認知症デイサービスと通常のデイサービスとの違いとは?サービス内容や費用について紹介

「認知症デイサービスってどんなサービス?」「よくあるデイサービスとの違いは?」このような疑問はありませんか?

親が認知症になった場合、仕事がある日中だけでも、介護サービスを利用して安心したいものです。訪問介護サービスだけでは、一人になる時間も多く、不安な時間が多くなります。

そこで、よく利用されるサービスがデイサービスです。デイサービスでは、朝から夕方(事業所によっては半日型もある)まで、事業所で介護サービスを提供し、自宅から事業所の送迎も行ってもらえるため、安心して仕事や家事ができたり、家族の休息にもなります。

また、デイサービスには事業所によって、認知症特化や機能訓練型など様々な特徴があります。

そこで、今回は認知症に特化したデイサービスについて紹介していきます。認知症デイサービスの特徴やメリットについて解説しているため、ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

1.認知症デイサービス(認知症対応型通所介護)とは

認知症の診断を受けた方のみが利用できるデイサービス

認知症デイサービスとは、正式には「認知症対応型通所介護」と呼ばれるサービスです。

認知症の方が可能な限り自立した在宅生活を送れるように、日中、対象施設(事業所)で専門的なケアやサービスを提供しています。食事・入浴・排泄などの日常生活支援をはじめ、精神的・身体的機能の向上・社会参加・活動などを支援するサービスです。認知症デイサービスは認知症の支援だけではなく、家族の介護負担を軽減することも目的としています。

認知症デイサービスを利用する時には、あらかじめ決められた時間に職員が自宅までお迎えに行きます。また、帰りも自宅まで送ってくれるため安心です。

送迎時に家族が対応できない場合は、訪問介護(ヘルパー)の利用も可能です。

2.認知症デイサービスの特徴

認知症の方が安心できる環境

認知症デイサービスには、次のような特徴があります。

  • 少人数制

  • 高度な専門的知識

  • 地域密着型サービス

それぞれ見ていきましょう。

・少人数制

認知症デイサービスの利用定員は、12人以下です。職員が一人ひとりに対して手厚いケアができる職員配置です。

認知症の方は騒がしい環境や人が多い場所では、情報量が増え、不安や心配になる傾向があります。そのため、少人数制の方が落ち着いて穏やかに過ごせます。

・高度な専門的知識

認知症デイサービスの管理者は、都道府県が実施している認知症対応型サービス事業管理者研修の修了が義務づけられています。

認知症に対して理解のある職員が穏やかに過ごせるような対応・プログラムを組んでサービスを提供します。

・地域密着型サービス

地域密着型サービスでとは、事業所がある地域と同一地域の方が利用できるサービスです。

住み慣れた地域の事業所を利用できるため、顔なじみの方がいたり送迎時にかかる移動時間も短く済みます。そのため、本人の不安や負担は軽減されるでしょう。

また、年に数回、地域住民や家族の人が参加できる運営推進会議を開催しており、地域とのつながりや日中の過ごし方・サービス内容を確認したり、事業所に対する意見や提案を出すことができます。

3.認知症デイサービス3つの種類

サービス提供方法が異なる3つの種類

認知症デイサービスには、事業所の形態によって種類があります。

単独型

認知症デイサービスを単独で運営しているタイプです。民家などを改装して運営している場合もあります。

併設型

併設型は、社会福祉施設や特定施設に併設されているタイプです。特別養護老人ホームや介護老人保健施設のほかに、病院や診療所などもあります。

共用型

共用型は、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)などの食堂や居間を借りて実施しているタイプです。

【人員の配置基準】

認知症デイサービスは以下のような人員配置が定められています。また、事業所によって、単独型・併設型・共用型に分かれ、それぞれ基準が異なります。


単独型・併設型

共用型

利用定員

12人以下

3人以下(1日)

管理者

1人

1人

生活相談員

1人

※2

看護師または介護職員※1

2人(専従)

(12人超える度1人増)

※2

機能訓練指導員

1人

※2


生活相談員・看護師・介護職員のうち1人以上は常勤であること

生活相談員・看護師・機能訓練指導員は必須ではない

※1 利用定員10人以下の場合には、看護師または介護職員のどちらか1名の配置で可

※2 共用される事業所ごとに規定されている人員基準以上の人数を満たすこと。

4.認知症デイサービスの利用条件

認知症デイサービスの利用条件は3つ

認知症デイサービスの利用対象者は、以下の通りです。

  • 医師による認知症の診断を受けている

  • 要介護1以上の認定を受けている※1

  • 利用する事業所と同じ地域に居住している※2

※1介護予防認知症対応型通所介護の申請をしている事業所であれば、要支援1.2の方も利用可能

※2市町村区によっては隣接した自治体の地域密着型の事業所の利用を認めている所もある 

利用には、上記すべての条件を満たす必要があります。当てはまらない場合は、一般的なデイサービスもあるため、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してみましょう。

5.デイサービス(通所介護)との違い

サービス内容には大きな相違はない

ここでは、一般的なデイサービスとはどんな違いがあるのか見ていきましょう。


一般的なデイサービス

認知症デイサービス

利用対象者

介護認定を受けている方

認知症の診断を受けている方

事業所が想定している送迎範囲の方

事業所と同じ地域の方

利用定員

多いところもある

12人以下

費用

認知症デイサービスよりも安い傾向

一般的なデイサービスより高い傾向

サービス内容

レクリエーションや日常生活で必要な支援


一般的なデイサービスに加えて専門的な認知症ケアの実施

運営推進会議
実施義務はなし
実施義務がある

どちらのデイサービスでも利用時に注意することがあります。デイサービスの利用が決まると、お迎えや帰りの時間が決まります。利用にあたって必要なものを準備しておくカバンは同じものを使うと良いでしょう。

また、持ち物の置き場所を統一します。いつも同じ場所に決まったものがあることで安心できます。認知症の場合は、いつもと違う事が起こると、不安が強くなることがあるため、安心できる環境づくりが大切です。

職員とカバン・持ち物の情報を共有しておくとより安心できるでしょう。

6.認知症デイサービスのメリット・デメリット

認知症に特化したサービスを実施

ここからは、認知症デイサ―ビスを利用した場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

デメリット

  • 送迎職員と家族に深い繋がりができる

  • 利用者一人ひとりにあった食事とレクリエーション

  • やる気を引き出す生活リハビリテーション

  • 家族の負担軽減

  • 定員が少ない

  • 事業所が少ない

  • 地域が限定される



【メリット】

・送迎職員と家族に深い繋がりができる

送迎時、職員と直接顔を合わせて体調面・日中の様子や変化を話すことで情報共有ができ、信頼関係も増します。また、不安なこと・困りごとなど、聞いてもらえる人がいる安心感があります。

・利用者一人ひとりに合った食事とレクリエーション

認知症が進むと、お箸の使用方法がわからない・何を食べているのか分からない・噛めずにそのまま飲み込んでしまうこともあります。そのような時は、本人が可能な限り自分で食事ができるよう食事形態や食器類、食事の環境を工夫し、適切な声掛けをします。適切な対応をすることで、認知症の進行予防に繋がるでしょう。

レクリエーションでは、一人ひとりのできることに配慮して提供します。個人や少人数で行う将棋や手芸などは、他者交流が苦手な人でも楽しむことが可能です。集団では、カラオケや歌を一緒に唄ったり、体操・グループ対抗ゲームなど、他の利用者と交流しながら行います。

・やる気を引き出す生活リハビリテーション

認知症になると、家族以外の人と関わりが減り、気持ちの落ち込みが強くなることがあります。しかし、職員や見慣れた人たちと関わる機会が増えることで、精神的に落ち着き、自発的に活動参加するケースも珍しくありません。さらに、できることを継続することが本人にとって大きな自信となり日常生活に活気が生まれます。

・家族の負担軽減

認知症の介護は、家族だけでは抱えきれない状況になることもあります。認知症の場合は、予定通りにいかなかったり、会話が成り立たずイライラしたりと、家族の負担が増える傾向にあります。

日中、認知症デイサービスに通うことで、家族は介護から離れて休息の時間をもつことができます。疲れやストレスを軽減し、互いに穏やかな精神状態を保つことは、認知症の進行を予防することにもつながります。

【デメリット】

・定員が少ない

認知症デイサービスは少人数性のため、利用枠が少なく、利用できない可能性が高くなります。また、職員や他の利用者と相性が合わず精神的な負担になることもあります。特に、元々人との関わりが苦手な方は注意が必要です。

・事業所が少ない

一般的なデイサービスの事業所数は、24,087事業所に対して、認知症デイサービスは、3,868事業所です。(令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況

このことから、事業所が少なく定員数も少ないため、利用できる人数が限られることがわかります。

・地域が限定される

認知症デイサービスは地域密着型事業にあたるため、事業所と同一の地域にお住まいの方しか利用できません。事業所が多い地域では選択肢がありますが、少ない場合は希望通りにいかないこともあるでしょう。

自治体によっては、隣接している地域にある事業所の利用を許可している所もあるため、ケアマネジャーや事業所に確認してみると良いでしょう。

また、認知症でも一般的なデイサービスに通っている人もいます。認知症デイサービスに空きがない場合は、一般的なデイサービスの利用も検討してみましょう。

7.認知症デイサービスにかかる費用

デイサービスよりも費用は高い

認知症デイサービスの1回利用金額の目安は以下の通りです。

【例】自己負担額1割・サービス提供時間が7~8時間の場合


要支援1

要支援2

要介護1

要介護2

要介護3

要介護4

要介護5

単独型

859円

959円

992円

1,110円

1,208円

1,316円

1,424円

併設型

771円

862円

892円

987円

1,084円

1,181円

1,276円

共用型

483円

512円

522円

541円

559円

577円

597円

※1単位10円で算定しています(介護保険算定時地域区分により若干の違いがあるため)

※利用者に応じたサービス提供・事業所の体制に対しての加算や減算があります。

加算を算定するには、加算ごとに要件があります。事業所ごとに算定している加算が異なるため、利用契約前に加算や費用について確認しておくと安心です。

主な加算は以下の通りです。

加算名

金額

入浴介助加算Ⅰ

40円/日

個別機能訓練加算Ⅰ

27円/日

生活機能向上連携加算Ⅰ

100円/月

ADL維持等加算Ⅰ

30円/日

口腔・栄養スクリーニング加算Ⅰ

20円/回

介護職員処遇改善加算

合計単位数の数%

(利用状況や地域によって異なる)

また、上記の利用料金以外にも、食事代・日用品費などがかかります。

8.認知症デイサービスの選ぶコツ

インターネットや口コミなど多くの情報から選択

最近では、インターネットを使用して施設の情報を確認することが容易になりました。ホームページがある施設も多くあるため、気になる施設は一度確認しておくといいでしょう。

事業所を選ぶときは、自分以外の家族・本人の意向をまず確認しておくことが必要です。すべての意見は叶えることはできないかもしれませんが、何を優先にするのかが明確になるでしょう。

その意向を担当ケアマネージャーに伝えると、本人の身体状況・性格などを考慮した上で、適正だと思う事業所を紹介してくれます。

気になる施設が見つかったら、見学や体験をしてみると良いでしょう。また、家族が見学に行ったときに、チェックしておくポイントは以下の通りです。

  1. 施設内の雰囲気

  2. 施設内外の清潔さ

  3. 利用者と職員のコミュニケーションの様子

  4. 職員の挨拶の有無

  5. レクリエーションなど活動内容

  6. 施設内設備

  7. 職員のケア

  8. 緊急時の対応

まずは、施設内の雰囲気が本人と希望するものであるか様子を確認しておきましょう。また、施設内外にゴミが散乱している・ホコリが溜まっている・物が雑然と置かれているなどの場合は、人手不足や管理不足が疑われます。

次に職員や利用者がお互いに気兼ねせず、コミュニケーションをとれているか確認しましょう。また、挨拶のない事業所は注意が必要です。職員の接遇に関する教育ができていない可能性があります。

資格のある職員でも、全員が同じケアを行える訳ではありません。認知症ケアに一番必要な、傾聴・受容の姿勢で、本人のペースを乱さず対応しているかが重要です。利用者の手を引っ張ったり、急かすような声掛けをする職員がいる施設はおすすめしません。

活動に力を入れている施設では、季節のイベントや日常のレクリエーションなど、余暇として楽しむ時間を設けています。非日常体験を提供しているため、本人にとっていい刺激になるでしょう。

転倒や外傷時など、医療機関との協力体制も確認しておきましょう。

認知症になると、転倒リスクがあります。また、手すりやスロープなどの施設設備や食事中の環境なども確認しておくと良いでしょう。

9.外出を拒否する原因とは

認知症の人は何もわからない訳ではない

認知症が進行していても”いつもと様子が違う””この人なんとなく嫌な感じがする”などを、感覚的に感じています。外出に対して拒否があるときは、本人がどのような気持ちになっているか考えてみましょう。

例えば、外出先になじめない・不安がある・孤独感があるなどマイナスな気持ちがあるかもしれません。また、家族や職員が急かすことで不安が強くなる場合もあります。朝の支度を忙しくしていると、その雰囲気を感じ取り不穏になることもあるため注意しましょう。

その他にも、どこに連れて行かれるのかわからず不安になっている・外に出たくないと思っているなど様々な感情を抱いています。

また、既に事業所を利用中であれば、施設との相性が悪い場合も考えられます。施設の様子を確認して、事業所の変更を考えることも必要でしょう。

家族としては、「一度、デイサービスを休んだら二度と行ってくれないのではないか」と思うかもしれません。しかし、本人の納得がないまま無理に利用を続けると、嫌な気持ちや体験だけが残ることがあります。本人の中で「デイサービスは嫌な所」というイメージがつくと、その後受け入れることが困難になります。

【対応策】

・時間をあけて声を掛ける

認知症の人は、短期記憶が維持しにくい特徴があるため、一定の時間をおいてから再度、声を掛けるとスムーズに外出できる場合もあります。その際、本人の気持ちが落ち着いていることを確認してから声を掛けると良いでしょう。

・慣れない間は家族が同行または送迎する

1人で知らない所に行くことに不安があるかもしれません。家族の負担は増えますが、一旦、施設に同行して、本人に「ここは安全・安心な所」というイメージがつけば必要なくなるかもしれません。

・拒否が強い時には休んでみる

認知症の対応として、本人の気持ちを尊重せず強制や無理強いすることは、関係を悪化させる要因となります。本人の意志を確認し寄り添うことで信頼を得られれば、こちらの話を受け入れてくれるようになるでしょう。

まとめ

今回は、認知症デイサービスについて紹介しました。介護保険には、紹介した認知症デイサービスを含め、様々なサービスがあるため、認知症の人やその家族にとっても最適なサービスを検討することが重要です。

ケアマネジャーや地域包括支援センターなど、相談先も多数あるため、色々な情報を集めてより良いサービスを選択しましょう。

今回の内容が、認知症デイサービスの理解に繋がれば幸いです。

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