老人ホームの居室タイプや広さは?チェックすべきポイントも解説

老人ホームの生活において重要な要素となるのが、居室です。居室には様々なタイプがあり、施設ごとに面積基準が定められています。老人ホーム選びの際は、居室についての理解を深め、見学や体験入居で実際に居室を確認することが大切です。この記事では、老人ホームの居室タイプや面積基準、チェックすべきポイントなどを解説します。


#老人ホーム#生活#選び方#施設入居
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

老人ホームの居室タイプ

特別養護老人ホームや介護老人保健施設の居室は、従来型とユニット型に分かれます。さらに、従来型の中には個室と多床室、ユニット型の中には個室と個室的多床室があり、合計4タイプがあります。

居室タイプ別に特徴をまとめると、以下のとおりです。

居室タイプ
個室か相部屋か
特徴

従来型個室

個室

廊下のまわりに居室が配置されている

従来型多床室

相部屋

2〜4人ほどの相部屋、廊下のまわりに居室が配置されている

ユニット型個室

個室

リビングのまわりに居室が配置されている

ユニット型個室的多床室

準個室

パーテーションで仕切られている、リビングのまわりに居室が配置されている

以下では、それぞれの居室タイプについて解説します。

従来型多床室

従来型多床室は、古くからある居室タイプであり、2〜4人ほどが1つの居室で生活するのが特徴です。居室の前に廊下があり、リビングや食堂、浴室などの共用スペースが別の場所にあるレイアウトです。多くのスタッフが複数人の入居者をケアする「集団ケア」を採用し、入居者の生活を効率的にサポートします。

従来型個室

従来型個室は、従来型多床室と異なり、入居者一人ひとりに完全な個室を設けているタイプです。従来型多床室に比べてプライベートを確保しやすいという特徴があります。共用施設は独立した別の場所にあります。

ユニット型個室

ユニット型個室とは、ユニットケアという介護手法を採用した居室のことです。ユニットケアとは、介護施設を自宅に近い環境にし、スタッフやほかの入居者と共同生活を送りながら、一人ひとりの生活リズムに合わせたサポートをする介護手法です。

1つのユニットは10人ほどの入居者で構成されており、居室は完全個室となっています。それぞれの居室は共用スペース(リビング)のまわりに設置されており、居室を出ればリビングに気軽に集まれるため、自宅で過ごしているのと同じような気持ちで過ごすことができる仕組みです。個室であるためプライベートも確保できます。

厚生労働省もユニットケアを推進しており、最近ではユニット型特別養護老人ホームが増えています。

ユニット型個室的多床室

ユニット型個室的多床室は、準個室を採用した居室タイプです。もともと大部屋として使われていた居室を、壁ではなくパーテーションで仕切って個室にしています。相部屋ではないため自分だけの空間を確保できますが、完全に仕切られているわけではないため、ほかの部屋の音が聞こえやすいという特徴があります。

ユニット型個室と同様、ユニットごとにリビングが用意されています。


居室タイプ別の費用相場

上記のとおり、特別養護老人ホームや介護老人保健施設には4つの居室タイプがあり、レイアウトや個室の有無など特徴が異なります。居室タイプによって居住費も変わるため、それぞれの費用相場について理解することが大切です。

ここでは、特別養護老人ホームと介護老人保健施設それぞれの居室タイプ別費用相場をご紹介します。

<特別養護老人ホームの居住費目安>

ユニット型個室

60,180円

ユニット型個室的多床室

50,040円

従来型個室

35,130円

従来型多床室

25,650円

<介護老人保健施設の居住費目安>

ユニット型個室

60,180円

ユニット型個室的多床室

50,040円

従来型個室

50,040円

従来型多床室

11,310円


老人ホームの居室面積基準とは

老人ホームをはじめとする介護施設では、居室の種類ごとに1室あたりの最低面積と入居者1人あたりの最低面積が定められています。

以下に、施設ごとの居室面積基準を一覧でまとめました。

施設
居室タイプ
1室あたり床面積
1人あたり床面積

特別養護老人ホーム

従来型

-

10.65㎡

ユニット型

10.65㎡

-

2人居室

21.3㎡

-

有料老人ホーム

介護居室

18㎡

13㎡

サービス付き高齢者向け住宅

共用部なし

25㎡

-

共用部あり

18㎡

-

介護老人保健施設

従来型

8㎡

-

ユニット型

10.65㎡

-

グループホーム

個室

7.43㎡

-

このように、入居者が暮らしやすいように、各施設は十分なスペースを確保することが求められています。しかし、古い基準で建てられている施設の中には、この基準を下回る施設も存在し、必ずしもこの基準を守らなければいけないわけではありません。

なお、1室あたりの床面積は、バルコニーを除く1室あたりの総床面積のことです。老人ホームのパンフレットやホームページなどに書かれている「居室面積」は、一般的には1室あたりの床面積のことを指します。また、1人あたりの床面積とは、トイレや浴室などを除く、居住可能な1人あたりの面積です。

以下では、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の3つについて、居室面積の基準をご紹介します。

特別養護老人ホームの居室面積

特別養護老人ホームには、前述のとおり従来型とユニット型の個室があります。ユニット型が主流となっており、どちらも最低面積は10.65㎡(約7畳)と定められています。

一般的な部屋の広さが6畳ほどであることを考えると、やや広いスペースが確保されていることがわかるでしょう。特別養護老人ホームには共用スペースもあり、日中はイベントやレクリエーションが開催されることから、寝る時や少しゆっくりしたい時に居室で過ごすには、不便のない広さだと言えます。

有料老人ホームの居室面積

介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなどの有料老人ホームでは、居室の最低面積が13㎡(約8.5畳)と定められています。8畳は、一人暮らし用の部屋に多い広さです。洗面台やトイレなどの設備が共用の施設と、個室それぞれに備わっている施設があります。

サービス付き高齢者向け住宅の居室面積

サービス付き高齢者向け住宅の居室面積は、原則25㎡(約16畳)以上と定められています。ただし、十分な広さの共用部分が確保されている場合は、18㎡(約11.5畳)でもよいとされています。

サービス付き高齢者向け住宅は、自立度が高い方を対象とした施設であり、原則、トイレや洗面所などの設備は居室に設置されています。


老人ホームの居室でチェックすべきポイント

居室は、プライベートな空間として施設選びにおける重要な要素となります。老人ホームの居室でチェックすべきポイントは、以下のとおりです。

  • 居室の広さ

  • 居室の設備

  • 居室の動線

  • 居室の日当たり・防音性・換気のしやすさ

  • ヘルパーコール・ナースコールの位置

  • 夫婦で利用できるか

パンフレットやホームページだけで判断せず、見学や体験入居を通じて、居室の広さや設備の使い勝手などを実際に確認しましょう。

居室の広さ

居室の広さは、快適に過ごすために非常に重要なポイントです。居室は、狭すぎても広すぎても過ごしにくくなってしまうため、ご本人にとって適切な広さを選ぶことが大切です。特に、車椅子が必要な方は、最低でも8畳が望ましいでしょう。狭い居室は、閉塞感がありストレスが溜まりやすいため注意が必要です。

また、居室が広すぎると移動に時間がかかり、不便な場合があります。年齢とともに足腰が弱ると、移動にかかる負担がさらに大きくなり、転倒のリスクも増します。広い居室はその分費用も高くなるため、身体的負担と金銭的負担を減らすためにも、快適に過ごせる適切な広さを選びましょう。広さを考える際は、現在の過ごしやすさだけでなく、将来要介護度が上がった時のことも考慮することが大切です。

居室の設備

施設によっては、居室にトイレや浴室が備わっているところと、共用施設として独立した場所に存在しているところがあります。

居室の設備が整っている場合のメリットは、自分だけの空間で快適に過ごしやすいところです。特に、居室内にトイレがあると安心です。高齢になるとトイレが近くなる場合が多く、居室の中にトイレがあることによって、移動にかかる負担を軽減できます。気温差でヒートショックが起きるリスクも軽減できます。また、トイレ内のナースコールの位置も重要です。転倒やめまい、力んだ際に血圧が上昇するなど、様々なトラブルが考えられるため、もしもの時にすぐに助けを呼べるよう、確認しましょう。

また、温水洗浄機能(ウォシュレット)がついているトイレであれば、より清潔を保つことができます。

一方、設備がある分居室が狭く感じられる点や、スタッフの目の届かないところで事故が起きるリスクがある点はデメリットです。また、居室に設備が整っている施設は、その分費用も高い傾向にあります。

居室の動線

車椅子での移動のしやすさや手すりの位置など、居室の動線も重要なポイントです。老人ホームや介護施設は、高齢者が暮らしやすいように居室が設計されています。しかし、すべての入居者にとって必ずしも過ごしやすいとは限りません。

居室の広さや設備ももちろん重要ですが、動線も忘れずにチェックしましょう。具体的には、ベッドを置ける場所からトイレやドアへの移動がしやすいか、トイレの手すりは適切な位置に設置されているか、車椅子の乗り降りがしやすいスペースが確保されているか、車椅子での移動がしやすいかなどを確認しましょう。

居室の日当たり・防音性・換気のしやすさ

日当たりが良い居室であれば、明るく快適に過ごすことができます。日光に当たることによって、体内時計が整えられ、睡眠の質が良くなったりすっきりと朝を迎えられたりする、という効果も期待できます。

また、防音性も重要です。居室の壁が薄かったり、共用施設に近かったりすると、生活音が気になって落ち着いて過ごせない可能性があります。特に、音に敏感な方は、静かな居室を選びましょう。

ただし、ベッドからあまり起き上がることができない身体状態の場合、音が一切聞こえない環境よりも、ある程度生活音が聞こえる場所の方が安心できることがあります。入居者ご本人が過ごしやすい環境を選ぶことが大切です。

さらに、換気扇がついているか、窓の開け閉めがしやすいかなども重要なポイントです。特に、居室にトイレがついている場合は、においが籠らないよう換気のしやすさも重視しましょう。

ヘルパーコール・ナースコールの位置

万が一の事態が起こった際にすぐに助けが呼べるよう、ヘルパーコールやナースコールが押しやすい位置に設置されているかも確認しましょう。半身に麻痺がある場合は、麻痺がない方の手で押せる位置に設置されていないと、助けを呼べない可能性があります。そのほか、トイレや浴室など、怪我のリスクがある場所に設置されているかを確認しましょう。

夫婦で利用できるか

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の中には、夫婦で同じ居室に入居できる施設もあります。しかし、夫婦部屋の空室は少ない傾向にあり、夫婦で身体状況が異なる場合、同室に入居できない可能性も多いことから、希望の条件を満たす施設が見つからない場合もあります。また、同室に入居できた場合も、入居後にどちらかの要介護度が重くなった時はどうなるのか、事前に確認しましょう。

なお、特別養護老人ホームや介護老人保健施設のような公的施設は、2人部屋がないため夫婦同室入居はできません。夫婦同居を希望する場合は、2人部屋が用意されている民間施設を選ぶ必要があります。


居室を広く使うためのコツ

居室をなるべく広く使いたい場合は、居室に置く荷物を少なくすることが大切です。例えば、クローゼットが備え付けの居室であれば、タンスを持っていく必要はありません。物を少なくすることにより、スペースを広く感じられるほか、移動がしやすくなり怪我のリスクも軽減できます。施設への入居をきっかけに不要なものを処分し、本当に必要なものや持っていきたいものだけを選びましょう。


まとめ

今回は、老人ホームの居室について、4つのタイプや面積基準、チェックすべきポイントなどを解説しました。老人ホームの居室には、個室か相部屋か、トイレや浴室などの設備が揃っているかなど、様々な特徴があります。入居者ご本人の希望や予算に応じて、快適に過ごせる居室を選びましょう。また、ホームページやパンフレットだけではなく、実際に見学や体験入居で居室の様子や使い勝手などを確認することが大切です。この記事が、納得いく老人ホーム選びの参考になれば幸いです。

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