自宅で利用できる居宅サービスとは?利用方法や費用について紹介
「居宅サービスにはどんな種類がある?」「利用するにはどうすればいい?」このような悩みはありませんか?
在宅で介護する場合、家族だけでは補えない部分が出てきます。居宅サービスを利用すると、家族が補えない部分を埋められるでしょう。また、必要に応じてサービスを変更できるため、状況に合わせて組み合わせて利用できます。
今回は、居宅サービスの内容や利用方法について紹介します。多くのサービスがあるため、必要なサービスを確認して、在宅介護の参考にしてください。
とぐち まさき
渡口 将生
居宅サービスとは
在宅介護を支える介護保険サービス
居宅サービスとは、自宅で日常生活を送る人が利用できる、様々な介護保険サービスのことを指します。在宅サービスと呼ばれることもありますが、違いはありません。また、一人ひとり課題や要望が違うため、それぞれに合った介護保険サービスをケアプランに組み込んで利用します。
居宅サービスの対象者は、以下の通りです。
・介護保険の被保険者
・65歳以上の要介護認定で要支援1・2、要介護1~5に該当している人
・45歳~64歳で介護保険制度の特定疾患に該当している人
【居宅サービスの利用方法】
①要介護認定を受ける
まず、居宅サービスの利用を開始するには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定を受けるためには、市区町村にある介護保険の担当窓口や地域包括支援センターで申請します。およそ1か月程度かかるため、早めに申請すると良いでしょう。
②居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)を選ぶ
要介護認定が決定した後、居宅介護事業所とケアマネジャーを探します。地域包括支援センター・市区町村の介護保険担当窓口に相談するとスムーズに依頼することが可能です。
③ケアプランの作成
依頼したケアマネジャーと面談し、現在の問題・要望などを伝え必要な介護サービスのケアプランを作成します。
④介護サービス事業所との契約
利用予定の介護サービス事業所とサービス内容の確認を行い、契約を交わします。複数の介護事業所を利用する際は、各事業所と契約をし、契約後に介護保険サービスの利用が開始されます。
居宅サービスには下記の種類があります。
訪問系 | 通所系 | 短期入所 | その他 |
訪問介護 訪問入浴 訪問看護 訪問リハビリ 定期巡回・随時対応型訪問看護居宅療養管理指導 訪問診療 | 通所介護 通所リハビリテーション | 短期入所生活介護 短期入所療養介護 | 福祉用具貸与 特定福祉用具販売 住宅改修 居宅介護支援事業所 |
これらのサービスを組み合わせて、在宅サービスをサポートするケアプランを作成していきます。
訪問サービス
自宅を訪問しサービスを提供するサービス
自宅にいながら利用できるサービスは、以下の通りです。
【訪問介護(ホームヘルプサービス)】
基本的には、本人(家族が本人のために)ができない身体介護や生活援助を行うサービスです。ケアプラン上に記載されていないサービスは提供できません。また、同居家族への支援も対象外のため注意が必要です。介護保険を利用した訪問介護では、ヘルパーが行えないサービスが定められているため、依頼したいことがある時は、ケアマネジャーに相談して確認してみると良いでしょう。
ヘルパーが行えないサービス例:庭掃除・窓ふき・病院内の付き添いなど
【訪問入浴介護】
自宅の浴室で入浴ができない人のために、自宅に専用の浴槽を持参して入浴サービスを行います。訪問入浴では、看護師を含めた3名の職員がチームとなり、入浴サービスを提供します。入浴は体力の消耗や状態変化が起こりやすく、家族が担うには大きな負担です。また、転倒などのリスクも高くなるでしょう。訪問入浴を利用することで、安全に身体の清潔保持や、本人・家族の日常生活における負担を軽減することが可能です。
【訪問看護】
看護師が自宅に訪問し、疾患や障がいに対して医療的ケアや健康状態の悪化予防などを行います。また、理学療法士などがリハビリ目的で訪問することができます。主治医の指示の下、医療的ケアをおこなったり終末期の人の看取り看護も行い、緊急時にも対応してくれるため、安心して在宅生活を過ごすことができるでしょう。
【訪問リハビリテーション】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自宅に訪問し、心身機能の維持・向上や日常生活の自立支援、社会復帰を目指しリハビリテーションを行います。通院が困難であったり、退院・対処後の生活に不安があるなどを理由に、主治医が必要性を認めた場合に限り、サービスの利用が可能です。
資格名 | リハビリ内容 |
理学療法士 | PTとも呼ぶ。運動療法・物理療法などで基本動作の回復・予防・維持を行うリハビリ職です。 |
作業療法士 | OTとも呼ぶ。応用的動作や社会適応能力の回復や精神面のケアを行うリハビリ職です。 |
言語聴覚士 | STとも呼ぶ。言語・摂食・嚥下などに関わる障害に対して訓練・指導をおこなうリハビリ職です。 |
【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】
心身の状況や生活環境に応じて、24時間365日、必要な時にサービスを提供します。決まった時間に訪問する「定期巡回」と、随時通報に合わせて対応する「随時対応型」があり、重要度に合わせて利用します。訪問する職員は、介護職員だけではなく看護師なども連携しているため看護・介護の総合的なサービスを受けることが可能です。
【居宅療養管理指導】
通院が困難な利用者に対して、月に数回、医師などが自宅に訪問し定期的な医学管理を継続的に行います。往診(訪問診療)とは違いあくまでも"療養上の管理"です。本人の能力に応じた日常生活を過ごせるように健康アドバイスや管理、服薬指導などを行います。医療的ケアなどはサービスに含まれません。
【往診(訪問診療)】
病気や障がいで通院が困難な人に対して、自宅に医師が訪問して、診察や治療を行うサービスです。居宅療養管理指導とは違い自宅で終末期療養を過ごす人や、寝たきりの人が利用できます。診察・治療・検査・投薬など病院でおこなわれる医療が提供されます。
通所サービス
事業所に通って受けられるサービス
【通所介護(デイサービス)】
日中介護施設に通い、排泄・入浴・食事などの日常生活支援や身心機能を維持するための機能訓練、レクリエーションなどを行います。デイサービスの目的は外出することで、孤独感の軽減や心身機能の維持、家族の介護負担軽減を目的にしています。要介護1〜5の人が対象です。また、車いすの人でも利用できるように福祉車両で送迎してくれるので、安心・安全に通うことができます。
【通所リハビリテーション(デイケア)】
病院・診療所・介護老人保健施設などに併設されている施設に通い、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などから、日常生活動作訓練や機能維持回復訓練を受けることができます。要支援1から要介護5の介護認定を受けたすべての人を対象にしています。通所介護との違いは、医師の指示の下、リハビリに重点をおいている点です。また、人員基準の点でも大きく異なり、医師・看護師・リハビリ職員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)は必ず配置しなくてはなりません。そのため、退院後の生活が心配な方でも安心して利用できます。
短期入所サービス
短期的に事業所に泊まって日常生活上の介護を受けられるサービス
【短期入所生活介護(ショートステイ)】
特別養護老人ホームなどに短期間入所し、日常生活支援や機能訓練などを受けることができます。介護者の身体的・精神的な負担軽減(レスパイト)や家族が仕事の都合上、面倒が見られない・冠婚葬祭などの時に便利に利用できるでしょう。
【短期入所療養介護(ショートステイ)】
介護老人保健施設・介護療養型医療施設などに短期間入所するサービスです。医療職による医療管理やリハビリテーション、介護職員から日常生活上の支援を受けることができます。短期入所生活介護は日常生活の支援がメインです。対して、短期入所療養介護は医学的な管理のもと、理学療法士などによるリハビリや日常生活支援を受けられる点が特徴です。
<注意>
ショートステイには、利用する日数に制限があるため注意が必要です。
利用日数の条件 | 詳細 |
介護認定期間の半数を超える利用ができない | 介護認定期間が6ヶ月の場合は認定期間180日です。そのため、ショートステイ利用可能期間は90日までとなります。 |
1回の最大利用期間は30日 | 連続して30日間までは利用可能ですが、31日目からは介護保険適用外になるため全額自己負担となります。 |
その他のサービス
介護に関連するサービス
【福祉用具貸与・特定福祉用具販売】
日常生活を過ごすために必要な福祉用具や機器をレンタルできるサービスです。車いす・介護用ベッド・手すりなど計13品目あります。介護保険を利用してレンタルするため、自己負担額1〜3割でレンタル可能です。
また、福祉用具の中にはレンタル対象外となる特定福祉用具販売があります。主に排泄や入浴などで使用する用具が対象で、衛生面から考えて再利用が困難なため販売のみとなります。特定福祉用具販売の購入は介護保険給付の対象のため、1~3割の自己負担で購入可能です。また、年間(4/1~3/31)で10万円までが上限となっています。
福祉用具貸与・特定福祉用具販売の品目は以下の通りです。
福祉用具貸与 | 特定福祉用具販売 |
車いす・付属品 歩行器・歩行補助杖 手すり・スロープ 介護ベッド・付属品 体位変換機・床ずれ防止用具 認知老人徘徊感知機器 自動排泄処理装置 移動用リフト | ポータブルトイレなど 入浴補助用具(浴槽内椅子・入浴介助ベルトなど) 簡易浴槽 移動用リフトの吊り具 自動排泄装置の交換可能部品 |
【住宅改修(リフォーム)】
現在、居住している自宅を生活しやすいように改修工事することです。要支援1〜要介護5の方が利用できます。
改修対象 |
手すりの取付け 段差の解消 滑り予防及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料変更 引き戸等への扉の取替え 洋式便器等への便器の取替え その他上記工事に付帯して必要となる工事 |
要介護区分に関係なく1人1回(1住居)に限り、20万円を上限に改修費用の給付が受けられます。転居や要介護度が大きく変更になった際は再度、20万円を限度として給付可能です。
【居宅介護支援事業(ケアマネジャー)】
介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を有したものが、介護サービスを利用するために必要なケアプランの作成、事業所や役所との連絡調整・給付管理などを行います。要介護度1〜5の方が対象です。
居宅サービスを利用するときの疑問
居宅サービスに関する疑問を解消しましょう
居宅サービス利用時によくある疑問をまとめました。
地域密着型サービスとはどんなサービスですか?
認知症高齢者や中重度の要介護者が住み慣れた地域で日常生活が継続できるよう、市区町村の指定を受けた事業者が提供するサービスのことを指します。要介護認定を受けている・サービス事業所と同じ地域に住んでいることを条件に利用可能です。
地域密着型サービスは通所・訪問・施設・複合の4つに分けることができます。
通所 | 地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護 療養通所介護 |
訪問 | 定期巡回・随時対応型訪問介護 夜間対応型訪問介護 |
施設 | 認知症対応型共同生活介護 地域密着型特定施設入所者生活介護 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
複合 | 小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護 |
地域密着型サービスの中でも、特に特徴がある認知症対応型通所介護・グループホーム・小規模多機能型居宅介護について説明します。
【認知症対応型通所介護】
認知症の人を対象に専門的なケアを行うデイサービスです。利用するには、事業所と同じ地域に居住している・要介護認定を受けている・医師より認知症の診断を受けていることが条件となります。利用人数は最大12人の少人数制で、手厚いケアを受けられることから、認知症の方でも安心して過ごせます。
【認知症対応型共同生活介護(グループホーム)】
認知症の人を対象に、5〜9人の少人数で共同生活を送る施設です。利用するためには、グループホームと同じ市区町村に居住している・要介護認定を受けている・医師より認知症の診断を受けている人が対象です。介護職員が常駐し、日常生活をサポートします。少人数なので馴染みのある関係を構築することができ、家庭的で落ち着いた空間で生活できるため、認知症の症状改善や進行予防にも効果的です。
【小規模多機能型居宅介護】
通いを中心に訪問介護や泊まりを組み合わせて利用できます。小規模多機能型居宅介護の利点は、顔なじみの職員が通いや訪問などのサービスを提供するため、安心して利用できます。また、サービスをどれだけ利用しても定額でわかりやすい・いつでも利用できる安心感があることです。利用するためには、事業所と同じ市区町村に居住している・要介護認定を受けていることが条件です。
一ヶ月の間に何回も利用できますか?
介護保険サービスは介護度ごとに支給される支給限度額が変わります。この支給限度額を超えた場合、介護保険給付が受けられず、全額自己負担となってしまうため注意が必要です。
区分 | 支給限度額 | 自己負担額1割 | 自己負担額2割 | 自己負担額3割 |
要支援1 | 5,032単位 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 10,531単位 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 16,765単位 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 19,705単位 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 20,748単位 | 20,748円 | 41,496円 | 62,244円 |
要介護4 | 30,938単位 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 36,217単位 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
(1単位=10円で計算
この支給限度額を超えない範囲であれば、介護保険を利用してサービスを受けることができます。
どんなサービスも自由に利用できますか?
認知症対応型のサービスを利用する場合、医師による認知症の診断が必要です。また、地域密着型では、事業所と同じ地域に居住していることが条件となります。
訪問介護では、ひとつのサービス終了後、2時間以内は次の訪問サービスができないという「2時間ルール」もあります。
それぞれのサービスで利用条件が異なるため、ケアマネジャーに相談すると良いでしょう。本人または家族のニーズがあればケアプランを作成し、必要なサービスを受けることができます。
それぞれのサービスを同じ時間で受けられますか?
基本的に、同じ時間帯に2つ以上のサービスは利用できません。ただし、入浴動作の指導・確認のため、訪問介護と訪問リハビリが同時間帯に入るなど、明確な理由とケアプラン上に必要性が記載されていれば利用できることもあります。(市区町村によって条件が異なります)
また、訪問リハビリと通所リハビリの同時(時間帯が別の場合も含む)利用はできない場合が多いです。訪問リハビリは、”施設に通うことができない方を対象”に実施するため、通所リハビリを利用可能であれば、訪問する必要がないということになります。
基本的には、同時に利用できませんが、訪問リハビリを利用する場合、”自宅内の日常生活動作のリハビリが必要”などの理由が必要となります。
小規多機能型居宅介護では、基本的な介護サービス(通い・訪問・泊まり)を利用できるため、同様のサービスであるデイサービスや訪問介護、ショートステイなどのサービスは利用できません。
このように、様々なルールがあるため、居宅サービスの利用を検討するときは担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
まとめ
今回は、居宅サービスの種類について紹介しました。要介護状態になっても、居宅サービスを利用することで、在宅生活を継続できます。本人や家族の負担が軽減されることで、長期間在宅で生活することも可能になるでしょう。
居宅サービスは多種多様なサービスがあるため、本人家族、ケアマネジャーと相談しながらより良いサービスを組み合わせて、QOL(生活の質)を保った日常生活を目指してみてください。
この記事が居宅サービスの理解に繋がれば幸いです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。