福祉用具は購入かレンタルか?福祉用具の種類や利用方法・選び方を解説

高齢者の安心安全な生活をサポートする福祉用具ですが、用意するにあたって、レンタルするか購入するかで迷われている方は多いと思います。福祉用具の中には介護保険の対象となるものもあります。利用者にあった福祉用具を選び負担額を軽減するためには、まずは介護保険の対象となる福祉用具の種類と利用方法を理解することが大切です。この記事では、介護保険の対象となる福祉用具の種類やレンタル・購入方法、それぞれのメリットなどを解説します。


#在宅介護#豆知識
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

福祉用具とは

福祉用具とは、介護を必要とする高齢者の生活をサポートしたり、自宅でできる限り自立した日常生活を送れるようサポートする機器や用具のことです。高齢者の身体状況や要介護度の変化に応じて適切なものを使用する必要があるため、福祉用具の利用はレンタルが原則となっています。しかし、肌に直接触れるものや、使用することで形や品質が変化し再利用が不可能なものに関しては、レンタルではなく購入となります。

福祉用具のうち、介護保険を利用してレンタルできるものは13品目、購入できるものは5品目あります。要介護度に応じて、対象となる福祉用具は異なります。


要介護2〜5の方が介護保険でレンタルできる福祉用具

要介護2〜5の方が介護保険でレンタルできる福祉用具は、以下の13品目です。

  • 車いす(付属品含む)

歩行が困難な方の移動をサポートするための用具です。自走用車いすや電動車いすなどが該当します。

  • 車いす付属品

車いす用のクッションやテーブル、電動補助装置、杖入れなどです。

  • 特殊寝台(付属品含む)
    起き上がりや寝返りをサポートする介護用のベッドです。高さ調節機能や背上げ機能などがついていて、リモコンで操作することができます。

  • 特殊寝台付属品
    特殊寝台と併せて使うもので、マットレスやベッドテーブル、サイドレールなどがあります。

  • 床ずれ防止用具

  体圧を分散させることで、床ずれを防止するマットレスやエアマットのことです。

  • 体位変換器

  自ら寝返りができない方が使う用具で、体位変換の時間・角度を設定すると自動で体位を変換することができます。

  • 手すり(工事不要で設置できるもの)

  ベッドからの起き上がり・立ち上がり、トイレの立ち座り、廊下の伝い歩きなどを助けるための用具です。

  • スロープ(工事不要で設置できるもの)
    玄関などに設置して、段差を解消するための用具です。

  • 歩行器
    歩行時に体重を支えて、屋内・屋外の安全な歩行をサポートするための用具です。
    固定型歩行器や前輪付歩行器などが該当します。なお、シルバーカーは対象外です。

  • 歩行補助杖
    歩行時に身体を支え、バランスを維持するための用具です。松葉づえ、多点杖(多脚杖)、ロフストランド・クラッチ、サイドウォーカーなどが該当します。なお、一脚杖やT字杖などのステッキは対象外です。  

  • 徘徊感知機器
    認知症を患っており徘徊症状が見られる方の動きを感知する用具です。屋外に出ようとした際、あるいは屋内のある地点を通過した際にセンサーが反応し、家族や隣人へ知らせます。外出通報システムや離床センサーなどが該当します。

  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)
    ベッドから車いすやトイレなどへの移動をサポートする用具です。工事不要の移動用リフトやバスリフトなどが該当します。

  • 自動排泄処理装置(要介護4・5の方のみが対象)

ベッドに寝たままの状態で排泄の処理をしてくれる装置や、排便・排尿を感知して自動で吸引や洗浄、乾燥を行ってくれる装置などが該当します。

自己負担額・利用限度額

福祉用具レンタルにかかる自己負担額は、原則1割です。所得によって、2割・3割と変化します。利用限度額は、要支援・要介護度別に設けられた基準額の範囲内で、他の介護サービスと組み合わせた額となります。


要介護1/要支援1・2の方が介護保険でレンタルできる福祉用具

要介護1や要支援1・2の軽度な方でも対象となるレンタル品目が4種類あります。

  • 手すり

  • スロープ

  • 歩行器

  • 歩行補助杖

例外給付

疾患などにより福祉用具が必要と判断された場合は、上記以外の品目についても、介護保険でのレンタル利用が可能となります。これを「例外給付」と呼びます。例外給付の対象は、医師の意見に基づいて福祉用具が必要と診断され、市区町村から特に必要であると認定される必要があります。

品目
例外給付対象

車いす(付属品含む)

以下のいずれかに該当する場合

・日常的に歩行が困難な方

・日常生活範囲における移動の支援が特に必要な方

介護用ベッド(付属品含む)

以下のいずれかに該当する場合

・日常的に起き上がりが困難な方

・日常的に寝返りが困難な方

床ずれ防止用具・体位変換機

日常的に寝返りが困難な方

認知症老人徘徊感知機器

以下のすべてに該当する場合

・意思の伝達、介護する方への反応、記憶・理解のいずれかに支障がある方

・移動に全介助を必要とする方

移動用リフト

(つり具部分を除く)

以下のいずれかに該当する場合

・日常的に起き上がりが困難な方

・移乗に一部介助または全介助を必要とする方

・生活環境において段差の解消が必要な方

自動排泄処理装置

以下のすべてに該当する場合

・排便に全介助を必要とする方

・移乗に全介助を必要とする方

介護保険で購入できる福祉用具

福祉用具の中でも、直接肌に触れるものや再利用が難しいものなどは、介護保険を利用して購入することができます。こうした福祉用具は「特定福祉用具」と呼ばれ、以下の5品目が該当します。

  • 腰掛便座

ポータブルトイレや据置式便座、トイレリフトなどが該当します。

  • 自動排泄処理装置の交換可能部品

採尿器のように、自動排泄処理装置において定期的に交換するべき部品のことです。

  • 入浴補助用具

入浴をサポートする用具のことで、入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、入浴用介助ベルトなどが該当します。

  • 簡易浴槽

工事不要で設置でき、折りたたみ式や空気式で簡単に移動できる浴槽のことです。

  • 移動用リフトのつり具の部分

移動用リフトに連結して使用し、利用者の身体に合ったつり具部分のことです。

対象者

対象となるのは要介護1〜5の方です。なお、介護保険の対象となるのは、市区町村から指定を受けた指定事業者から購入した場合のみです。指定事業者以外から購入すると全額自己負担となるため、注意が必要です。

自己負担額・利用限度額

自己負担額は、レンタルの場合と同様に原則1割です。所得に応じて2割・3割になることもあります。購入時に全額を支払い、後日市区町村に申請をすることで、介護保険負担分が払い戻されます。

利用限度額は、要介護度にかかわらず一律で年間10万円です。要支援・要介護度別の介護保険サービスの利用上限額とは、別に設けられている基準であることがポイントです。


介護保険を利用した福祉用具の購入・レンタル方法

福祉用具は専門店やホームセンターなどで購入できます。しかし、介護保険を利用して購入・レンタルする場合は、ケアプランを作成する必要があります。ここでは、介護保険を利用して福祉用具を購入・レンタルする方法をご紹介します。

  1. ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談

  2. ケアプランを作成・指定事業者に相談

  3. 契約・利用開始

  4. メンテナンス・アフターサービス

ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談

介護保険を利用して福祉用具を購入・レンタルするためには、ケアプランの作成が必要です。ケアプランを作成するためには、介護のプロであるケアマネージャー(介護支援専門員)やお住まいの地域の地域包括支援センターに相談しましょう要介護1〜5の方の相談窓口は、ケアマネージャー、要支援1・2、または介護支援サービスを利用したことがない方の相談窓口は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口です。

ケアプランを作成・指定事業者に相談

福祉用具の購入・レンタルについての内容を含めたケアプランを作成します。その後、福祉用具の販売やレンタルを担う事業者と、福祉用具を選ぶための相談を行います。

介護保険の対象となるのは、市区町村から指定を受けた指定事業者から購入・レンタルした場合のみです。こうした指定事業者には、福祉用具についての専門知識を持った「福祉用具専門相談員」がいて、利用者に合った福祉用具を選ぶために様々なアドバイスを行います。

また、介護保険を利用して福祉用具を購入・レンタルするためには「福祉用具サービス計画」の提出が必要です。福祉用具専門相談員が計画書の作成を担います。

契約・利用開始

使用する福祉用具が決まったら、契約し利用を開始します。福祉用具を納品する際、利用者の方が使いやすいよう調整してくれます。

メンテナンス・アフターサービス

サービス利用後は、福祉用具専門相談員が定期的に訪問し、用具のメンテナンスやモニタリングなどのアフターサービスを受けることができます。身体状況や要介護度などに変化がある場合は、適宜福祉用具の見直しや修理・交換を行います。


福祉用具貸与事業者の選び方

福祉用具をレンタルする場合は、福祉用具貸与事業者を利用することになります。事業者についてはケアマネージャーが紹介してくれますが、ここではご自身で良い事業者を見極めるためのポイントをご紹介します。

  • レンタル前にお試し期間がある

  • 説明が丁寧である

  • アフターサービスが手厚い

レンタル前にお試し期間がある

福祉用具を選ぶ際は、カタログや説明だけで選ぶのではなく、実際に使ってみて利用者に合っているかを確かめることが大切です。そのため、レンタル前に数日間のお試し期間がある事業者であれば、利用者に合った福祉用具を選ぶことができます。実際に利用する前に試しで使用してみて、納得したうえで福祉用具を使うことが大切です。

説明が丁寧である

福祉用具は、使い方を間違えると事故につながります。そのため、福祉用具の使い方を丁寧に説明してくれる事業者を選ぶことが大切です。また、数ある福祉用具の中から利用者に合ったものを選定し、丁寧に説明してくれる事業者であれば、安心・納得して利用することができます。

アフターサービスが手厚い

アフターサービスの手厚さも大切です。福祉用具を使う中で、正しく使えているか不安になったり、身体に合わない場合もあります。そのため、利用開始から1週間以内に福祉用具専門相談員が訪問してくれる事業者なら、安心して利用することができます。

また、福祉用具の利用開始から3ヶ月ほど経過すると、利用者の身体状況が変わることが多いです。そのため、最低でも3ヶ月に1回のペースで訪問してくれる事業者が望ましいです。


福祉用具レンタルのメリット・デメリット

福祉用具をレンタルするうえでのメリットとデメリットを紹介します。

メリット

福祉用具をレンタルする大きなメリットは、金銭的な負担が少ない点です。介護保険を利用することで、負担をさらに軽減することができます。

また、体調や要介護度の変化に応じて、適切な福祉用具に変更できる柔軟性の高さもメリットです。レンタルは基本的には1ヶ月更新なので、試しに1ヶ月使ってみたい方も気軽に使えます。また、使わなくなった福祉用具は返却できるため、場所をとることもありません。

さらに、レンタル業者のアフターフォローが手厚い点も魅力です。メンテナンスや交換、調整などを定期的に無料で行ってもらえる場合が多く、安心して使い続けることができます。

デメリット

福祉用具をレンタルするデメリットは、新品が使えない点です。基本的には中古品を使用することになるため、中古品の仕様に抵抗がある方には向いていません。

また、傷や汚れが生じた場合、修理・交換に伴う費用を求められることもあるため、気兼ねなく使えないという点もデメリットの1つです。


福祉用具購入のメリット・デメリット

福祉用具を購入するうえでのメリットとデメリットを紹介します。

メリット

福祉用具を購入するメリットは、新品を気兼ねなく使えるという点です。傷や汚れを気にせずに使うことができるため、心理的な負担が少ないです。

また、メーカーやデザインなど選択肢に制限があるレンタルに比べ、気に入った福祉用具を選んで使うことができる点もメリットの1つです。

デメリット

福祉用具を購入するデメリットは、身体状況や要介護度の変化に対応することが難しい点です。買い替えるたびに費用がかさみ、大型の福祉用具の場合は処分にも手間がかかります。


利用者に合った福祉用具の選び方

指定事業者を利用すれば、プロである福祉用具専門相談員が必要な福祉用具についてのアドバイスをくれます。しかし、利用者ご本人やご家族が、本当に必要な福祉用具を選ぶことが大切です。ここでは、ご自身で適切な福祉用具を見極めるためのポイントについて説明します。

  • 自立をサポートできるものを選ぶ

  • 住環境に合ったものを選ぶ

  • 介護者が使いやすいものを選ぶ

自立をサポートできるものを選ぶ

福祉用具は、利用者の生活を助ける一方、自立を妨げてしまう可能性もあります。例えば、手すりを使って歩けていた方が車いすばかり使うようになれば、脚の筋肉が衰え、自力で歩くことができなくなってしまう、ということもあります。

日常生活を快適にできる福祉用具を選ぶことも重要ですが、自立をサポートできるものを選ぶ、という視点も必要です。福祉用具を使う目的を定めてから選ぶようにしましょう。

住環境に合ったものを選ぶ

福祉用具を選ぶ際は、利用者の身体状況だけでなく、住環境に合ったものを選ぶことも大切です。車いすを利用しており玄関に段差がある場合はスロープ、トイレがリビングと離れている場合はポータブルトイレなどのように、住環境も考慮したうえで、快適に生活するために必要な福祉用具を選びましょう。

介護者が使いやすいものを選ぶ

福祉用具は、利用者の生活をサポートするだけでなく、介護の負担を減らす役割も持ちます。そのため、福祉用具を選ぶ際は、利用者ご本人だけでなく介護するご家族の意見も大切です。例えば、浴室に手すりを設置して自力で浴槽に入れるようにすることで、入浴介助の負担が軽減します。マットレスを利用すれば、床ずれを防いで寝返り介助の負担を減らすことができます。このように、福祉用具を選ぶ際は介護する方の視点を取り入れることも大切です。


まとめ

この記事では、介護保険の対象となる福祉用具の種類や、福祉用具のレンタル・購入について解説しました。高齢者の生活を快適にし、介護の負担を軽減するためには、利用者に合った福祉用具を選ぶことが大切です。また、レンタル・購入それぞれにメリットとデメリットがあります。ご本人とご家族で相談し、納得のいく利用方法を選ぶことが大切です。この記事を参考に、高齢者の安心安全な生活をサポートする福祉用具の利用を検討していただければ幸いです。

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