介護者の現状を細かく伝える

●    感謝の気持ちを伝えることも大切

それぞれ詳しく解説します。


こまめに連絡を取り合う

ケアマネジャーとの関係を強めるためには、必要最低限の連絡だけではなく、普段からこまめに連絡を取り合うことが重要です。たとえば体調や心身状態に変化が見られた場合や、在宅介護の悩みなどが生じた場合は、早めに連絡することでサービスの見直しや適切な支援につながります。定期訪問でコミュニケーションを取るだけでも問題ありませんが、電話やメールで気軽に情報共有できる関係を築いておくと、万が一の場合にも安心です。

被介護者の現状を細かく伝える

ケアマネジャーは常に被介護者と一緒に生活しているわけではありません。そのため限られた情報の中でケアプランを作成することになりますが、心身状態に合わせた最適な計画にするためには、日々の悩みや小さな変化などを本人・家族から細かく伝えてもらう必要があります。たとえば次のようなことがあれば、迷わずケアマネジャーに伝えてみてください。

●    転びそうになることが増えた

●    食事の量が減った

●    お風呂やトイレの動作が難しくなってきた

●    薬の飲み忘れが増えた

●    お金の計算・管理が難しくなってきた

●    夜間に不安を感じることが増えた

なお、ケアマネジャーには守秘義務があり、正当な理由なく個人情報を漏らされることはないため、安心してください。

感謝の気持ちを伝えることも大切

ケアマネジャーも一人の人間であるため、やはり感謝の気持ちを伝えたほうが良好な関係を構築できます。相談を聞いてもらったり、急ぎの対応をしてもらったときのお礼など、日頃のコミュニケーションの中で感謝の言葉を伝えるよう意識してみてください。

 


ケアマネジャーが合わない場合は変更できる

様々な原因で「ケアマネジャーを変更した方がいいのでは?」と悩むこともあるでしょう。

そのような場合は、地域包括支援センターの窓口や市区町村の役場などにケアマネジャーの変更を相談できます。「今の担当者は変更したいけど、同じ事業所の他の人でも良い」という方は、現在利用している居宅介護支援事業所に相談し、ケアマネジャーだけを変更してもらうことも可能です。また、変更にあたって費用などは発生しません。

ケアマネジャーが代わると、一から信頼関係の構築や契約書などのやり取りが必要になります。(書類作成や役所への届けなどは新しいケアマネジャーがおこないます。)また、変更の決定は、利用者自身、あるいは家族が決めることとなり、新しいケアマネジャーと相性が合うとは限りません。変更してから後悔しないように、変更を希望する理由を明確に伝えることが重要です。

ケアマネジャーは、介護支援専門員という資格の他に専門性が異なる国家資格を有している可能性があるため、自分たちにとってより良い関係を築いていくことができる方を探す必要があります。


介護の負担軽減には施設に入居するのもおすすめ

信頼できるケアマネジャーが担当につけば在宅介護の負担を減らせますが、要介護度が高い場合は施設への入居も視野に入れたほうがいいでしょう。要介護認定を受けている方の入居先としては、次の2つの施設がおすすめです。

●    介護付き有料老人ホーム

●    住宅型有料老人ホーム

それぞれの施設の特徴について詳しく紹介します。


介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている介護施設です。介護職員が常駐しており、施設として介護サービスを提供しているため、要介護度の高い方でも入居できます。
また、原則として入居者100名に対して1人以上のケアマネジャーの配置義務が課せられているため、介護に関係することは施設へ一任できることが特徴です。(その代わり、入居前に依頼していたケアマネジャーへ継続して依頼することはできません)

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは自立〜介護の必要性が低い高齢者を対象とした施設です。食事や生活支援サービスは提供されますが、介護施設ではないため、介護が必要な場合は入居者が個別に居宅サービス事業者と契約する必要があります。また、住宅型有料老人ホームにはケアマネジャーの配置義務はありません。
なお、介護保険制度において、住宅型有料老人ホームは自宅と同じく「居宅」として扱われるため、入居前にお世話になっていたケアマネジャーに継続して依頼することも可能です。これは住宅型有料老人ホームならではのメリットといえるでしょう。


まとめ

ケアマネジャーに適切なケアプランを作成してもらうことは、要介護者の生活の質を高めるためには欠かせません。そのためには、利用者本人・家族がコミュニケーションを取りやすいケアマネジャーを選ぶ必要があります。また、ケアマネジャーにもそれぞれ得意分野があるため、何人かのケアマネジャーに相談してから契約してもいいでしょう。ケアマネジャーはどうやって決めるべきなのか悩んでいる方は、ぜひこの記事で紹介したポイントを参考にしてみてください。

  


この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

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