口腔ケアは認知症予防に効果的?口から健康を維持するポイントを紹介

口腔ケアは健康の維持はもちろん、認知症の予防に効果的と言われることがあります。高齢者は、歯の数が減り、口腔ケアを怠る人も少なくありません。また、間違った口腔ケアを行なうと、口腔内に雑菌を増やしてしまうケースもあるので、注意が必要です。そこで今回は、口腔ケアと認知症の関係性や口腔ケアのポイントについて紹介します。ぜひ最後まで読み進めて、健康維持の参考にしてください。

#認知症#病気
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

口腔ケアは健康を守るために大切

口腔内の健康は全身の健康に影響する

口腔ケアは、歯の健康だけでなく、肺炎予防や認知症予防として効果があるといわれています。特に、認知症の予防には注目されています。認知症と口腔ケアには、直接関係性を感じないかもしれません。しかし、根本的な部分でつながりがあり、口腔ケアから健康の維持や認知症の予防ができると考えられています。

口腔ケアは、歯を磨くだけでなく、歯茎や舌など、口の中全体のケアを指します。高齢になり、自分の歯が減ってくると、入れ歯を使用する人も多くなるでしょう。それにより、歯みがき(ブラッシング)の習慣が減って来る人は多くなる傾向です。入れ歯を使用すると、口腔ケアが入れ歯の手入れだけになり、口腔内の雑菌が残ったまま過ごす人が増えてしまいます。そのため、肺炎につながる人も増えてくる傾向にあるので、注意が必要といえるでしょう。

わかりやすく例えると、人間の体温は36度程度です。外気温で考えると、真夏日以上の温度といえます。その場所に長時間、食物が残っている状態を想像してみてください。真夏日に、冷蔵庫にも入れず、外気に晒したお肉や魚をすすんで食べる人はいないでしょう。理由は、お腹をこわしてしまう・病気になるなど様々ありますが、身体に悪そうというのは想像できます。

体温は、冬場に下がるという訳ではないため、1年を通して口腔内に残る食物や残渣物は危険な状態にあり、口腔ケアの大切さが分かるのではないでしょうか。次からは認知症との関りについてみていきましょう。

口腔ケア・訪問歯科のある施設を探す

認知症の原因について

はっきりとした原因は不明だが病気などに起因することがある

認知症の原因として考えられるものには、環境の変化・ストレス・不安・生活習慣病などがあります。ほかにも、高血圧・高脂血症・糖尿病などの病気から認知症につながるといわれているので、病気を予防する意識がとても大切です。

現在、日本では高齢者人口の4人に1人の割合で、認知症や軽度の認知機能障害があるといわれています。超高齢社会となった日本では、まだまだ高齢化率は増える見込みで、認知症高齢者も増えてくることが予想できます。

医療の進歩が著しく進む中、認知症の原因はハッキリと解明されておらず、根治治療もできない状況です。そのため、認知症にならない方法として「認知症予防」が様々な研究者や介護現場から発信されています。

その中で、歯科医師から「認知症には口腔ケアが有効である」という説が出てきたのです。高齢者の中には、歯科に通っていない人も多く、歯について関心のない人もいらっしゃいます。現在、歯科治療を受けていない方は、定期的な治療が必要か検討してみるとよいでしょう。

認知症相談可の施設を探す

口腔ケアが認知症予防につながる?

口腔ケアは歯の健康を維持するだけではない

前述したように、口腔ケアが認知症の要因という訳ではなく、あくまでも要因のひとつとして考えられるのです。口腔ケアを怠ることで、雑菌が増え、体調に影響を受けやすいことも原因のひとつといえます。体調を崩し、入院することで環境の変化が起こり認知症を発症する人もおられます。

高齢になると、基本的に唾液の分泌が減るので、雑菌が増えやすい状況です。水分を摂ることで、改善も図れますが、高齢者は何度も排泄に行くことになるからと、水分摂取を控える傾向にあります。そのため、口の中が乾燥し、舌にコケや舌苔(ぜったい)が多く発生する人も少なくありません。

認知症の原因としては、様々な要因が考えられますが、基本的に口腔内を清潔に保つことが、健康維持につながります。そのため、口腔ケアは歯がなくても必要なケアといえるでしょう。次からは、具体的なデータを参考にみていきましょう。

高齢者の口腔内の状況

高齢者の口腔は乾燥しやすい

高齢者は口腔内に雑菌が溜まりやすい傾向にあります。理由としてはいくつかありますが、主な理由として前述した通り、唾液の分泌量です。さらに、高齢になると水分の摂取量が減るため、口腔内が乾いた状態になりやすいと考えられます。

水分摂取量が減る理由は、前述の排泄への不安や、そもそも水分を取りに行く動作が面倒・口の乾きに気づかないなどのケースもあります。本人が自らの意思で水分を控えている場合や、乾きに気づきにくい場合、水分を促すことが困難な場合はありますが、適度に摂取できるように近くにお茶を用意しておくなどの対策が必要です。

また、肺機能も低下するため、鼻呼吸だけでは酸素量が追い付かず、口呼吸をする人も多い傾向にあります。そのため、口腔内の水分が蒸発し乾いてしまうのです。

ほかにも、歯がなくなり、総入れ歯を使用している人の場合「入れ歯の洗浄をしているから」といって、口腔ケアを怠る人もいます。雑菌が繁殖する中、口腔内のケアを行わず、放置していると、どうなっていくかは想像がつくでしょう。

このように、高齢者は口腔内に雑菌が増えやすい傾向にあります。雑菌が気管から肺に流れていくことで誤嚥性肺炎を発症してしまうので、口腔ケアは必要不可欠と考えられます。誤嚥性肺炎は、とくに高齢者に発生しやすく、重篤化するケースもあるので、注意が必要です。

歯が残っている人ほど認知症になりにくい

歯の本数と認知症には関係性がある

愛知老年学的評価研究プロジェクトの一環でおこなわれた、65歳以上の高齢者4,000人以上を対象として行われた4年間の調査によると「歯がほとんどなく、入れ歯を使用していない人」「あまり噛めない人」「かかりつけの歯科がない人」は、認知症が発症するリスクは高くなるという結果があります。

また、歯がなく入れ歯を使用していない人は、歯が20本以上残っている人に比べ、1.9倍も認知症発症リスクが高いのです。

高齢になると歯が抜けてしまう人も多く、入れ歯を使用する人もいますが、新規に入れ歯を作成すると「合わない」「違和感がある」と一定数の方が使用を拒否してしまいます。口腔内は人体の中でも、非常に敏感で、髪の毛1本が口に入っただけで、すごく違和感をおぼえるという経験があるのではないでしょうか。

そのため、どれだけ精巧な入れ歯ができたとしても、違和感があるのは仕方のないことと考えられます。しかし、そのように理解できる人も少なく「余計に食べにくくなった」と感じ、入れ歯の使用を控えてしまうケースは多いです。

入れ歯を使用しないと、歯茎が痩せ徐々に食事が摂れなくなる場合もあり、生活や健康に支障が出るケースも考えられるので、入れ歯を作った直後はとくに注意が必要です。

歯と健康の関係

歯と認知症の関係性は様々なデータから立証されている

別の研究データからは、65歳以上の人200名以上に調査をしたところ、認知症や軽度の認知障害を発症している人の歯は、平均「17.5本」だったと報告されています。対して認知症や認知障害がない人は「20.7本」と差があることもわかっています。

歯の数だけで、認知症になる訳ではないですが、歯があることで、食事の制限が無くなり食欲の低下や偏りも減るので、生活習慣の乱れも少なくなるでしょう。

また、噛む力が弱くなれば誤嚥を起こす可能性も高まります。食べ物を小さく咀嚼(そしゃく)できないため、詰まらせてしまう場合もあるでしょう。さらに、嚥下動作を確認すると、食べ物は舌を使って運びますが、このとき舌は上顎を押すように動きます。口腔内が痩せてしまっていると、舌で食べ物を運ぶ動作に支障が発生して、スムーズな嚥下ができなくなってしまうでしょう。

このように、歯がないことで、様々な支障が発生する可能性があり、健康への影響が出てきます。健康を害することで、入院へとつながり、さらに生活習慣病へとつながるリスクが生じてしまうのです。

口腔ケアのポイントと注意点

歯科の受診は重要なポイント

口腔内は普段、他人に見せる場面が少なく、見てもらう機会もありません。そのため、口腔内で異常が発生していても気づかない場合も多くあります。

口腔ケアをおこなうにしても、歯科医者や歯科衛生士でもない限りは、見落とすケースもあるでしょう。毎日施設でケアをおこなう介護職でも、口腔内の勉強はほとんどしていません。

口腔ケアをおこなう場合は、歯科医師や歯科衛生士などの助言をもらいながらすすめるとよいでしょう。

わからないまま行なうと、敏感な人は口腔ケアを拒絶する場合もあります。そもそも人に口の中は見せたくないものなので、精神面にも配慮しながらケアをおこなうとよいでしょう。

麻痺のある方は注意

半身麻痺がある場合は、麻痺側の口腔ケアがいき届いていない場合も多い傾向です。口腔内も麻痺があるので、歯に残渣物(ざんさぶつ)があっても気づきにくいので、注意が必要です。食後のうがいや口腔内の確認をしっかり行うとよいでしょう。

口腔内の水分が残っていると危険

嚥下が困難な人や前傾姿勢がとりにくい人は、うがいを行うことが困難なケースもあります。その場合は、口腔ケアの終了前に、ガーゼなどでしっかりと口腔内の水分をとっておかないと、誤嚥のリスクが発生するので注意が必要です。

入れ歯の手入れ

入れ歯は歯磨き粉をつけずにブラッシングします。入れ歯に歯磨き粉をつけてブラッシングしてしまうと、歯磨き粉の研磨剤によって、見えない傷を作ってしまいます。そこから、雑菌が発生する場合もあるので、入れ歯の手入れは歯磨き粉なしで問題ありません。

唾液分泌

口腔内の乾燥予防も重要です。口腔が乾燥しやすいひとには「口腔湿潤剤」などを塗布して保湿を行うと効果的です。また、嚥下体操(口腔機能体操)や口腔マッサ-ジを行なうことで、唾液の分泌を促進できます。口腔マッサージは、耳の下にある耳下腺・顎の下にある顎下腺・舌の下にある舌下線をマッサージすると口腔内に唾液が分泌されます。口腔マッサージは、食事前に行うことが多いです。しかし、口腔内の清潔保持として、食事以外のタイミングで実行するのも効果的と考えられます。

まとめ

認知症の原因はハッキリとわからない部分はありますが、健康状態の維持が密接に関係します。健康状態が悪化することで、入院につながってしまうでしょう。入院すると、ベッド上で過ごすことがほとんどのため、筋力の低下や意欲の低下につながってしまう場合が多いといえるでしょう。

口腔ケアは様々なリスク予防の内のひとつです。口腔ケアを行なうことで、歯の健康を保ち、口腔内の雑菌を減らし、健康状態を維持できると考えられます。食事摂取の維持・食欲の維持・肺炎の予防などの効果が期待できるので、口腔ケアは非常に大切です。

口腔ケアを適切に行ない、健康を維持して、認知症を間接的に予防していきましょう。

施設を探す

カテゴリー

公式SNSアカウント更新中!

老人ホーム選びや介護に役立つ 情報をお届けします!