リハビリ分野で活躍するための国家資格は?役割から専門領域まで詳しく解説

「リハビリ職ってどんなものがあるの?」「リハビリ職の役割や訓練内容に違いはある?」こんな疑問はありませんか?

リハビリテーション(リハビリ)とは、身体機能の低下予防や低下した能力を改善するための訓練です。リハビリテーションの専門職には、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の3つがあり、それぞれ役割や訓練内容が異なります。

今回は、リハビリ分野における各職種の紹介や他の職種でも行える機能訓練について紹介します。

また、柔道整復師やあん摩マッサージ師などの職種についても解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

#資格#豆知識
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

リハビリテーションとは

医師の指示のもと行う機能訓練

リハビリテーションと聞くと、歩行訓練や筋力アップなどの機能訓練を考える人が多いのではないでしょうか?リハビリテーションとは、老化や疾病により低下した能力や機能を改善し、障がい者の社会統合を達成するためのあらゆる手段を指します。障がいや疾病があっても、その人らしい生活の実現に向けた幅広い考え方です。

リハビリテーションは対象者の状態や目的によって、実施される内容が異なります。リハビリテーションの主な内容と目的は以下のとおりです。

リハビリテーションの種類

主な内容

医学的リハビリテーション

心身機能の向上

心身機能の維持

運動機能や障がいの回復

能力低下の予防

運動機能の再獲得

職業リハビリテーション

障がいで失った職の再獲得

職業訓練

職業能力の指導や評価

教育的リハビリテーション

障がいのある児童に対して知的教育

自立した生活の支援

職業指導

社会的リハビリテーション

社会生活を送るための力を高める

障がい者自身の全面的発達

障がい者の権利を確保

年齢や疾病、生活に合わせたリハビリテーションを実施します。状況に合わせて総合的に実施する場合もあり、内容や目的は多岐にわたります。

病院などのリハビリテーションで活躍する主な専門職は以下のとおりです。

  • 理学療法士

  • 作業療法士

  • 言語聴覚士

また、介護施設や在宅分野では以下の職種も活躍しています。

  • 柔道整復師

  • あん摩マッサージ指圧師

  • 看護師

  • 介護職

基本的に、医師の指示を受けて行う機能訓練をリハビリテーションと呼び、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の3つの職種のみが行います。しかし、機能低下予防などを目的とした機能訓練は、介護職や看護師が行うケースもあります。その場合、医師の指示を受けていない・リハビリの専門職ではないことから、リハビリテーションとは呼びません。

しかし、一般的には運動機能の向上や維持を目的とした動作や作業をまとめて「リハビリテーション(リハビリ)」と総称することが多く、広く認識されています。

そのため、医師の指示のもとリハビリ専門職が行う機能訓練をリハビリテーション、それ以外の訓練は機能訓練と分けられます。機能訓練は介護現場で広く使われる用語で、医療現場ではリハビリテーションと呼ぶことがほとんどです。

リハビリ職種の種類 

リハビリ職にはそれぞれ役割が異なる

リハビリの専門職は、それぞれ目的や役割が異なります。各職種について確認していきましょう。

【理学療法士】

理学療法士(PT)は、立つ・座る・歩くなどの基本的な能力の回復や維持を目的にリハビリテーションを行う専門職で、リハビリ分野における国家資格のひとつです。また、障がいや能力の低下を予防する目的から、運動療法や物理療法を用いて自立した生活が送れるように支援します。

動作における専門家で、日々の訓練や生活状況を評価し、目標を定めて適切な計画書を作成・実行します。関節の動き・筋力・バランス・麻痺の回復・痛みの軽減など、様々な視点から改善を図る専門職です。主に病院やクリニック、介護老人保健施設で働いています。近年は多様なニーズに応えるため、スポーツ業界や産業分野などでも活躍の場が広がっています。

【作業療法士】

作業療法士(OT)は、国家資格のひとつで、基本動作能力・応用動作能力・社会適応の力の改善を図るリハビリテーションを行う専門職です。作業とは、家事・仕事・趣味・入浴・排泄など、生活に関わるすべての活動を指します。病気やけがにより作業ができなくなった方を対象にリハビリテーションを行い、失った動作の獲得や気持ちを回復させる役割をもつ職種です。

また、心と身体の専門家としても原因となる疾病や環境に焦点をあて、改善を図ります。できない原因が身体機能か精神面なのかを評価し、リハビリ計画を作成・実行して目標達成を目指します。作業療法士は、リハビリ職の中で唯一、統合失調症や気分障害、精神障害がある方への治療が行える職種です。そのため、精神病院や障がい者施設で活躍する方も多い傾向です。

【言語聴覚士】

言語聴覚士(ST)は、国家資格のひとつで、食べることやコミュニケーション分野を専門にリハビリテーションを行います。老化や疾病により、食べる・話す・聞くことに障がいがある方を対象に、リハビリを実施し機能回復を目指します。

リハビリテーションの対象には、脳卒中後の失語症や視覚障がい・ことばの発達障がい・発声や発語の障がいなど多岐にわたります。そのため、子どもから高齢者まで幅広い年齢層を対象とします。

これら3つの職種は、リハビリテーション専門職です。次に介護施設などで機能訓練を行っている職種をみていきましょう。

【柔道整復師】

柔道整復師は日本古来の武術である柔術を用いた施術を行います。国家資格のひとつで、以前には”ほねつぎや”接骨師”と呼ばれていた職業です。外科的手術や薬を使用しないで、自然治癒能力を高めて、痛みの緩和や機能回復を目指します。非観血的療法(出血をともなわない治療)で打撲・捻挫・骨折・脱臼などの回復を助けます。

医師以外に、単独で骨折・脱臼などの整復固定術を施行できるのは柔道整復師のみです。主に、整骨院や接骨院、クリニックなどに勤める方が多いですが、最近では介護業界にも活躍の場が広がり、施設入居者やデイサービス利用者の機能訓練やレクリエーションなどを担当しています。

【あん摩マッサージ指圧師】

あん摩マッサージ指圧師は、あん摩・マッサージ・指圧の技術をもって、対象者の不調や痛みの緩和を図ります。あん摩・マッサージ・指圧は「押す」「なでる」「さする」「もむ」を主とした医学的療法です。

・あん摩:江戸時代に中国から伝わった東洋医学で、押す・なでる・さする・もむなどの手技で気血の改善を図り不調を和らげます。

・マッサージ:明治時代にフランスから伝わった手技です。直接皮膚に刺激を与えて血流やリンパの循環を促し、新陳代謝を促進させることが目的になります。

・指圧:押す(圧迫法)ことを主体に独自に発展した手技です。親指や手のひらを使い、緩急をつけて施術します。

【その他】

看護師や介護職も職場や人員配置の状況によって機能訓練を行う場合があります。特定の施設では機能訓練指導員として勤務します。機能訓練指導員として勤務できる職種は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・看護師で介護職は対象外です。

しかし、リハビリ特化型デイサービスなど一部の事業所では、機能訓練指導員の指示のもと介護職も機能訓練を実施することがあります。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の比較

3つのリハビリテーション専門職違いをまとめて比較

3つの国家資格である理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は目的やサポートがそれぞれ異なるため、内容を比較していきましょう。

【仕事内容と目的】

資格名

仕事内容と目的

理学療法士

歩く・座る・立つなどの日常生活上で必要になる身体機能のリハビリテーションを行います。

病気やケガで失った機能の回復や予防を目的とします。

作業療法士

心と身体の専門家で、失った機能や能力のリハビリテーションを行います。

リハビリ職の中で統合失調症や気分障害などの精神面に治療が行える唯一の職種です。

作業とは、家事・仕事・趣味・入浴・排泄などの生活に関わるすべての活動を指します。

言語聴覚士

話す・食べる・聞くなど摂食やコミュニケーションの機能に対してリハビリテーションを行います。

子どもから高齢者まで幅広い年齢層が対象になります。

【働く場所】

働く場所に、大きな違いはありません。主に病院や訪問リハビリテーション事業所、介護老人保健施設などで求人が多くあります。また、最近では介護施設での求人も増えてきている傾向です。

作業療法士に関しては、精神科やメンタルクリニック、保育現場でも活躍の場があります。

【年収や求人倍率】

就業者数

年収

有効求人倍率

理学療法士

143,490人

426.5万円

4.13

作業療法士

143,490人

426.5万円

4.03

言語聴覚士

19,210人

418.9万円

3.17

どの職種にも大きな差はみられませんでしたが、リハビリテーション職は3つをまとめてデータ集計することも多いため、このような結果が出ていると考えられます。

年収は全国の平均額です。実際勤務する職場や環境によって異なります。地域による差も大きいため、求人情報などを確認すると良いでしょう。

参考:厚生労働省「jobtag」より理学療法士(PT)作業療法士(OT)言語聴覚士(ST)

リハビリ職同士、多職種との連携

最大限リハビリテーションの効果を発揮するには各職種の連携が大切

医療や介護の仕事には連携が必須です。リハビリテーションはリハビリ専門職だけが行うものではなく、各職種で情報交換や共有を行いながら、チームで目標達成を目指します。チームケアが非常に重要で、リハビリ職同士はもちろんのこと、他職種との連携が求められる仕事です。他職種には、医師・介護職・看護職・栄養士・機能訓練指導員・ケアマネジャー・相談員など、様々な職種があります。

他職種とのカンファレンスなどを通してお互いの情報を交換し、日々の経過報告を行い、本人の状態や生活環境に変化があるときは、計画の見直しや目標設定の変更が必要です。その際も、日頃から対象者の状態や環境、リハビリの経過を共有していることで、スムーズに移行できるでしょう。

まとめ

リハビリテーションは医師の指示をもとに行う機能訓練を指します。理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の3つの職種のみがリハビリテーションを行える職種です。主に介護現場では、機能訓練を主に行う職種として機能訓練指導員があります。特定の介護施設では配置が義務付けられており、近年の介護施設増加にともない需要が増えています。

一般的には、機能回復や維持を目的とした訓練をリハビリテーションと総称します。しかし、リハビリは医師の指示のもとに行う機能訓練であり、機能訓練指導員や介護職が行う訓練は厳密にはリハビリテーションと呼ばないため、注意が必要です。

3つのリハビリテーション専門職はそれぞれ役割や目的、訓練内容が異なるため、リハビリを受ける方の状態に合わせて依頼する職種やリハビリ内容を検討すると良いでしょう。

今回の記事が、リハビリテーションの理解につながれば幸いです。

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