老人ホーム入居までの流れ 保証人不要の老人ホーム

多くの老人ホームでは、入居する際に保証人が必要になります。しかし、様々な事情で保証人を立てられず、「老人ホームに入居できないのでは?」と不安に思われる方も多いかと思います実は、保証人がいない場合でも入居できる老人ホームがあります。この記事では、保証人が果たす役割や保証人の条件、そして保証人がいない場合の対策について説明いたします。


#老人ホーム#制度#手続き関係
この記事の監修

すぎもと ゆりこ

杉本 悠里子

有料老人ホームで介護士として約12年勤務した後、社会福祉士を取得。急性期病院の医療ソーシャルワーカーとして、入退院支援に携わる。現在は、スマートシニア入居相談室の主任相談員として、多数のご相談に応じている。

老人ホームにおける保証人とは

老人ホームにおける保証人について、役割や条件など詳しく説明いたします。

身元保証人・身元引受人・連帯保証人の違い

老人ホームにおける保証人には、「身元引受人」「身元保証人」「連帯保証人」の3つがあり、厳密には意味が異なります。

  • 身元引受人:入居者が亡くなった際の退去手続きを行う。

  • 身元保証人:治療の判断や手続き、トラブルが発生した際の身元保証を行う。

  • 連帯保証人:経済的問題が発生した際の金銭保証を行う。

多くの老人ホームでは、これらを区別せず、全ての役割を担う者として「身元保証人」や「身元引受人」と呼称を統一しています。しかし、施設によっては必要となる内容が異なる場合もあるので、契約前に必ず確認しましょう。

この記事では、全ての役割を担う人を統一して「保証人」と表記します。

保証人が担う役割

保証人の具体的な役割は以下の通りです。

  • 経済的問題が発生した際に保証する

  • 病気やケガの際に、本人の代わりに治療方針の判断・手続きをする

  • 緊急時や定期的な連絡の窓口になる

  • 死亡時の退去手続きを行う

経済的問題が発生した際に保証する

老人ホームに支払う利用料は入居者ご本人の負担となりますが、経済的問題が発生して支払いが困難になった際は、ご本人の代わりに費用を負担する役割を担います。これは、通常の賃貸住居入居時における連帯保証と同様です。

また、ご本人に現金がなくて支払いができないが、株式や不動産といった資産があるということもあります。その際は、資産を支払いに充当する手続きが必要になりますが、ご本人では難しいという場合は保証人が代わりに手続きを行います。

病気やケガの際に、本人の代わりに治療方針の判断・手続きをする

老人ホーム入居中に、病気やケガで治療を受けることになった際、ご本人が治療方針の判断や手続きを行うのが原則です。しかし、ご本人では判断・手続きを行うのが困難な場合もあります。その際は、ご本人に代わって保証人が判断や手続きを行います。

緊急時や定期的な連絡の窓口になる

保証人は、入居者のご家族の代表として施設からの連絡窓口にもなります。ご本人だけでは解決できないような問題が生じた場合や、定期的な健康状態の報告など、あらゆる場面で連絡窓口としての役割を担います。

死亡時の退去手続きを行う

老人ホーム入居中にご本人が亡くなった場合、退去手続きは保証人が行います。私物や慰留品の引き取り、居室の原状回復作業、費用の精算など退去に必要な一連の手続きを行う役割を担います。

保証人になる条件

保証人は上記のような重要な役割を担うため、誰でも保証人になれるわけではありません。金銭面での保証を担うため、保証人契約時には収入や資産を証明する書類の提出が求められます。また、保証人を原則親族と定めている施設や、高齢でないことを条件にしている施設もあります。

入居者ご本人の配偶者やお子さんが保証人になるケースが多いですが、条件を満たせば友人・知人が保証人になることもできます。保証人の条件を厳密に定めている施設は少ないですが、条件は施設によって異なるので、必ず事前に確認しましょう。

保証人は何人必要か

施設によって必要な人数は異なりますが、全ての役割を負う人物として、保証人を1名立てる場合が多いです。中には、「連帯保証人を1名、身元保証人(身元引受人)を1名」と役割に応じて1名ずつ立てる必要がある施設もあります。

保証人は途中で変更できるか

契約時に立てた保証人を後で変更することも可能です。保証人が亡くなったり役割を果たすことが難しくなったりした場合は、その旨を施設に連絡し、新たに保証人を立てる必要があります。その際は、新たな保証人に関して施設に申請し、改めて保証人契約を結びます。

保証人が立てられない場合の3つの対策

さまざまな事情で保証人を立てられない方もいらっしゃいます。特に近年では、ひとり暮らしの高齢者の方が増えたことで、このようなケースが増えています。しかし、保証人が立てられないからといって、老人ホームに入居できないわけではありません。ここでは、保証人が立てられない場合の対策について、以下の3つをご説明します。

  • 保証人不要の老人ホームを探す

  • 成年後見人制度を利用できる老人ホームを探す

  • 保証会社を利用する

保証人不要の老人ホームを探す

老人ホームの中には、保証人を必要としない施設もあります。老人ホーム選びの選択肢は限られてしまいますが、保証人不要の老人ホームを探すのも1つの手です。

保証人不要の老人ホームの例として、「高齢者家賃債務保証制度」を利用できる施設が挙げられます。高齢者家賃債務保証制度とは、高齢者住宅財団が連帯保証人の役割を担う制度のことです。制度について高齢者住宅財団と基本約定を締結している施設なら、保証人を立てなくても入居できる場合があります。

しかし、保証人不要を謳っている老人ホームでも、実際は成年後見人制度のサポートや保証会社の紹介などを行っており、保証人が完全に不要というわけではない場合もあります。「身元保証人相談可」としている施設なら、保証人が立てられない際の代替案を提案してくれますので、まずは施設に相談してみてください。

保証人相談可の施設を探す

成年後見制度を利用できる老人ホームを探す

成年後見制度は、精神・知的障害や認知症などで判断能力が不十分な方を保護する制度のことです。成年後見人は、判断能力が不十分な方の代わりに財産保護・管理や契約などの法律行為を行います。

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。法定後見制度では、判断能力が低下した方を保護するために、家族が裁判所に申し立て、裁判所が後見人を任命します。一方、任意後見制度では、本人に十分な判断能力があるうちに、本人自ら後見人を選び、家庭裁判所に申し立てます。

老人ホームによっては、保証人がいなくても成年後見人がいれば入居できるところもあります。そのため、保証人が立てられない場合は、成年後見人を選任したうえで成年後見制度が利用できる施設を探すのがおすすめです。成年後見制度については、地域包括支援センターや各自治体の相談窓口に問い合わせてみてください。

成年後見人と保証人の違い

成年後見人は保証人とイコールではありません。成年後見人は、あくまでもご本人に代わって法律行為を行う役割を担います。そのため、連帯保証や治療方針の決定など、保証人に求められる全ての責任を負うことはできません。例えば、成年後見人は資産を費用の支払いに充当する手続きはできますが、ご本人に代わって費用の支払い義務を負うことはできません。成年後見人制度を利用する際は、「成年後見人は保証人ではない」ということを押さえておきましょう。

法定後見制度を利用する際の注意点

成年後見制度の中でも、法定後見制度を利用する場合は「ご本人が希望した人が後見人になるとは限らない点」に注意が必要です。法定後見制度では裁判所が後見人を任命するため、弁護士や司法書士などの第三者が後見人になる可能性もあります。

ご本人が希望する人物を後見人にしたい場合は、任意後見制度を利用する必要があります。しかし、任意後見制度は判断能力が低下してからでは利用できません。そのため、前もって後見人について検討する必要があります。

保証会社を利用する

保証会社は、民間企業やNPO法人が運営している、保証人の役割を代行してくれる団体のことです。弁護士や司法書士などと提携し、身元保証や連帯保証などのサービスを行います。また、引っ越しサポートや日常生活の支援、金銭面の管理、葬儀や納骨など幅広いサービスを提供しているところもあります。

保証会社のサービス内容

保証会社が提供するサービスは、会社によって様々ですが、以下のようなものがあります。

  • 身元保証・引受サービス:老人ホーム契約時に保証人になり、金銭面の連帯保証や入院の手続き、退去時や死亡時の身柄引き受けなどの役割を担います。

  • 生活支援サービス:引っ越しサポートや通院付き添い、役所関係の手続きなど、生活に関するあらゆるサポートを行います。

  • 金銭・財産管理サービス:口座の管理や株式・不動産などの保有財産の確認・管理などを行います。

  • 死亡時の支援サービス:葬儀や納骨の手配、遺族や行政への連絡、家財処分など、入居者が亡くなった際に必要な一連の支援サービスを提供します。

このように、契約時に保証人になってくれる身元保証・引受サービスだけでなく、プランによっては日常生活や入居者が亡くなった後までサポートしてくれるものもあります。サービスが充実している分、不要なサービスに契約して無駄な費用を払ってしまう可能性もあります。十分に情報収集して、本当に必要なサービスを選択することが大切です。

保証会社の利用にかかる費用

保証会社の利用にかかる費用は、会社や利用サービスによって異なります。生涯で負担する費用総額は100万円前後になることが多いですが、プランによっては数百万円に達することもあります。

利用料の支払い方式には、契約時に一括して支払うものと、契約時に初期費用を支払い、月額費用を毎月支払うものがあります。また、ある程度の額を預託金として支払い、費用が発生したらそこから支払う、という支払い方式もあります。

また、老人ホーム利用料に加えてかなりの費用がかかることになります。見積もりを複数社に依頼して比較検討したり、料金算定の根拠で不明点がある場合は必ず質問したりと、費用については特に注意して検討しましょう。

保証会社を利用する際の注意点

保証会社を利用する際は、以下の4点に注意することが大切です。

  • 複数社を比較検討する

  • ご本人だけで契約しない

  • 保証会社倒産時の対応を確認する

  • 生活保護を受けている場合は、保証会社の利用対象外となる可能性もある

複数社を比較検討する

保証会社によってプランや価格などが異なります。そのため、複数社を比較検討し、ご自身にあった保証会社を選ぶことが大切です。最近では、保証会社のニーズ拡大に伴い、保証会社の数も増えています。価格の安さだけで判断するのではなく、会社の信頼や実績も加味して納得のいく保証会社を選ぶことが大切です。

ご本人だけで契約しない

保証会社を選ぶ際は、ご本人だけではなく、ご家族や信頼できる友人などと一緒に説明を聞くことが大切です。保証会社にはさまざまなサービスが用意されており、サービスによって金額も変わります。ご本人だけでは本当に必要なサービスを判断することができず、無駄に高額な契約をしてしまう可能性もあります。1人で判断・契約せず、必ず第三者に同行してもらい、利用するサービスを検討することが大切です。

保証会社倒産時の対応を確認する

万が一保証会社が倒産してしまった場合は、身元保証を受けることができなくなり、施設から退去を求められる可能性があります。万が一に備え、契約前に倒産時の対応を必ず確認しましょう。

生活保護を受けている場合は、保証会社の利用対象外となる可能性もある

ご本人が生活保護を受けている場合、保証会社によっては利用対象外となる可能性もあります。生活保護を受けている方は、保証人が立てられない時の対応について事前に施設に相談しましょう。


まとめ

今回は、老人ホーム入居時に必要な保証人の役割や保証人が立てられない場合の対策などについてご説明しました。保証人が立てられなくても、保証人不要の老人ホームを探したり、成年後見制度や保証会社を利用することで、老人ホームに入居することができます。また、制度や保証会社を利用する際は、十分に時間をかけて準備や比較検討をすることが大切です。この記事をきっかけに、保証人についての理解を深め、契約前に慌てることがないよう準備を進めていただければ幸いです。

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