介護療養型医療施設の費用と入所条件について詳しく解説!2024年に転換予定の介護医療院との違いも知っておこう

「介護療養型医療施設ってどんな人が使えるの?」「どれくらいの費用がかかるの?」このような疑問はありませんか?

介護療養型医療施設は、病院と介護施設の間に位置する施設で、長期的に医療的ケアが必要な方でも利用できます。

しかし、2024年3月にはサービスの終了が決まっており、新しい施設は建設されていません。

今回は、介護療養型医療施設の費用や入居条件について紹介します。また、サービス終了後に転換予定となっている介護医療院の紹介や比較も行っていますので、ぜひ参考にしてください。

#病院#費用#介護保険施設#医療行為
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

介護療養型医療施設とは

2024年3月にサービス終了が決まっている

介護療養型医療施設とは、介護度の高い方を中心に受け入れている施設です。医療的ケアが必要な方でも、安心して生活できる医療体制があります。病院とは違い、介護サービスを提供していることが特徴で、医療と介護両方のサービスを同時に利用可能です。しかし、基本的には医療サービスがメインとなり、医療的ケアが必要なくなった場合は退去を求める場合もあります。

入居条件は、病状が安定している要介護の認定を受けた方で、長期にわたり医療的ケアが必要な方が対象の施設です。医療的ケアには、以下のようなものがあります。

  • 胃ろう

  • 経鼻栄養

  • 喀痰(かくたん)吸引

  • インスリン

  • 褥瘡のケア

  • 酸素療法

  • 看取り

これらの医療的ケアは、特養や老健などの介護施設では対応が困難な場合があり、介護療養型医療施設が受け皿となってきました。

介護療養型医療施設では、医師や看護師の配置が手厚く、長期的な医療的ケアが必要でも安心して利用できます。また、有料老人ホームなどの介護施設に比べて費用負担が少ないことが特徴です。

医療サービスは充実していますが、介護サービスであるレクリエーションやクラブ活動などの娯楽は少ない傾向です。また、2024年3月にサービス廃止が決まっており、2012年以降は新しく設立されていないことから、施設数・病床数ともに少ない状況にあります。

介護療養型医療施設の費用

比較的安価に利用可能

介護療養型医療施設に必要な費用は、要介護度に応じた基本サービス費・食費・居住費・その他の費用が必要です。入居一時金は必要ありません。それぞれの費用について見ていきましょう。

基本サービス費・食費・居住費は、基準費用額として全国的に定められています。基本サービス費は介護保険対象の費用で、要介護度や居室タイプ、施設の人員や体制によって異なります。介護度別にかかる1ヶ月の基本サービス費は、以下の通りです。※1割負担の場合


ユニット型居室

従来型個室

多床室

要介護1

21,180円

17,790円

20,580円

要介護2

24,030円

20,550円

23,430円

要介護3

30,060円

26,670円

29,460円

要介護4

32,700円

29,220円

32,100円

要介護5

34,980円

31,560円

34,380円

(1単位=1円)

※地域加算を含まない

この他に、施設ごとにサービスや人員体制などによる加算が算定される場合があります。

食費は1日3食で、1,445円と定められていますが、施設によって上乗せ額を設定できるため、入居する施設に確認しておくと良いでしょう。

居住費は居室のタイプにより異なるため、以下の表で確認してみましょう。


1日の費用

1ヶ月の費用

(30日計算)

ユニット型個室

2,006円

60,180円

ユニット型個室的多床室

1,668円

50,040円

従来型個室

1,668円

50,040円

多床室

377円

25,650円

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

この他にかかる費用として、理美容代や歯科などの診療費があります。オムツ代や施設内で行われる診療などは、保険料に算定されているためかかりません。

介護療養型医療施設の減額制度と加算

公的施設だからこそ利用できる制度

介護療養型医療施設は、介護保険施設のひとつです。介護保健施設には、特養(特別養護老人ホーム)・老健(介護老人保健施設)・介護医療院・介護療養型医療施設が該当します。これらの施設は公的な施設に分類され、低所得の方でも利用しやすいように、収入に合わせた減額制度を利用できます。

減額を受けるためには、介護負担限度額認定証の発行が必要です。介護負担限度額認定証は各市区町村の介護保険課などで発行できます。負担限度額認定のおおまかな基準は、課税世帯・非課税世帯で分け、世帯収入(年金額を含む)により段階が決まります。

負担限度額認定の基準は以下の通りです。

要件

負担限度額の段階

年間収入

預金額

市区町村民税課税世帯

-

第4段階(減額なし)

年金収入等 120万円超

単身 500万円

夫婦 1,500万円

第3段階②

年金収入等 80万円超120万円以下

単身 550万円

夫婦 1,550万円

第3段階①

年金収入等 80万円以下

単身 650万円

夫婦 1,650万円

第2段階

生活保護受給者

-

第1段階

出典:厚生労働省「介護保険施設における負担限度額が変わります

段階により、食費や居住費の減額される金額が変わります。


負担限度額の段階


食費

居室タイプ

ユニット型個室

従来型個室・ユニット型個室的多床室
多床室

第4段階

(減額なし)

1,445円

2,008円

1,668円377円

第3段階②

1,360円

1,310円

1,310円
370円

第3段階①

650円

1,310円

1,310円
370円

第2段階

390円

820円

490円
370円

第1段階

300円

820円

490円
0円

※1日あたりの利用料

また、段階により1ヶ月にかかる介護保険利用料の上限額が変わります。4段階の場合は収入により、さらに3つの上限額に分かれています。詳しくは以下の表をご覧ください。

負担限度額の段階

1ヶ月の介護保険利用料の上限額

第4段階

(減額なし)

141,000円

93,000円

44,400円

※収入額によって異なる

第3段階②

24,600円

第3段階①

24,600円

第2段階

15,000円

第1段階

15,000円

上限額を超えた分は、市区町村から返金されます。また、高額介護サービス費受領委任払いの手続きをすることで、上限額を超えた支払いが必要ないため、事前に申請しておくと良いでしょう。(※他にも食費や居住費などの介護保険外の費用が必要です)

介護療養型医療施設のメリット・デメリット

医療と介護サービスを同時に提供する施設

介護療養型医療施設のメリットは、医療的ケアと介護サービスを両方受けられることです。長期的に医療的ケアが必要な方には、便利なサービスのひとつでしょう。

介護療養型医療施設は医療療養型病院との差別化が図れなかったことから、2024年3月にサービスの終了が決まっています。2012年から新しい施設が造設されず、施設数自体が少ない現状があります。

今後は、2018年からサービスを開始した介護医療院へと転換が進んでいます。

介護療養型医療施設と介護医療院の比較

介護療養型医療施設に変わる新しいサービス

介護療養型医療施設のサービス終了が決まり、医療的ケアが必要な方への受け皿として誕生したサービスが介護医療院です。介護療養型医療施設と同様に医療的ケアと介護サービスを同時に提供している施設です。

介護医療院が設立された背景には、介護療養型施設(介護保険)と医療療養型病院(医療保険)のサービスや利用者(患者)の受け入れ状況に差異がないことでした。

そのため、介護医療院では介護サービスにも注力し、介護施設としての役割が期待されています。

介護医療院には利用者の状態に合わせた2つのタイプが設けており、Ⅰ型とⅡ型に分かれています。


Ⅰ型

Ⅱ型

利用目的

継続した医療的ケアが必要な方の介護支援

利用対象者

要介護1~5の認定を受けている方で、継続的な医療ケアが必要な方

重篤な身体疾患のある方で身体合併症を有する認知症高齢者など

Ⅰ型に比べ状態の安定している方

人員配置

介護療養病床に近く手厚い配置

老健に近い配置

Ⅰ型はⅡ型よりも重度の方を受け入れ、医療的ケアや介護サービスを提供します。また、Ⅱ型は老健に近い配置基準があります。

さらに、Ⅰ型はに療養強化型Aと療養強化型Bに分けられます。


療養機能強化型A

療養機能強化型B

重症度

50%以上

医療処置

50%以上

30%以上

ターミナルケア

10%以上

5%以上

リハビリ

要件あり

地域貢献活動

要件あり

療養強化型Aに入居する方は、特に医療ニーズが高い方です。そのため、看取りやターミナルケアも想定されています。

続いて人員配置も確認しましょう。Ⅰ型とⅡ型、介護療養型医療施設では以下のような違いがあります。

職種

Ⅰ型

Ⅱ型
介護療養型医療施設

医師

入居者48名に対して1人以上

(48:1)


入居者100名に対して1人以上

(100:1)


入居者48名に対して1人以上

(48:1)


薬剤師

入居者150名に対して1人以上

(150:1)


入居者300名に対して1人以上

(300:1)


入居者150名に対して1人以上

(150:1)


看護職員

入居者6名に対して1人以上

(6:1)

介護職員

入居者5名に対して1人以上

(5:1)


入居者6名に対して1人以上

(6:1)

ケアマネジャー

100名に対して1人以上

(100:1)

栄養士

100名に対して1人以上

調理スタッフ

必要な数

リハビリ職員

必要な数

事務員

必要な数

医師の当直

あり

なし
あり

出典:厚生労働省「介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯」

人員配置に関しては、大きな違いがありません。介護療養型医療施設・介護医療院共に医療職員の配置が手厚く、長期的な医療的ケアが必要な方でも安心して利用できるでしょう。

次は利用料金を比較してみます。それぞれの介護保険サービスは以下の通りです。

※すべて多床室で比較しています。

介護度

Ⅰ型介護医療院

療養機能強化型A

Ⅰ型介護医療院

療養機能強化型B

Ⅱ型介護医療院

介護療養型医療施設

要介護1

825円

813円

752円

686円

要介護2

934円

921円

847円

781円

要介護3

1,171円

1,154円

1,054円

982円

要介護4

1,271円

1,252円

1,143円

1,070円

要介護5

1,362円

1,342円

1,222円

1,146円

(1単位=1円)

※地域加算を含まない

※1日あたりの利用料

出典:厚生労働省「介護医療院サービスコード表

重度の方を受け入れる介護医療院が、若干単価が高くなります。非課税で介護負担限度額認定証を持っていれば、介護保険費用に差はありません。

介護療養型医療施設は、医療的ケアに重きを置いているため、レクリエーションをはじめとした介護サービスがあまり行われていません。

介護医療院では、生活の場として介護サービスにも力を入れ、レクリエーションやイベントなどのサービスも行われているため、療養しながらも毎日を楽しんで過ごすことができるでしょう。

まとめ

介護療養型医療施設は、医療と介護サービスを同時に提供する施設です。医療的ケアが長期的に必要な方の受け皿として運営しています。

しかし、2012年からは新しい施設の設立を止め、2024年3月にサービス終了が決まっています。

そのため、施設数が少なく需要に対して空きがない状況です。現在は、介護療養型医療施設の代わりとなる介護医療院への転換が進んでいます。

介護療養型医療施設と介護医療院では職員配置や費用に大きな差はありませんが、より介護サービスに重点を置き、医療療養病院との差別化を図る目的があります。

今回の記事が介護療養型医療施設や転換先の介護医療院の知識につながれば幸いです。


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