介護保険証(介護保険被保険者証)を詳しく解説!受け取り方から利用方法、提示するときの注意点を知っておこう。
「介護保険証って何に使うの?」「紛失したらどうすればいい?」「引っ越しのときに手続きは必要?」このような悩みはありませんか?
介護保険証は65歳の方には自動的に郵送されるため、手元に持っているだけで使い方がわからないと悩んでいる人も多いです。
今回は介護保険証の利用方法や手続きについて解説しています。紛失や引っ越しなどの状況に合わせて様々な手続きも必要となるため、合わせて確認してみてください。
とぐち まさき
渡口 将生
介護保険証とは
介護保険証は介護認定の証明書
介護保険証は介護サービスを受ける際に必要な保険証です。介護保険証には、介護保険を受ける方の住所・氏名・生年月日から、介護区分や有効期間など様々な情報が記載されています。
介護サービスは介護区分によって受けられるサービスや費用が変わるため、要介護区分は確認しておくと良いでしょう。また、有効期間の確認も重要です。期間満了の約2か月前には郵送で更新の通知が届きますが、見落とす方も多く、有効期間が切れた場合は再度申請が必要です。しかし、期間が切れている間は介護保険が適用されず全額自己負担になってしまうため、注意が必要です。
介護保険証は、65歳以上の第1号被保険者には必ず交付されますが、40~64歳の第2号被保険者には特定の条件があるため、持っていない人も多いです。
また、介護保険証とセットで利用するものとして、介護保険負担割合証があります。介護保険負担割合証は、介護サービスを利用した際にかかる費用の自己負担割合を確認できる書類です。前年度の収入に応じて1〜3割が決定するため、確認しておくと良いでしょう。
交付の条件と受け取り方
保険証は郵送で自宅に届く
介護保険証は65歳(第1号被保険者)になると、お住まいの市区町村から自動で公布されます。この時点で、要介護認定を受けていない方は氏名・住所・生年月日などの基本情報のみが記載された状態で届きます。今後、介護認定を受ける際に必要となるため、大切に保管しておきましょう。
また、40~64歳の第2号被保険者の場合は、16種類の特定疾病を発症し、介護認定を受けられると発行されます。特定疾病は以下の通りです。
がん(末期)
関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症
後縦靭帯骨化症
骨折を伴う骨粗鬆症
初老期における認知症
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症
多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
脳血管疾患
閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患
両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険証は第1号・第2号被保険者どちらの場合も自宅に郵送で届きますが、介護サービスを受けるためには、要介護認定を受ける必要があります。
介護保険証の記載内容と注意点
介護保険証と介護保険負担割合証の見方
介護保険証には次のことが記載されています。
項目 | 詳細 | |
---|---|---|
1 | 介護保険被保険者番号 | 介護保険被保険者にあてられた10桁の番号 |
2 | 住所 | 住民票に記載されている住所 |
3 | 氏名 | 本人の名前 |
4 | 生年月日 | 本人の生年月日 |
5 | 性別 | 本人の性別 |
6 | 公布年月日 | 介護保険証を交付した日 |
7 | 保険者番号 | 6桁の地域番号 |
8 | 要介護状態区分 | 要支援1~要介護5までの7つの区分 |
9 | 認定年月日 | 介護認定を申請した日にさかのぼる |
10 | 認定有効期間 | 現在の介護区分の有効期間 |
11 | 区分支給限度基準額 | 現在の介護度で利用できる支給限度額 |
12 | 認定審査会の意見 | 認定審査の時に出た意見 |
13 | 居宅介護事業所の名称と期間 | 居宅介護支援事業所の名前と契約期間 |
14 | 介護保険施設等の名称と入居期間 | 介護施設などの名称と入居期間 |
介護保険証を見ると、今までの介護にかかる経過もわかります。
また、初めて介護保険証を受け取る際は、「介護保険負担割合証」も交付されます。介護保険負担割合証には以下のような記載があります。
項目 | 詳細 | |
---|---|---|
1 | 公布年月日 | 介護保険負担割合証をを交付した日 |
2 | 介護保険被保険者番号 | 介護保険被保険者にあてられた10桁の番号 |
3 | 住所 | 住民票に記載のある住所 |
4 | 氏名 | 本人の名前 |
5 | 生年月日 | 本人の生年月日 |
6 | 利用者負担割合(1~3割) | 介護サービス利用時の自己負担する割合 |
7 | 保険者番号 | 6桁の地域番号 |
注目する点は、利用者負担割合です。介護サービスを受けた際は、ここに記載してある割合分の自己負担額が発生するため、確認しておくと良いでしょう。介護保険負担割合証は毎年8月(公布は7月)に自動で更新され、負担割合は前年度の所得に応じて決定します。
介護保険証や負担割合証は、市区町村によって表記方法が異なります。また、色は定期的に変更されます。
介護保険証の使い方
介護保険証を使う3つの場面
介護保険証は、介護サービスを利用するときに使用します。
主に介護保険証が必要な場面は3つあり、それぞれ説明します。
要介護認定の申請をする
65歳以上の方は、介護保険証が自動的に郵送されるため、手元にある方も多いでしょう。しかし、持っているだけでは介護サービスの利用はできないため、要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定を受ける際は、住民票に記載してある住所を管轄している市区町村窓口で、申請手続きが必要です。要介護の認定申請書と一緒に介護保険証を提出し、第1号被保険者であることを証明するために使用します。
介護サービス計画(ケアプラン)を立てる
介護サービスを受けるためには、介護サービス計画が必要です。主にケアマネジャー(介護支援専門員)が行います。ケアマネジャーは介護保険証に記載されている介護区分や支給限度基準額を確認しながら、利用者のニーズを満たす介護サービス計画を作成します。
また、負担割合証と照らし合わせ、介護サービスを利用した時にかかる自己負担額などを提示するため、1~3割の負担割合も確認します。
介護給付費の支給申請をする
介護給付費とは、介護サービスを利用した際に、介護保険でまかなわれる費用を指します。介護サービスを利用する場合はケアマネジャーが給付管理を行うため、利用者が行う手続きは必要ありません。
しかし、福祉用具の購入や住宅改修などにかかる費用については、福祉用具事業所や施工業者との手続きが必要になります。その時に、介護保険証の提出が必要になり、手続きが済めば、介護給付費として支払われます。
介護保険証に関する事務的な手続き
介護保険証の手続きは市区町村の窓口で行う
介護保険証には、紛失・住所変更・施設入所・返却など様々な状況に合わせて手続きが必要になります。一つずつ確認していきましょう。
紛失
介護保険証を紛失したときは、再交付手続きを行います。住民票に記載のある、市区町村の窓口で手続きを進めましょう。利用者本人が手続きをする場合は、健康保険証などの本人確認書類を持参してください。印鑑が必要になる場合があるため、念のため持参しておくと良いでしょう。
本人が身体的な事情や認知症などで判断能力が低下している場合は、代理申請が可能です。その場合、本人確認書類・代理人の身分証明書・委任状などが必要になります。ただし、市区町村によって確認書類や手続きの方法が異なるため、事前に電話やホームページで確認すると良いでしょう。
住所変更
引っ越しをする際は、住所変更の手続きが必要になります。また、同じ市区町村内の引っ越しの場合と他の市区町村に引っ越す場合で手続き方法が異なるため、注意が必要です。
同じ市区町村内の引っ越しの場合は、介護保険窓口で住所変更の手続きを行います。市区町村によって、手持ちの介護保険証を返却する場合があります。手続きが終わると、新しい住所が記載された介護保険証が郵送で届きます。元の保険証にある記載項目は引き継がれるため、内容に不備がないか確認しおくと良いでしょう。
他の市町村へ引っ越す場合は、転出・転入手続きが必要です。転出先(引っ越し前)と転入先(引越し後)の市区町村窓口それぞれで手続きを行います。流れは以下の通りです。
介護保険証を返却する
介護保険受給資格証を受け取る
引っ越しから14日以内に転入先で介護保険証を再発行する
まずは転出先の市区町村窓口で、介護保険証を返却し「資格喪失手続き」を行います。資格喪失手続きを行うことで、転出先の被保険者資格がなくなるため注意が必要です。
資格喪失手続きを行うと「介護保険受給資格証」が交付されます。転出先で受けていた介護認定を証明する書類で、転入先で必要となるため、大切に保管しておきましょう。市区町村により、マイナンバーカードにまとめられている場合があります。その場合は発行されません。
次に、転入先の市区町村窓口で「介護保険受給資格証」を提出します。転出日から14日以内に提出が必要なため、期限には注意しましょう。転出先のデータを引き継ぎ、新しい介護保険者証が再発行されます。万が一14日を過ぎた場合は、転出先で再度、要介護認定を受ける必要があります。早くても30日ほどの時間がかかってしまうため、注意が必要です。
返却
被保険者が亡くなった場合は、介護保険証は返却します。亡くなってから14日以内に「介護保険資格喪失届」を記載して、市区町村窓口に介護保険証と一緒に返却しましょう。介護保険資格喪失届けは、市区町村の役場だけでなく、ホームページからダウンロードできる場合もあるため、各市区町村に確認すると良いでしょう。
返却すると保険料の過不足がわかるため、未納分は支払い、過払いがあれば還付されます。
介護保険証で利用できるサービス
介護サービスはニーズに合わせて様々なサービスがある
要介護認定を受けた介護保険証を提示すると、様々な介護サービスを受けることができます。以下の表で確認してみましょう。
サービスの種類 | サービスの名称 |
---|---|
施設サービス | 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 有料老人ホーム 介護医療院 など |
居宅サービス | 訪問介護 デイサービス デイケア 訪問リハビリ 訪問入浴 訪問看護 ショートステイ 福祉用具貸与・購入 住宅改修 など |
地域密着型サービス | 小規模多機能型居宅介護 グループホーム など |
介護予防サービス | 介護予防通所介護 短期入所予防介護(ショートステイ)など |
地域密着型介護予防サービス | 認知症対応型通所介護 など |
プライバシー保護の観点から見る各種保険証
保険証の提示を求められた場合、必要な部分だけ開示する
本人確認のために証明書や身分証を出す機会は多いものの、近年は、個人情報の漏洩や個人番号(マイナンバー)の普及により、個人情報の取り扱いが難しくなってきました。
令和2年10月1日から「健康保険事業又はこれに関連する事務の遂行等の目的以外でこれらの告知を求めることを禁止する規定」が施行されました。医療保険各種の保険者番号や被保険者番号などをプライバシー保護の観点から開示を制限するという政策です。
特に、スマートフォンで撮影した本人確認書類を使用する場合には、個人番号や被保険者番号をマスキングして提出すると良いでしょう。2次元コードが入っている場合は、マスキングの対象になります。氏名や住所、交付日にマスキングされていると無効になる場合があるため、注意が必要です。
今回は、医療保険証各種に対しての政策で、介護保険証には適応されていません。間違ってマスキングを行った場合、無効となる場合があるため、注意しておきましょう。
出典:厚生労働省「医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について」
まとめ
今回は、介護保険証について紹介しました。介護保険証は、65歳以上の方や40~64歳の一部の要件を満たした方が持っている保険証です。介護サービスを受けるために必要な保険証ですが、事前に要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定を受けた後は、介護保険証に介護区分や支給限度基準額などが記載され、ケアマネジャーが記載の内容と利用者の希望をもとに介護サービス計画を作成します。他にも様々な内容が記載されているため、紛失には注意が必要です。
紛失や住所変更などの際は、市区町村窓口で再発行申請や転出・転入を含めた住所変更が必要になるため、期日を守って計画的に行っていくとよいでしょう。
今回の内容が介護保険証の利用や手続きの理解につながれば幸いです。
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介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。