介護付き有料老人ホームとは
介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームの中でも、厚生労働省の定める基準をクリアした施設です。その中でも、3つのタイプに分かれており、身体状況や生活状況に合わせた施設選びができるという特徴があります。
65歳以上の自立レベルの方から要介護5の方まで幅広く受け入れを行っています。他の施設と比べた時の違いや特徴について詳しく解説していきますので、施設選びの参考にしてください。

目 次
介護付き有料老人ホームとは
有料老人ホームの人員配置基準について
介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームの中のひとつで「老人福祉法第29条第1項の規定に基づき、老人の福祉を図るため、その心身の健康保持及び生活の安定のため」に運営しています。
介護付き有料老人ホームは、高齢者の日常生活を支えるため、 24時間、介護スタッフが常駐し洗濯・掃除などの生活支援サービスをはじめ、排泄・入浴・食事といった身体介護を提供している施設です。
自立した人から、介護が必要な人まで、幅広く受け入れを行っており、長期的な介護を受けることができます。また、看取りケア(終末期介護)を行っている施設もあり、 終の住処を探している人の選択肢のひとつになります。
介護付き有料老人ホームは、主に民間企業が運営しており、一定の基準(設備・人員・運営基準)を満たし都道府県の認可の上、運営しています。
住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームには明確な人員基準はありませんが、介護付き有料老人ホームでは、各職種の最低人数が定められています。人員基準については、以下の表でまとめています。
上記のように、機能訓練指導員の配置が定められているので、機能訓練がサービス内容に付帯しています。また、要支援者については、10名に対し1名の職員配置が必要です。

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介護付き有料老人ホームで提供されるサービスについて
介護度の高い方から認知症の人も受け入れ可能有料老人ホームとは介
護付き有料老人ホームで提供されるサービスは、前章の通りで、身体的なケアや生活支援、機能訓練と一通り揃っています。しかし、介護付き有料老人ホームでは、外部サービスにあたる「デイサービス」や「デイケア」といった、通所系サービスが受けられないので注意が必要です。
また、介護付き有料老人ホームの中でも、さらに3つのタイプがあり、入居対象となる方の要介護度や身体状況で分けられています。
種類 | 入居対象者と特徴 |
---|---|
介護専用型 | 入居対象者は、 要介護度の認定を受けた人と定められています。 主に介護が必要な人が利用しやすいように、設備や環境が整えられています。また、緊急時の対応も想定されているため、介護度が高い人でも安心です。 |
混合型 | 自立レベルの人から、要支援・要介護の人までと、幅広く受け入れを行っているのが特徴です。 自立や要支援の認定を受けている人で、すぐに介護が必要と感じていなくても、将来的に介護が必要な場面は出てくるでしょう。そのような場合でも、長く入居できるので介護が必要になったときも安心です。 しかし、介護度が混同している施設では、介護度の高い方や要望の多い方に職員の意識が向くため、比較的元気な人が後回しにされる場面もあり、自立レベルの人や介護度の低い人は注意が必要です。 |
自立型 | 自立した生活ができる人が対象の施設です。 介護専用型・混合型と比べて施設数が少なく、希望の地域にない場合も考えられます。生活が自立していても、一人暮らしであることから、何かあった時のために施設を探す人も多いです。介護付き有料老人ホームは常時介護スタッフが滞在しており、夜間の見守りもあるため安心して生活できます。 |
介護付き有料老人ホームの特徴と入居条件
機能訓練や看取りまで行っている
介護付き有料老人ホームは、介護保険適応の施設のため、介護保険を利用し手厚い介護が受けられるのが特徴です。 入居条件は原則65歳以上の高齢者として設定されていますが、あくまでも原則のため、入居者対象者の身体状況や事情、施設運営会社により、要介護認定を受けた64歳以下の人が入居するケースもあります。
機能訓練指導員も配置されているため、適度な運動と、身体機能の維持を目指すことができます。また、医療行為が必要な人でも、提携のクリニックや往診医との連携を行っているため、継続して健康状態の把握が可能です。介護度の高い方や、認知症の人でも受け入れる施設は多くあります。
夫婦で過ごせる部屋を準備している施設もあります。たとえば、夫が要介護3で介護が必要で、妻が自立レベルだったとしても、夫婦で一緒の部屋(夫婦部屋)を利用して入居が可能です。夫婦部屋の場合、1室を2人で利用するため室料が抑えられる施設もあります。夫婦ともに施設を利用したいと思っていても、費用面が心配という人は探してみるとよいでしょう。
介護付き有料老人ホームの設備について
高級志向な施設からリーズナブルな施設まである
介護付き有料老人ホームには、施設によりさまざまな特色があります。食事提供に レストランを併設している施設や 温泉付き、ペットと同居できる部屋など多くの特徴があるので、入居する人のライフスタイルに合わせた施設選びが重要です。
サービスの多い施設は、比較的費用も高く設定されている場合が多いので注意が必要です。有料老人ホームと聞くと「高い」とイメージする人も少なくありません。しかし、なかにはリーズナブルな価格設定の施設もあるので、予算や資金計画に合わせた施設選びを行いましょう。
利用していく中で、多くの介護サービスを利用しないという方にとっては、サービス費が割高に感じる場合もあります。しかし、長く住み続ける場合は介護度が高くなったときを想定し、そのまま住み続けるか、費用が安い施設に移るかを検討するとよいでしょう。
有料老人ホームには一時金制度があり、数千万円かかる施設があるため、金銭的に余裕のある方しか入居できないといったイメージもあります。しかし、最近では一時金が必要ないプランを持つ施設も増えてきているため、一時金の有無は確認するようにしましょう。
介護付き有料老人ホームにかかる入居時の費用について
入居時に一時金が必要な場合がある
介護付き有料老人ホームには、初期費用として入居一時金が必要な場合があります。入居一時金は施設によって、0~数千万円と施設によってさまざまです。
入居一時金が必要な場合、月々に必要な居住費や管理費などのコスト費用に充当されるため、月々の費用が安くなります。また、入居一時金には「前払金プラン(全額払い・一部払い)」「0円プラン(月額払い)」と3つのパターンがあります。

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老人ホームの費用
入居までの流れ
家族の対応も重要なポイント
施設入居までには、いくつかのステップがあります。ひとつひとつ時間がかかる場合があるので、入居を検討する場合は早めに行動していきましょう。状況に応じて順番は前後しますが、基本の流れは以下の通りです。
- 1.希望条件を整理する
- 2.施設を検索する
- 3.見学で比較検討する
- 4.体験入居を申し込む
- 5.面談・入居審査
- 6.契約・入居
まずは、入居を考えている方の希望を整理し、条件に合った施設を探しましょう。 介護付き有料老人ホームの入居には、 申し込み書や診療情報提供書(紹介状)、健康診断書などの書類が必要です。入居するためには、施設側は健康状態を把握する必要があります。病院やクリニックに行く予定があるのであれば、先に健康診断書を仕上げておくとスムーズに入居を進められます。
施設見学は、可能な限り行いましょう。設備はもちろん、スタッフの様子などを確認できます。入居されている方の様子も見られるので、施設の雰囲気を知るきっかけになります。
本人面談や契約が終わると、一時金の支払いを行い入居となります。本人面談時の注意点は次の章で解説します。
面談時のポイント
入居の話が進むと、ご本人と施設職員の面談が行われます。入居対象となる方の身体状況や希望をヒアリングし、 施設がどのようなサービスや介護を提供すると良いか確認する場で、施設入居には欠かせません。基本的に、ご本人が普段生活している場(自宅、入院先の病院など)で実施することが多いですが、施設によっては、ご本人が施設に行く必要があるため、面談の方法を確認しておくとよいでしょう。
また、面談時はご家族の方も同席を求められるケースがあります。
介護付き有料老人ホームの選び方
介護付き有料老人ホームを選ぶメリット
介護付き有料老人ホームを選ぶポイントは、 「立地面」「費用面」「環境面」です。施設により、さまざまな特徴があるため、希望するサービスが提供されているのか確認してください。たとえば、「ペットと同居できる」「夫婦で利用できる」「温泉がある」など、今後の生活に満足できるサービスがあるのか問い合わせるとよいでしょう。
介護付き有料老人ホームには、 機能訓練指導員が配置されており、機能訓練が受けられるのが特徴です。リハビリを受けられると喜ぶ方も多いですが、厳密には「機能訓練」と「リハビリテーション」は別のサービスです。
リハビリテーションは医師の指示に基づき、理学療法士などの専門職により実施される訓練です。対して、機能訓練は、医師の指示はなく、介護職員やその他スタッフでも行える訓練となります。
リハビリを提供している介護付き有料老人ホームもありますが、多くは機能訓練が実施されています。しかし、他の施設と比べても、標準で機能訓練がついていると考えると、大きなメリットだといえます。
夫婦部屋を提供している施設もあります。 夫婦で入所を検討する場合、家賃を抑えられるため費用面で負担軽減になりますが、介護度に差がある場合は注意が必要です。夫婦で入居すると、自宅で介護を行う時と生活環境が近いため、介護する側がストレスに感じる場合もあります。また、介護疲れの末、別居したいという話になる場合も考えられます。その結果、別の施設に移ることになると、約2.5人分の費用が必要になるため、注意しましょう。
まとめ
介護付き有料老人ホームは、大きく3つのタイプがあり、介護の必要度に合わせて施設を選択できます。施設ごとにさまざまな特徴があるので、生活の質を上げられるような施設を探してみるとよいでしょう。
特定施設は、厚生労働省の定める基準を満たした、24時間の介護サービスを受けることができるため、安心して生活したいと考える方には、おすすめの施設です。
介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。