認知症になっても相続人になれる?知っておきたい手続きと注意点を解説

相続人が認知症だった場合どうなるの?」「父の不動産を認知症の母が管理できるの?」と悩んでおられませんか?誰かが亡くなったとき、一般的に財産はパートナーや子ども世代に相続されます。しかし、パートナーが認知症を発症している場合は遺産分割協議が行なえません。

今回は 、相続人が認知症の場合の相続手続きや注意点について紹介します。最後まで見ていただくと、相続について理解でき、終活や家族信託が行なえるでしょう。ぜひご覧ください。

(※今回は被相続人を父、相続人を母(認知症)、子どもの構成で解説していきます)

#認知症#病気#お金
この記事の監修

とぐち まさき

渡口 将生

介護福祉士として10年以上現場経験があり、現在は介護老人保険施設の相談員として従事。介護資格取得スクールの講師やWEBライターとしても活動中。家族の声を元にした介護ブログを通じ、2019年3月、NHKの介護番組に出演経験もある。

相続人が認知症の場合どうなるの?

相続人が認知症の場合、遺産分割協議が行えない可能性があります。遺産分割協議が行えず法定相続になります。そのため、特例措置である相続税の減免が利用できないため、相続はしたが損をするという可能性もあります。

また、不動産を持っている場合は特に注意が必要です。不動産は分割ができないため、誰に相続させるかは遺産分割協議で決定していきます。しかし、遺産分割協議ができず、法定相続で決まると、対象の不動産は相続人すべての共有財産となります。将来的に不動産の売却を考えても、共有しているすべての人の同意が必要になるので注意が必要です。

相続を受けたのが認知症である母の場合、不動産の売却やその他の手続きを行なう際に、判断能力の低下により判断できないケースが考えられます。

遺産分割協議とは?

相続人全員でどのように財産を分けるかを話し合う協議

通常遺産を分割するために、だれに対してどのように分割するのかを話し合う協議です。遺産分割協議を行なうには、法定相続人全員の合意が必要となります。しかし、今回のように母が認知症であれば、その話し合いができない場合が考えられるでしょう。

遺言書がある場合は、記載のある内容に沿って相続手続きも行なえますが、遺言書がなく、相続人が複数いる際は、遺産分割協議が必要となります。

遺産分割協議では相続人全員の参加が必須です。遠方にいる親族や隠し子なども含まれ、全員の合意がなければ、遺産分割協議は進められません。

そのため、認知症の母がいることで、合意がとれず法定相続通りに相続する場合もあるでしょう。遺産分割協議ができない場合は、民法で定められた法廷相続が適用されます。法定相続では、今回の場合、亡くなった父の配偶者である母と子に1/2の割合で遺産相続が行われます。

遺産分割協議が行われない場合、相続税の特例措置を利用できません。相続を受ける側に大きく税金が発生してしまうため、リスクとなる場合もあるでしょう。

認知症の人が相続するとさまざまな手続きが困難になる

亡くなった後は手続きが多い

父が亡くなると、死亡届・葬儀・埋葬先など、さまざまな手続きが必要となります。さらに、故人が残した財産を分けるために、遺産分割協議が必要になります。遺産分割協議と合わせて、相続税の申告や銀行口座にあるお金の受け取りなど様々な手続きが必要です。

銀行口座は、持ち主が亡くなった場合一時的に凍結します。凍結中は、預け入れや引き出しなどの手続きが一切できません。相続手続きが完了すれば、銀行口座の凍結は解除されます。

銀行口座が凍結してしまうことで、葬儀の費用が引き出せずに困惑する場合もあるでしょう。そのため、できる限り早い遺産分割協議ができた方が良いでしょう。

また、銀行で手続きを行なえば、預金の仮払い制度によって他者の同意を得ずとも、一部の金額を引き出すことも可能です。葬儀の費用がすぐに必要な場合には活用すると良いでしょう。

認知症の人が住宅を相続したときの問題

長期不在になる住宅ができてしまう可能性がある

認知症の人が自宅で生活ができなくなった場合は、施設を利用するケースもあるでしょう。その場合、相続された住宅は空き家となってしまいます。空き家となった場合、放火や泥棒に入られてしまうことが心配されます。火災保険に加入していても空き家の場合は、保険料が割高になるので、負担が増えるでしょう。

また、長年放置すると物件は劣化の速度を早めます。定期的なメンテナンスも必要になるため注意が必要です。万が一物件が火災元になったり、住宅が崩れたりすることで、周囲に危険があった場合は、住宅所有者として責任を問われる可能性もあるので、注意が必要です。

認知症の相続では成年後見制度を活用する

不利益な契約を結ばせない制度

認知症の方は正常な判断ができないことから、成年後見人をつけて遺産分割協議をするのもひとつの手段です。成年後見人が認知症である母の代わりに合意を出すことができます。しかし、成年後見制度にもデメリットがあるので見ていきましょう。

まず、後見人は自由に選ぶことができません。財産状況から家庭裁判所が決めることになります。そのため、認知症の方が亡くなるまで費用を払い続けることになります。将来的に経済管理ができない可能性もあるので注意が必要です。

また、後見人は、認知症である相続人の保護を第一として考えます。その他の家族の都合は一切関係ありません。また、遺産分割協議に成年後見制度を利用する場合、認知症である相続人の法定相続分は守らなければいけません。

相続された住宅を売却する場合、売却費用が認知症の本人にとって使用されるものかどうかを判断し、拒否する場合もあるでしょう。そのため、家族の不動産であっても自由に運用できないという状況ができます。柔軟に相続をしたい場合は次の家族信託を利用すると良いでしょう。

柔軟な対応が可能な家族信託とは?

認知症になる前に契約をしておく

家族信託は、家族で財産を管理する方法で、運用方法や分配について事前に決めておくことです。家族信託はその名の通り、家族にだけ適用されます。

家族信託では、財産の「受託(財産を守る)」と「受益(財産の利益を得る)」に分けることが可能です。そのため、子どもに「受託」して母が「受益」と決めることで、認知症の母が管理せずに、介護費用や生活費を受け取ることができます。

また、家族の様々な状況に合わせて自由に運用できるのが、大きなメリットといえます。注意点は、家族信託で決定できるのは財産に関してのことのみで、それ以外の契約などの手続きには効果はありません。

家族信託を行うと、親が認知症になる前に財産管理の方法を決めることができます。認知症を発症すると、銀行からお金を引き出すことや、財産に関しての手続きができなくなってしまいます。そのため、認知症の人の財産であったとしても自由に使えないため、生活困難になってしまう場合もあるでしょう。

しかし、家族信託さえ行っておけば、認知症を発症したあとでも、財産を自由に使用できるのがポイントです。

家族信託で受託した財産は、たとえ受託者が破産をしたとしても影響を受けることはありません。理由として「受託」は被相続人から預かっているものという扱いになるため、受託者の財産とは別の取り扱いとなります。

しかし、相続として受け取っていた場合は、相続人の財産として考えられるので、自己破産の際は徴収されてしまうため注意が必要です。徴収された財産は債権者にわたることになります。

家族信託は、被相続人が認知症になってからは手続きができません。契約を結ぶ際は、契約者の判断能力の有無を問われるため、認知症の影響で、理解力や判断力の低下が見つかった場合は対象から外れてしまうので注意が必要です。

参考: 家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します|【公式】認知症対策の家族信託は「おやとこ」

相続トラブルを減らすために遺言書を作成する

遺言書は専門の事務所を利用すると良い

遺言書の作成は自分でできます。しかし、弁護士や司法書士などの専門事務所に任せた方が良いでしょう。理由として、遺言書にはいくつか決まりごとがあり、間違った場合もう一度作り直す必要があるからです。また、亡くなってから気づいた場合には、遺言書が無効となるため注意が必要です。

被相続人が終活を行なっていれば問題ない場合もありますが、遺言書まで作成している方は少ないので、元気な内に作成のサポートをすると良いでしょう。

被相続人が認知症の場合と注意点

相続放棄も可能

被相続人が認知症の場合、成年後見制度を利用し、代理者で手続きを行なう必要があります。また、相続人が認知症の場合も同じです。

後見人がいる際は、手順や契約方法に変化はありません。しかし、成年後見人は弁護士や司法書士などの専門の事務所などから決められる場合も多く、費用が高くなる場合もあります。

被相続人は、「相続放棄」という選択肢もあります。後見人がいる場合は後見人に託されますが、被相続人に少しでも疑問があるようでしたら、弁護士や司法書士などの専門の事務所に行き相談した方がよいでしょう。

相続放棄の期限は、亡くなったことを伝えてから3ヶ月以内となります。亡くなった後は、葬儀や諸手続きなど忙しい環境や精神的な落ち込みがあるため、忘れない様に注意しましょう。

まとめ

認知症でも相続人になることはできます。しかし、認知症により、理解力や判断力が低下する前に準備をしておくと、いざという場合でも助かるでしょう。相続に関して、利用できる制度は、成年後見制度・遺言・家族信託の3つがあります。

成年後見制度は、認知症になってからも契約が可能で、本人の代弁者となります。しかし費用面や資産運用が自由に行なえないなどのデメリットがあります。

被相続人の意志を残したい場合は、遺言書の作成をしておくと良いでしょう。

また、被相続人に判断力がある時は、家族信託をしておくこともポイントです。被相続人が認知症の場合は、契約はできませんが、費用を抑えられ「受託」「受益」と分けることも可能です。

被相続人が亡くなったあとは、様々な手続きが必要な場合が多く、手間に感じる場合もあるでしょう。そのため、早めの対策が必要です。

今回の記事では、認知症の相続について紹介してきました。少しでも相続について理解し、成年後見制度・遺言・家族信託を利用する際の参考になれば幸いです

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