居宅介護支援事業所の役割とは?利用までの流れや費用について詳しく紹介

「居宅介護支援事業所では何をしてもらえるの?」「費用はどれくらい必要?」こんな悩みはありませんか?

居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーが在籍する事業所です。介護保険サービスを利用する場合、居宅介護サービス計画書(ケアプラン)の作成が必要になります。そのため、居宅介護支援事業と契約を結び、担当のケアマネジャーに居宅介護サービス計画書の作成や給付管理をしてもらう必要があります。

今回は、居宅介護支援事業所の役割やケアマネジャーの仕事内容を紹介します。また、居宅介護支援事業所の選び方、ケアマネジャーの相性を判断する基準についても解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

#在宅サービス#在宅介護#生活#制度
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

居宅介護支援事業所とは

介護保険法に基づき自立した生活を支援する事業所

居宅介護支援事業所とは、要介護認定を受けた方が、介護サービスを利用しながら、自立した日常生活を送ることができるように支援する事業所のことです。居宅介護支援事業所には、ケアマネジャー(介護支援専門員)が配置されており、介護が必要な方やその家族の生活環境・心身の状況・希望・要望などを総合的に判断し、個別に居宅介護サービス計画書を作成します。

ケアマネジャーの仕事は、居宅サービス計画書(ケアプラン)の作成以外にも、各事業所のサービス調整や連絡、介護保険に関する申請の代行などを行います。

居宅介護支援事業所の運営には、厚生労働省が定める基準を満たさなければいけません。人員基準は以下の通りです。

<人員基準>

・管理者は常勤の主任ケアマネジャー(主任ケアマネ)を配置

・常勤のケアマネジャーを1名以上配置

・利用者の数が35名またはその端数を増すごとに1名のケアマネジャーを配置

事業所を運営するためには、これらの基準を満たす必要があります。

※主任ケアマネジャーとは、各都道府県が実施している主任介護支援専門員研修を修了した者を指し、ケアマネジャーの上級資格です。この研修を受講するためには、ケアマネジャーとして通算5年以上従事しなくてはいけません。

居宅介護支援事業所の管理者には、主任ケアマネを配置することとなりましたが、人材不足や人員確保が難しい地域もあるため、猶予期間が設けられました。2021年3月31日以前から運営している事業所で、管理者が主任ケアマネでない場合、管理者要件の適用を2027年3月31日まで猶予されます。

ただし、2021年4月1日以降に開設する事業所は、管理者に主任ケアマネを配置することが義務付けられています。

運営開始

2021年3月以前から

2021年4月以降から

管理者が

主任ケアマネジャー

2028年4月以降は必須

現状必須

管理者の資格要件が厳格化された影響からか、居宅介護支援事業所の数は、2018年の40,065件をピークに、2022年には37,831件と減少傾向です。また、ケアマネジャーも減少しています。

参照:厚生労働省介護給付費等実態統計(旧:介護給付費等実態調査)

ケアマネジャーの役割

居宅介護サービス計画書(ケアプラン)の作成から連携など多岐にわたる

居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーの役割は以下の通りです。

  • 居宅介護サービス計画書(ケアプラン)を作成

  • 利用者・家族からの相談対応

  • モニタリングとプランの見直し

  • 各サービス事業所との連絡や調整

  • 給付管理

  • 介護保険に関する申請手続き

それぞれのサービスについて見ていきましょう。

【居宅介護サービス計画書(ケアプラン)を作成】

在宅生活を継続するにあたって、必要な介護サービスを利用したいときには居宅介護サービス計画書(ケアプラン)が必要です。この居宅介護サービス計画書は、支援の必要性に応じて居宅サービスを組み合わせて作成します。

各介護サービス事業所は、居宅介護サービス計画書の内容に沿ったサービスを提供するため、計画に記載されていないサービスは原則提供できません。また、ケアマネジャーは特定のサービスや事業者にサービスが偏らないように公正中立の立場で事業所を選ぶ必要があります。

【利用者・家族からの相談対応】

介護サービスの内容に対しての要望・相談・今後の方向性・介護方法など、介護の専門家としてアドバイスや情報提供を行います。この場合、特定の事業所ではなく、複数の選択肢を定時されることが多く、最終決定は本人や家族で行います。

ケアマネジャーは、自社のサービスや特定の事業所のみの偏った居宅介護サービスは、減算(報酬のペナルティ)につながるため、複数の事業所を紹介することが基本です。

【モニタリングとプランの見直し】

モニタリングとは、居宅介護サービス計画書が予定通りに提供されているか、また、利用者やその家族のニーズと相違ないかを定期的に確認します。そして、身体状況の変化などによっておきるサービス内容の適性を検討し、適宜見直しを行います。また、介護度が変化した場合でも見直しは必要です。

モニタリングは毎月(要支援の方は概ね半年に1回)、自宅を訪問して行います。また、各事業所の利用状況などから、新たな課題の発見や改善を探します。

【各サービス事業所との連絡や調整】

ケアマネジャーは、利用者・家族・各サービス事業所の仲介をする役割があります。定期的に居宅介護サービス計画書に沿ったサービスが提供できているか、新たな課題がないかなど、各事業所から報告を受け判断します。

また、作成した居宅介護サービス計画書に関連する事業所に適宜連絡や調整を行い、スムーズにサービスが提供されるようにマネジメントが必要です。サービスの開始時や計画書の変更には、利用者・家族・関係する事業所でサービス担当者会議を開催し、サービスの課題や方向性を検討します。

【給付管理】

介護保険サービスを利用した際には、介護保険サービスの利用分は国保連(国民健康保険団体連合会)に請求します。請求時には、給付管理票と介護給付費請求書・明細書の提出が必要です。ケアマネジャーはこれらの書類を利用者に代わって作成し、介護保険の給付を管理します。

【介護保険に関する申請手続き】

要介護認定を受けていない人や、更新の手続きが必要な方は、居宅介護支援事業所に依頼して申請代行を依頼できます。身体状況の変化によって、区分変更を希望する際も、代行申請手続きを依頼可能です。

ケアマネジャーの役割や業務内容は、上記の通り多岐にわたります。

居宅介護支援事業所を利用する流れ

探すことが困難な場合は紹介してもらうことができる

居宅介護支援事業を利用するケースは以下の通りです。

  • 今後も在宅介護を希望する

  • 要介護認定を受けている(要介護1~5または要支援1・2)

  • これから要介護認定が必要な人

すぐに介護施設などの利用が決まっている場合は、施設ケアマネジャーが担当するため、基本的に対象外となります。施設によっては、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当する場合もあるため、希望する施設に問い合わせてみると良いでしょう。

介護保険サービスを利用するためには、居宅介護支援事業所と契約して、ケアマネジャーの作成する居宅介護サービス計画書が必要です。

居宅介護支援事業所は、地域包括支援センターや役所の窓口に相談すると、事業所リストなどの情報を提供してくれます。直接、居宅介護支援事業所に行き、相談のうえ担当ケアマネジャーを決定することも可能です。

基本的に要介護1以上は居宅介護支援事業所、要支援1.2の場合は、地域包括支援センターが受託します。しかし、要支援の場合でも、状況により地域包括支援センターから委託を受けた居宅介護支援事業所が受け持つこともあります。

要介護認定が必要な方は、介護認定申請の手続きを居宅介護支援事業所に依頼することも可能です。その場合、そのままケアマネジャーが決まることもあるでしょう。

【居宅介護支援の利用料金】

介護保険サービスは、利用者の所得に応じて1〜3割の自己負担割合が決まります。しかし、居宅介護支援サービスに関しては、介護保険から全額給付されるため、利用者の自己負担はありません。

介護保険サービスを利用するまでの流れ

介護保険サービスを利用するまでに1ヶ月程度かかる

介護保険サービスを利用するまでには、事業所探しや契約などの課程があり、日にちがかかります。サービス開始までの手順は以下の通りです。

  1. 要介護認定を受ける

  2. 居宅介護支援事業所を選ぶ

  3. 居宅介護支援事業所との契約・ケアマネジャーの決定

  4. サービス担当者会議・居宅介護サービス計画書(ケアプラン)の作成

  5. 介護保険サービスの利用開始

  6. モニタリング

順番に見ていきましょう。

1.要介護認定を受ける

まず、介護の支援が必要と感じたら、居住区にある地域包括支援センターまたは、市区町村の介護保険窓口に相談してください。要介護認定の申請方法などを詳しく教えてもらうことができます。

本人や家族が、所定の用紙に必要事項を記入できるようであれば、要介護認定の申請が可能です。難しい場合は地域包括支援センターや居宅介護支援事業所で代行してもらえるため、相談すると良いでしょう。

申請用紙に記載した、連絡先に電話があり、訪問調査(市区町村の職員が自宅を訪問し、身体状況・生活環境などを調査)の日程調整があります。

認定調査の結果と主治医の意見書(市区町村から主治医に依頼して作成)をもって、要介護度区分の判定が行われ、決定後、自宅に郵送で通知されます。申請から決定までは、1ヶ月ほどかかるため注意が必要です。

2.居宅介護支援事業所を選ぶ

要介護度(要支援・要介護)が決まれば、居宅介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらうケアマネジャーを探します。要支援1・2の方は地域包括支援センター、要介護1〜5の場合は居宅介護支援センターが担当します。

地域包括支援センターまたは、市区町村の介護福祉課などで事業所リストを見せてもらったり、厚生労働省のサイトから検索することが可能です。

参照:厚生労働省介護事業所・生活関連情報検索介護サービス情報公表システム」

3.居宅介護支援事業所との契約・ケアマネジャーの決定

担当するケアマネジャーが決まれば、契約を結びます。万が一、相性が合わない・要望が伝えにくいなどの問題が生じたときには、事業所内の別のケアマネジャーまたは、別の事業所への変更は可能です。

しかし、一からの関係構築や時間を費やすため、契約までにしっかりと話し合いをして後悔のないように事業所やケアマネジャーを選びましょう。

4.サービス担当者会議・居宅介護サービス計画書(ケアプラン)の作成

居宅介護サービス計画書(ケアプラン)は、本人や家族の意向や現状の生活状況・身体状況などから、課題を明確にして改善を図ります。ケアマネジャー個人が作るものではなく、本人や家族、各サービス事業所の意見を取り入れ、一緒に作成することが大切です。そのためにも、サービス担当者会議を実施し、各専門分野の意見や情報を交換します。

アセスメント(本人を取り巻く状況に関して、情報を収集・分析・課題を明確にすること)後、ケアマネジャーは居宅介護サービス計画書(ケアプラン)の原案を本人・家族に提案し、サービス担当者会議を開催して、各事業所とも内容をすり合わせます。居宅介護サービス計画書の内容に載っていないサービスは受けられないため、内容は必ず確認しておきましょう。居宅介護サービス計画書が完成した後は、本人や家族、各事業所に配布します。

5.介護保険サービスの利用開始

介護サービスを受ける事業所とは、それぞれ契約が必要です。事業所ごとに、サービスの提供方法や注意点などが異なるため、契約内容を確認しましょう。

契約が終わると、居宅介護サービスが始まります。

6.モニタリング

ケアマネジャーは、介護保険サービスの進捗状況や本人・家族の満足度などを定期的に評価し、あらたな課題が発生していないかを確認します。

必要に応じて、サービス担当者会議の開催や居宅サービス計画書の見直しを行います。

介護サービスの種類と担当するケアマネジャー

居宅介護サービスには大きく分けて2つある

居宅介護支援は、要介護1〜5の人を対象にした「居宅介護支援」と要支援1.2の方向けの「介護予防」に分かれます。

【居宅介護支援】

要介護1〜5の方は、居宅介護支援事業所で受託します。ケアマネジャーの人数は事業所によって異なり、小さな事業所では1~2名、大きな事業所だと10名近くが在籍する所もあります。

また、事業所の法人に訪問介護・訪問看護などを併設している場合は、サービス利用時の情報を共有・連携がスムーズに行えるため、安心です。

【介護予防支援】

要支援1・2の方向けの支援です。基本的に地域包括支援センターで受託しますが、介護支援事業所に委託される場合もあります。

地域包括支援センターでは、以下のような取り組みが実施されています。

取り組み

詳細

介護予防支援事業

要介護状態に移行しないための支援

権利擁護

成年後見制度活用のサポート・虐待防止の取り組みなど

総合相談

包括的・継続的ケアマネジメント・地域ケア会議開催・困難事例などへの指導やアドバイスなど

地域包括支援センターでは、管理者の主任ケアマネジャーをはじめ、医療・保健・介護・福祉分野の専門知識を持った職員が常駐しています。

居宅介護支援事業所を選ぶ方法

選ぶときは総合的な判断も必要

居宅介護支援事業所を選ぶときは、できるだけ自宅から近い事業所にすると良いでしょう。在宅生活の支援を受ける場合、ケアマネジャーとの連携が重要となります。緊急時には、すぐに駆けつけてもらえる距離の事業所だと安心です。また、生活空間と同じエリアで活動されているため、様々な地域の活動や情報を紹介してもらえます。

次に、担当となるケアマネジャーとの相性をみていきましょう。ケアマネジャーの考え方や対応で介護支援は大きく異なります。本人や家族の要望・現状に対して客観的に判断し、より良い生活のために必要な提案をしてくれるケアマネジャーが良いでしょう。

良いケアマネジャーの条件としては「傾聴力」「提案力」「対応力」が求められます。本人に納得して決定できるよう促し、家族も理解できる居宅介護サービス計画書を作成できるケアマネジャーです。

"何でも言うことを聞いてくれる人”が良いケアマネではありません。利用する側も”何でも言えば聞いてくれる人”を探すのではなく、人としての尊厳・想い・価値観を理解して、在宅生活に寄り添ってくれるケアマネを探してみると良いでしょう。

※居宅介護支援事業所が見つからない場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談することで、意向やニーズに合った居宅介護支援事業所を紹介してもらうことも可能です。

また、どうしても相性が合わないと感じる場合は、介護支援事業所に相談すると事業所内で変更してもらえる場合もあります。ただし、対応可能なケアマネジャーがいない場合は、他の居宅介護支援事業所に変更になることもあるため注意が必要です。

まとめ

今回は、居宅介護支援事業所のサービス内容や役割について解説しました。

その人らしい介護生活を送るためには、居宅介護サービス計画書(ケアプラン)は必要不可欠です。そのために、自分たちの意向やニーズに沿った居宅介護サービス計画書(ケアプラン)の作成や介護事業所とのマネジメントをしていくのが、ケアマネジャーの役割です。

この、ケアマネジャー選びが介護生活の良し悪しを決めると言っても過言ではありません。そのため、居宅介護支援事業所を探す際は、しっかりと情報収集を行い、相性の合う納得のいくケアマネジャーを探してみてください。

今回の記事が、居宅介護支援事業所やケアマネジャーの理解に繋がれば幸いです。

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