老人ホームの希望条件①立地条件のポイント
老人ホームを選ぶうえで、施設のスペックだけにこだわっている方は多いかと思います。しかし、実は立地条件も重要なポイントであることをご存知でしょうか。立地条件は、入居者本人の満足度を左右するだけでなく、費用面や面会のしやすさにも関わるため、ご家族にとっても大切なポイントとなります。後悔しない老人ホーム選びのためには、立地条件にもこだわることが重要です。ここでは、立地条件のポイントや立地別のメリット・デメリットなどに絞って詳しく説明いたします。
老人ホーム選びのうえで立地条件が重要な3つの理由
老人ホーム選びは、施設の雰囲気や設備の充実さを重視する方が多いです。もちろん施設自体も重要ですが、立地条件も同じくらい大切なポイントになります。ここでは、その理由を解説いたします。
入居者本人の生活の質を左右する
施設自体はもちろん、周辺環境は本人の生活の質に大きく影響を与えます。ご自身が住んでいたところに似ている環境なら、環境変化への戸惑いが減りストレスが減ります。また、自然が豊かなところなら落ち着いて生活ができ、周辺に美術館や商業施設などのスポットがあればいい息抜きになります。
入居者ご本人が充実した生活を送るためにも、ご本人の希望に沿った立地を叶えることが大切です。
費用を左右する
老人ホームも一般の住宅と同様、立地によって月額費用が変わります。地価の高い都心は郊外に比べて価格が高くなります。また、駅から近かったり、商業施設が多かったりする便利なところも価格が高くなります。さらに、都心は物価も高い傾向にあるため、その分生活費がかかる点にも注意です。
老人ホームにかかる費用は決して安くありません。無理なく支払えるよう、立地を考えることが大切です。
ご家族の面会のしやすさを左右する
ご家族と離れて入居している入居者本人にとって、ご家族との面会の時間は何よりも嬉しいものです。ご家族にとっても、面会を通して楽しく快適に暮らせているかを確認でき、安心することができます。立地はご家族の面会のしやすさを左右するため、重要な条件になります。また、万が一の際にも、すぐ駆けつけられるかどうかは大切です。
老人ホーム立地条件の5つのポイント
それでは、立地条件を考える上でどのようなポイントを重視すべきなのでしょうか。もちろん人によってさまざまですが、以下では代表的な5つのポイントをご紹介します。
入居者本人の自宅から近いか
入居者ご自身の自宅に近いところなら、環境変化によるストレスが少なくすみます。自宅に寄って何かを持って行きたいという場合にも便利です。ご近所の友人にも会いやすいため、これまで通りの友人関係を維持することができる点も安心です。
また、かかりつけの病院や通い慣れた美容院などの施設がある場合、老人ホーム入居後も変わらずに通うことができます。特に、信頼しているかかりつけの病院に通い続けられるのは大きなメリットです。
ご家族の交通の便が良く、面会に行きやすいか
前述の通り、ご家族の面会のしやすさは入居者とご家族の安心のためにも大切なポイントです。そのため、ご家族にとって面会が負担にならないようなアクセスの施設を選ぶことも重要です。電車1本で行けたり、車で比較的簡単に行けるなら、定期的に面会に行くことができます。
最近では、新型コロナウイルス感染防止のため、オンライン面会に対応している施設も増えています。しかし、緊急時のことも考えると、直接会いに行きやすい立地であることは依然重要なポイントです。
今まで住んでいたところに似ているか
街並みや自然環境などが今まで住んでいたところに似ているなら、環境変化への戸惑いも減り、ストレスを軽減できます。もともと都会に住んでいた方がいきなり田舎に住むと、交通の便や周辺施設の充実度に差を感じてストレスになってしまうことも多いです。逆に、田舎でゆったり暮らしていた方がいきなり都会に住むと、喧騒や物価の高さなどが住みにくさの原因になります。
自然が豊かなところか
自然が豊かなところであれば、ゆったりと生活することができ、精神の安定につながります。散歩に出かける楽しみにもなり、四季の変化を感じることもできます。
近くに息抜きになるスポットがあるか
映画館や美術館など、趣味や息抜きになるスポットが近くにあれば時々お出かけしてリフレッシュすることができます。外出が楽しみになるようなスポットが近くにあることは、身体機能の維持・向上や精神衛生上非常に重要です。
また、美容院が近くにあることも大切です。最近では、要介護認定を受けており外出が難しい方を対象にした「訪問理美容サービス」や、館内に美容院を設置している施設もあります。しかし、基本的には自由時間にご自身で近くの美容院に行くのが前提です。近くに美容院があれば、気軽に行くことができ、髪を整えてリフレッシュすることができます。
立地別のメリット・デメリット
ここまで立地条件に関する重要なポイントをお伝えしてきましたが、立地は大きく都会・郊外・田舎に分類することができます。まずは、大まかに都会・郊外・田舎のどこで探すかを相談して決めると、希望の立地条件を整理しやすくなります。
都会
<メリット>
アクセスが良い
都会は電車やバスなどの交通手段が豊富です。そのため、外出や面会の際に非常に便利です。特に緊急時は、昼夜問わず施設に向かいやすい点が安心です。
周辺施設が多い
商業施設や映画館、美術館など、リフレッシュできるスポットが多いです。趣味を充実させたい方や、頻繁にお出かけしたい方にはおすすめです。トレンドの施設にもアクセスしやすいため、新しいもの好きの方にとっては非常にいい刺激になります。
<デメリット>
費用・物価が高い
都会はやはり地価が高いので、月額費用も高くなりやすいです。希望価格に抑えるために、施設の立地・アクセスや居室の広さなどの条件を考慮する必要があります。
また、都会は物価も高い傾向にあるため、外食やお出かけの際にお金がかかるというデメリットもあります。
自然が少なく、落ち着かない雰囲気
郊外や田舎に比べると自然が少なく、自然に触れ合う機会は減ってしまいます。また、人が多く賑やかなため、ゆったり落ち着いた生活がしたい方には向いていないかもしれません。
郊外
<メリット>
利便性と落ち着きのいいとこ取りができる
郊外には多くの人が住んでいるため、駅前に出れば便利な施設が多くあります。しかし、都会に比べると雰囲気が落ち着いているため、都会の喧騒が苦手な方でも快適に過ごすことができます。
近隣の子どもとの触れ合いが多い
保育園や小学校などが多い郊外の施設では、敬老の日や夏祭りなどで近隣の子どもと交流するイベントを開催しているところが多いです。子ども好きの方や孫になかなか会えない方にとっては、子どもと触れ合う機会が癒しや元気の源になります。
<デメリット>
アクセスが悪いと面会しづらい
田舎
<メリット>
費用を抑えられる
田舎は地価が安いため、その分月額費用を抑えることができます。とにかく安いところをお探しの方に最適です。都会に比べて物価も安いため、生活費を抑えることもできます。
自然が豊かでゆったりと生活できる
田舎は自然が豊かで人が少ないため、ゆったりと落ち着いて生活することができます。喧騒から離れて、のびのびと静かな生活を送りたい方には田舎暮らしがおすすめです。
<デメリット>
車がないと面会が難しい
田舎は車移動が前提なので、公共交通手段が少ないです。ご家族が車をお持ちでない場合は、面会がかなり大変になってしまいます。また、緊急時にも交通手段で苦労する可能性が高いです。
都会に比べて便利なスポットが少ない
商業施設や息抜きになる施設が少ないため、「散歩以外にやることがあまりない」と感じる方が多いです。特に、今まで都会に住んでいた方にとっては物足りなさを感じる原因になってしまいます。
立地条件で老人ホームを選ぶ際のポイント
ここまで立地条件に関する重要なポイントをお話ししてきました。立地は生活環境を左右するという意味では入居者ご本人の生活に深く関わるポイントですが、費用や面会のしやすさなどはご家族にも関わるポイントになります。そのため、入居者ご本人とご家族でしっかり相談し、条件を整理していく必要があります。
しかし、希望が出すぎて収拾がつかなくなってしまうこともあります。以下では、立地条件を整理して施設を選ぶ際の判断材料にするためのポイントを説明します。
必須条件と希望条件に分ける
絶対に譲れない条件を「必須条件」、あったら嬉しい条件を「希望条件」とし、出てきた条件をそれぞれに分けていきます。例えば、必須条件は「自宅から1時間以内の距離で自然が豊か、月額費用は15万円以下」、希望条件は「最寄駅からのアクセスがよく、近くに美容院がある」のように振り分けます。特に、費用面の条件は入居者ご本人とご家族双方が納得するためにも、必須条件とするのがおすすめです。
希望条件の中で優先順位をつける
もちろん、全ての希望条件を満たす施設を見つけるのは難しいです。そのため、希望条件の中でも優先順位をつけましょう。条件にあった施設がなかなか見つからない場合、優先度が低い条件から外すことでスムーズに候補をピックアップできます。
見学で実際に周辺環境やアクセスを確認する
条件をもとに施設をいくつかピックアップしたら、見学に行きます。見学の際は、施設だけでなく周辺環境やアクセスもチェックしましょう。「意外と人通りが少なくて夜が暗い」など、実際に訪れてみないとわからないポイントもあります。見学の際に、街の雰囲気や交通の便などを実際に確認してみることで、判断材料にしましょう。
まとめ
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有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。