老老介護・認認介護とは?実態や問題点、サポートなどを詳しく解説

少子高齢化や核家族化が進む日本で、老老介護や認認介護の問題が深刻化しています。高齢者が高齢者を介護する老老介護や、介護者と要介護者がどちらも認知症を患っている認認介護は、様々なリスクを抱えています。老老介護や認認介護を防ぐためには、健康管理や家族との相談などが重要です。

この記事では、老老介護や認認介護とは何か、実態や原因、問題点を解説し、防ぐためのポイントや活用できるサポートについて紹介しています。親御さんの介護に直面した場合に備えて、ぜひご覧ください。


#施設サービス#在宅サービス#在宅介護#介護保険施設
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

老老介護・認認介護とは

少子高齢化や核家族化が進む現代において問題となっているのが、老老介護と認認介護です。

老老介護とは、高齢者が高齢者を介護する状態のことです。これまで多く見られていたパターンは、高齢の配偶者同士の介護でしたが、最近では65歳以上の子供が親を介護するパターンも増えています。老老介護は介護する側に大きな負担がかかるため、共倒れになってしまったり、社会との接点が絶たれてしまったりなど、様々な問題があります。

また、認認介護は、介護者と要介護者の双方が認知症を患っている状態のことです。高齢化により認知症患者の数も増えており、認認介護問題が深刻化しています。認認介護は、介護する側も認知症を患っていることから、食事や服薬などの管理が行えない、緊急時に適切な対応がとれないなどのリスクがあります。

さらに、最近ではMCI(軽度認知障害)も問題視されています。MCIとは、日常生活を送ることはできるものの、認知機能が低下し、認知症に似た症状が見られる状態のことです。認知症の前段階とも言われており、介護者・要介護者双方がMCIというケースも増えています。適切な対応や経過観察をしていないと、認知症へ移行し、認認介護につながるため注意が必要です。

老老介護・認認介護の実態

厚生労働省が実施した「令和元年国民生活基礎調査」によると、介護を要する者のいる世帯数1万に対し、単独世帯は2,827、夫婦のみの世帯は2,224となっています。約半数を、一人暮らし、あるいは夫婦2人暮らしが占めている状況です。

出典:e-Stat「国民生活基礎調査 令和元年国民生活基礎調査 介護 介護を要する者のいる世帯数,世帯構造・世帯主の年齢階級・現在の要介護度の状況別」

また、平成28年の国民生活基礎調査によると、要介護者等と同居している主な介護者の年齢組み合わせの割合は、以下のように推移しています。


60歳以上同士
65歳以上同士
75歳以上同士

2001年

54.4%

40.6%

18.7%

2004年

58.1%

41.1%

19.6%

2007年

58.9%

47.6

24.9

2010年

62.7%

45.9%

25.5

2013年

69.0%

51.2%

29.0

2016年

70.3%

54.7%

30.2%

出典:厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査 Ⅳ介護の状況」

60歳以上同士が全体の7割を占めており、全体の3割は75歳以上同士です。年々割合は増加しており、今後ますます介護者の高齢化が進むことが読み取れます。

また、平成29年度の高齢者白書によると、2012年には認知症患者数が約460万人、高齢者人口のうち15%であったものの、2025年には高齢者人口のうち20%が認知症になると予測されています。高齢者の5人に1人が認知症、という計算です。このように、老老介護だけでなく、認認介護の問題も深刻化していることがわかります。

出典:内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版)」

老老介護・認認介護の原因

老老介護や認認介護が起こる原因として、主に以下の3つが考えられます。

  • 少子高齢化や核家族化などが深刻化している

  • 介護を家族以外に任せることに抵抗がある

  • 介護サービスを利用する経済的な余裕がない

少子高齢化や核家族化の深刻化

日本社会における少子高齢化や核家族化は深刻化しています。その背景には、晩婚化や女性の社会進出など様々な要素があります。このような社会環境の変化によって、育児と親の介護が同時に発生したり、仕事の関係で介護に専念できなかったりといったケースが増え、配偶者同士で介護をしている世帯が増加しています。また、医療の発達で長寿命化も進んでおり、親子ともに高齢者という状況も生まれています。

介護を家族以外に任せることへの抵抗

介護施設やデイサービスなどの介護サービスが増えている一方、「介護は家族がするもの」という固定観念が未だに存在しているのも事実です。外部の介護サービスを利用することに抵抗を感じ、老老介護や認認介護に繋がっているケースも少なくありません。また、入浴や排泄といった場面を家族以外に見られることに恥ずかしさを感じる要介護者も多いです。このように、介護を家族以外に任せることに抵抗を感じ、介護サービスの利用に踏み切れない結果、老老介護や認認介護に陥っているケースもあります。

経済的な余裕がない

介護保険制度の対象となる介護サービスを利用する場合、自己負担額は原則1割になります。しかし、経済的に余裕がなく、介護サービスを利用できないケースも多いです。例えば、介護施設に入居するためには、初期費用や月額費用などを合わせるとかなりの額が必要になります。生活費や薬代・治療費なども必要となるため、経済的にある程度の余裕がないと利用は難しいです。このように、経済的な問題から介護サービスの利用ができず、結果的に高齢の配偶者や子供が介護を抱え込んでしまうケースが見られます。

老老介護の問題点

老老介護には、以下のような問題点があります。

  • 共倒れになる可能性が高い

  • 介護に多くの時間がかかる

  • 介護者の​​社会的接点が減少する

共倒れになる可能性が高い

介護は、身体的・精神的に多くの負担がかかります。高齢の介護者にはさらに大きな負担がかかり、体力的に限界を迎えるケースも多いです。その結果、共倒れが起こり、介護できる家族がいなくなるリスクがあります。

介護に多くの時間がかかる

介護側の体力的な問題から、介護により多くの時間を要することが多いです。介護にかかる時間が増加することにより、介護者だけでなく、要介護者にも負担がかかります。

介護者の社会的接点が減少する

介護者が介護につきっきりになることにより、家に引きこもりがちになってしまい、社会的接点が減少します。社会とのつながりが薄れることによって、身体機能が低下したり、精神状態が悪化したりする場合が多いです。さらに、日常生活で楽しみを感じる時間が減少し、外部からの刺激も得られないため、認知症やうつなどの症状を引き起こすリスクもあります。

認認介護の問題点

認認介護には、老老介護が抱える上記の問題点に加えて、以下のように様々なリスクがあります。

  • 服薬・食事・体調管理ができない

  • お金の管理ができない

  • 緊急時対応ができない

このように、老老介護よりもさらに多くの問題を抱えているのが認認介護です。

服薬・食事・体調管理ができない

認認介護では、介護者も認知症を患っているため、服薬や食事・体調管理などを適切に行うことが難しいです。特に、薬の飲み過ぎや飲み忘れを双方が把握できず、命の危機に陥るリスクもあります。体調が悪化した場合も、要介護者が自分の身体状況を適切に把握・説明できなかったり、介護者が体調の悪化に対して適切な処置を行えなかったりする危険があります。

お金の管理ができない

認知症を患っている方は、お金の管理が難しい点にも注意が必要です。カードの暗証番号を忘れてしまいお金が引き出せなくなることや、金銭感覚が分からなくなることからお金を使いすぎるケースが考えられます。

緊急時対応ができない

緊急時の対応にも問題があります。介護者が緊急事態の発生に気づけなかったり、周囲の人の連絡先を忘れて対応できなかったりするリスクがあります。

老老介護や認認介護を防ぐためのポイント

老老介護や認認介護に陥らないためには、以下のポイントを重視することが大切です。

  • 健康寿命を伸ばす取り組みを心がける

  • 家族に相談する

  • 地域との関わりを持つ

健康寿命を伸ばす取り組みを心がける

老老介護や認認介護を防ぐためには、健康に気を配ることが求められます。適度な運動や食事管理など、生活習慣を整え、健康寿命を伸ばすことが大切です。また、認知症を予防するために、積極的に手を動かしたり、読書や趣味などの活動を通して頭を使うことも重要です。

家族や友人とのコミュニケーションも、脳にとって良い刺激となります。会話の中で自身の体調の変化に気づける場合もあるため、非常に有効です。

家族に相談する

老老介護に至る方の多くが、介護の問題を周囲に相談できず、1人で抱え込んでしまっています。日頃から家族で介護について話し合い、介護が必要になった場合の対応について決めておくことが大切です。「仕事の関係で、介護が必要になったら施設に入居してほしい」「自宅で介護を受けたい」など、介護する側・される側双方の意見を共有し、対応を共通認識として持っておくことがおすすめです。

また、話し合いの中で、資金計画や施設選び・家財の整理など、介護が必要になった場合に備えて今できる準備が明らかになることも多いです。

地域との関わりを持つ

日頃から地域のイベントやボランティア活動などに積極的に参加し、地域のコミュニティとの関わりを持つことも大切です。近所の方と関係性を築くことによって、日頃の見守りや緊急時対応など、様々な場面でサポートしてもらえます。地域のコミュニティは、介護の心強い味方です。

老老介護や認認介護世帯が活用できるサポート

老老介護や認認介護に悩んでいる世帯は、ぜひ以下のようなサポートを活用してみてください。

  • 地域包括支援センターへ相談する

  • 介護サービスを利用する

  • 介護施設に入居する

地域包括支援センターへ相談する

地域包括支援センターは、高齢者やそのご家族の暮らしを支援するための施設です。全国各地に設置されており、福祉の専門家が在籍しています。その地域に住むすべての高齢者およびご家族が無料で利用でき、介護サービスの利用や介護予防、介護離職問題など、介護に関するあらゆる相談に乗ってくれます。

介護サービスを利用する

介護サービスには、介護保険が適用されるものとされないものがあります。要介護認定を受けている方であれば、介護サービスの利用が可能です。原則、自己負担1割で利用できます。

介護保険が適用される介護サービスには、以下のような種類があります。

  • 訪問介護・訪問看護

  • ショートステイ(短期⽣活⼊所介護)

  • デイサービス・デイケア

訪問介護・訪問看護は、介護や看護の資格を持ったスタッフが自宅を訪れ、介護や看護をしてくれるサービスです。訪問介護では、食事や入浴・排泄といった介助をお願いできます。また、訪問看護では、身体状況に合わせて医療措置やリハビリなどを行ってくれます。介護の負担を軽減できるほか、健康状態の変化にも気づきやすくなるため安心です。

ショートステイ(短期⽣活⼊所介護)は、施設に短期入居しながら、介護やリハビリなどを受けられるサービスのことです。介護施設での入居に慣れるための練習にもなります。

デイサービス・デイケアは、介護施設に通所し、生活支援やレクリエーションなどを日帰りで受けられるサービスです。送迎も任せることができ、通いやすいのが特徴です。外のコミュニティと触れ合う良い機会にもなります。

介護保険では、対象となるサービスが限定されている点に注意が必要です。例えば、同居家族がいる場合、買い物や洗濯といった生活支援サービスには介護保険が適用されません。また、リハビリ目的ではない外出の付き添いや安否確認なども、介護保険対象外です。そのため、より手厚いサポートを受けたい場合は、介護保険適用外のサービスも活用することがおすすめです。介護保険適用外のサービスは、自治体や民間企業が運営しています。費用は全額自己負担ですが、高齢者ならどなたでも利用でき、ニーズに合わせて幅広いサポートを受けられるのが魅力です。

介護施設に入居する

老老介護や認認介護で介護者に負担がかかり、十分な介護が難しい場合は、介護施設への入居を検討することも1つの方法です。24時間プロに介護をお願いできるだけでなく、リハビリや生活支援など、安心安全な生活を送るために手厚いサポートをしてくれます。

介護施設には公的施設と民間施設があり、それぞれ複数の種類があります。施設ごとに、役割や提供するサービス、費用などは様々です。中には、初期費用がかからない施設や夫婦で同じ居室で暮らせる施設、充実したイベントやレクリエーションが魅力の施設などもあります。

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まとめ

今回は、老老介護と認認介護について、その現状や原因、問題点を解説しました。また、老老介護や認認介護を防ぐためにできることや、活用できるサポートについても紹介しました。近年深刻化している老老介護・認認介護問題は、様々なリスクを抱えています。介護する側・される側の双方が安心安全な暮らしを送るためには、事前に家族で介護について相談したり、介護に関するサポートを利用したりすることが有効です。この記事を参考に、ご家族が介護が必要になった場合に備えて、今のうちから介護について話し合いを進めてみてはいかがでしょうか。

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