地域密着型サービスとは?各サービスや対象者の特徴まで紹介

「地域密着型サービスってなに?」「利用するには条件はあるの?」こんな疑問はありませんか?

地域密着型サービスは、それぞれの自治体で提供する介護サービスです。事業所と同じ地域に住む方のみが利用できる特徴があります。

住み慣れた地域で利用できるため、馴染みの関係ができやすく、環境の変化が起こりにくいため、認知症の進行や心理的な負担が少ないサービスです。

今回は、地域密着型サービスの種類や特徴について紹介します。メリットやデメリットも解説しているため、事業所選びの参考にしてください。

#在宅サービス#在宅介護#制度
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

地域密着型サービスとは

住み慣れた地域で生活できるように地域住民に提供するサービス

地域密着型サービスとは、介護が必要になった場合でも今まで住み慣れた地域でできる限り過ごすことができるように、市区町村が指定する事業所が提供する介護サービスのことです。

地域密着型サービスが必要とされる背景には、ますます進む高齢化問題があります。2025年以降に団塊の世代と呼ばれる人たちが、75歳以上の後期高齢者となります。そのため、高齢者人口がさらに増加し、介護する側の人口が足りないことが社会問題として注目されています。

地域密着型サービスでは、住み慣れた地域で高齢者の生活を支えることを目的に、創設されました。今後は、自治体独自の特性を生かした地域包括ケアシステムを整備することが求められています。

この地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で日常生活を継続できるように住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムです。例えば、地域の現状を把握するために地域ケア会議を開催し、役所職員・ケアマネジャー・介護サービス事業所・民生委員などが集まり、個別の課題解決や地域の課題発見・解決、地域の社会資源の開発などを話合い地域包括ケアシステムを構築します。

地域密着型サービスが利用可能な方は以下の通りです。

  • サービス事業所がある市区町村に住民票がある(居住している)

  • 要介護認定を受けている(要支援1~要介護5)

上記が基本的な対象者ですが、サービス事業所とは違う地域に居住していても、一部の地域サービス事業所を利用することができます。また、介護保険施設や特定施設に入居し、住民票を施設に移しても、保険者は転居前と変わりません。この制度を「住所地特例」と呼びます。

住所地特例は、介護施設などが多くある市区町村に財源が偏り、人口の少ない地域の過疎化を減らす目的があります。偏りを一定にすることで、介護保険システムの破綻を防ぐことができます。

地域密着型サービスの種類

地域密着型サービスは数多く展開されている

地域密着型サービスは、大きく4つにわけることができます。

通所サービス

訪問サービス

施設サービス

複合サービス

地域密着型通所介護

認知症対応型通所介護

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

夜間対応型訪問介護

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

地域密着型特定施設入居者生活介護

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護

上記表のように9種類のサービスがあり、それぞれのサービスを組み合わせて利用することができます。ひとつずつ特徴などをみていきましょう。

【通所サービス】

・地域密着型通所介護

地域密着型通所介護とは、事業所がある地域の高齢者が、日中通うことができるデイサービスです。一般的なデイサービスとの違いは、事業所と同じ地域に暮す人が対象となる点です。主なサービスとして、入浴・食事・排泄などの日常生活支援や機能訓練・レクリエーションが提供されます。事業所ごとの特性はありますが、基本的なサービス内容に違いはありません。「利用定員18人以下」と小規模で今までの生活範囲内で通うことができるため、人間関係が作りやすく環境の変化による混乱を最小限におさえられることが特徴のひとつです。

・認知症対応型通所介護

認知症対応型通所介護とは、認知症の方を対象に日帰りで食事や入浴などの日常生活支援や機能訓練を提供しているデイサービスです。この認知症対応型通所介護では、以下3つの種類に分かれます。

種類

特徴

併設型

病院や特別養護老人ホームなどに併設されている事業所です。

単独型

認知症対応型通所介護のみで運営されている事業所です。

共用型

グループホームの共用スペースを利用したデイサービスです。

認知症対応型通所介護は、「利用定員12人以下」と定められているため、少人数の利用者に対して職員の手厚いケアが受けることができます。家庭的な雰囲気の中、認知症に対して専門的なケアを行うため、ストレスが緩和されBPSDの出現を抑えることが期待できます。認知症は個々に症状や進行具合が違うため、通常のデイサービスでは対応が困難な場合でも、認知症対応型通所介護では利用者の状態を見極め、理解のある適切な対応をとることが可能です。

【訪問サービス】

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、訪問介護と訪問看護が一体となり24時間365日稼働している訪問サービスです。対応サービスは4つあります。

対応するサービス

詳細

定期巡回サービス

決まった予定に訪問し、日常生活支援を行う

随時対応サービス

利用者からの要請を受け、状況に応じたサービスの手配を行う

随時訪問サービス

利用者からの要請で随時訪問し、日常生活支援を行う

訪問看護サービス

看護師などが訪問し、診療補助や療養上の支援を行う

また、ひとつの事業所内で訪問介護・訪問看護を提供している”一体型”と訪問介護事業所が地域の訪問看護事業所と連携して対応する”連携型”があります。

一般的な訪問介護とは違い、1回の訪問時間が10〜15分と短い時間で対応できるため、1日に複数回の利用が可能です。

・夜間対応型訪問介護

夜間帯(18〜8時)に定期的な訪問や緊急時などに利用できる訪問介護です。排泄介助・安否確認・転倒・転落・急な体調不良などでも対応できます。

【施設サービス】

・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

認知症の方だけを対象に最大利用定員9人以下で共同生活する施設です。24時間365日、専門の職員が常駐し、日常生活の支援などを行います。共同生活の中で、一人ひとりできることに対して役割分担をし、他者とのコミュニケーションを図りながら、自立した生活を過ごすことが目的です。認知症の人は環境の変化に不安を感じやすい傾向ですが、グループホームでは少人数で職員の入れ替わりも少ないため、日々穏やかに過ごすことができます。

・地域密着型特定施設入居者生活介護

特定施設とは、介護付き有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・軽費老人ホーム・養護老人ホームなどのひとつで、厚生労働省の定める基準を満たし、指定を受け運営している施設です。「地域密着型」の場合、入居定員数が29人以下と定められており、施設と同じ地域に居住している人が対象です。日常生活支援や機能訓練など、利用者の状態に応じて、可能な限り自立した日常生活を支援します。居室は個室がほとんどですが、施設によっては夫婦で入居できる居室もあります。

・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

入居者定員が29人以下の特別養護老人ホームです。地域密着型なので、施設と同じ地域に居住している人が対象となります。地域密着型特定施設入居者生活介護とサービスの違いはほとんどありません。しかし、基本的に要介護3以上の方が入居条件となっており、要介護1・2の人に関してはやむを得ない場合を除き利用できません。居室は、従来型個室・従来型多床室・ユニット型個室・ユニット型個室的多床室などがあり施設によって違いがあります。

【複合サービス】

・小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護とは、通い・訪問・泊まりを組み合わせ、在宅生活を支える小規模の居宅系サービスです。

サービス

詳細

通い

デイサービスと同様のサービスです。デイサービスのように時間の縛りはなく、事業所の対応が可能であれば、短時間や長時間の利用など、自由に利用時間が決められます。

訪問

訪問介護と同様のサービスです。訪問介護のように20分以上45分未満や45分以上といった時間の制約なく利用できます。

泊まり

ショートステイと同様のサービスです。介護保険単位は月ごとに定額のため、空きがあれば自由に利用できます。

他の介護サービスとの大きな違いとして、ひとつの事業所と契約をするだけで、3つのサービスを利用することができる点です。また、他の介護サービスは利用した分の支払いになりますが小規模多機能型居宅介護は要介護度別で定額の支払いになります。また、ひとつの事業所で通い・訪問・泊まりのサービスが利用でき、同じ職員が対応するため、情報共有がしやすく、馴染みの関係ができやすいという特徴があります。

・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

看護小規模多機能型居宅とは、介護看多機(かんたき)とも呼ばれるサービスです。医療的に依存度が高い人や退院後で状態が不安定な方・在宅で看取りを希望している人などに対して、訪問看護・通い・訪問・泊まりのサービスを提供します。胃ろうや喀痰吸引・血糖測定などの医療行為が必要になっても利用できるため、できる限り在宅で過ごしたい人やその家族にとって安心できるサービスのひとつです。

地域密着型サービスのメリット

少人数制でアットホームな事業所が多い

地域密着型サービスは、利用定員が少人数制のため、利用者一人ひとりに手厚い支援ができることが特徴です。また、認知症の人に特化した事業所もあり、専門の職員が対応することで、精神的に安定し穏やかに過ごすことができます。

小規模の事業所では、職員との距離も縮まり、アットホームな事業所が多い傾向です。また、顔なじみの関係ができやすく、安心して利用できるでしょう。

住み慣れた地域で利用するため、環境の変化が少なく、認知症の進行予防も期待できます。小規模の事業所では、利用時間やサービス回数など、柔軟に対応してもらえることもあるため、相談してみると良いでしょう。

地域密着型サービスのデメリット

地域密着型サービスは一般的なサービスより費用が高い

小規模で運営されているため、利用定員が少なく設定されています。そのため、利用したくても空きがなく、すぐに利用できない場合があります。また、地域が限られるため、希望する事業所を利用できない可能性もあるでしょう。ただし、理由によっては他の市区町村の同意があれば区域外で利用することができます。詳しくはケアマネジャーや各事業所に確認しましょう。

また、小規模多機能型を利用している場合、一部の居宅サービスが受けられない場合があります。

併用可能

併用不可

  • 訪問看護

  • 訪問リハビリ

  • 居宅管理指導

  • 福祉用具貸与

  • 住宅改修

  • 居宅介護支援

  • 訪問介護

  • 訪問入浴

  • 通所介護(デイサービス)

  • 通所リハビリ(デイケア)

  • ショートステイ

基本的に、併用できない事業は小規模多機能型で対応できます。

また、小規模多機能型は利用料金が定額制のため、利用回数が減った場合でも一律の利用料金となります。利用料金は以下の通りです。

【同一建物に居住するもの以外に対して行う場合】

介護度

月額費用(自己負担額1割の場合)

要支援1

3,438円

要支援2

6,948円

要介護1

10,423円

要介護2

15,318円

要介護3

22,283円

要介護4

24,593円

要介護5

27,117円

(1単位10円で計算)

※地域加算やサービスによる加算が追加されます。

地域密着型サービスで実施される運営推進会議とは

定期的に会議を開催し課題の見直しや意見交換を行う

運営推進会議とは、事業所の職員・利用者・家族・行政の職員・地域住民などで構成する会議です。会議では事業所のサービス内容や取り組み・事故報告・利用者の属性・地域との連携などについて公表や意見交換を行って、よりよい運営を目指すために行います。2008年4月1日より、地域密着型サービスや認知症対応型の事業所では運営推進会議の設置が義務化されました。

開催の頻度は事業所ごとに異なります。

サービスの種類

開催頻度

認知症対応型共同生活介護

地域密着型特定施設入所者生活介護

小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護

おおむね2か月に1回以上

認知症対応型通所介護

おおむね6か月に1回以上

地域密着型通所介護

おおむね6か月に1回以上

まとめ

今回は、地域密着型サービスについて解説しました。地域ケアシステムが推進されている現在では、地域密着型サービスの需要も増え、今後さらに注目されることが予想されます。

地域密着型サービスは、少人数制の事業所が多くアットホームな環境で過ごすことができます。ただし、利用人数が少ない分、希望したときに空きがないということも発生しやすいため注意が必要です。また、一般的な利用料金に比べ、少し割高になる点も注意しましょう。

運営推進会議は強制ではありませんが、家族として意見を出しやすい環境です。事業所と地域をより良くするためにも、気づいた点や改善できそうなポイントは積極的に報告し、利用しやすい環境を作っていきましょう。

今回の記事が、地域密着型サービスの理解に繋がれば幸いです。

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