あなたの自己負担割合はいくら?介護保険サービスの利用料としくみについて解説

「自己負担割合ってなに?」「どれくらい負担が減るの?」と疑問はありませんか?

家族に高齢の方がいると、今後の生活や介護に不安を感じる方もいるのではないでしょうか?

今回は、介護サービスを利用するときの自己負担額について紹介します。利用料や介護保険のしくみについても詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

#施設サービス#在宅サービス#費用#制度
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護保険サービスの自己負担割合について

90%以上の高齢者が自己負担1割

介護保険制度は、介護サービス費用の一部の負担で利用できる制度です。介護サービスの自己負担は1〜3割と収入により異なります。現在、1割負担の認定を受けている方は、全体の90%以上となり、2割や3割の負担をしている人は、残りの数%です。

自己負担額は、介護サービスを利用した方が負担しますが、残りの費用は介護保険から支払われます。介護保険の財源は、介護保険料が50%・国が25%・都道府県が12.5%・市区町村が12.5%です。

第2号被保険者(40〜64歳)・非課税の方・生活保護受給者の負担割合は、1割負担と定められています。

【負担割合判定チャート】

介護保険料の負担割合は、「65歳以上の人の世帯人数」と「合計所得金額」で1〜3割のいずれかに振り分けられます。

まず、65歳以上の人が1人(単身世帯)の場合の負担割合と条件を見ていきましょう。

負担割合

条件(65歳以上の単身世帯)

3割

本人の合計所得金額が220万円以上かつ、「年金収入+その他の合計所得」が340万円以上の方

2割

本人の合計所得金額が160万以上220万円未満かつ、「年金収入+その他の合計所得」が280万円以上の方

1割

上記以外の方

次に同世帯に65歳以上の人が2人いる場合について見ていきましょう。

負担割合

条件(65歳以上の高齢者が2人以上いる場合)

3割

本人の合計所得金額が220万円以上かつ、同一世帯の「年金収入+その他の合計所得」が463万円以上の方

2割

本人の合計所得金額が160万以上220万未満かつ、同一世帯の「年金収入+その他の合計所得」が346万円以上の方

1割

上記以外の方

合計所得金額とは、収入から必要経費や給与所得控除を控除した後の金額です。医療費控除や社会保険料などを控除する前の金額のため、注意が必要です。

また、分離譲渡所得(長期譲渡所得・短期譲渡所得)にかかる特別控除がある方は、特別控除額を控除した金額で計算されます。

年金収入には、障害年金や遺族年金などの非課税年金は含まれません。また、その他の合計所得金額は、合計所得金額から不動産所得・利子所得・年金を除いた雑所得の金額です。

【負担割合の決定と更新】

介護保険の自己負担割合は、要介護認定が決定した前年の収入と、その他の所得金額の合計から算出されます。

初めて申請する方は、申請から約1カ月で要介護認定が決まり、介護保険被保険者証と介護保険負担割合証が郵送されます。一度交付された後は、7月に毎年自動更新されるので、確認しましょう。

介護保険負担割合証

介護サービスの請求時に必要になる

負担割合証が届いたら、まずは自身の負担割合を確認しましょう。内容に不備がある場合は、市区町村の「福祉課」に問い合わせをしてください。

負担割合証は、介護サービス費用の請求時に必要になるため、担当のケアマネジャーや利用予定(利用中)の介護施設に提示しましょう。

もし、負担割合証を紛失してしまった場合は、申請することで再発行可能です。市区町村の窓口に相談しましょう。

また、介護保険被保険者証と介護保険負担割合証は、保険者により色や記載様式が違います。

各サービスの負担額

サービス利用には限度額がある

介護保険サービスを利用した場合の利用負担額は1〜3割と決まっていますが、介護度により、1ヶ月間で負担できる区分支給限度額が設定されています。限度額を超えたサービスは全額自己負担となるので、注意が必要です。区分支給限度額については、介護保険被保険者証に記載されていますので確認しておきましょう。

介護保険制度は、介護度ごとに限度額を設け、介護度の高い人ほどたくさんのサービスを利用できる仕組みです。

各サービスの負担額についてみていきましょう。

【居宅介護サービス】

居宅介護サービスにおける区分支給限度額を表にまとめました。月額利用料は、10割負担の場合の費用です。支給限度額の範囲内でサービスの利用が可能です。

区分

支給限度額

(1単位10円)

月額利用料

(10割の金額)

要支援1

5,032単位

50,320円

要支援2

10,531単位

105,310円

要介護1

16,765単位

167,650円

要介護2

19,705単位

197,050円

要介護3

27,048単位

270,480円

要介護4

30,938単位

309,380円

要介護5

36,217単位

362,170円

支給限度額を越えた分は、全額自己負担になります。ケアマネージャーと話し合いながら、支給限度額の範囲内で、介護サービスを検討していく必要があります。

出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料

地域密着型サービスは、要介護の認定を受けた市町村で受けられるサービスで、「地域密着型通所介護」「認知症対応型通所介護」「小規模多機能型居住介護」「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」などを指します。

【地域密着型通所介護】

デイサービスのため、利用する時間によって料金が変わります。また、食費は別途自費で支払う必要があります。以下の料金は、1回の利用でかかる1割負担の料金表です。

時間

要介護1

要介護2

要介護3

要介護4

要介護5

3時間以上 4時間未満

415円

476円

538円

598円

661円

4時間以上 5時間未満

435円

499円

564円

627円

693円

5時間以上 6時間未満

655円

773円

893円

1,010円

1,130円

6時間以上 7時間未満

676円

798円

922円

1,045円

1,168円

7時間以上 8時間未満

750円

887円

1,028円

1,168円

1,308円

8時間以上 9時間未満

780円

922円

1,068円

1,216円

1,360円

※1単位=1円で計算

出典:厚生労働省「サービスコード表

【認知症対応型通所介護】

認知症の高齢者が共同生活をしながら、食事・入浴・排泄などのケアを受けられるサービスです。

時間

要介護1

要介護2

要介護3

要介護4

要介護5


3時間以上 4時間未満

542円

596円

652円

707円

761円

4時間以上 5時間未満

568円

625円

683円

740円

797円

5時間以上 6時間未満

856円

948円

1,038円

1,130円

1,223円


6時間以上 7時間未満

878円

972円

1,064円

1,159円

1,254円


7時間以上 8時間未満

992円

1,100円

1,208円

1,316円

1,424円

8時間以上 9時間未満

1,024円

1,135円

1,246円

1,359円

1,469円

※1単位=1円で計算

出典:厚生労働省「サービスコード表」

食事は別途負担になります。また、地域によって利用料金は異なるため、注意しましょう。1回ごとの料金なので、回数に合わせて費用は増えていきます。

【介護小規模多機能型居住介護】

「通い」をサービスの中心としながらも、利用者の選択に応じて「宿泊」や「訪問」を組み合わせることが可能です。以下1割負担の料金表です。

区分

同一建物に居住する者以外(月額)

同一建物に居住する者(月額)

要支援1

3,418円

3,080円

要支援2

6,908円

6,224円

要介護1

10,423円

9,391円

要介護2

15,318円

13,802円

要介護3

22,283円

20,076円

要介護4

24,593円

22,158円

要介護5

27,117円

24,433円

※1単位=1円で計算

出典:厚生労働省「サービスコード表厚生労働省「サービスコード表(予防)

食事や宿泊費は別途負担になります。

【認知症対応型共同生活介護(グループホーム)】

認知症の高齢者が共同生活をしながら、食事・入浴・機能訓練などを受けられるサービスです。

区分

1ユニット(1日あたり)

2ユニット(1日あたり)

要支援2

760円

748円

要介護1

764円

752円

要介護2

800円

787円

要介護3

823円

811円

要介護4

840円

827円

要介護5

858円

844円

※1単位=1円で計算

出典:厚生労働省「サービスコード表厚生労働省「サービスコード表(予防)

食費・居住費などは別途自己負担です。要支援1の方は利用できません。

どのサービスでも言えることですが、施設の居住費や食費などの費用は自己負担となるので注意してください。

【施設介護サービス】

施設介護サービスを受ける場合、個室や多床室などの住環境によって、自己負担額が変わってきます。

要介護5の人が多床室を利用した場合の目安は、以下の通りです。

費用項目

費用(30日計算)

施設利用料の1割負担

27,000円

居住費(377円/日)

11,310円

食費(1,445円/日)

43,350円

その他

15,000円

合計

96,660円

要介護5の人がユニット型個室を利用した場合は、以下の通りです。

費用項目

費用(30日計算)

施設利用料の1割負担

30,000円

居住費(2,006円/日)

60,180円

食費

43,350円

生活費

15,000円

合計

148,530円

居住費や食費は原則自己負担です。施設により設定されている金額が異なるため、金額に違いが出る場合があります。

多床室の1ヶ月の平均利用料は9〜12万円、個室の1ヶ月の平均利用料は13〜16万円程度です。

参考:厚生労働省「設サービス自己負担の1ヶ月あたりの目安

負担を軽減するための制度

介護保険負担限度額認定証や高額介護サービス費を利用する

介護保険サービスには、自己負担額を軽減するための制度が設けられています。自身で市区町村の窓口に申請に行くものがあるので、確認しておきましょう。

【介護保険負担限度額認定】

介護保険負担限度額認定は、一定の要件を満たすことで、介護保険施設の食費や居住費を軽減できる制度です。初めて認定を受ける場合は、市区町村の窓口で申請が必要になります。次年度以降は6月頃に更新用紙が郵送されるため、記入して手続きを行いましょう。

認定の要件は以下の通りです。

  • 認定要件は、生活保護を受給

  • 世帯全員(本人含む)が住民税非課税

  • 本人の配偶者が住民税非課税

※生活保護の方も申請が必要です。

認定された中でも、収入により4段階に分かれます。段階に合わせて軽減される費用が異なるので確認しておきましょう。(表内は1日あたりの金額)


居住費

(個室・ユニット型)


居住費

(個室的多床室・ユニット型)


居住費

(従来型個室・老健、療養型)



居住費

(多床室)


食費

※()内はショートステイ利用時の料金

第4段階

(課税世帯)

2,006円

1,668円

1,668円

377円

1,445円

第3段階②

1,310円

1,310円

1,310円

370円

1,360円

(1,300円)

第3段階①

1,310円


1,310円

1,310円

370円

650円

(1,000円)

第2段階

820円

490円

490円

370円

390円

(600円)

第1段階

820円

490円

490円

0円

300円

介護保険負担限度額認定の申請が通ると、介護保険負担限度額認定証が交付されます。介護保険負担限度額認定証には「第◯段階」とは記載されていませんので、認定証に記載されている食費などの金額で、判断する必要があります。

【高額介護サービス費】

1ヶ月に自己負担する介護サービス料には限度額が設定されています。限度額を超えると高額介護サービス費として払い戻しがされる制度です。令和3年8月に所得基準と負担限度額が改正されました。以下の表を参照してください。

区分

負担上限額(月額)

課税所得690万円(年収約1,160円以上)

140,100円(世帯)

課税所得380万円(年収約770万円)〜課税所得690万円(年収約1,160万円)未満

93,000円(世帯)

市町村民税課税〜課税所得380万円(年収約770万円)未満

44,400円(世帯)

世帯全員が市町村民税非課税

24,600円(世帯)

前年の公的年金収入金額+その他の合計所得の合計が80万円以下の方等

24,600円(世帯)

15,000円(個人)

生活保護を受給している方等

15,000円(世帯)

太字の区分は新設されたものです。設定されている上限額を超えた部分が返還される制度となっています。変換される分には特別申請は必要ありませんが、市区町村からの通知があった際に、振込先の口座の記入などが必要です。

【高額医療高額介護合算制度】

同一世帯における「国民健康保険の自己負担額」と「介護保険の利用者負担額」の1年間の合計額が自己負担限度額を超えた場合、申請すると超えた額が「高額介護合算療養費」として支給される制度です。年齢によって区分されていますので表を確認してみましょう。

(70歳以上の方)

区分

所得要件

国保+介護保険の自己負担限度額(年間)

現役並み所得者Ⅲ

70歳以上の国保被保険者に現役並みの所得(住民税の課税所得が690万円以上)がある方が1人でもいる世帯に属する方

212万円


現役並み所得者Ⅱ

70歳以上の国保被保険者に、現役並みの所得(住民税の課税所得が380万円以上)がある方が1人でもいる世帯に属する方

141万円

現役並み所得者Ⅰ

70歳以上の国保被保険者に、現役並みの所得(住民税の課税所得が145万円以上)がある方が1人でもいる世帯に属する方

67万円

一般

「低所得1」「低所得2」「現役並みの所得者」のいずれにも当てはまらない方

56万円

低所得Ⅱ

住民税非課税世帯

31万円

低所得Ⅰ

住民税非課税世帯で、世帯員全員に所得がない世帯(公的年金控除額を80万円として計算します。令和3年8月診療分以降について、給与所得を含む場合は、給与所得の金額から10万円を控除して計算します。)

19万円

出典:厚生労働省:「高額医療・高額介護合算療養費制度について

(70歳未満の方)

区分

所得要件

国民健康保険+介護保険の自己負担限度額(年間)

所得金額901万円超

212万円

所得金額600万円超901万円以下

141万円

所得金額210万円超600万円以下

67万円


所得金額210万円以下

60万円

世帯主及び国保加入者

全員が住民税非課税

34万円

出典:全国健康保険協会「高額療養費

まとめ

介護保険サービス費は、現在1〜3割負担となっています。残り7〜9割は、介護保険料や都道府県・市区町村から賄われます。収入が多い人ほど、負担割合が大くなる制度のため、一度自分の負担割合証を確認しておくと良いでしょう。

介護保険サービスの負担額には限度額があり、その額を超えた場合は全額自己負担となります。自己負担額を軽減する制度として、高額介護サービス費や高額医療高額介護合算制度がありますので、介護にかかる費用に不安がある場合は、市区町村の窓口に相談すると良いでしょう。

今回の記事で、介護保険の負担割合について理解が深まれば幸いです。

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