認知症は早期発見が重要!検査費用や診断後の介護サービスのつなげ方までまとめて紹介
「もしかして認知症?」「認知症かどうか、調べるにはどうすればいいの?」と悩んでいませんか?
高齢者の場合、認知症の初期症状と老化による物忘れの区別がつきにくく、判断が難しいです。そのため、「急に認知症になった」と感じる方も少なくありません。
しかし、認知症は初期の対応が重要です。早期発見による早期治療ができれば、進行を遅らせることも可能です。
今回の記事では、認知症の早期発見につながる検査の種類や費用について解説します。認知症に対する不安を軽減させて、冷静な判断や対応につなげてください。
とぐち まさき
渡口 将生
認知症の検査とは
検査には様々な方法がある
認知症の疑いがある時には、クリニックや病院などの、神経内科・精神科・心療内科・脳神経内(外)科を受診します。また、専門外来として”物忘れ外来””認知症外来”などわかりやすく診療科目に掲げている所も増えています。
自分で探すことが難しい場合は、かかりつけ医・地域包括支援センター・ケアマネジャーなどに相談すると教えてもらえるので、不安な時は相談しましょう。
検査の手順は以下の通りです。
問診・診察
身体検査
画像検査
神経心理学的検査
基本的に、他の疾患で受診する時の流れと大きな違いはありません。認知症の診断は多様な検査の結果を総合的にみて、認知症の種類・進行度などを医師が判断します。ただし、受診する医療機関によって、検査の内容が異なる場合もあります。
問診・診察
医師あるいは看護師が、今までの病歴や現在の身体症状などを聞き取ります。認知症初期の場合、本人に認知症という自覚がなく、家族などが今までとの違いに気づいて受診することがほとんどです。そのため、本人は受診に来たこと自体に不満や不信感を持ち、質問に答えられなかったり、検査に対して抵抗や拒否をするなど、スムーズに行うことができない場合があります。そのため、事前に本人の日常生活の様子や病歴、聞き取りしたことなどをメモしておくと、役立つでしょう。
【例】・いつ頃から「変だな」と思い始めたか
・どのような症状だったか
・現在の症状や様子
・今までかかったことのある病気(入院歴・手術歴)
・現在飲んでいる薬
身体検査
次に基本的な身体検査を行い、今後の医療・介護の進め方を決めるために他の疾患の有無を調べます。身体測定・血圧測定・尿検査・視力検査・聴力検査・血液検査・心電図検査・レントゲン撮影などの一般的な検査から、発語・四肢の麻痺・不随運動の有無・歩行状態などの確認を行います。
画像検査
CTやMRIなどで脳の画像検査を行い、脳内の萎縮度合いなどを確認します。認知症の症状は脳の機能が損なわれることで起こり、血流も低下します。そのため、画像診断では血流の低下や萎縮している場所を画像で確認して、認知症の種類を判別することが可能です。
神経心理学的検査
簡単な質問や動作を確認して判断する検査です。年齢を重ねていくと認知機能の低下がみられ年相応の物忘れが起きます。物忘れ自体が加齢によるものなのか、認知症の影響なのかを評価するために神経心理学的検査を行います。
加齢による物忘れと認知症の違いは以下の通りです。
加齢によるもの | 認知症状 |
日常生活は問題なく過ごせている | 日常生活に支障が出ている |
食事をしたことは覚えているがメニューが思い出せない | 食事したこと自体を忘れている |
物忘れをしている自覚がある | 物忘れをしている自覚がない |
ヒントがあれば思い出せる | ヒントがあっても思い出せない |
認知症の主要な検査法と費用
認知症の検査にかかる費用は検査項目によって大きく異なる
それぞれの検査に必要な費用は以下の通りです。それぞれ見ていきましょう。
検査の種類 | 検査名 | 費用相場 |
---|---|---|
神経心理学的検査 | ・長谷川式認知症簡易評価スケール(HDS-R) ・ミニメンタルステート検査(MMSE) ・ウェクスラー記憶検査(WMS-R) | 700~2,800円程度 |
画像検査 | CT検査 | 15,000~20,000円程度 |
MRI検査 | 15,000~30,000円程度 | |
SPECT検査 | 80,000~100,000円程度 | |
血液検査 | MCIスクリーニング検査 | 15,000~25,000円程度 |
APOE遺伝子検査 | 約20,000円程度 | |
その他 | アミロイドPET検査 | 約100,000円程度 |
神経心理学検査
【長谷川式認知症簡易評価スケール(HDS-R)】
記憶を中心とした、おおまかな認知機能障害の有無を判断します。回答はすべて口頭で行います。評価項目は9つあり、30点満点のうち20点以下だった場合、認知症の疑いがあります。テストにかかる所要時間は、5〜10分ほどで簡易にできるため、介護現場でもよく用いられる検査方法です。
【ミニメンタルステート検査(MMSE)】
この検査は、世界でもよく使用されている認知機能テストです。評価項目は時間や場所・計算・文章復唱・図形模写など11項目あり、口頭や文章記述などで回答していきます。評価は以下の通りです。
30点満点中の点数 | 結果 |
27~30点 | 異常なし |
22~26点 | 軽度認知症疑いあり |
21点以下 | 認知症の疑いが強い |
テストにかかる所要時間は、10〜15分ほどで行うことができます。長谷川式認知症簡易評価スケールとの違いは、回答方法が口頭だけではなく記述があることと、回答時間が1問につき10秒という制限があることです。
【ウェクスラー記憶検査(WMS-R)】
短期記憶と長期記憶・即時記憶と遅延記憶など、さまざまな記憶の形から総合的に判断する記憶検査です。評価項目は言語と図形を使用した問題が13項目あり、85〜115点が正常値とされています。テストにかかる所要時間は、45分〜1時間ほどです。
画像検査
【CT検査】
X線を使用した断層診断です。頭部の外傷や急性の脳出血などを診断でき、短時間で撮影ができるため、長時間じっとしていることが難しい人に対して有効に使用できます。
【MRI検査】
電磁気を使用した画像検査です。脳腫瘍・脳梗塞などの確認が可能で、発症時期を推測することもできます。撮影時間がCTに比べると長く、20分以上時間を要しますが、画像が鮮明で身体に負担がなく検査することができます。
【SPECT検査】
脳の血流や代謝をみて、脳の活動状況を確認することができます。
血液検査
【MCIスクリーニング検査】
血液検査でアルツハイマー病の前段階であるMIC(軽度認知障害)リスクを測定します。
【APOE遺伝子検査】
血液検査出アルツハイマー病の発症リスクを調べます。今後、発症することを断定するものではありません。
その他
【アミロイドPET検査】
アルツハイマー型認知症は脳内にアミロイドβペプチドという物質を蓄積し、神経細胞が破壊されることで発症します。アミロイドPET検査は、このアミロイドβの沈着状態を診断しますが、この検査だけで認知症を確定するわけではなく、その他の検査結果などを考慮して総合的に判断されます。
認知症検査のメリット
早期発見は早期治療につながる
認知症は、早期発見・早期治療を行うことで進行を抑えることができます。一度、発症すると完治することはなく、治療を行わず放置していると、状態が悪化します。認知症の種類によって、食事を摂れなくなり最終的には寝たきりになることもあります。
現在、認知症の薬も研究が進んでおり、薬以外にも心理療法・リハビリなど進行を抑える対策が多様にあります。それらを活用することで、認知症になっても長く元気に自分らしく日常生活を送ることが可能です。
また、認知症の陰に違う病気が潜んでいるかもしれません。例えば、脳腫瘍がある場合、認知症を引き起こす場合があります。栄養障害・甲状腺機能低下症・特発性正常圧水頭症などの治療を行うことで、改善がみられるケースがあります。検査を行うことで、原因を特定して治療を行うことが可能です。
他にも、認知症と診断されることで、必要な支援を受けることができたり、周囲の人達たちの協力を得ることもできます。多くの人の目で見守ることで、本人や家族の不安も軽減されます。
自宅でできる認知症チェック
病院に行くのに抵抗がある場合は自宅でチェック
認知症の簡易検査は、自宅でも行うことができます。しかし、正確に評価するには、正しい知識と技術が必要です。長谷川式認知症簡易評価スケール(HDS-R)などは簡易に行うことができますが、あくまでも”疑わしさを判断する”ツールとして実施してください。最終的な判断は医療機関の医師に診断してもらう必要があります。
長谷川式認知症簡易評価スケール(HDS-R)の実施内容はこちらから確認可能です。
自宅で行う際は、以下の点に注意してください。
1.環境が適切か
同じ部屋に人がいる・音(テレビやラジオなど)があり集中できない環境は不適切です。本人が集中・リラックスできる環境を作りましょう。
2.本人の心身の調子を確認
情緒不安定・しんどい・気分が乗らない時には実施せず、心身の状態が安定している時に実施しましょう。
3.何度も繰り返し実施しない
繰り返し行うと覚えてしまい、正しい評価ができなくなってしまいます。
4.時間をかけすぎない
質問の投げかけから10秒ほどで次の質問を進めていくようにしましょう。
5.質問の内容を変えない
すでにできている質問の内容を変えてしまうと、正しく評価できなくなってしまいます。
次に、ミニメンタルステート検査(MMSE)を紹介します。
ミニメンタルステート検査(MMSE)の実施内容はこちらから確認可能です。自宅で実施する際の注意点は、長谷川式認知症簡易評価スケール(HDS-R)と同様で、集中して実施できる環境を心掛けましょう。
認知症検査でよくある疑問
疑問を解消して不安を取り除きましょう
ここからは、認知症検査についてよくある疑問をみていきましょう。
【認知症検査は何科で受ける?】
クリニックや病院などの医療機関(神経内科・精神科・心療内科・脳神経内(外)科)を受診します。
【認知症検査はいつ受ける?】
本人が自分から受診しようと思うことは稀です。家族や周囲の人から見て以前と少し様子が違う、よく同じことを確認するなどの変化があったら受診してみましょう。
【検査の前にできることは?】
自宅で、認知症簡易テスト(長谷川式など)を実施する方法があります。また、いつからどのような症状があり、現在どういう状態なのか、病歴や入院歴、内服している薬などの情報をメモしておくことで、問診の時に役立ちます。
【本人が受診を納得できない場合はどうする?】
周りから見て様子が違っていても、本人は「自分は何もおかしくない」「おかしい訳がない」と思っているため人の場合、無理に受診を勧めると心を閉ざしてしまうことがあります。
本人の性格を考慮した上で、誰が話すと聞いてもらえそうか、伝える相手を工夫すると良いでしょう。例えば、ケアマネジャーやかかりつけ医・親友などに協力を依頼するのもひとつの方法です。
実際のエピソードなどを伝え、客観的にどのように本人を見ているのかを伝えてみるのも良いでしょう。また、家族や周囲の人は心配しているということを伝えてみてください。元気に安心して生活してほしいからなど、家族の気持ちを伝えることで、納得される場合もあるでしょう。また、認知症であっても早期に対応すれば進行も遅らせることが可能な点など、わかりやすく説明し理解を促す必要があります。
また、健康診断の流れで検査をする方法もありますが、やはり、本人が納得して受診・検査できることが望ましいでしょう。
認知症検査を受ける前に注意すること
検査を受ける前でもできることがある
認知症の症状を改善したり進行を穏やかにするためには、早期発見・早期治療が非常に重要です。しかし、親に認知症の症状を感じていても「どうしたらいいの」と頭を悩ます方が多いと思います。まずは、家族がその違和感を把握し本人の気持ちに寄り添うことが大切です、
ここからは、受診までの間にしておくと安心できるポイントや診断を受ける際に気をつける点を紹介します。
まずは、いきなり大きな病院に行かず、今まで通っていた病院やかかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医が認知症を懸念した場合には、認知症を専門に診療・検査できる病院を紹介してもらえます。はじめから大きな病院に行くと高額の初診費用が必要になるため、注意しましょう。
また、家族から見て認知症を疑うきっかけになったエピソードや日々の違和感などをメモに書いておくと、第三者へ伝える時に役立ちます。
認知症の診断を受けた場合、日々の生活支援などは、介護保険サービスを利用する場合も多くなります。管轄の地域包括支援センターや担当のケアマネジャーに相談しておくと日常生活の困りごとや様々な相談ごとにも、スムーズに対応してもらうことができます。
診断を正しく把握するためにも、本人だけではなく家族同席して医師の話を聞くのが良いでしょう。もし、認知症の診断だった場合に、自覚症状のない本人にとってはショックが大きく精神的に辛くなる可能性があります。診断を受容できない方も多いため、本人の性格をよく知る家族から、受け止めやすい言葉かけや対応で診断結果を聞くことがおすすめです。
認知症になったからといってすべてが失われていくわけではありません。一人ひとり性質や環境などの違いから、認知症状や進行も個人差があります。認知症を正しく理解し、本人や家族がより良く暮らしていける方法を考えましょう。
診断に不安がある・治療に対して納得できないと感じた場合は、セカンドオピニオンを希望してください。医師よりこれまでの検査情報などを、希望する医療機関に提供してもらうことができます。
認知症の診断を受けたとき
介護サービスを利用する
認知症の診断が出た場合、介護サービスを利用する方や、検討される人が多いです。診断を受けると、戸惑うことも多く冷静な判断ができない可能性もあります。
まず、介護認定を受けていない場合は、申請を行いましょう。要介護認定の申請は、市区町村の担当窓口や地域包括支援センターで行えます。地域包括支援センターでは、主任ケアマネジャー・社会福祉士・保健士が常駐し、高齢者や認知症に関する様々な相談が可能です。また、要支援認定を受けた方の予防介護サービス計画の作成も行っています。
また、すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーに相談すると良いでしょう。多くの介護サービスの中から、必要なサービスを選択してもらえます。
他にも以下のような窓口があります。
窓口 | 詳細 |
認知症疾患医療センター | 認知症疾患医療センターは各都道府県に設置されており、専門知識を有する精神保健福祉士などが、医療相談に応じています。 |
若年性認知症コールセンター 若年性認知症支援コーディネーター | 若年性認知症は、高齢者の認知症とは異なる悩みがあります。そこで、各都道府県に若年性認知症コールセンターを設置し、若年性認知症の方とそのご家族の相談に応じるために若年性認知症支援コーディネーターを配置しています。 |
認知症の患者会・家族会 | 認知症の患者会や介護者の家族会なども貴重な相談窓口となっています。公益社団法人「認知症の人と家族の会」は全国にあり、電話相談も可能です。 |
認知症カフェ | 認知症カフェは、認知症の人や身近な人が、地域の人や専門家と交流し、つながり、学ぶための場として開催されています。医療機関や包括支援センター、自治体などが柱となり、誰でも気軽に参加できるカフェです。各カフェでは、知識の交換や専門家への相談、認知症予防活動への参加など、さまざまな活動やイベントが行われています。 |
認知症の介護保険サービス
介護保険サービスには様々なサービスがある
ここでは、どんな介護サービスを受けることができるのかを説明していきます。料金に関しては、地域や利用する介護施設(事業所)・介護度・負担額の違いによって異なります。
居宅介護サービスの内容と費用は以下の通りです。
種類 | 内容 | 費用 (要介護2・1割負担の場合) |
訪問介護 (ヘルパー) | 自宅内で本人が行うことのできない家事については生活援助、排せつや入浴などの身体的な介護を身体介護と分けて、「家族が不在」「家族の負担軽減」などの目的で、ヘルパーが支援します。 | 【20分以上30分未満の身体介護】 248円/回 【20分以上45分未満の生活援助】 181円/回 |
通所介護 (デイサービス) | 入浴や食事など日中の支援や、施設によって違いはありますが、レクリエーションや機能訓練などを受けることができます。 | 【5~6時間利用】 660円/回 (事業所の規模や利用する時間によって異なる) |
通所リハビリテーション (デイケア) | 介護老人保健施設・病院などに通い、機能訓練を受けることができます。 | 【3~4時間利用】 421円/回 (事業所の規模や利用する時間によって異なる) |
短期入所生活介護 (ショートステイ) | 介護老人福祉施設などに一定期間(1泊2日〜1ヶ月程度)入所し、日常生活や身の回りの介護の支援を受けることができます。 | 【ユニット型特養の場合】 764円/日 (ベッド居住費や食費など別途必要) |
※金額は、自己負担1割の目安です。
※施設によって加算などが異なります。
※1単位=1円で計算
次に施設サービスを見ていきましょう。施設には多種多様な種類があります。ここでは、認知症に対応している施設を紹介します。
施設入所一覧は以下の通りです。
施設名 | 施設の種類 | 施設概要 |
特別養護老人ホーム | 公的 | 入居対象は、基本的に要介護3以上。医療的ケアがほとんどない。 |
介護老人保健施設 | 公的 | 要介護認定を受けており在宅復帰を目指す人 |
グループホーム | 民間 | 入居対象は、要支援2~要介護5で、医師より認知症の診断を受けている人。施設と同じ市区町村内に住民票がある人。 |
介護付き有料老人ホーム | 民間 | 施設ごとに要件などが変わる。公的施設に比べて自由に過ごしやすい。 |
認知症の診断を受けたときに、すぐに利用できるように知識を広げ、介護サービスや施設を選んでおくと良いでしょう。
まとめ
今回は認知症の検査方法や費用について解説しました。認知症の初期では、年相応の物忘れと判断が難しく、対応が困難なことがあるでしょう。認知症の診断を受けると、治療も行えて症状の進行を遅らせることが可能です。また、周囲の人たちからも協力を得やすくなる場合もあるため、検査を受けて診断をもらっておくと安心です。
認知症は適切な検査を受け早期発見・早期治療をすることが重要なポイントです。対応が遅れるとその分、認知症が進行してしまいます。できる限り早めに検査すると良いでしょう。
認知症の診断を受けた場合は、要介護認定の申請や介護サービスを活用することで、負担の少ない日常を送ることができます。
しかし、認知症に対して、本人はもちろん家族の不安もあるでしょう。そのような時は、地域包括支援センターや市区町村の窓口、ケアマネジャーに相談してください。また、認知症カフェなどを活用し、第三者と意見交換することで、悩みを解消できる場合もあります。
ぜひ積極的に活用してみてください。
施設を探す
介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。